THE SURPREME SORCERESS RED〜Side:S act6〜

―――1ST STAGE―――

―――目覚めると、そこは控え室だった。
まだハッキリとしない意識の中、何故ここにいるのかを思い出す。

―――呪われた大会、サプリーム・ソーサレス。
私はそれに参加し、予選を勝ち抜き、本戦へと進み……

途端、脳裏に甦る、凄惨なペナルティ。
男達の群れに襲われ、蹂躙されていく女性。
白い肌が露わになり、白く濁った液体に汚されていく。
叫び声も雄叫びに掻き消され、徐々に小さくなって……

「……ッ、ぅ………」

その姿に自分を重ね合わせ、胃の中の物が込み上げて来る。
慌てて浴室へ行き、込み上げてきたモノを吐き出し、目尻に涙を浮かべる。
一緒に、このザラついた嫌悪感も出て行ってしまえば良いのに……現実はそう甘くはなかった。

口元を布巾で拭い、目尻を指で拭う。
ようやく、見た目をなんとか整えた私の背筋に、急に冷たい汗が流れる。
肌が粟立ち、全身が震える。
湧き上がるのは、畏れと恐れ……それは、ヒトならざる者に抱く感情だった。

「……な、何…この感じ……」

全身どころか心まで戦慄かせながら、壁のトーナメント表を見る。
第一試合の結果を表すように、ボル・ガノ・ボルの名が消え…私が意識を失っている間に決着がついていたのであろう、第二試合の選手の一人…ラトリー・ガボールの名も消えていた。
そして今戦っているのはカーマ・クリムとエグザイルW…どちらも聞き覚えの無い名前だったけれど、そのどちらか―――或いは両方―――から、私を畏怖させるだけの力を感じているのは明白だった。



―――渡り廊下に辿り着く頃には、既に試合は決着を迎えようとしていた。
闘技場を埋め尽くさんばかりの強大な魔力を練る少女…とはいえ私より年上に見える…と、それを腕組みしながら見据え、ただ佇むだけの女性。
常識で考えれば、私を慄かせたのは今正に大魔法を放とうとしている少女…
…けれど、この試合はルールも、そして参加者も常識の範疇を越えていた。

闘技場の空気を捻じ曲げ、弾け、相手を地に這い蹲らせるには過ぎた魔力の奔流。
その只中にある女性―――エグザイルWはまるでそよ風の中にいるかのように眉一つ動かさずに佇んでいた。

「……あれは……≪≫…いえ……≪≫級の防御呪文……
 …しかも、詠唱している様子が全くなかった……」

信じられない。
信じられないままに、眼下の事実を口に出す…その言葉すら震える。
しかも、驚くべきはそれだけではなく……

―――この大会のルールに於いては、威力のみを追求した魔法は、防御のみを追及した魔法に対して圧倒的に有利である―――

…その大前提を覆す、彼女…エグザイルWの魔力は…

「―――なんて、出鱈目な―――」

眼下で始まる凄惨な宴すら、先程目の当たりにした光景を覆い隠すには至らず…
私は、呆けたようにその場に立ち尽くしていた―――



―――どれくらい呆けていたのか。
私の意識を現実に引き戻したのは、観客達の雄叫びじみた歓声だった。

『お待たせしました。
 一回戦第四試合は、フィーネ・フィーネ対アマー……』

試合を告げる、拡大された声ですら掻き消すほどの歓声。
原因は言われずとも分かる。
闘技場の一端にひっそりと立つ少女…アマール・セルティックアーツ。
星と月を象った装飾を身に纏った姿は秘術を司る魔女にも、道化師にも見える。

その少女に、観客達は注目している。
…果たして大会史上初の三連覇になるのか…
……それとも、今回こそ敗れるのか……
恐らく、彼らはそのどちらであろうと構わないのだろう。
三連覇が成れば、歴史的瞬間の目撃者となり…
敗れれば、稀代の魔女を蹂躙出来る……

「……なんて、下衆な人達……」

欲望に瞳を輝かせているであろう観客に毒づきながら、私はアマールを…そして、彼女と対峙する少女を見つめる。

(…それでは…明日の試合、頑張って下さい……)

昨晩、そう激励した少女。
ある意味で私に近しいと感じた少女。

ただでさえ緊張を禁じえない相手だというのに、敗北者に課せられるペナルティ……
その、二重の重圧の中、彼女は何を思っているのだろう……
…そんな、私の心などお構いなしに試合の開始は告げられた―――



―――試合の内容は、あまりにも一方的で覚えていない。
気付けば、眼下の闘技場ではフィーネが…昨夜、ひょんな偶然から知り合っただけの…けれど温かな時間を与えてくれた少女が蹂躙されていた。

