「あふ、あ、あっ、あ……」
 心地良いリズムと共に、切なげな嬌声が唇を割る。見知らぬ男と私の腰がぶつかり合っ
て激しい音が上がり、脂肪のついた乳房が上下に揺れる。背後から貫かれている私は男の
動きに合わせて腰を振り、より大きな快感を求めようとする。結合部から私の蜜と無数の
男の欲望が掻き出され、内股を伝っていく。私の膣内は溶岩が煮え繰り返るように熱く蠢
いていた。
 背中から男が覆い被さり、精液の滴り落ちた冷たい石畳の床に身体を押し付けられる。
男は私の腰を抱え直し、だらしなく開いたままの肛門に親指を捻じ込んだ。腰とは違うテ
ンポで指を挿しては抜き、私の反応を愉しむ。快楽で固くなった乳首が床に擦れ、痛みが
走る。しかし、今の私は一種の快楽としてそれも受け止めていた。
 気付くと、目の前で別の男が胡座をかいていた。股間に聳え立つ物は亀頭の先端から透
明な汁を零していて、私の愛撫を待ち構えている。何のためらいもなく私は男の睾丸に舌
を這わせ、片方の手で竿を掴み、余った手で袋を揉みしだき始める。男の肉棒は更に熱を
帯び、一層固くなった。私の思い通りの反応を見せる男を眺めているだけで、笑みが零れ
そうになる。
「全く、あのグリューネと並び称された女騎士様が、ただの一兵卒でしかない俺のモノを
美味そうに舐めているなんてな……」
 男の言葉嬲りも、今では返って心地良かった。どうせ墜ちるのなら、二度と這い上がれ
ないくらいまで墜ちてしまった方がいい。そして私をもっと汚してほしい。今更、引き返
す事など出来はしない。
 もう、私は『雌犬』なのだから。

 人間とは、脆い生物だ。
 崩れ出した部分を集中的に攻めれば、瞬く間に床に這いつくばる。戦争にとっても同じ
で、現に私はそうして数え切れない勝利を収めてきた。
 だからこそ、私は自分の中の一番弱い部分を突かれた時、地に墜ちるのは目に見えてい
た。人間の精神力など形のない物で、すぐに変貌する。心の拠り所を全て潰されれば、後
は落下するのみだ。
 友に裏切られたやり切れなさが、私を『女』に変えた。

 衣服は全て剥がれ、身に付けているものは左目の眼帯のみ。私の左目はグリューネと剣
を交えた時に損傷し、眼窩は空洞となっている。一度中に射精しようと眼帯を外した気狂
いがいたが、私の素顔を見た途端情けない悲鳴を上げた。気分が冷めるのだろう。他の男
達も敢えて眼帯の話題に触れないように私を言葉で嬲って来る。
 私を後ろ手できつく縛っていた縄は、肉棒を指で擦らせようと考えた男の手によって解
かれていた。私は自由を取り戻したが、逃げ出す素振りは一つも見せていない。数日間男
達に休む間も無く輪姦され続け、全身を疲労と倦怠感が包んでいたが、この場にいる全員
を打ちのめす程度の体力は残っていた。だが、計画もなくその場凌ぎで脱走を試みた所で、
体力はすぐさま底を着き、また捕らえられて牢へ逆戻りするだけなのは目に見えている。
 助けを期待している訳ではなかった。圧倒的有利だと思われた我等の軍がこうも簡単に
壊滅するのだから、向こうの軍には相当戦争慣れした軍師がいるに違いない。残る皇女軍
が敗北し、捕らえられ、私や部下達と同じ運命を辿るのは時間の問題だろう。
 だが、皇女の安否など既にどうでもよかった。性に惚け、溺れる。それが今の私の全て。
「おら、しっかり受け止めろよ!」
 私が口で奉仕していた男が、顔を引き攣らせて肉棒を引き抜く。小さくコルク栓を抜く
