約5年前

 クルルミク王国・ウィドウ侯爵のお屋敷
 
 フランツ私室

 フランツは一人研究書を読んでいた。そしてふと何かに気づくと2回拍手をする。

フランツ:入ってきなさいね、ジゼン。
密偵:失礼します。

 一人のジゼンと呼ばれた密偵が扉を開けて入ってくる。

フランツ:………前から思うんだが、忍者ならさー
ジゼン:はい
フランツ:こー 天井から『シュタッ!』っと降りて来れないのかね?
ジゼン:はぁ…… まぁ可能だけど天井ぶっ壊れますが?
フランツ:む…………… それは悩むねー
ジゼン:悩むなよ。
フランツ:……壊れた天井を直すサービスは密偵の仕事に含まれますか?
ジゼン:含まれねーよ。

 いささか密偵にしては不遜な口のききかただが、フランツはジゼンの家系と代々交流があるので(仕事&プライベートこみ)
 それが許される間柄である。

フランツ:ところで今日はどうした?
ジゼン:はい、明日からセニティ王女の討伐隊の一員として出発するので、そのご挨拶をと
フランツ:ふむ、律義にすまんね。
ジゼン:ふん、討伐隊に推薦したのはあなたじゃないですか?
フランツ:んっふっふ〜 そうだったね。 どうする? 怖いのならまだ取り消しきくが?
ジゼン:はっ、冗談を。オレの実力ならば簡単な任務だよ。むしろ感謝していますよ、この名誉ある仕事に推薦してくれたことを。
フランツ:うん、まー主要な貴族は推薦するか自ら参加してる感じだったんでね。
     ………私もぢつは参加を強要されたんだが、ちょっとね。
ジゼン:あー、ですか
フランツ:うむ、だよね。
ジゼン:はっ、まぁ迷宮で良い魔法の痔の薬でも見つけたらちょろまかして持ってきますよ。
フランツ:うむ、『龍神の迷宮』…… 
      あそこは竜騎士にも関連の深い場所だから、魔法の痔の薬もあってもおかしくないね!!
ジゼン:………いや、ジョークだったんだが。。。
フランツ:痔は竜騎士の職業病でした!
      戦いで死ぬより痔で死ぬ竜騎士の数が上回った時期もありました!!
      昔は男でも竜騎士はいき遅れてました!! 痔が理由で結婚断られて!!!

 急激な上昇下降による内臓への負荷。そして羽ばたきのたびに激しく揺れる竜の背中は非常に乗り心地が悪い。
 ましてや戦闘などでより無茶な動きをするために、尻へのダメージは計り知れないものがあるのだ!

ジゼン:……ってか過去のことなんだ。
フランツ:ふっ! 私の長年の研究の成果で、お尻に優しい竜鞍を開発したからね!!
      内部に絶妙な板バネやら羽毛やらでお尻を優しくガード!! 
ジゼン:…………くだらない事、研究してるんすね
フランツ:くだらなくねーよ!!?
    没落してた我がウィドゥ家が再興した理由コレだよ!!
 

 痔関連の話ながら、大層誇らしげに胸を張るフランツ。痔関連の話で誇らしげになれる貴族も実にレアである。

ジゼン:…………………滅びちまえば良かったのに。
フランツ:なんかヒドイこといわれてるような気がするヨ!?

 自分の研究が否定されいぢけるフランツ。
 そんなフランツを見て溜息つきつつも、ジゼンは少し表情を真剣なものに変える。

ジゼン:………まぁ、そんなアホな会話は置いといて。……フランツ卿に一つ頼みが
フランツ:うん? なんだね。
ジゼン:オレが迷宮でもしもの事があった時……… 妹の、チェリアのことを―――
フランツ:イヤダヨ
ジゼン:っ! ……断るんじゃねーよ! 雰囲気読めよ!!

 真剣な気持ちで言った願いを一蹴され、キレるジゼン。
 だがフランツはそんなことは関係ないように、先ほどと同じようにふらっとした態度でいる。

フランツ:んっふっふ。私は無駄なことはしない主義なんだよね?
      無駄な約束ほど精神的に疲れるものはないしね、極力そういうことはしない〜
      ってか、『もしも』? おいおい『もしも』ってなんだよ、そんな可能性があるのかい?
      ってか、そんな可能性があると思うような覚悟で、テメーは迷宮いくのかい?
      ってか、大事な妹のことを心配したままの半端な気持ちで任務に行こうってか?
      ……………おいおい、
             おいおいおいおい、
             おいおいおいおいおいおいおいおいおいおい、
             おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい、
             おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………おい、
      オイ、コラこの糞ガキがっ!!!

ジゼン:っ!?

 普段のちゃらんぽらんなイメージからガラリと雰囲気を変えて、鬼のような表情をするフランツ。

フランツ:…………そんな『もしも』なんてねーだろ? 俺の推薦したヤローが迷宮ごときでっ、
     わけわかんねー魔術師ごときで『もしも』だぁ!?
     んなワケあるわきゃねーよな、
     そうだろ!? ジゼン・ジルイーラ!!



ジゼン:っ 
     ………………その通り、だな。

 深く、頭を下げるジゼン。

ジゼン:スミマセンでした、フランツ卿。
    卿の推薦に応えられるようジゼン・ジルイーラ、必ずやワイズマンを討ち取りここにご報告に戻ってきます。

 そんなジゼンの姿を見てにやりと笑うフランツ。

フランツ:………うん、頑張ってきなさいね〜
      あー、あとあれだ。
ジゼン:? はい?

 『痔の薬も忘れずに探してきてね〜』

 そんな言葉で、5年前にチェリアの兄、ジゼンは見送られ


















 2度と帰っては来なかった。

















『あの迷宮では絶対は無いのです、

 いくら強い4人組でも罠にかかって、下の階に落ち暗闇に放り出されることもあるし、
 
 たった1人でも地図を拾い、どんどん地下に進んでいく事だってあるのです。

ただ、迷宮に行く前に一つ約束してください。

愛着がある人を見送らないでください。

陵辱されたくないのに参加はしないでください。

誰もが迷宮をクリア出来る訳では無いのですから。』


『龍神の迷宮』

#1b キャティパーティー(キャティ C-魔術師)

キャティは 龍神の迷宮 地下3階 を 無謀に進んでいる・・・

キャティ:(ん〜 しまったなぁ。アタシだけだと食料が不安だったり〜)

 『可愛いおんにゃのこに重い荷物なんか持たせられませんデスヨ!!』
 みたいなことを言い、フリーデリケが食料含めた荷物もちをしていたためにキャティは食糧危機に陥っていた。
 手元にある食料は、別れ際に貰ったドーナツのみ。。。。。。

キャティ:(もどろっかなぁ…… でもなぁ……… 
      行けるところまで行ってみっか!!)