「…ッ…
…こんな、事って……」

その光景に胸が締め付けられる。
視界が揺れているのは、きっと涙ぐんでいるせいだろう。
眼下の少女を襲う不幸は、私を動揺させるに充分過ぎた。

「……そ、そうだ…
 …フィーネさんの同僚の……ディコレオさん達は……」

動揺する心を立て直すように、思考を別の事に向かせる。
思い浮かべるのは、眼下の少女と共に調査をしているらしき人物。
少女の話によれば、この瞬間に調査をしているはず―――

「…ひょっとしたら、こちら側の区画に来ているかも……」

アマールの調査をするならば選手用の区画をこそ調べるはずだ、と思い当たり、私は闘技場に背を向けた。
…その瞬間、これ以上フィーネの無惨な姿を見ないで済むかも知れない、と安堵にも似たものを覚えた。



結論から言えば。
結局、私はディコレオさんと出会う事はなかった。
とはいえ、私はただ廊下を歩き回っていただけなので、当然といえば当然かもしれない。
これくらいで出会うようであれば、極秘裏に調査など出来るはずもないのだし。

「……こんな所で何をしてるのです……」

代わりと言って良いのかは分からないけれど、本来ならばこの区画にいるはずのない人物と出会った。
白銀の長髪を後ろで束ね、蒼い瞳には常に不敵なものを光らせ、軽薄そうな笑みを湛える男性…
…誰あろう、私の副官・アリクスだった。

呆れた事に、彼は選手専用の区画の廊下をのほほんと歩いていた。
もしも私以外の誰かに見つかっていたら…そう思うと呆れてものも言えないけれど、今は呆れている場合ではない。
まずは、彼以外の、大会関係者らしからぬ男性を見かけなかったか尋ねた。

「…いや、全然?
 ……っていうかさ、潜入捜査やるんだったら普通は変装するだろ?
 それをやらないのはよっぽど大胆なヤツか、優秀なヤツぐらいじゃね?」

廊下の真中で話すわけにもいかず、かと言って自分の部屋に招き入れる気も起きずに、細い通路に入り込んで問いかけた私に、彼はいかにも軽薄に首を振った。
…正直な話、彼の言う事は至極正論だったのだけれど、正論を彼に言われると無性に腹が立つ。

「…という事は、貴方は余程優秀なのでしょうね!」

フン、と鼻を鳴らして皮肉を言ってもニヤニヤと笑い、聞き流される。
それどころか、どうして私がそのような事を訪ねるのか、と逆に詰問されてしまった。

「…なるほど、戦う事になるかもしれない相手に情を移してしまって、その情に流されて、密かに入り込んでるかもしれない人物を探している、と。
 ……お姫様はつくづくお甘いお人柄で…」

やれやれ、と肩を竦めた上で皮肉を告げられる。
彼の言っている事は間違いなく事実である以上反論のしようもなく、私の苛立ちは更に増してしまう。

「…なあ、姫様。
 俺だって意地悪でこんな事言ってるわけじゃないんだぜ?
 もしも情で矛先が鈍って、試合に負けたらどうするんだ?
 入り込んでる人物を見つけて、口封じに襲われたらどうするんだ?
 俺はその辺を考えて、もう少し今の状況を自覚してくれ、って言ってるんだぜ?」

彼は彼なりに私を心配して厳しい言葉を連ねているのだ、と理解すれば、苛立ちすら覚える事が出来ない。
自分が軽率だった、と素直に頭を下げる。
けれど。

「…確かに、潜入している方を探そうとしたのは軽率でした。
 …ですが、他の参加者とてこの大会の犠牲者なのです。
 ……私は、その犠牲者に情も抱けないような人物にはなりたくない…」

そこだけは、譲れない。
…暫し睨み合っていると、アリクスはやれやれ、と肩を竦めて私から目を逸らした。

「…まぁ、元々俺は姫様の部下だしな。
 そこまで言うなら、それで良いんじゃないか?」

そう。
そもそも彼は私の部下なのだから、彼のご機嫌を伺う必要もないのだけれど、彼の視線を逸らさせる事が出来た、という事で私は微かに満足した。
満足ついでに、何故彼がここにいるのか疑問をぶつける事にした。

「ああ、そんな事か。
 …そりゃあ、姫様だけに調査させるわけにもいかないだろう?
 …他のヤツはこういうの得意じゃないから、俺が来た、ってだけだよ。」

事も無げに答えるが、実際は危険な行動に違いない。
何故彼が潜入などを得意としているのかは敢えて不問として、今はその忠義を素直に喜ぶ。

「…アリクス、貴方達の気遣い有り難く思います。
 ……ですが、あまり危険を冒さないようにして下さい。」

労うように彼の肩に手を伸ばすと、ひらりとかわされる。

「…まあ、気にしないで下さいよ…
 別に姫様だけの為に動いてるわけでなし…もはやこれは俺達にだって関係ある問題なんですしね。」

そのまま通路から出ると、どこで身に付けたのか、彼の姿は鮮やかに消えていた。
…確かに、同行している以上私と彼らは一蓮托生。
彼らのためにも負けられない、と覚悟を更に固めつつ、再び渡り廊下へと戻って行った。