ような音が上がり、次の瞬間赤黒い男の先端から真っ白な精液が水鉄砲のように噴射した。
「は……あ」
 暴れ回る肉棒は私の顔に精液を撒き散らす。素肌の上に、男を欲情させる化粧を施され
ている気がした。射精が終わると、横で待ち構えていた男が私の髪を掴んで顔を股座に向
ける。視界にどす黒い肉棒が映ったかと思うと、私の唇目掛け熱い精が吐き出された。私
は力の入らない顎を懸命に動かし、盛りのついた犬のように紅い舌を出す。ざらついた表
面で精液が弾け、苦味が口内に広がる。大半は舌を伝い、そのまま床に滴り落ちていく。
私は口を閉じて自分の歯茎の裏を舐め回し、喉を鳴らして僅かに残った子種を飲み干した。
「んふっ、はあ……っ」
 快楽の炎は鎮まる所か、胸の内でますます膨れ上がる。

 最愛の娘グリューネの前でさえ、私は男相手に淫らに腰を振り、脈打つ肉棒を胎内に咥
え込んだ。裸にされ、数人の男に汚されている彼女を目にした時には、ひた隠しにしてい
た友を裏切った後悔と絶望の念が膨れ上がり、舌を噛み切りたくなった。
 友が私を信頼し、預けてくれた娘。この様な無体に遭わせる事無く、グリューネの成長
を見守る事。それが私に与えられた役目だったはずなのに。
「ん……うぐ、はあっ……あ……」
 まだ薄毛しか生えていないグリューネの股間に、屹立した男の禍禍しい逸物が突き立て
られている。未発達なその身体は胸も膨らみ始めた所で、乳房には痛々しい歯型がいくつ
か浮かび上がっていた。男を受け入れるには早過ぎる身体。普段ならこの年齢の少女なら、
捕らえる前に殺されている筈だが、部隊長のリーダーである事、そして騎士団長であった
母親の娘という理由で、見せしめも兼ねて凌辱を行っているのだろう。共和国の奴等のど
こまでも濁り切った考えには反吐が出る。
 もし、他の子供達と同じ生活を過ごさせる事ができたなら。同年代の子供達と夕暮れま
で遊び、恋をし、好きな人と手を繋ぐ日々。今となっては叶わない思いに、目頭が熱くな
る。それを望んだのはグリューネ自身だとは言え、本心では母親と同じ道を歩ませたくな
かった。
「嫌……もう、助け……」
 精液まみれの私の顔を見て、グリューネは弱々しい声と共に顔を背ける。湧き上がる罪
悪感を振り払うように、私は責め続ける男に対し腰を擦り付けていた。友を裏切り、雌犬
に墜ちた私は今更彼女の母親気取りなど出来る訳がない。光のない潤んだ目がどこまでも
私を追って来る。育ての親にすがるような目線から、私は自分の中にある『女』の部分へ
と逃げる。
「や、ああっ!ああーっ!!」
 その視線も、グリューネの悲鳴と共に途切れた。二回りも身体付きの違う屈強な男達に
挟み込まれ、3つの穴を塞がれてしまう。男達の隙間から突き出たその足は爪先が伸び、
襲い来る快楽と苦痛に必死に抵抗している様に見えた。
 腹を痛めて産んだ子供ではないとは言え、私の最愛の娘である事には変わりはない。彼
女の前で私は教師であり姉であり、そして母だった。グリューネがくぐもった声を上げる
度、胸が掻き毟られる思いと共に叫びたくなる。だが、私は自分の気持ちに蓋をして、母
親より『女』である事を選んだ。肉壁一枚で熱く滾る肉棒を擦れ合わせ、眼前に差し出さ
れる男根の鈴口に唇を当て、滲み出る汁を味わう。
「んむっ、ふっ、むうっ……」
 あいつが全て悪いのだ、あいつが――
 亡き親友に罪を全て擦り付け、私は腰を振る。グリューネの冷ややかなその目がいつま