 彼女は 無謀 であった。
 ひとまず、ドーナツは少しずつ食べて進んでいくことにした………



『龍神の迷宮』

#16 アリスパーティーアリス L-軽戦士、ムーンストナ N-魔法戦士、ウィルカ L-賢者フランム N-魔術師

アリス達は 龍神の迷宮 地下4階 を 大胆 に進んでいる・・・

*モンスターが現れた*


アリス:雑魚がザコザコ群れてやってきたわね!
     よし! みんなガンガン行くわよ!
ウィルカ:はい!
フランム:ふん、言われるまでもない!
ムーンストナ:メカラッタ!
アリス:…………。

 リーダーのアリスの掛け声にあわせて突撃する仲間達。だが、とうのリーダーのアリスが微妙な顔をして止まる。

アリス:………あのさ、
ウィルカ:! アリスさん! そっちに行きました!!

 アリスの一瞬の隙をついて襲ってくるモンスター!

アリス:……くっ!? シュトゥルム(疾風斬)!!

 しかしそんな隙などものともせず、一瞬でモンスターは上半身と下半身が泣き別れ。
 
アリス:ウィルカ! フランム!  ………あとムーンストナ。。。 そっちにも行ったぞ!!
フランム:任せろ!! 激烈なるの一撃を喰らうがいい!!

 フランムの指先から放たれる5100度くらいの炎の一撃で、一瞬にして消し炭となるモンスター。

ウィルカ:私のじゅじゅちゅの―――もとい、呪術の力で!!

 神を降ろしたことがあるウィルカの放つ一撃で、一瞬にして灰燼に帰すモンスター。

ムーンストナ:メカラッタ!!

 数多くの冒険者の中でも極めて優秀な魔法戦士である彼女の放つ、
 モンスター全体絶対破壊ミサイルにより、一瞬にして吹き飛ぶモンスター。

 

一行は 1ターンで

モンスターに 勝利した!


 特攻PT Aチームと言われる彼女達にとって、この程度のモンスターは敵ではなかった!

アリス:よし、これで全部やっつけたわね。
ウィルカ:やりましたね!
フランム:ふん、もう少し骨があると思ったが
ムーンストナ:メカラッタ
アリス:…………。

 勝利を喜ぶ四人。
 だが、アリスはやっぱり一人神妙な顔………

ウィルカ:? どうしたのアリス、なにか悩み?
フランム:……リーダーのお前がそんな顔だと士気にかかわるぞ。
ムーンストナ:メカラッタ
アリス:……………いや、あのさ。
    ちょっとみんなに尋ねたいんだけど………。






アリス:いや、でも……
フランム:ほら、そんなわけ解らないこと行ってないで先を急ぐぞ!
ウィルカ:先はまだまだ長いからね!
ムーンストナ:メカラッタ!
アリス:……………………。

 アリスは微妙に納得の行かないまま先に進む………



メルディアス教会
 
前の空き地



 良く知るものには『教会』と簡単に略される場所だが、聞いてもピンと来ない人にはこう説明しよう―――
 『瞬拳』エルザが居候している教会と。

 そんな普段はハーフダークエルフが居候している教会だが今日は少し様子が違った。
 具体的に言うと、

フランツ:んっふっふ!! ガキンチョどもめ、竜騎士秘伝の水鉄砲乱れ撃ち喰らうがよい!!
孤児A:ぎゃー!? 大人気なさ炸裂しすぎなんだけど!!!
孤児B:く、みんな囲んじまえ!! フォーメーションBだ!!
孤児C:やつの弱点は尻だ!! 尻の穴を狙え!!
フランツ:ぐぉ!? 水圧高めのウォシュレットが、私のデッドゾーンにぃぃぃぃ!?!?!?

 ハーフ高位エルフがそこで孤児達と水鉄砲で水遊びなんぞしつつ戯れていた。

フランツ:ふふ、さすが私の見込んだ子供達だ…… きてよかった…… 強い子に会えて………(ガクリ)

 尻の穴へクリティカルしたのかフランツは地面にばたりと倒れて死んだフリ。
 その周りで勝ち鬨をあげてるキャッキャと子供達。

ヒュース:うおーい、そろそろ飯だぞー。

 孤児達の長兄的存在であるヒュースが、遊んでた呼ぶと子供達は一斉に教会へと駆け出していく。

ヒュース:フランツおじさんもいつまでも倒れてないで飯食ってくか? 今日の野菜と肉はあんたの差し入れだしさ。

 死んだ振りしていたフランツがのそのそと立ち上がる。

フランツ:ん、いやいやお食事お招きありがたいけど、おっちゃんはこれから野暮用があるのよね〜 
ヒュース:へー デートか何かか?
フランツ:んっふっふ! なかなか鋭いね! 白い肌がチャーミングなカワイコちゃんを待たせててね〜。

 バサッとマントを翻して言うフランツ。だが水遊びしてたせいでビチョビチョだわ泥まみれだわでなんともカッコがつかない。

ヒュース:まぁ、なんか良くわからんけど頑張れよ〜 
      ってかおっさんさ、エル姉に用事が会ってここに来てるんじゃないのか?
フランツ:あー まぁ最初はそうだったね。軍のお偉いさんから
      『同じエルフ同士だから、なんとか軍に入ってくれるよう説得してくれまいか』って頼まれてね。

 グラッセンが侵攻してきた際に教会の子供達を守る為に一人で50人もの兵を倒した強者である『瞬拳』のエルザ。
 そんなわけで軍から何度も猛烈なアプローチが彼女にあったが、彼女は首を縦に振らなかった。
 しかし、どーしてもここ数年のいざこざで人手不足の軍は彼女の力が欲しかった。
 そこで説得役に白羽の矢が立ったのは、同じエルフ系であり、イケメンのフランツだった。