私がディコレオさんを探し、アリクスと話している間に更に一試合が終了し、次の試合が始まろうとしていた。
メルフィナ・サラキスク…余程自身があるのか、開会式の際に自身について喧伝していた。
その彼女の言に拠れば、私と同じように騎士団に所属している魔術師らしい。
そして対峙するのはシナ・セルフィック…彼女については、もはや語るまでもない。

どちらも、出自、もしくは所属に於いて私と近しいものがある二人。
どちらも、自信に満ち溢れた二人。
その二人の戦いの火蓋が―――

『――――――始め!』

切って落とされた―――



恐らく、シナは得意の高速詠唱で攻めて来るだろうけれど、メルフィナはどう動くか……

「…あ、アレでは……」

メルフィナの行動に、思わず眉を顰めて呟く。
…彼女が選んだ戦法も高速詠唱による先制攻撃。
しかし、シナの詠唱の速さは折り紙付き…そうそう上回れるものではない。
案の定、片膝をつき、シナを睨み付けるメルフィナ……

「…もし、次も高速詠唱を考えているなら…」

自尊心を傷付けられたであろう、自信に満ちた少女の考えに思いを馳せる。
そして、もしも私の予想通りならば…と結果を推測し、微かに瞑目する。

…シナはあまりにも陽気なので勘違いされがちだが、決して頭が悪いわけではない。
むしろ、自称とはいえ天才の名を冠するだけあって魔法の使用に関しては驚くほど知恵が回る。
以前私も詠唱の速さ比べで負けた事があり…その後、もっと早く詠唱しようとして……

―――高速詠唱を完了したメルフィナと、シナの間に魔法の壁が出来ていた。

「…あぁ、やっぱり……」

そう、私も同じ事をして、同じような目に遭った事がある。
眼下で繰り広げられる光景に、まるで記録水晶を見ているかのような感覚に襲われる。

…結果は、魔力を受け止められたメルフィナの敗北……
これでシナの総合的な勝利が決まり…私は微かに胸を撫で下ろす。

「…ッ……私、なんて卑しい……」

知人の勝利に…否、知人が敗北しなかった事に安堵を覚える。
それはつまり、今敗北した少女の運命に安堵する事とも取れ、そのような思いを抱いた自身に嫌悪する。



―――押し倒され、服を引き裂かれ、汚らわしいモノを押し付けられるメルフィナがいたたまれず、目を逸らす。
……その視線の先に、一人の女性がいた。
その豪奢なドレスと、いかにも魔法使いといった帽子は……

「…サティス・スコルピオ……」

女性の名を思い出すように呟く。
…と、彼女の視線は眼下に…今まさに辱められているメルフィナに向いたまま、口元を緩ませていた。

「…随分と趣味が悪いんですね…
 辱められる女性の姿を眺めながら笑えるなんて……
 …次にあそこに居るのはあなたかもしれないと言うのに……」

安堵した自身を咎めるようにサティスを咎めながら歩み寄る。
次に…そう、それこそまさしく次の試合の後にあそこに居るかもしれない私の事を思いながら、その身を案じる言葉を口にする。
その言葉に気付いたサティスが、私へと視線を向ける。
…その表情は、先程の笑みではなく、驚き。

「…ここでそんな道徳的な言葉が聞けるなんて…感動だわ」

皮肉なのか本心なのか分からない事を口にする彼女だが、私は続く言葉を聞き逃さなかった。

「…アナタも、知らないで参加してしまったクチ?」

そう、彼女は私『も』そうなのか、と尋ねて来た。
という事は、彼女は他にも同じようにこの大会のペナルティを知らずに参加している女性を知っている、という事だ。
…そして、それは彼女自身なのかも知れない。

「サヤ・アーデルハイド…Bブロック5番。
 あなたと戦うとしたら、決勝です」

彼女の問い掛けに答える代わりに、名前と組み合わせ番号を告げる。
そして彼女の皮肉に対抗するように、挑戦的な言葉を投げつける。

…と、彼女の視線が闘技場に戻り、釣られて私も闘技場を…未だ凄惨な宴の只中にあるその場所を見てしまう。
髪を掴まれ、顔を上げさせられ、口に汚らわしいモノを捻じ込まれようとするその光景に顔を真っ赤にし、視線を反らす。

「……『それ』言わない方がいいわよ。
 さっき私に同じ事言った娘が今あそこで…」

挑発なのか、それとも警告なのか。
視線を反らしている為に彼女の顔も真意も分からないけれど、私と同じ言葉を言った少女の末路を告げようとしている事だけは分かった。
そのような事、聞きたくないし、口にさせ、考えさせられたくも無く…