でも纏わり付いて、離れない。胸に刺さった棘を抱えたまま、私は男の精を浴び、すがる
ような嬌声を上げた。

 これだけは解って欲しい。
 私は耐えようとしたのだ。凌辱が始まってから今まで、私は一度も許しを乞う言葉は口
にしていない。どれだけ汚されようと、下賎な言葉を投げかけられようと、必死で歯を食
い縛っていた。快楽の狂気に身を任せる事なく、最期まで『騎士』として誇り高く死のう。
そう決意し、苦痛で薄れる意識をどこまでも保ち続けた。親友はそうして立派に、最期を
迎えたのだと思うから。
 だが、その想いは容易く裏切られた。

「まるで雌犬だな、へへっ……」
 四つん這いにされ、同時に3人の男の相手をさせられている私の艶かしい姿を眺めなが
ら、取り囲む男の一人が舌舐め刷りした。剥き出しになった私の両胸を下の男が鷲掴みに
し、痣が残るほど強く揉みしだいている。鎧はとうの昔に全て剥ぎ取られ、上着を乳房の
上までたくし上げられていた。
「いい加減腰を動かせよ、オラ」
 苦痛に耐えるだけの私に腹が立ってきたのか、別の男が髪を掴んで私の腰に足を乗せ、
乱暴に揺すってくる。尻を犯す男の動きと相成って、直腸を通じて襲いかかる快感に意識
を持っていかれそうになる。何とか意識を呼び戻そうと身を捩り、逆手で縛られた縄が服
の上から食い込ませる。負けそうになる度に痛みで思考を紛らわせていたせいか、既に手
首の感覚は失せていた。
 私の膣と菊座に肉棒を埋め込んだ二人の男は、中々果てようとしない。襲い来る快楽に
堪えようと身悶えする私の姿を愉しみながら、緩急をつけて腰を振る。軽い絶頂に何度も
達し、締め付けても肉棒は私の中で暴れ回るばかりだ。
「んあっ」
 口を犯していた男が男根を引き抜き、私の横髪に巻き付けた。すぐさま爆発した欲望は
潤いのある髪を粘着かせる。隣で自慰をしていた別の男が、私の背中に精を放つ。掠れた
私の悲鳴が、肉のぶつかり合う音にかき消される。熱の篭った吐息は火照る身体と同じ熱
で、私と男達の汗の匂いが充満する空気に溶け込む。床にはたっぷりと、肌が重なり合っ
て生まれた体液が染み込んでいた。
「ほら、もっとグリューネみたく腰振ってみろ」
 髪を掴んだ男が、私の耳元で囁きかけて来る。最初、どっちの事を言っているのか解ら
なかった。他の男達も、次々に囃し立てる。
「そうそう、あの騎士団長様はあっさり誇りを捨てて『女』に走ったってのによ」
「自分から俺達のモノを咥えて、美味そうにスペルマ飲み干してたんだぜ」
「ミルク吸われて、髪の毛振り乱してよがり狂ってたもんな」
「ありゃあその辺の娼婦とは比べモンにならねえほど上玉だったなあ」
「何……」
 友を侮蔑されて、私の中で怒りの炎が燃え上がる。殺意の篭った目で眼前の男を睨み返
すと、口笛を吹いて軽くかわした。
「だから言ってんだろ?アンタの親友は『雌豚』だったっつってんだよ」
「あぐっ……」
 横から腰を強く蹴られて、悲鳴が漏れた。舌を出して荒い呼吸を繰り返す私の口に、別
の男が興奮して反り返った男根を捻じ込む。髪の毛を掴まれた手と腰に乗せた足で男が乱
暴に私の身体を揺さぶってくる。前後を犯す男達も若干動きを早め、私に快楽を与える。
結合部から何度も何度も、卑猥な音が立つ。滑りの良くなった2本の熱い棒は一寸の隙間
もなく、私の肉と擦れ合う。下腹部から伝わる快感が背筋を駆け巡り、脳髄を犯す。あま
