「きゃあああっ!」
 あたしの発動した『暴風』が対戦相手を吹き飛ばす。
(しまった……!)
 内心で舌打ちをするあたし。本当なら、この試合は『津波』で勝たなければいけなかったのだ。
 詳しい説明は省くが、今のあたしは一度行った試合の内容を、忠実に繰り返させられるという奇妙な状況に陥っていた。
 そのルールを破った時、何が起きるのか――。
 正確には分からず、あたしは結果を待つしかない。
 グニャリ。考えているうちに、早くも目の前が歪んだ。
 ……来たか!
 無意味と知りつつ、あたしは身構える。
 直後、突き出してきた手があたしの胸を突き飛ばした。
「きゃっ!?」
 無様に尻餅をつき、あたしは痛みに顔をしかめて正面を見上げる。視界を、醜悪にニヤつく男の顔と身体が覆っていた。
「おらっ、おとなしくしろよっ!」
 そいつが、あたしを闘技場の上に押し倒す。石畳に背中を打たれ、再び痛みが走った。
「こいつに賭けといてよかったよ」
「へへっ、どんな泣き声を聞かせてくれるかね」
「その気の強そうな顔、ぐちょぐちょにしてやるぜ!」
 気が付けば、周囲に何十人もの男達が群がっている。どいつもこいつも不細工で気持ち悪い……!
(ちょっとグリニウス! 早く助けてよ!)
 あたしは心の中で呼び掛ける。だが、返事はなかった。
(グリニウス! つまんない冗談はやめてっ!)
 しかし何度念じても、状況は変わらない。
 そうか……!
 直感で分かった。
 時の遡るのに失敗したあたしは、どこかの平行世界に紛れ込んでしまったのだろう。ここはあたしが負けた世界、男達に犯し抜かれる世界なんだ……。
「早く脱がせろよ!」
「待った! 全部は脱がすなよ。せっかくヒラヒラしたソソる服を着てるんだしよ」
「分かってるって!」
 ブチブチッ! ビリーーーッ!
 上着の止め具を壊されて、下着もお臍の上まで引き裂かれ、あたしの胸は欲望むき出しの視線にさらされた。
「いやぁぁっ!」
 思わず悲鳴を上げてから、悔しさが込み上げてくる。
 ……くそっ! あたしがこんな声を出すなんて! 魔法さえ……魔法さえ使えれば!
「諦めろよ。魔法が使えなけりゃ、てめぇなんぞただの雌犬なのさ」
 まるであたしの心を見透かしたように、誰かが笑った。いや『見透かす』なんて器用な芸当が、こいつらにできるはずもない。きっと偶然だ。だけど、そんなのどっちだっていい。唯一確かなのは、もう逃げ道なんかないって事……! ううんっ、それも違うっ! こんな奴らに犯されるなんて、あたしは絶対にいやだ!
 支離滅裂な考えが頭の中でグルグルと回る。その間にも、あたしは半ば無意識に、男どもを振り払おうともがいていた。
 グリニウスに救い出されるまでの陵辱の記憶が、自然と蘇る。
 アソコも口もお尻も下衆な連中にかき回されて、両手でもしごかされて、精液の生臭さに包まれて……。
 二度とあんな目に遭いたくない……!
 そうっ、もういやよっ……!
 いやっ! いやっ! いやっ!
「いやあああああああああああっ!」
 あたしは叫んだ。すると自分でも信じられないくらいの力が沸き起こる。
「うおっ!? 何だよ、いきなり!?」
「おとなしくしやがれっ!」
 男達は口々に喚きながら、あたしを押さえ込もうとする……!
 やめて! 触らないでっ! いやだって言ってるじゃない!
「おとなしくしろっつってんだろうが!」
 パシンッ! パシンッ!
 鋭い痛みが続けざまに頬を走る。一瞬だが、そちらへあたしは意識を奪われた。
 その途端……無我夢中の力はあっけなく消えてしまう。
 無数の手が、改めて四方八方からあたしを捕らえた。
「ヘッ、てこずらせやがってよ!」
 いっ!?