「たしっ…確かに…
 私は知りませんでした…この…事は!」

慌てて、彼女の言葉に被せるように、先程の問いの答えを述べる。
…けれど、それだけだとただ無知を晒す事になりそうで、たまらず何とか言葉を続けようとする。

「…けれど…
呪われた大会であることは承知で来ました!」

思わず続けた言葉に、彼女の眉が微かに動く。
その彼女の顔を見ながら…けれど闘技場を見ないようにして、更に続ける。

「…神の啓示があったんです。
 ……こういう意味だったなんて……」

禍いを生み出す、呪われた大会…それがこのような背徳の宴だったとは、確かに意外だった。
けれど、私が為すべき事は変わらない。
その決意をもう一度自らに刻み込むためにも―――

「私は―――
この大会を『終わらせる』
…そのために来たんです」

闘技場からは目を逸らしたままであるものの、ハッキリと断言する。
我ながら、この期に及んで現実から目を逸らす事が情けない……

「…今となったら、私にもちょっと興味ある話ね……一体どうやって?」

けれど、そんな情けない私の言葉に、目前の女性は視線は闘技場に向けたまま、私へと感心を向けた様子だった。
だから…という訳ではないけれど、ここまで来て隠し立てする必要も感じず、問い掛けに更に口を開いていく。

「…ここに来てから色々と調べてみました―――――」
 
彼女…サティスと向き合うと自然と闘技場が視界に入る。
反射的に目を逸らそうとする自分を何とか抑え、説明に集中する事で、視線ではなく意識を闘技場から遮断していく。

「…この会場内の魔力はいかなる類のものであれ、基本的に制御封印が施されています。
 『負けた魔導士は魔法を封じられる』のではなく、『試合中のみ一時的に魔力の行使が許されている』のです」

私の説明に相槌も打たず、腕組みをしながらただ聞いているサティス。
しかし、彼女の表情を見れば説明を理解しながら、それでも腑に落ちない点があると思っている事は容易に想像出来た。

「…ですが、魔力の制御封印は結局のところそれ以上の魔力によってでしか為しえないはず―――
 その意味では、魔力は完全に封じられているわけじゃない。
 特定選択条件下では常にその行使がなされているはずです。
 …それも膨大な量の―――――」

そう、魔法を封じるのはやはり魔法。
そして魔法を封じる魔法を扱える、という事は完全には魔法を封じているわけではない。
それが私と、恐らくは彼女とが共通して至った、この大会の魔力制御の仕組みだった。

……蓋を開ければ簡単な事。
運営者達は自身だけは魔法を使える環境に身を置き、その魔力で私達の魔力を制御している。

…それぞれ、己の力量に自負を抱く魔術師であれば歯痒い事実。
…けれど、この仕組みこそが、大会を終わらせる為の数少ないであろう…そして私に思い当たった一つの綻びだった。



―――説明の合間に一息つくと、集中が緩んだ視界に闘技場が映る。
既にメルフィナに対するペナルティは終わったらしく、まるでモノのように担架で運ばれて行く彼女の姿が視界の隅に映り、消えて行った。

(…フィーネも、あのように扱われたのだろうか……)

つい先程まで説明していた仕組みを調べている際に出会った少女…そしてもはや敗北してしまった少女に思いを馳せると、胸が締め付けられる。

(…私は…彼女の結末を見届ける事すら出来なかった……)

惨状にいたたまれなくなり、その場を逃げたと思われても仕方の無い行動をしてしまった。
その事への罪悪感が更に私の胸を締め付け、苛んでいく。

…けれど、その私の感傷を切り裂くように靴の踵が床を叩く音が響く。
それは、サティスの催促の仕草。
私は感傷を止めさせた彼女を恨めしく思いながらも…同時に感謝し、口を再び開いた。

「…そこで、優勝表彰式に目を付けました。
 大会主催者達による直接の称号授与―――
 この時には護身の意味でも彼らは自らの周囲の魔力を解放するはずです…」

この考えには自信があった。
このような大会を開催している以上、主催者は誰かから狙われたとしても仕方が無い。
そして、試合中以外は魔法を封じられているといっても、武器とは魔法以外にも…例えば、私ならば騎士として身に付けた剣と槍の技が…あるのだ。
ならば、彼らとて無防備に優勝者に近付きはするまい。

その考えにサティスも同意しているのか、ふむ、と軽く唸ると体ごと私へと向き直った。
そこで、私は計画の最終段階を彼女に話し始めた…

「…その隙に彼らを抑え、大会中枢部まで案内させた上で…
 その膨大な魔力の集積機関を破壊し、大会そのものを開催不能に持ち込みます…」

口にすればそれだけの事。
しかしその実現に付き纏うであろう困難を、目前の女性は暫く思案しているように見えた。
そして、閉じられていたその口がゆっくりと開いていく。