ヒュース:じゃあさ、今エル姉、迷宮行ってるし無駄じゃね?
フランツ:あー まぁ、最初は説得する気できたけどさー 途中からはお前らと遊ぶの目的だしねー

 説得役に選ばれたフランツだったが、最初から彼はあんまやる気がなく最初にエルザと5分ほど話して、説得は諦めた。
 それ以降は、子供達と延々と遊んでいるという関係がもう何ヶ月も過ぎていた。

フランツ:まー 別に下心が全く無いってワケでもないんさね。
ヒュース:む? 俺達と仲良くなって、エル姉を引き込もうっていうのか?
フランツ:いやいや〜 そんなめんどくさい事じゃないよね。
     引き込むのは『瞬拳』でなくキミだよ。

 ビシッとヒュースを指差すフランツ。

ヒュース:オレ? …………!! ど、奴隷商人に売るつもりか!?
フランツ:おいおい、私がそんなヤツに見えるかい?
ヒュース:見える!!
フランツ:マテヤ、コラ!! ……そうじゃなくてさー お前竜騎士になりたいんでしょう?
ヒュース:あ、うん。
フランツ:だからそれの青田刈り。お前才能あるしね。

 フランツの言葉にキョトンとするヒュース。

ヒュース:そ、そんな甘い言葉には騙されないぞ!? 
      そんなこといって奴隷商人に―――
フランツ:だーかーらー!! なんで私そんなに信用されてないのよ!?
ヒュース:エル姉が『あの貴族の目つきは変態の目つきだから気をつけろ』っていってたし!!
フランツ:オノレ!? あのハイレグ色黒エルフいつかボコす!!

 さすが『瞬拳』は人を見る目がアルナー

フランツ:……まぁ、なんだ。
     話し戻すとお前才能はあるけど、まだまだ騎士になるには未熟だから精進はすることさね。
     む、そろそろ私は時間だから行くな〜

 ひらひらっと手を振り教会から立ち去るフランツ。

ヒュース:……おっさん〜! 今度来たらさー
フランツ:うん?
ヒュース:少し特訓つけてくれよっ!
フランツ:あ〜、私の尻が持つくらいの特訓ならな〜

 未来の竜騎士候補の少年に、竜騎士ロートルはにやりと笑顔を向けて
 教会のそばの森に隠していた白い肌のカワイコちゃんの背にまたがり、『龍神の迷宮』へと飛んでいった



酒場『ドワーフの酒蔵亭』

小フリーデ:ふーむ、なかなか賑わっているのぉ。
       しかもいつの間にやら、ペも酒場の店主がさまになるジジイなったのじゃ。
ペズ:いつの間にかって、お前さんが来たの何十年前だ……

 酒場に似つかわしくない小さな少女が、カウンターで店主と昔馴染みのように喋っていた。

小フリーデ:ペ〜 フリーでは、あのあったかいミルクに蜂蜜入れたやつを欲するのじゃ〜
ペズ:昔と同じもん飲むのなぁ……
   というかフリーデ姉ちゃんが山から降りて来るなんてどうしたんだ?
小フリーデ:いやいや、ちょっと騒がしい迷宮の様子見と下界の様子を見に来た感じかのぉ―――
       そうそう、じーじからこれを預かってきたぞ。

 小フリーデが腰に下げたポーチから金貨の入った袋を取り出す。
 それは、この酒場が冒険者の集まる基地として機能してるために、国が出してる援助金だった。
 ……まぁ、ダレカさんとかダレカさんとかがしょっちゅう店を破壊しているために、全然額としては足りないのだが。
 ………そして額として足りないという申し訳なさと、破壊しているダレカさんに心当たりあるために、
 本来フランツがやる仕事だが、暇だった小フリーデにいかせたりした裏事情。

ペズ:ふーむ、しかしフリーデ姉ちゃんはワイズマン討伐に参加したりしないのかい?
小フリーデ:人間の生活に干渉しないのが我らの掟じゃよー

 猫舌なのかちびちびと、蜂蜜入りホットミルクを飲むフリーデ。
 そんな世間話をしていると、バタンと店の扉が叩きつけられるように開いた。

フェリル:…………

 そこにいたのはフリーデがいつか見た少女―――雰囲気は大分変わっているがそのハズだ。
 少しフリーデを睨みつけると、黙って酒場のすみの席についた。

ペズ:むぅ、フェリルのやつ随分様子が荒れちまってるが……… こりゃ迷宮で何かあったか?
小フリーデ:ふむ。そういえばあの娘、フェリルという名前じゃったのぉ。
ペズ:フリーデ姉ちゃん知り合いか?
小フリーデ:うむ、迷宮でちょいとすれ違ってのぉ……… 
       どれ、ちょいと話を聞いてくるかの。
ペズ:おい、姉ちゃん!? あーいう時のはそっとしておいた方が―――

 ペズが止めるのを無視してトコトコとフェリルのほうに向かう小フリーデ。

小フリーデ:やぁ。数日久しぶりじゃのぉ、お嬢さん。
フェリル:…………

 にぱ〜 っと満面の笑顔とともに話しかけるフリーデ。だがフェリルは目も向けず、何も言わない。

小フリーデ:ふーむ、だんまりかい? あんまりそーいうのはフリーデは関心せんのぉ。
       っというか先日迷宮であった時は、もっとおしゃべりだったように見えたんじゃが?
       ほら、あのポニテの神官戦士とエルフのまじゅちゅし、それにハーフエルフの盗賊とキャッキャ騒いでおったじゃろう?

 フェリルが少しピクリと反応する。

小フリーデ:(ふむ、あの者達とケンカでもしたのかのぉ)
       …………まぁ、何があったかはわからんが友と仲違いしてしまったら、許すことも必要だと思うぞ?
       相手だって悪気があったワケじゃないかもしれんしのぉ。
フェリル:………悪気が、無い?
小フリーデ:うむ、『罪を憎んで人を憎まず』とマーマもよく言ってたしのぉ。
       その時は仕方の無い事だったのかもしれな――――


 パシンっ


小フリーデ:―――ふえ?