 服のアソコを覆う部分がずらされ、ゴツい指先が割れ目をなぞる。
「やだ……っ……やめて……!」
 動けなくなったあたしの声は、みっともないくらい震えていた。だけど、耳を貸す相手なんていない。
「ちょっとは濡らしてやれよ。順番が回ってきたのに、マ○コはボロボロだったなんてのは嫌だぜ」 
「へいへい」
 男の舌が股間に押し付けられた。
「ひあっ!」
 全身が総毛だつ。とても同じ人間の一部が触れているとは思えない。まるでナメクジだ……!
「俺も手伝ってやるよ」
 真上にいた男がのしかかってきた。そいつの舌と手は、あたしの胸を弄び始める。
 膨らみに埋もれていた乳首が嘗め回され、もう片方は指先で転がされた。
 どこかから伸びてきた指が、お尻の穴まで揉み解している。
 もう訳が分からない。
 やめてっ……誰か助けて……!
 全身を揉みくちゃにされて、あたしは涙が溢れてきた。
 やがてアソコの上から、男の顔が離れた。唾液を塗りたくられた場所が、空気に触れ、ひんやりとして……。
「俺が一番乗りだ!」
 興奮した声が耳に届く。
 一番……乗り!?
 その言葉の意味に、眩暈がした。大きく息を飲んだあたしは、残った力を振り絞る。
「やめてっ……お願いだからっ! ねえっ! あたしっ……こんなのいやあぁぁっ!」
「うるせえよ」「暴れるんじゃねえっ!」
 男達の手が一気に重みを増した。
 ああっ……!
 割れ目が広げられ、男のアレを押し当てられる。
 ダメェェェッ!
 あたしの願いは……どこにも届かなかった。
 ズブズブッ、ズブブッ!
「いっ……ぎっ!」
 入って……くる!?
 太い……のが……!
 やめて! 裂けるぅぅぅっ!
「ひぎゃああああああああっ!」
 あたしの獣じみた絶叫が、闘技場にこだました。
 ……破瓜の痛み。
 それは前後のつながりがない『時の狭間』では、味わった事のないものだった……。

 ………………………………。
「はっ……はっ……はっ」「おっ……へへっ……はぁっはぁっ」
 上下から、荒い息遣いが聞こえる。
 あたしのアソコとお尻を犯す男達のものだ。
 どれぐらいの時間が経ったんだろう……。
 感覚は麻痺して、もう痛みもあまり感じない。
 こうなるまでに、何をされ、させられたのか……それはご想像にお任せしたい。
「あ……あっ……もう……やめ……てぇぇぇ……」
「休んでるんじゃねえよ」
「ふぐっ……!」
 哀願を紡ぐあたしの唇へ、男根が押し入ってきた。何人分もの精液が粘っこい膜を作る口腔内で、猛ったそれが暴れ回る。
 あなたは……何回目よ……?
 もう充分でしょ……頼むから……許して……ぇ。
「ぅうんっ……うっく……むぅぅふっ……」
 喉の奥を何度も突かれて吐きそうだ。
 苦しかった。
 顔にかけられた精液のせいで、鼻もほとんど塞がれているから、尚の事そう感じる。
 なら、いっそ窒息して死んでしまえればいいのに……。
 そんな思いが頭をかすめた。
 だけど、あたしの限界を察した男が、おせっかいにも鼻先の精液を拭い取る。
「まだ、おねんねされちゃ困るんだよ」
 余計な事……しないで。
 もう……いやなのに……。
「うっく!」正面の男が呻いた。途端に、ビクンとあたしの胎内で太いものが震え、汚らしい精液を撒き散らす。
 あたし、また中出しされたんだ……。
「へへっ、どうだよ。今ので孕んじまったかもしれねぇな」
 そんなの知らない。
 どうせ、あんたには関係ないじゃない……。
 今はとにかく、こんな地獄に早く終わって欲しかった。
 だけど……終わったって、それからどこへ行けばいいんだろう……。
 この世界は本当のあたしがいるべき場所じゃない。
 あたしがいるべきなのは……。
 あれ……? それって……どこ?
 結局はこれだって可能性の一つだろうし……少なくとも、この陵辱ならいつかは終わる。
 だったら、あの『時の狭間』より……よっぽどましってもんだわ……。
「ひぁぁっ……」
 交代した男に貫かれ、あたしは小さく息を漏らした。