「なるほど…
 …でも、主催者達もその可能性ぐらいは考えてあるんじゃなくって?
 …何らかの対応手段を取ってると思うけど……」

彼女が口にした疑問。
それは当然の疑問であり、それに対する私の答えも簡単だった。

「…それは問題無いです。
 ……制御封印下に無い限り、私の魔力を押さえ込めるものなど存在しませんから……」

そう。
それは恐らくこの大会に参加している者全ての自負。
そして、私にはその自負を裏付ける幾つもの理由があった。
一つは、脈々と継がれて来た血筋による才。
一つは、巫女として、神聖騎士として身に付けた技術。
…それに、秘伝とされている幾つかの魔法もある。

そんな私の言葉に目を丸くしつつ、値踏みするように眺めるサティス。
それを受け流すではなく受け止める私。
僅かな沈黙の時間が流れる…



「―――あっ…あの…ッ…」

…突然、遠慮がちな声が割り込んできた。
振り向けば、そこには予選の際に僅かながら交流のあった少女――ベオグラがいた。

(…まさか、今の話を……)

私がしまった、と思うよりも先に少女は口を開く。

「ごめんなさいっ…
 …お話全部、聞いちゃいました…」

ああ、やはり…と、このような場所で話し込む自分の迂闊さを呪う。
フィーネは、同じように大会を調査する同志として。
サティスには、半ば彼女の挑発に乗せられるようにして私の参加理由を話した。
けれど、このような少女の耳に入れる理由はないし、無用な事実を知らない方が彼女の為であるというのに…!

「あっ、わたしベオグラって言います…
 あの…サヤさんですよね?Bブロック5番の…」

そのような私の慙愧とは裏腹に、少女は名乗り、尋ねて来る。
…そういえば、予選で試合を見ていたので彼女の名前は知っているが、こうして名乗られるのは初めてだった。

「そう…ですけど…なんですか?」

勿論、私も名乗っていなかったので頷き…少女の、必死に何かを伝えようとする、懇願するような仕草に、首を傾げる。
こうやって人の話に耳を傾ける事も無用な事実を知る一因なのだけれど、私はそれを気にせず…いや、気付いてすらいなかった。
そして、恐る恐る口を開く少女……

「わたし…聞いちゃったんです…」

ゆっくりと、言っても良いのかと悩むように口を開いていく少女。
とはいえ、ここまで来て話さない、では逆に気になってしまう。
言葉には出さないものの、軽く頷き、先を促す。
…果たして、彼女は何を聞いたのだろう……好奇心が湧き上がってくる。

「…一回戦のサヤさんの相手のゲシュタルトさんって人…
 ……今サヤさんが言っていた事と同じ事しようとしてるみたい……」

その言葉に、私とサティス…二人に緊張が走る。
…聞かなければ良かった、と後悔する。
……けれど、既に起きた事を無かった事には出来ない。
少女の話を聞いてしまった事も、私と目的を同じくする人物と戦う巡り合わせになった事も……



『―――メルフィナ・サラキスク選手へのペナルティは全て終了致しました。
 この時点でB2試合での単戦賭け札の交換は無効となりますのでご注意ください。
 なお、続いてのB3試合への単戦賭け参加の申し込みはまもなく終了させて頂きます。
 またの方はお急ぎ下さいませ…』

それを肯定するかのように会場に響き渡る声。
いよいよ私の戦いが始まる。
もはや、引き返す事は出来ず…けれど悩む時間だけはある。
私はサティスとベオグラ、二人に別れを告げると準備の為に控え室へと戻って行った―――



―――悩む時間だけはある。
それは言い換えるならば、悩みに回答を用意する時間は存在しない、という事。
…結局、私はどうすれば良いのか…サティスに語った方法以外の、もっと冴えたやり方が無いものか…その悩みへの答えを見つける事が出来なかった。

その悩みを抱えたままに、闘技場へと降り立つ…
見上げれば、客席には無数の観客―――呪われた宴を楽しもうとする汚れた貴族が殆どだ―――が座り、今はまだ闘技場に立つ唯一の存在である私に、邪な熱気の篭った視線を投げかけていた。

…もしも平常心であったならば、その視線に怒り、或いは怯えていたかもしれない。
けれど今はそのような事よりも私を苛む問題があった。
……その点に於いてだけは、この悩みに感謝すべきだったのかもしれない。

…そして、やはり悩みへの回答を見つける時間を与えずに、私の入場口と向き合う入り口から人影が現れる。
…まるで闇への入り口のような入場口…そこから滲み出るように現れる人物……