 フェリルが小フリーデの頬を叩いた。
 叩かれた事が良く理解できないのか、フリーデの目が泳ぐ。

フェリル:『罪を憎んで人を憎まず』? その時は仕方の無いこと?
      はははは、素晴らしい考えだねっ。本当それが実行できたら素敵だろうね………


     ふざけんじゃないわよ!!?


 フェリルが小フリーデを突き飛ばす。
 フリーデリケだったらフェリルの力くらいではビクともしないが、小柄な小フリーデは勢いよくテーブルや椅子を巻き込んで倒れる。

小フリーデ:あ、う… す、少し落ちつけおぬし―――
フェリル:落ち着け? ははは、落ちつけねぇ? 
      だったらお婆ちゃんだって少しはふざけるのやめてよ!! 
      そんな小さい格好になって私騙して楽しい!? 
      そうねだよね! お婆ちゃん人を騙すの大好きだもんね!!
      はははははは!!!! そうだね、ホントあの時の修行の意味が本当に解ったよ!!
小フリーデ:う・・・ ふ、フリーデは騙してなんか―――
フェリル:嘘つきっ!!
小フリーデ:っ!!

 フェリルの恫喝に思わず涙ぐむフリーデ。
 その様子を見て、冒険者同士のケンカは基本的のほっておくペズも流石に止めに入る。

ペズ:おいおいフェリル、ちょっと冷静になれ。こいつは本当にあの婆さんじゃ―――
フェリル:私は冷静だよ!! 私が悪いわけじゃない!!

 ………最後の叫びの時は彼女も泣いていたように見えた。だがそれを確認する前に彼女は酒場からとび出て行ってしまった。

 その後ぽつねんと残されるフリーデ。

小フリーデ:ペー………
ペズ:………なんだ、フリーデ姉ちゃん。
小フリーデ:フリーデ……… わ、悪いことしてないと思ったんじゃが……… なのに、なのにぃ……

 ぐずぐずと泣きじゃくり始めるフリーデ。

ペズ:そうだなぁ。だがよ、フリーデ姉ちゃんはもう少し人間ってもんを観察するべきだったんだよ。
   いくら正しいこと言われてもな、人ってのはそれで立ち直ったりするとは限らんのだからよ。
小フリーデ:わかんないのじゃ!! そんなのぉ!!!


 小フリーデはわかんない、わかんないと言いながらペズに抱きつき、そのままわんわん泣いた。



『龍神の迷宮』

#32 タンパーティーロウ傭兵 L-重戦士、キルケー L-魔法戦士黒曜 N-忍者タン N-賢者

タン達は 龍神の迷宮 地下3階 を 無難 に進んでいる・・・


タン:ん、今日は探索ここまでにしようか?

 迷宮に何日もこもって探索するということは、迷宮の中で寝食をすごすということである。
 だが、知っての通り迷宮にはモンスターもならず者もいるため、うかうか全員で休むわけにはいかない。
 そこで、冒険者は交代制で見張り番を立てて寝ることが多い(カオスPTは発言力の弱いものが9割見張ってるとかもあるようだが)。

ロウ傭兵:ういっす、了解っす。そんじゃ見張り当番どうしましょうか?
黒曜:私は夜間の方が、真価を発揮するからあとでいいぞ。
ロウ傭兵:(……迷宮に夜も昼もないと思うんだがなー あとなんかエロイなー)
       オレも夜型なんで後番でいいっす。
キルケー:じゃあ、私とタンちゃんが先に見張りにつこうか?
タン:うん、わかった。

 いそいそと軽いキャンプの準備をし、横になるロウ傭兵と黒曜。
 タンとキルケーは四方が良く見える位置取りで、休んでる二人の近くに固まって座る。

キルケー:今日も探索順調だったね。
タン:うん。キルケーが頑張ってくれたから……

 実力で言えばタンがPTで一番だが、ならず者を一番倒しているのはキルケーであった。

キルケー:たまたまさ、私なんて素人に毛が生えた程度だよ。
タン:そんなこと、ないよ。それに………タンの好きな人に、どこか似てて、一緒だと安心するんだ。
キルケー:私がか?
タン:うん……… 外見とかじゃなくて、なんだろ…… 根っこの部分が似ているって言うのかな?

 タンはフェリルを思い出しながら言う。
 キルケーとフェリル。外見も性格も違う二人であったが、タンの言う根っこの部分
 『変装している貴族』『魔法戦士(未来形だが)』など、共通する部分も確かに多い。

キルケー:そうか…… その人は幸せだな。タンちゃんみたいに可愛い子に好かれていて。
タン:ん、そうかな…… でもね。
キルケー:うん?
タン:タンはキルケーや黒曜、それにえーと………傭兵さんも、一緒にいると、とても楽しい。
キルケー:………そっか。

 キルケーとタンがお互いの顔を見る、そして二人ともくすくすっと笑いあった。

キルケー:今度機会あったら、タンちゃんの好きな人紹介してくれるかな?
タン:うん。今、迷宮で頑張ってるから、もしかしたら、すぐ会えるかも。
キルケー:それは、楽しみだ。

 そんな話しをしながら二人は見張りを続けた………







 余談だが、
 すぐに寝付けず、二人の話しを聞いてた傭兵は

 『傭兵さんも、一緒にいると、とても楽しい。』

 の部分でしこたま気合が入りすぎて、翌日ならず者にすごい勢いで突撃し、ボッコボコにされる。




『龍神の迷宮』

#20 ディアーナパーティー(ディアーナ L-竜騎士、リムネシア L-重戦士、ラピス N-魔法戦士、ハルヒ L-魔法戦士

ディアーナ達は 龍神の迷宮 地下1階 を 堅実 に進んでいる・・・

ハルヒ:いやー でもさでもさ! 昨日は面白かったねっ!!
リムネシア:はは…… まぁ、ね。
ラピス:………
ディアーナ:………面白くないわよ。

 先日ディアーナが麻痺になったために一行は街に帰還した。
 そのとき迷宮の入り口で一人―――と一頭が彼女達を出迎えた。

ハルヒ:面白いよ〜! 
     白馬ならぬ白竜に乗った勇者様が、眠れる美女ならぬ麻痺れる美女をお出迎えだよ!!
     流石クルルミク!! 馬と竜じゃ迫力がダンチ!!
ディアーナ:いや、あれは私の竜だから……

