THE SURPREME SORCERESS RED〜Side:S〜

―――FINAL―――

『――――――勝者!
          アマール・セルティックアーツ!』

拡声の魔具によって増幅された審判の声が、闘技場に、そして観客席に響き渡る。
それと共に私―――サヤ=アーデルハイドの身体がゆっくりと崩れ落ちていった……

「そ…んな……」

口をついて出るのはただそれだけ。
速度も、魔法への抵抗もこの大会で…否、今までで最高の状況だった。
それでも、目前の少女に傷を付ける事は愚か、汗の一滴もかかせる事は出来なかった……


『単戦、重戦、総戦それぞれの配当は…………』
―――遠くに審判の声と観客席のどよめきが聞こえる。

倒れた身を何とか起き上がらせ…

『それでは、敗北したサヤ=アーデルハイド選手に対するペナルティが開始されます。札をお持ちの方は…』
―――観客席より湧き上がったどよめきはまるで打ち寄せる波のように、闘技場へ近付いて来て…

月と星に装飾された、夜空のように静かな表情の少女を見詰め…

―――直後。
『それでは、陵辱タ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜イム☆』
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
押し寄せる荒波は、目を血走らせた男の群れとなって…
…たった一戦で、否、一戦にも満たない試合で疲労し、破れ掛けていた服に手がかけられた。

「………………!!」

声にならない声をあげ、慌てて服を押さえる。

しかし、そんな事はお構いなし、と言わんばかりに上着が引っ張られ、悲鳴のような音と共に破り取られ、スカートにも手を伸ばされた。

「…ッ、やめ…ッ!」

思わず制止の声が上がる。

「止めるのはお嬢ちゃんの抵抗の方だろ?
 抵抗許しちゃペナルティになんねェって♪」

背後からかけられた声に、服を押さえるのを諦め、男を振り払おうとしていた腕を掴まれ、

「むぅ、こんなに身体に密着していては掴み難いですな…おっと、ここなら掴めそうですぞ!?」

前方から伸びた手に胸の先端を摘ままれた。

「ひ…ッ!?」

突然の痛みに身が強張ったその刹那―――

ビビッ、ビィィィィッ……!

動き易いように、と身体に密着させていたアンダーウェアが引き裂かれ、毟り取られ、戦いの最中の熱気に汗ばんでいた胸が、先程までを上回る熱気に晒された。

「ッッッ…嫌ぁぁぁぁ!」

自身の誇りの象徴でもある服を破られた事もそうだけれど、今まで異性に見せた事など一度も無かった胸に視線が集まるのを感じ、思わず悲鳴を上げてしまった。

「チッ、こいつ破れねーなぁ…なぁなぁ、そっちからも引っ張…もうやってやがるか。
 んじゃ、せーーーーー、のっ!」

それでも、私の悲鳴に同情する者などなく…前後に分かれる様になっているスカートが、前後から引っ張られ、千切れていった。

「おや、これは期せずして『先端だけ着衣』とやらになってしまいましたな……しかし、これはこれでなかなか……」

悲鳴をあげながら、いつの間にか現実を拒絶するように目を閉じていたのだろう。
その言葉に恐る恐る目を開けば、私は闘技場に仰向けに寝かしつけられ、両手を床に押さえつけられ、足首を掴まれ、脚を無理矢理広げられかけていた。

「あ……あぁ……」

誰かが言った通り、既に身を覆う物は長手袋とブーツ、それに太腿に結んだ小さなリボンしかなく―――ほんの数秒前までは見せた事の無かった胸も、お尻も……そして、その言葉すら口に出した事の無かった『秘所』も、群がる男達に曝け出されていた―――



―――PROLOGUE―――

…事の始まりは、16歳の誕生日。

その日、私は国を守る神聖騎士として、そして同時に神託を授かる巫女として正式に認められた。
元来、王女が巫女となるのは伝統として当然の事であったけれど、私はその伝統だけに縛り付けられるのが嫌で、実働的な神聖騎士をも目指した。

無論、王女という立場も味方したのだろう。
けれども、それのみならず、持って生まれた才能を磨き続け、やがては同僚や部下となる騎士達の口添えも頂き、神聖騎士にして巫女、という二つの資格を得たのだった。