「……ッ……これは……!?」

途端、私は軽い眩暈を覚え、同時に観客がざわめきだす。
……無理も無かった。
まるで減速の魔法がかかったようにゆっくりと、しかしそれでいて鈍重さは微塵も感じさせずに私に近付いて来る女性…
…彼女の魔力に、背筋が粟立つ。
…数時間前に私を慄かせたエグザイルWの魔力……
…その『総合的な魔力』に勝る事は無いにせよ、私の眼前の女性の放つ『敵を打ち倒す為の魔力』は破格の一言に尽きた。

……準備の為に控え室に戻った時の事を思い出す。
控え室の扉の隙間に挟み込まれた紙切れ…アリクスからの伝言だった。
そこに書かれていたのは、ゲシュタルトが人間ではなく、錬金術によって作られた人造生命であるという情報。
外法とも言われる手段によって作られた生命、そして闇の眷属との契約―――神に仕える私達にとって、看過する事は許されない存在。
…けれど、そのように自然ならざる存在だからこそ到達出来る領域が存在するのもまた事実。
……それを如実に語る存在こそが、彼女―――ゲシュタルトだった。

…けれど、それすらも今の私には些事であり…

(…この人も…私と同じ目的でここに……)

いざ試合が始まろうとし、魔の眷属たる蝙蝠じみた使い魔を従えた、『夜の貴族』ヴァンパイアを彷彿させる禁忌の存在を目前にしても…悩みが、迷いが胸の内に湧き上がる。
…何か…何か良い方法は……

「…君にも…計り知れない事情があるのだろうが…」

そんな私の思考を遮る様に投げかけられた言葉に顔を上げる。
眼前の女性は冷ややかな目で私を見据えながら、更に続けた。

「…私にも、譲れないものがある」

それは、断固たる意志の宣言。
…その言葉で、思い出した。
私が何故…何に導かれて此処に来たのか……

…そう、彼女も私と同じ目的でここにいる…
けれど…そう…けれど!

「けれど…!
 私の勝利は神の意思……
 …譲ることはできない正義!」

自らを奮い立たせるように叫び、視線をぶつけ合い…

「「…行くぞ!」」

どちらかが…それとも二人ともが発したのかもしれない言葉と共に、私の戦いの幕が開いた―――



―――先程までの迷いを振り切りながら、即座に詠唱を始める。
まずは先手必勝……それがゲシュタルトとの試合だと分かって最初に決めた事だった。

予選に於いても、そして今に於いても強大な魔力を振るう彼女。
しかし強大な力というのは御し難く、ましてやこの大会のように自身の総魔力を制御されているならば尚更のはず。
……それならば、自らの魔力の制御に手間取っている間にこちらは最速で魔法を放ち、集中を乱す!

「…貫け…!」

詠唱を開始すると同時に終了する。
僅か一音節の詠唱で放つのは地水火風の四大属性とは異なる…聖なる力を持つ魔法≪≫。
瞬時に放たれた矢は狙いを違わずにゲシュタルトの手…そこで制御されつつある魔力へと突き刺さる。
外部からの刺激によって、不安定だった魔力は暴発し、炸裂する……勝敗は言うまでもない。

(よし…!
 次は……)

作戦の成功に一つ頷きながら、既に練ってあった次の戦法へと取り掛かる。
二勝すればその時点で決着の着くこの大会…その中で一勝を先取するというのは大きい。
相手には後がなくなり、焦るあまり速攻を仕掛けてくるか、または守りを固めて来るか……
そうなれば、私は守りを固めるだけで速攻を防ぎ、守りの巧みさで上回り、勝利を手にする事が出来る。

―――だというのに―――
私はあまりに打算的で、彼女は余りにも自身の能力に忠実だった―――――



防御の為に練り上げる魔力。
その私の前で、急速に膨れあがっていく魔力が一つ。
言わずと知れたソレは、ゲシュタルトの振るう、苛烈な一撃への予兆……

「くぅ…ッ……」

魔力を練り上げる口から、呻きが漏れる。
私からゲシュタルトまで、距離は十数歩。
その間の空間が歪み、捻れていく。

魔力の制御に集中する思考にも響くほどに会場がどよめく。
視界の端で、闘技場を囲む壁に亀裂が走る。

―――信じられない。
この会場の魔力制御はほぼ完全に近かった。
『ほぼ』である以上『絶対』ではない…けれど、練り上げた魔力が闘技場の周囲の物体に損害を与えるなど―――

(―――なんて、出鱈目な―――)

数時間前に口にした言葉を、今度は心の中で発する。
それは同時に、今の状況の圧倒的な不利を私自身に悟らせた。

(…ッ…≪≫だと……押し切られるッ…!)