 麻痺になった彼女のピンチを、愛竜が絆により感じ取り、
 竜舎にて暴れてるところをフランツが発見し、仕方ないので迷宮までつれてきたらしい。

ハルヒ:いやいや、でも惜しいよね! 
     確かに顔も良いし性格も明るい感じで、妙にあたしとも馬があったけどあったけど―――
リムネシア:(あの方と馬が合うのは如何なものでしょう……)
ラピス:(馬鹿同士の共鳴………)
ハルヒ:エルフって言うのがなぁ……… エルフはやっぱPTでは王子様役より、頭の切れる知恵者役だよね〜
     喋り方もなんかオカマチックで王子様的じゃなかったし!
リムネシア:(貴族の間でも―――社交界でも有名な妖怪ですし、知恵者とは逆な意味で)
ラピス:(そもそも王子はビルゴ様かハウリ様だ……)
ハルヒ:でもやっぱなぁ〜 最後ディアーナさんをお姫様抱っこして飛び去ったのはカッコよかったなぁ! 憧れるなぁ!

 ディアーナの周りをくるくる回りながら、昨日のことを思いだすハルヒ。
 お姫様のなのに、お姫様抱っこに憧れるのもどーしたもんかと思うが―――
 とうのディアーナはなんか恥ずかしいやらウザイやらで、少し赤くなりつつどーしたらいいもんかと思案中。

ハルヒ:でも、ここにも問題があったりもするのよねぇ〜…………
     ディアーナさん、お姫様役にしては年とり過ぎて―――ぷぎゃぁ!?

 どぐしゃぁ

 と言う音ともにディアーナがハルヒを潰した

リムネシア:でぃ、ディアーナ様!? 一応その方は『アレ』ですし、外交問題になりますよ!?
ラピス:………(こくり、と頷く)
ディアーナ:リムネシアさん、ラピスさん――――
       あなた達は、今何か見ましたか?
リムネシア:え、今……… ひっ!?
ラピス:………っ!

 にっこりと笑う、ディアーナ。
 背後には荒れ狂う竜のオーラが見える……………

リムネシア:わ、私は何も見てませんわ……
ラピス:同じく……
ディアーナ:そうですね。では、先に進みましょうか(にっこり)


一行は更に前進する事にした・・・





『龍神の迷宮』

#1 フリーデリケパーティー
(フリーデリケ L-神官戦士、アヤカ L-軽戦士、セリカ L-僧侶、ラフィニア L-盗賊)

フリーデリケ達は 龍神の迷宮 地下2階 を 堅実 に進んでいる・・・

アヤカ:う〜 ………お腹減った〜。お婆ちゃん何か頂戴?
フリーデリケ:はいはい〜 そろそろ毎度お馴染みおやつターイムですっ!

 毎度お馴染み、ごっつい肩アーマーからござとおやつを取り出すフリーデリケ。

ラフィニア:ねー、お婆ちゃんお婆ちゃん
フリーデリケ:うん? あ、今日のはドーナッツやらバームクーヘンやらワッフルなどばかりで、
        『美味しいんだけど、太っちゃうから少し控えようかな?』ってなことを考えてたラフィちゃんのことも
        思って、カロリー低めの東方お菓子! 略して和菓子!
ラフィニア:そ、そんなこと考えてないよ私!?
フリーデリケ:うんうん、やっぱ太っちゃうと彼氏に嫌われないかとか考えるですよねー
        竜騎士ってクルルミクではモテモテさんですし〜
ラフィニア:にゃー!? な、なんで、そそそそんな彼のことまで!?
フリーデリケ:あはははは。
        お婆ちゃんに全てお見通しって事ですよ?
セリカ:(実年齢だけでなく、耳年増なんですね………)
フリーデリケ:ちなみに、セリカちゃんは特定の相手との交渉がなかった為に、処女〜
セリカ:ごほっ!?

 急に矛先が自分にふられ、食べていた和菓子を吹きそうになるセリカ。

セリカ:な、なんで急に私に!?
フリーデリケ:クックック、なんかセリカちゃん失礼なこと考えてた気がしたからです〜♪
        そーいえば。ラフィちゃんさっきなに聞こうとしたのですか?
ラフィニア:あ、うん。私達結構早く出発したPTだけど、迷宮攻略遅れてないかなって……
      私達のPT確かにキャティさん―――とかのことで色々あったけど、
      他のPT4階とか5階まで進んでるみたいだし、おやつ食べてる暇は………
フリーデリケ:………キャティちゃんのことは仕方ないことだよ。
        私的には、ばれない嘘なら見逃し続けるけど―――バレちゃルールだしね、冒険者の。
        ………色々それで酷いことになってるPTあるのに、私達だけそれを無視するわけにはいかないし。
        それに、今4階は地獄だから遅いぐらいがいいのです。

 ………

ラフィニア:………地獄?
セリカ:というか、なんでそんな情報を……
フリーデリケ:さぁてね…… お婆ちゃんにわからない事はないからね。

 にやりと笑うフリーデリケ。

セリカ:………ではフリーデリケさん、一つ質問いいですか?
フリーデリケ:ふふん! なんでもばっちこーい!!
セリカ:和菓子の3個入り、5個入り、7個入りを、全部合わせると24箱分あります。
     お菓子は全部で112個入っていました。すべての7個入りから2個ずつ取り出すと、ちょうど100個になりました。
     和菓子の箱はそれぞれ何個ありますか?
フリーデリケ:ウェイ!? え、えーと……… う、う〜んと………

 指を追って必死に計算し始めるフリーデ、
 次第にガタガタと震え始め、
 頭から湯気が出て、

フリーデリケ:ゲフゥッ!!

 を吹いて倒れた。

ラフィニア:答えは3個入り10箱、5個入り8箱、7個入り6箱だよ。
       2階の小人さんの問題は、2回とも解ったのになんで解けないかなぁ………
フリーデリケ:え、エルフの世界では10の次の数は一杯ナンデスヨ!!
セリカ:全世界のエルフに失礼じゃないかなぁ…………
フリーデリケ:っていうか、さっきから黙って黙々と和菓子食べてるアヤカさんはわかったんディスカ!?
アヤカ:ん?