昼に騎士団の集会に姿を現すと、叙任式の後で一揃いの制服を渡された。

「サヤ様、これは我ら神聖騎士の中で唯一の女性団員となった貴方様の為に特別にあつらえた品で御座います。
 皆と同じ物でも…という案も御座いましたが、やはりサヤ様には女性としての華やかさと優雅さを保ち、我らが象徴となって頂きたく、用意させていただきました…」

恭しく頭を下げた団員達。
やはり自分は特別扱いなのだ…と恨めしく思うよりも先に誇らしさが込み上げ、それからは専ら動きにくいドレスや無骨な鎧の代わりに、その制服を身に着けていた。

ただし…

「私は確かに王女ですが…今は皆と同じ神聖騎士です。
 …なので、私が神聖騎士として存在する場合は『様』付けはやめてください」

恭しく頭を下げ返した後で、微笑みながらそれだけは伝えた。


夜に、神託を授かる為に王都の外れにある祠へと行った。

16歳の誕生日に巫女となる王女にとって、その夜の神託は重要な意味を持っていた。

「大丈夫、サヤ…じゃなかった、姫様なら立派な神託を授けられるに違い無いって!
 …あ、いえ、そうに違いありませんよ…」

気さくに話し掛けて来る、警護任務を帯びた若い神聖騎士達。
同じ団員として「様」付けを断ったものの、今の私の立場は巫女であり姫なので、やはり礼をわきまえようとしていた……とはいえ、若者らしい気さくな、悪く言えば馴れ馴れしい口調は完全には消せなかったらしい。

苦笑を浮かべながらも「ありがとう。」とお礼を告げ、祠へと入った。

……祠の中で瞑想し、心を研ぎ澄ませる。

16歳の誕生日に授かる神託はその巫女の人生の指針と成り得る物……その緊張も、先程の団員の軽口で和らいではいたが、それでもじっと瞑想している時間は辛い。

(…もしもこのまま、神託がなかったら……)

そんな考えが頭をよぎり、眉を顰めた瞬間―――

(『魔導王国ユニカン』に…大いなる禍いが産み落とされようとしている…)

そんな言葉が脳裏に閃いた。

「大いなる…禍い…?」

ふと口にした瞬間、瞑想の為に集中していた精神が解け、それ以上の声が聞こえる事は無かった…
しかし、私にはそれだけで充分だった。

―――つまり、その禍いの元凶を断つ事こそが啓示―――

その私の決断に応えるように、祠の周りの草むらがガサガサ、と鳴った―――


…翌朝、昨夜の神託の結果を尋ねに来た若い騎士達のリーダー格・アリクスに対して、私は誇らしげに結果を語っていた。

「…という事で、私はその禍いを断ちます!」

怯む事も無く、惑う事も無い宣言。
…しかし、実は一つの問題があった。

「…で?その禍いって何なんだい?」

若い騎士達から当然のように浴びせられる質問は、私自身の質問でもあり……当然、応える事は出来なかった。

「…そういえば、聞いた事があるな…ユニカンで行われている『呪われた魔導大会』があるって噂…しかも、女性だけしか参加出来ない、だとか…」

私の代わりに口を開いたのは件のアリクスで……なるほど、と私は頷いた。
女性だけしか参加出来ず、魔法を操る者しか参加出来ない、呪われた大会………
確かに、そこに何らかの禍いがあるならば、私の目の前の騎士達には為す術は無い。
決断は早く、行動も同様だった。

「…では、その大会について調べてみて下さい。
 ―――禍いは…きっと私が断ち切ってみせます!」

―――一斉にどよめく若い騎士達。
その中でも一際満足そうに笑みを浮かべていたのは、やはりリーダー格の青年だった―――



―――ATOGAKI―――
どうも、Χ(と書いてカイと読む)です|*゚Д゚|┛
ワイズナー開催中なのに空気を読まずにサプ赤ネタを投稿してみました…しかも初投稿作品!

一応タイトル通り、サプ赤の話をサヤ視点で数回に分けて書いていけたらなぁ…と思っています(´・ω・`)
その過程で他の娘さん方にもご出演頂くと思うので、注意事項などあったらご連絡下さい。

願わくは、この作品が呼び水となって赤本再販とか、サプ赤投稿が増えますように( ̄人 ̄)

…では、自分の初投稿作をここまで読んでいただき有難うございました(o*。_。)o