この大会のシステムでは、攻撃は防御に勝る。
ならば、攻撃に勝る速攻を行えば……

(…ダメ……!…今更、そんな変更は……)

…一度方針を決めて練り上げ始めた魔力は、その方針でしか使用出来ない。
…経験に優れ、相手の動きを予測出来る程の人物ならば魔力の方針を変更する事も可能かもしれないが…私ではそれは不可能だ。
…そして、平素ならば練った魔力を破棄して新たに魔力を紡ぐ事も出来るけれど、この会場の制御下ではそれすらままならない。

(……でも、ここで負けてしまったら……)

そう、ここで負けてしまえば後がない…どころではない。
この一戦が終われば、私に残された魔力は純粋な攻撃の為の魔力のみ。
そうなれば…結果は目に見えている。

―――ふと、一つの考えが脳裏をよぎる。

……これだけの魔力…会場に仕掛けられた制御から漏れるほどの魔力があるのなら、私よりも確実に大会を終わらせる事が出来るのでは……

…例え事情が違えども、目的は同じ。
…それならば、いっそ……

―――刹那、今までの試合の様子が走馬灯のように駆け巡り…そしてフィーネの姿が脳裏に甦る。
…敗北し、無数の男達に蹂躙されたフィーネ…その姿は無惨で…

―――私は、そうはなりたくない…!

思うよりも先に、口が、手が動いた。
今、脳裏に浮かぶのは対戦相手と同じ、人智を超えた魔力の持ち主―――エグザイルW。

(彼女は……この状況で、相手の魔力に耐え切った…それが私にも出来れば……!)

勿論、純粋な魔力では及ばない。
…けれど…私には私にしか出来ない方法がある……

方針だけを与えていた魔力に、属性を与える。
従来ならば、防御に適した属性は地、魔法は≪防壁≫……しかしそれはあっけなく崩されるだろう。
…それならば、より高位の防御魔法を行使すれば良い……!

私の持つ属性では≪防砦≫は使えない―――もし使えたとしても、結果は同じだろう。

「……でも……これなら……!」

与えた属性は聖…脈々と紡いできた血統が生み出した、希少な属性。
そして放つ魔法は…

「―――≪≫―――!」

私の周囲に、文字通りの聖域―――不可侵な領域を形成する。
この魔法も人の技に拠る以上絶対ではないが、それでも同属性の存在以外には絶対と言って差し支えない防御力を誇っていた。

…ただし、問題が一つだけ。
私は今までにこの魔法を完成させた事がない。

…手の中で荒れ狂おうとする魔力を全霊で制御しながら、しかしそれに時間をかける暇はない。
稲妻のように魔力が全身を駆け巡り、思考を消し飛ばそうとするが、それに屈するわけにも行かない。

「―――全ては―――私の―――神の、正義の為―――!」

何度も、何度も頭の中で繰り返す。
神の正義の為に神の御業を使う―――それならば、失敗するはずがないと信じて。
…しかし、そんな私の目前に闇の奔流が押し寄せる。

「…神よ――――――!」

闘技場を抉りながら押し寄せる魔力を前に、瞳を閉じる。
それは諦めではなく、瞑想。

鼻先に闇の感触を感じたその瞬間に―――
―――私の中で何かが弾け、溢れ出した―――



―――瞳を開けた私の前には、抉れた闘技場と、その中央で魔力を使い果たし、倒れ伏す女性。
視界に手を映し、無事を確認するように開いて閉じる。
左右五指ずつ、全て正常。
恐る恐る体に触れるが、大きな傷はなく、小さな傷は自らの魔力によるものだと確信する。

……つまり、私は……

『―――勝者!
       サヤ・アーデルハイド!』

脳裏に思い浮かんだ言葉を確信に変える審判の声。
途端に体から力が抜け、その場に崩れ落ちそうになる。
…その瞬間、倒れた女性――ゲシュタルトと視線がぶつかる。

力なく動く彼女の口は、声にならない声で…

「こんなところで」

そう、呻いていた。

―――そして、闘技場へ男達が次々と入って来て…私は彼女へ何も声をかける事が出来ないまま、大会役員に伴われ、退場して行った―――



―――一人、廊下を歩く。
勝利の喜びなど何処にもない。
あるのは、ただ罪悪感、そして後悔。

―――一人の女性を辱めに遭わせてしまった―――

その事実がまず胸を苛み、次にその理由が打ちのめす。

―――神の正義の為―――

大義はそうだ。
けれど、あの瞬間、私は何を思ったのか……

(―――私は、そうはなりたくない…!)