 立場が悪くなったので、話をアヤカにふる。
 そのアヤカはすでに和菓子を食べ終えており、もう少し食べたいなー見たいな顔をしていた。

アヤカ:あー 解ってましたよ。
フリーデリケ:マジディスカ!?
アヤカ:112個全部食べてしまえば全部の箱とも0です♪
フリーデリケ:その手があったか!!?
セリカ&ラフィニア:無いよ!?
アヤカ:といいますかお婆ちゃん。もうちょっとおやつ欲しいかな〜 って思ったり。
フリーデリケ:ん〜 もう少しですか?

 一応荷物持ち兼、食料係のフリーデリケとしては、自給自足なんて望めない迷宮に長くいるわけだから
 食料は少しずつ消費したいのだが………

フリーデリケ:ん〜………………
        アヤカちゃんのオパーイ触ってもいいなら、1個だ―――ひでぶっ!?

 セリカとラフィニアが同時にでかエルフの後頭部をひっぱたく。

セリカ:な、なにいってるんですか!? 不潔です!!
ラフィニア:そ、そうだよお婆ちゃん!?
フリーデリケ:だ、だってアヤカちゃんパイオツカイデーでミーモーしたくなったんですもの!?
        これは不可抗力としかいえないデスヨ!?
        それに自分に足りないものを欲するのは、自然なことデス!! ラフィちゃんだって本当は触りた――
ラフィニア:んなことないし!!
フリーデリケ:だって! だってー! 
        ワタシ貧乳もロリそりゃ大好きですけど、マシュマロの国にだって行きたいんディス!!
セリカ:そんな国ありませんっ!! ………アヤカさんも何か言ってあげてください!

 またしても話を振られたアヤカは、神妙な顔で悩んでいた。

アヤカ:………1個じゃなくて2個なら―――
セリカ&ラフィニア:うぉい!!!?





 ………まぁ、そんな調子でのんびりと攻略しているフリーデリケPTであった。








 ¥6050万

 アレだけして、そんな値段しかつかなかったかと思うと吐きそうになった。
「(いやー……… 一番高値になろうと頑張ってアピールしたんすけどねー)」

「キャ、キャティは… 卑しい卑しい玩具ですぅ。もっと、もっと、下さはひぃ…」


 あー、やっぱりもっと卑猥な言葉を連呼したりする方がそそったのかな?
 でも、ついこの間まで魔法学校の現役生徒で処女だった自分が性奴隷のテクニックだなんて―――
「うっ… うう………  グス…」
 なんで、関係ない他人を助けようとしたら自分も捕まって、性奴隷にまで堕とされてんだろう………
 しかも助けようとした女は逃げたっていうじゃないか。

「やー、大変だったねー? クスクス 」

 ………4人でPTしてた時は救出が上手くいったんだ。
 そしたら、なんか救出した3人にスゴイ感謝されて……… 気分良くって。
 一人でも一回目は上手くいったんだ…… 助けられなかったけど、ならず者の数減らして捕まっても一人で地図パクって逃げてやった………
 次も上手くいくと思った……… もしかしたら一人でも―――PT組んでるみたいに上手くいくと………

「ちょっ、離してよっ! 絶ーーーっっ対、後悔するんだからっ!!!」

「ははっ、後悔するのがアタシだったなんてねぇ……… あはは……」
 一人で笑っていると部屋の扉が開いた。
 ちなみにこの部屋は私専用の一人部屋。
 むき出しの石畳に、数々の調教道具のインテリア。窓も無い地下の奴隷部屋らしい。
 まぁー他にも同じような部屋がなん部屋かあると、私を買った貴族がブヒブヒ言ってたけど、豚の言葉でよくわからなかった。
「うぷぷぷぷ!! キャティちゃぁん、キャティちゃぁぁん!! 今日も可愛いね、可愛いネェ〜!! 
 むほぉ! やっぱ高い金パパに頼んで出してもらったかいがあったおぉぉ〜!!」
 豚が私を見て、ベロベロと舌なめずりをしている。
 マヂ、キモイんすけど。
「あはぁ☆ ご主人様ぁ〜 キャティ一人じゃ淋しくて死んじゃいそうでしたよ〜?
 キャティ、ご主人様と一緒に暖かい部屋で一緒にいたいデス〜♪」
 欺瞞、欺瞞欺瞞。。。。。。
 私の得意技じゃないか。
「うぷぷぷぷっ! キャティちゃんは寂しがり屋だねぇ〜 でもゴメンねぇぇ〜 
 パパが奴隷なんか、日のあたる場所に置いたら、我が家の家風が乱れるっていうんだよぉぉ〜
 あと他に、やっぱ臭いからダメだってぇ〜〜」
 言いながらベロベロ顔を舐めはじめる豚。豚に家風なんてあるのか? ってか臭いのはお前の臭いだ。
「うぷぅ! でも寂しがり屋のキャティちゃんのために、お友達を今日は連れてきたんだぁぁ!
 入れよぉっ、入ってきてキャティちゃんと遊んであげなよぉぉ」
「え…… 友達?」
 扉の方を見るとなにやら緑色でやたらデカイ生き物が近づいてくる……
 っ、あれは………
「(と、トロール!?)」
 ヤバイ!? この豚やっぱ豚並の知能しかない!!!
「あ、あの! ご主人様!! やっぱ私ご主人様と遊びたいなーって! ご主人様が好き好き大好きっですから!!」
「うぷぅ!! うぶぶぶぶぶ!!! ぼ、ボクもキャティちゃんが今までの奴隷の中で一番好きだおっ!!
 だからキャティちゃんは、このパパに買ってもらった『性欲増強特別仕様トロール』を使って遊んであげるんだおぉっ!
 こ、これ無理に薬使って性欲高めてるせいで3日間しか生きられないけど、その分3日間止まらず犯し続けるおっ!!」
「(じょ、冗談じゃな―――!?)わ、私同じ3日間犯されるならご主人様に―――」
3日間も奴隷と遊ぶほどボク暇じゃないお
 れっつごートロール」


 「グゥボグュォォっォォッ!!」


 そんな獣の雄叫びとともにトロールがのしかかって―――!
「い、いやっ―――― ギぃっ!?」
 重い
 でかい
 …………婆さんのことトロールだのなんだの言ってたけど本物はのしかかるだけでもこんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ――――
「うほぉっ!! やっぱトロールは巨大なもの持ってるおっ!! ボクちょっと自信なくしちゃうかもぉ〜」
 ウゼェよ、皮被り!!!!
 って、マヂでやっぱ射れるんすか!? すねくらいの太さがあるんすけd―――――
うあぁぁぁぁぁぁぁっーーーーーーーーーー!!!!!!!?