りに異常な性交に、私の身体は反応していた。
 口を塞がれ何も言い返せない私に、先ほど髪の毛に精を放った男は輪姦の場から少し離
れた所で胡座をかき、必死に抵抗する私を眺めて言った。
「アンタもグラッセン戦役の惨状を知ってるのなら、とっくに知ってんだろ?グリューネ
が処刑されそうになった他の7人の女兵士を庇って、男に奉仕したのをな」
 確証はないが、その様な噂を耳にしたのは確かだ。だが、あの頃の情報は歴史書に残さ
れるほど重要な事象以外、大抵が民衆や兵士達の間を伝わる間に中身を捻じ曲げられた噂
話でしかなかった。男の話も、その時に伝わったしがない風の噂の一つだった。女を侮辱
した、馬鹿げた話でしかなかったはずだ。
 犬の様な屈辱的な恰好で犯され続ける私に、男は尚も続ける。
「それまではずっと今のアンタみたいに声も上げずに我慢してたさ。どれだけ犯されても、
騎士でいるつもりだったんだろうよ。でもどうだい。凌辱が終わって縄を解いてやったら、
掌を返したように腰を振って男を求めて来やがる。部下達のために騎士の誇りを捨てて身
を投げ出したとか言われてたが、ありゃどう見ても好き者だったな」
「ふぐ、ぐ……!」
 男の勝手な言い草に我慢し切れなくなって言い返そうと唇を動かすが、口に突き込まれ
た肉棒を刺激するだけに終わる。
「ま、死ぬまで抵抗を続けるつもりならそれでいいぜ。そうした所で、親友は天国で今の
アンタを見て笑ってるだろうがよ」
 話が終わると、私を犯していた4人が責めを止めた。3本の竿を咥え込んだまま、疲れ
果てた私はうなだれる。蜜壷と菊座の一番奥深くまで突き刺さっている肉棒は固さと熱を
維持し、萎む気配を見せない。しばしの休息の間に、私の頭は僅かだが理性を取り戻した。
 おそらく男達は、私が腰を振り始めるのを望んでいるのだろう。つまらない義を立てて
いるより、快楽の虜になった方が楽だと囁きかけているのだ。
 もし、男の言葉が真実だとするなら、友を信じて踏み止まっている私の意味がなくなる。
あいつが最期まで騎士として死んだと信じているから、私も負けずに耐える事ができる。
 だが、私は決して腰を振らなかった。
「へえ、強情なんだな。それじゃ、どこまで持つか試してみようか」
 男の言葉が合図となり、再び時が動き出す。腰を打つ音が牢に反響し、ぐぐもった悲鳴
が空気を震わす。膣内から愛液が大量に零れ、精液と混じり牝の匂いを生む。2本の肉棒
が私の中の肉壁を激しく押え付け、快感が脳髄を直撃する。口内の蒸せ返るほど濃い男の
味も私の『女』を刺激し、悲鳴を上げる間もなく私は絶頂まで持って行かれた。
「あぐ……ふ……」
 だが、耐える。耐えてみせる。
 友がどう死のうが、私は私の道を進む。例え独りででも、最期まで抵抗してみせる。
「んぶっ!」
 三人同時に、男の欲望が爆発した。私の心まで犯そうと、無数の手を伸ばしてくる。私
は懸命にそれを振り払い、心を胸の奥底に閉ざす。
「あっ、ぐ、うぅ……」
 男達の責めはそれから更に激しさを増したが、心と身体を引き剥がして懸命に耐えた。
 私は騎士であり続ける事を選んだ。だが、グリューネに対する疑念が膿のように私の胸
に生まれている事に気付いていた。
 他の男達からも同じ言葉を浴びせられ、膿が孤独な心を蝕み尽くすまでにはそう時間は
かからなかった。孤独であるが故に、揺らいだ心は一瞬にして別の色に染まる。強く決意