そう…あの瞬間、私を突き動かしたのは神への忠誠でも使命感でもなく、浅ましい保身。

……結局、私は我が身可愛さの為に彼女を辱めてしまった……

逃れられようのない事実に後悔し、自らを嫌悪する…

…廊下を歩きながら、私は一人…その孤独に押し潰されそうだった。



「―――まだ一人目よ?」

その声は、まるで天から降り注いだようだった。
思わず顔を上げた私の先……廊下の壁に寄りかかるようにして一人の女性がいた。

「―――今からそんな顔してて大丈夫なの?
 アナタの作戦はあなたの優勝が前提なんでしょ?」

彼女は…サティスは再び口を開く。
そして廊下に開いた窓を一瞥。

―――釣られて見下ろした先には、蹂躙され尽くした、先程までの対戦相手の姿が見えた。

その姿は人間となんら変わりなく…

(彼女は人造生命だった…だから、私が気に病む必要はない…人間ではないのだから……)

必死に思いついた自己弁護すら揺らがせた。

「…他にも…
 何か方法があったかもしれない…」

膨れ上がる後悔に押し出されるように、胸の奥で繰り返す疑問が口をつく。

「…それがもし出来ていたなら救えたかも…そう思うと……」

しかし、私のそんな甘い幻想は簡単に打ち砕かれた。

「…でもアナタは選び、そして勝ってしまった…
 ……もう…引き返せない所にきてしまったのよ?」

冷静な…否、冷徹な瞳で…彼女は事実のみを語る。
私は俯き、無言でいる事しか出来ない。
…私自身自覚している事実に、反論など出来よう筈もない。

そんな私を見て、彼女は薄く笑う。
―――分かっているなら良いのだ―――
とでも告げるように。

「…私は私で、別のやり方を探してみるわ。
 …アナタのやり方じゃアナタ以外誰も助からないじゃないの」

そして告げられた言葉は、打ちのめされかけている私をすら驚嘆させるに充分だった。
サティスも、私と同じように大会を終わらせる方法を探す…?

…一瞬、同志を見つけた喜びが湧き上がるが、それは私のやり方を評価されて打ち消されてしまった。
…けれど…

「…それは、つまり……
 他の方も救う方法を……?」

思わず問いかける。
もしもそれが見つけ出せるなら、どんなに素晴らしいだろう。
冷徹そうに見える彼女だけれど、それだけではない、敬意を示すべき相手なのかもしれない……

「…もっとも…私の一番の本音は『私が助かりたい』と言うそれだけ。
 …その為にそれがおろそかになって負けるなんて事になったらナンセンスだわ。
 ……それはアナタにとっても同じ事でしょう?」

私の問い掛けに答えずに告げる言葉は、至極正論だった。
…けれど、彼女は私の言葉を否定しない。
そして同時に私に救いを差し伸べてくれた。

―――神の正義の為には、私は負けられない―――

だから…私が保身を願うのは当然なのだ、と。

その考え方はとても利己的で、崇高とは言い難いかもしれない。
けれど…それでも私の打ちのめされた心を僅かにでも救ってくれた。

「…………」

感謝の気持ちが湧き上がり、けれど彼女の冷徹な瞳の前に、それを口にするのは躊躇われた。
……口にすれば、きっと彼女はそんな私を冷徹に批判し、小馬鹿にするだろうから……

…そんな私の無言を、彼女の問い掛けへの肯定ととったのだろう。
暫く間を置いてから彼女は再び口を開く。

「…この大会の主催者の真の意図は不明なれど…
 ……一筋縄じゃいかない連中ばかり揃ってる事は確かだわ。」

…私はどうあっても彼女の言葉には素直に頷けないらしい。
…確かに、一筋縄ではいかない人物は多数いるように見えた。
……でも、今まさに試合をしているであろう幼い少女はそんな人物ではない。
自らの師の名誉の為に、このような陰惨な宴に迷い込んでしまった可哀想な少女……

「―――気を抜いてると負けるわよ?」

そんな私の思考を打ち切るように投げつけられる言葉。
眼下では既に本日最後の試合が終了し、とんがり帽子を被った魔女が蹂躙され始めていた。
…幼い少女の姿がそこにない事に、微かに安堵の溜息。
…そしてそんな自分にやはり嫌悪し…そうやって感情を揺れ動かしている間にサティスは私に背を向け、歩き始めていた。

最後まで厳しい言葉を突きつけて来た彼女の背中に、私は無言でこう告げた。

(……そう、ですね……ありがとう……)

…それは、彼女の問い掛けへの答えと、彼女の忠告への感謝の言葉。



―――こうして、本戦初日の全試合は終了した。

…明日は、私が最も戦いたくない少女との戦いが待つ。
…それを思うと、私は足取りを重くして自室へ戻って行った―――



―――この瞬間、私を陥れようとする二人の策が動き出している事など…知る由も無かった―――



―――ATOGAKI―――
長い○| ̄|_

まずはこの長ったらしいSSを読んでくれた方に感謝を。
そして製作秘話っぽいものを…

書こうとしたけど、書いたらもっと長くなるので自重(´・ω・`)

ただ一つ、頻繁に出していて性格とかに問題が無いか心配なサティス嬢とベオグラ嬢。
それに比して出番が少なくなってしまった他の娘さん達に、この場を借りてお礼とお詫びを申し上げます…勝手に使ってごめんなさい、サプ赤の世界に居てくれてありがとう(o*。_。)o