 ………………………………………………………………………………………………………………










 3日後。

「(ぁ……)」
 なんとか…… 生きて……
 トロールは……… あははは、死んでら。
 床一面に精液が広がって………… 私も体中ドロドロ、ガビガビで………
「あぁ、お腹…… 空いたなぁ」
 そーいや、
 ドーナッツ全部食べなかったな、
 食べておけばよかっ―――


















 ………………………………………………………………………………………………………………
















 ガチャリと扉の開く音で目が覚めた。
 扉の影からひょこりと豚が顔を出す―――帰ってきたのか。

 ボチャン。

 豚の頭が精液プールの床に落ちる―――おいおい豚さん、首転げ落ちましたよ?
「…………へっ?」
「う…… すんごい臭いね、ここ―――ってお嬢さん買われた元冒険者?」
 婆さん?
 いや、エルフだが男だし違うなぁ―――でもどこと無く雰囲気の似たちょっと美形がそこにいた。
「そうっスねー…… 一応気持ちはまだ冒険者のきもちっスよー」
「んっふっふ〜? まぁ気持ちはあっても実力は地に落ちてるだろうね―――
 うお〜い、カタリナなんか服もってこーい」
 エルフの(よく見るとハーフか?)男がそう呼ぶと、何処かで見たような女が服とかタオルとかお湯とか持ってくる。
「あんたは、こんなドロドロのまま服着せるつもりだったのかしら?」
「んっふっふ〜 流石気が利くね〜 婆さんにむにゃむにゃされた経験はちゃんと生かされてるね〜」
「やめて!? そ、その記憶は思い出したくないっ………!!!!」
 急にカタリナと呼ばれた女が体を小刻みに震えだす。嫌なトラウマでもつついた感じ?








 ………………………………………………………………………………………………………………






 んで体を綺麗にして服を着てひとまず豚の屋敷の大広間に場所を移す。
 そこでは豚のパパらしき生き物が、腹をぶち破られて死んでいた。
「いやはやいやは、酷いことするっスねー さっきも生首持ち歩いてるし」
「ん〜、アレはこの屋敷の使用人に『この屋敷の主人は、王国に対し不利益な行為をしたから処刑したよ♪』って周ってたんだよ〜」
「不利益なこと?」
「奴隷商人からアホ貴族が奴隷を買う<奴隷商人にギルドが奴隷を売る<ギルドが儲かる―――ね?」
「………なーんだ、私を助けに来たわけじゃなかったんだ」
「んっふっふ! 私も貴族だよ? たとえそこに身内がいるとしても、王国に被害が無いなら助けんさね」
 あっけらかんと酷いことを言うハーフエルフ貴族。
「まぁ、というわけでここのアホ貴族は処刑したんで、性奴隷やるなら他のところ行きなよね〜」
「………別に性奴隷やら無くてもいいじゃないっスか?」
 そう言うと貴族が意地悪く笑いながら言った。

「んっふっふ! もはや、君に性奴隷以外に出来ることがあるのかしらね?」

 ……………っ
 ……そうかもしれない、私は激しい凌辱に耐え切れず、冒険者としての全ての気概を失った。
 …そして女である己はしょせん男達の性奴隷に過ぎないことを悟り、虚ろな目で男達にそう宣言してしまった。

「(だけど、)」

 私は………

「(でもやっぱり、)」

 私は…




 少しの逡巡の後、私はこのムカツク貴族にこう言ってやった。

「私は―――――






『龍神の迷Q』

#1666 アリスパーティーアリス L-軽戦士、ムーンストナ M-魔法戦士、ウィルカ S-賢者フランム SS-魔術師

アリス達は 龍神の迷宮 地下10階 を 大胆 に進んでいる・・・

アリス:ついに……… ここまできたね!
ウィルカ:はい! ここまで色んなことがあったね………
フランム:うむ、にっくきギルドボを倒して『ハイウェイマンズギルド』を滅ぼしたと思ったら、
      新たに『ゲル=ハイウェイマンズギルド』が生まれたり。
ムーンストナ:メカラッタ
アリス:うん、途中でえらく強いモンスターが迷宮外に出て王宮を飲み込んじゃったりもしたね。
ウィルカ:えぇ……… まるで銀色の華のようなモンスターでした。
フランム:うむ。クラゲとか空飛ぶ円盤にも似ていたな。
      だけどセニティ王女の助けで、一人王宮から脱出したハウリ王子が
      その悲しみで竜騎士に開眼してやっつけたんだったな。
ムーンストナ:メカラッタ
アリス:うん、さらにそれを好機とみたグラッセンが秘密兵器を出して強襲してきて……
ウィルカ:はい、全身が水晶で出来た巨大なゴーレム……… 確か名前は『グリーン=ヘリオス』でしたね。
フランム:だけど私達冒険者全員の力を結集させ、倒したんだったな。
ムーンストナ:メカラッタ
アリス:そうだね。 ………実はあの時までムーンストナのことメカだのロボだのそんな風に思ってたんだ。
ムーンストナ:メカラッタ!
アリス:あはは、ゴメンゴメン! 
    でも気持ちを込めて、ムーンストナのペダルを3人で踏み込み必殺のムーンストナーサンシャインを撃った時に
    やっぱり大事な仲間だって分かったんだ。
ムーンストナ:………メカラッタ
ウィルカ:うん、そうだね。ムーンストナさんの言うとうりだよ
フランム:あぁ、ムーンストナに言われるまでも無いな。
      …………リーダー、この扉をくぐればワイズマンがいるぞ。

 彼女達はいつの間にか『ワイズマンの部屋〜よからぬ儀式中につきノックしてね♪〜』とかかれたドアの前に来ていた。

アリス:よし、みんな! 最後の戦いよ、気合入れていくわよ〜!
ウィルカ&フランム&ムーンストナ&ムーンストナβ:おー!!