した想いも、呆気無く嘘のように崩れ去る。
 友への信ずる想いはいつしか裏切られた想いへと形を変え、私は知らず知らず自ら腰を
振っていた。
「あ……い、いい……」
 そして私は『雌犬』に墜ちた。

「あう、あっ、あっ、あひいっ!」 
 数え切れない程絶頂を迎えていると、理性の箍が外れてくる。頭の中は霞み、擦れ合う
肌が生む性の匂いが媚薬となり、全身を甘い刺激が駆け巡る。疲れが、身体の芯を削って
いく。肺一杯に空気を取り入れようと肩を使い呼吸すると、熱を失った精液が胸の上を伝
って行った。目が覚めてから、どれだけ男を迎え入れたのかさえ見当がつかない。それで
も、疲れ果てた私の身体と魂は何かに取り憑かれたように新たな快楽を求める。
「はむっ、むっ、ん、む……」
 無意識の内に私は口を目一杯使い、蜜壷で愛液と精子にまみれた肉茎を頬張る。据えた
匂いが鼻に付き、精液独特の苦味が植え付けられた『女』の意識を高めてくれる。
 反対側で待ち切れ無くなった男が私の顔の上で、自分の肉棒を擦り出した。裏筋を伝い、
纏わり付いた精液が私の髪に零れる。一人一人、男根の形も精液の匂いも違うものだと白
みがかった頭の片隅で思った。
 私の下に男が滑り込んで、精液の漏れる菊門に栓をした。逞しい男の分身も、難なく根
元まで飲み込む。腸を抉る感覚が、私を別世界へ連れて行ってくれる。既に狭く強固だっ
た菊座も十分に解れ、膣同様に快楽を生み出す器官と化していた。
「ん……ふ」
 男の手が張り詰めた風船に、もう片方が熱く濡れそぼった谷間へと伸びる。中指と薬指
で先端を挟み込みながら、胸を嬲る。乳が溢れても可笑しくないほどに、私の乳首は激し
く突起していた。尻を貪る事も忘れずに、花弁の奥に溜まった子種を2本指で掻き出す。
肉壁越しに指と肉棒が触れるのを感じ、私は全身に染み渡る感覚に身悶えた。股座を責め
る男の指は肉襞をなぞり、膨れ上がった肉豆を摘み愛撫しながら、全てを掻き出そうと最
奥まで挿入してくる。蕩けそうになるのを堪え、私は舌を巧みに使い奉仕を続けた。
「ふうっ!?」
 くすぐられるような感覚が、背筋を駆け抜ける。誰かが私の片足を持ち、親指の爪先を
咥えて来た。舌を這わせ、丹念にしゃぶる。味わった事のない感覚が全身を貫き、下の男
の責めと重なって私の意識はあっさりと吹き飛んだ。咥え込んだ2本の指と肉棒を激しく
締め付け、吹き出した潮が男の掌にかかる。何度か腰を動かす内に男も果て、注がれる熱
い物を全て味わおうと尻の穴が勝手に肉棒に吸い付く。
 奉仕していた男が舌の動きが止まった私の頭を乱暴に掴んで、精を絞り出そうと試みる。
私はされるがままに頭を動かしながら、次の欲望を受け入れようとゆっくりと股を開いて
行った。
「雌豚だった騎士団長さんに負けないぐらい凄えな、コイツは」
 誰かの声が、遠くで聞こえた。
「ふーっ、う、うむ、ふぅ……」
 まともな理性など、ほとんど残されていない。私を突き動かすのはより大きな快楽を求
める欲望。親友の顔も、私が育てた彼女の娘の顔も単なる映像として脳裏に浮かぶだけ。
私自身が何者であったのかさえ、どうでもよくなってくる。
 尻尾の代わりに腰を振り、男を誘う『雌犬』。
 何もかもから性欲に逃げた私の呼び名に相応しい。
 ふと、目尻に涙が溢れた。涙の意味は、自分でも解らない。
 私は煮え滾った膣で次の男根を優しく包み込み、口内にぶちまけられた精子を残らず飲
み干した。