 礼儀正しく3回ノックし(精鋭「黒騎士団」は礼儀作法についてもしっかりしてるのだ!!)、
 中から『どーぞ』という声がしたので『失礼します』といって入る。

ワイズマン:ふ………

 思わずそのワイズマンの迫力に『ゴクリ』と息を呑む。
 咽喉もカラカラだ―――
 咽喉の渇きを癒すため、ムーンストナの頭の鉄板を力ずくではがし中に入ってる牛乳を飲む。

アリス:あれ?
ウィルカ:どうしたの、アリスちゃん?
フランム:なにか可笑しい事でもあったか?
メカラッタ:ムーンストナ?
ワイズマン:ふふふふふ〜?
アリス:なんだかちょっと変なのよ………
    なんか
    なんか
    なんか、いつもより牛乳が生臭くてドロドロしてて―――あぁぁぁっ、嫌ああぁぁ―――
    なんでだろ?
フランム:ふん、リーダーとあろうものが…… 緊張してるのか? 
      飲み方が違うじゃないか。牛乳の飲み方はおいてめぇちゃんとくちでうけとめたらのみこめっていってるだろへへへへこっちにけつあなむけやがれうほおれにほんざしとかあこがれてたんだけど
ウィルカ:そうですよ、こうやって牛乳は全身でかぶったり穴という穴に注ぎ込んでやるぜぐへへへっていうかこいつまじであのくろきしありすかよぐでぐでのざーめんまみれじゃねえかおいおいけつあなににほんざしかよひろがっちまってつかいものになれねーぞなーにどうせちんこいれるあないがいにしようみちないってこいつあああああありすたんかわいいよありすたんおいおいこんなくぜえめすぶたすきなのかよげはげはげは
む〜んすとな:ざざんざんざざんざざんざんざざんざざんざんざざん
ワイズマン:ふふふふふ

 よし、なんかやっぱりなんかちがなんかちがうなんかちがういやだたすけてだけど、牛乳も穴という穴で飲んだし浴びたしいよいよ決戦だ!!

アリス:いくわよ! ワイズマン!
ワイズマン:あら、アリスお帰りなさい。今から御飯だから手を洗ってきなさい。
アリス:あ、お母さん。うん、分かった〜

 アリスは冒険中に拾ったムーンストナを戸棚にしまうと、家の外にある井戸に手を洗いに行った。
 井戸の水は生温くべとべとで臭かったがやっぱり食事の前には手を洗わないと。
 家に戻るとちゃっかりウィルカとフランムとフィルが食卓についてる―――

アリス:ってフィル!? なに人の家に上がりこんで、御飯まで食べようとしてるのよ!! フィルぅ……たすけ…てえぇ
フィル:なんでって…… お前が呼んだんじゃないか。
アリス:ちょ、私があんたなんか呼ぶわけたすけ…てえぇないじゃないのよ!!
フィル:………そんなこというなよ、俺呼ばれたのスッゲー嬉しかったんだぜ?
ワイズマン:あらあら? アリスも隅に置けないわねぇ、いつの間にかこんな彼氏つくってるなんて。
アリス:お、お母様!? ち、ちがうわよこれは彼氏なんかじゃたすけ…ないんだから!
フィル:……コレ呼ばわりかよ。
    そうかよ、もうお前なんか助けねーよ。
アリス:……………え? ちょ、ちょっとまって
フィル:バイバイ、アリス。モウ二度ト会ウコトナンカ無イヨ
アリス:い、嫌っ!! 待って!! 待ってよフィル!! 私、私もあなたのことが―――





『龍神の迷宮』

監禁玄室4F-1


「―――好きなのぉ」
 びゅるっ
 彼女の顔にならず者の精液がかかる。
「おいおい、このスケついにザーメン浴びて『好きなのぉ』とか言いやがったぜ!」
 有頂天になる顔射したならず者。
 それを尻穴にハメながら見ていたならず者が少し心配そうに言う。
「………おいおいこいつ大丈夫か? さっきの、量が多かったんじゃねーの? なんか目がイッちゃってるぜ?」
 ならず者的に商品価値が心配。
「しょーがねーだろ、なんかこいつ暴れんだもん。量ぐらい余裕で間違えるさ」
「余裕かよ?」
「余裕で」
「わざとか?」
「じつはなー なんかおもれージャン? 前の穴も後ろの穴もヨユーで2本ずつさせるし。ゲラゲラ。」
「ゲラゲラ、たしかにオモレー オッパイいくら握りつぶしてもいたがらねー ゲラゲラ。」
「ゲラゲラ」
「ゲラゲラ」
「ゲラゲラ」
「ゲラゲラ」
「ゲラゲラ」
「ゲラゲラ」
「ゲラゲラ」
「ゲラゲラ」







* アリス は と っ く に ギ ル ド の 性 奴 リ ス ト に 記 載 さ れ て る *





『あの迷宮では絶対は無いのです、

 いくら強い4人組でも罠にかかって、下の階に落ち暗闇に放り出されることもあるし、
 
 たった1人でも地図を拾い、どんどん地下に進んでいく事だってあるのです。

ただ、迷宮に行く前に一つ約束してください。

愛着がある人を見送らないでください。

陵辱されたくないのに参加はしないでください。

誰もが迷宮をクリア出来る訳では無いのですから。

…………まぁ、もう手遅れかもしれないけど。



何百年前
 どこか


 少女が一人悲しくて泣いていた。

 誰も助けてくれない、誰も助けてくれない。

 誰も助けにこれない、誰も助けにこれない。

 誰も助けにこない、誰も助けにこない。

 だってさぁ、

 だってよ、フリーデリケ。お前にそんな価値ねーじゃんか?


 
 特別に醜くて、性悪で、不潔な奴が一ついる!
 こやつ、大してあばれもしない、大きな叫びもたてないが、そのくせ平気で世界をほろぼし
 欠伸しながら世界を鵜呑みにするくらい平気の平左。
 こやつ、名は「  」!



おわってる