逃げるのは、それほど悪い事じゃないと思う。
 そう考えるのは、私が子供だから?

「あっ……くうっ……」
 私の身体を割って、熱を持った兵士の男根が秘部に捻じ込まれる。強烈な異物感を腹部
に感じて、私は身悶えた。狂気に歪む男の顔と眼下に映る結合部を見ないように、顔を横
に向ける。
「何だ、そんなに俺の    が好きなのか?」
 それを私が催促しているように思ったのか、先ほど私の膣内で射精した男が思いもしな
い台詞を吐いて、萎えた肉塊を頬に当てて来る。興奮が収まっていないのか、まだ熱い。
尿道から残った精が滲み出て、私の頬を伝っていく。
 唇を軽く噛んで、私は抵抗の素振りを見せた。これ以上、咥えたくない。兵士達は私の
口を性欲の捌け口とでも考えているのか、花弁や菊座と同じように肉棒を挿入して来る。
「ひいっ!」
 嫌がる私を見て苛立ったのか、男は私の乳首を強く摘んで、捻ってきた。千切れるよう
な痛みが襲ってきて、悲鳴を上げずにはいられなくなる。そこを狙い済ましたように、男は
僅かに開いた私の口に亀頭を当て、無理矢理挿し込んだ。無数の男の精液と、私の愛液が
口内に纏わりついてくる。臭くて苦い、何とも形容し難い味が口の中で広がる度、吐き気
がこみ上げて来て私は眉を細めた。男根が固さを取り戻し、膨らむのを頬の裏で感じる。
 人間の所業じゃない。いや、残酷で常に欲望を胸に潜めている人間だからこそ、これだ
け酷い真似ができるのかもしれない。
「ふむ、ん、んぐぅ……」
 私の横髪が、瞼の落ちた視界を遮る。母親似のウェーブのかかった豊かな自慢の髪も、
幾人もの男の精液が所構わず付着して、見る影もない。穢されてしまった事実を目の前に
突き付けられ、腫れ上がった目尻にまた涙が浮かんでくるのを感じた。
 母様が殺された事を知った時、私は決して人前で涙を見せなかった。暗い夜にベッドで
一人、啜り泣いた。よく泣く子だと母様に叱られていたから、悲しい時ほど涙を我慢する
ように心がけた。
 初めて槍を持ったのは7歳の時。グラッセン戦役が終わって2年後、初めてシルヴィア
にグラッセン戦役の内容を聞かされた。当時幼い私には事の顛末を全て理解する事なんて
無理だったけど、母様が勇敢に戦い、そして死んだ事だけは解った。
 とどのつまり、母様の仇を取りたかった。それだけの理由だったのだと思う。
 シルヴィアは、私に持ち得る限りの兵法と戦術を教えてくれた。ただ、彼女は私が学ぶ
事を快く思っていなかったような気がする。私と同い年位の少女達は、他の子供達と遊ん
だり初恋をしたり、情熱溢れる日々を過ごしていた。シルヴィアも私に、それを望んでい
たのだと思う。けれども私は、血生臭い道を選んだ。小さい頃から学んでいたおかげで、
今の年齢で1個部隊を率いられるほどの技量が備わっていた。シルヴィアは天性の物だと
言うけれど、私は彼女が思っているより何十倍もの努力を重ねて来た。
 それも全ては、母様の仇を取るため。
 母様の娘として生まれた時点で、私は他の道を選べなかったのだと思う。例え今の時代
が平和で安穏としていたとしても、同じ道を歩んだに違いない。
 しかしそれも叶わず、母様と同じ姿で男達に凌辱される身となった。
 槍を両足の膝の裏に括り付けられ、両手も槍に縛られる。上半身を捩る事さえ精一杯で、
私は完全に男達の慰み者と化していた。
 私の槍は、母様と全く同形だ。私は身長が低いので、若干長さが縮小されている。
 同じ武器を私が使っているのも、母様に対する憧れ。少しでも母様の背に追い着こうと、
無理を言って学んだ。だけどその愛用の槍も、今は私の自由を奪う道具でしかない。
 母様も同じ恰好で汚されたのだと男達は口にする。おそらく今の私と同じ気持ちを、母
様は抱いていたに違いない。
 身体が未発達の私にとって、成人した男のいきり立った逸物を受け入れるのは容易じゃ
ない。あれだけ大きな物が私の膣で暴れ回っているのだと思うと、寒気がする。尻を同時
に抉られていると、二つの穴が繋がってしまうのではと危惧するほど掻き回される感覚が
全身を包む。悲鳴を上げ、許しを乞うても男達の攻めは激しさを増すばかり。
 レティシア達はこのような悪夢を9年も続けているのだと思うと、胸が締め付けられる。
 私は昔、母様の部下だった彼女達によく可愛がられていたらしい。もちろん物心のつい
ていない時期の事なので、彼女達の面影もよく思い出せないけれど。
 母様やレティシア達が捕らえられ、敵地でどのような行為を受けていたのか。シルヴィ
アは言葉を濁していたけど、年を重ねるにつれ薄々想像がついた。そして、革命共和に対
し復讐の念が更に私の中で燃え上がった。
 男と言う生物は、どうしてそれほどまでに平気で女性を傷つけられるのだろう?考えれ
ば考えるほど、背筋が凍る思いがする。
 今も私の上で、男が私の身体を使い快楽を搾り取っている。同じ行為の中で、どうして
自分だけ惨めな思いに駆られ、涙を流しているのだろう?
「んはっ……!」
 私の口を犯していた男が、抜くと同時に顔目掛けて醜い精を飛ばした。子種がたくさん
詰っているような白く濃い液体が、勢い良く男根の先から吹き出る。私の顔を汚すだけで
は足りないのか、男は私の顎を掴み、半開きの口に残りの全てを吐き出した。口の端から
自分の精液を大量に零す惚け顔の私を見て、男は軽く口笛を吹く。ようやく口を解放され
安堵していると、順番を待ち切れなくなった男が後から乱暴に私の頭を掴み、自分の腰に
顔を向けさせる。休む間も無く、私は次の男根を涙ながらに口にした。
 私の軍が敗北した理由をどれだけ考えた所で、答えは出なかった。布陣は完璧で、戦術
もシルヴィアに習った通り実行した。経験不足だと言われればそれまでだけど、納得でき
ない。敗北を認めたくない。
 もし、私が男だったら。
 そのような思いが心の中に湧き上がって来て、私は慌てて否定した。目の前で私を犯し
ている生物と同じになる位なら、女のままでいい。
 無意味な考えに頭を混乱させていると、身体の痛みもほんの少しは和らぐ気がした。
 しばらく私の上で腰を振り続けていた男が、十分に私の中を堪能したのか腰を振る速度
を速めた。同時に赤く膨らんだ肉芽に親指を当て、指の腹で円を描くように弄り回す。
「ん、んんっ、ふ……」
 塞がれた私の口から、くぐもった嬌声が漏れた。全身が火照り、汗が吹き出る。身体を
ぶつける男の汗と混じり合い、性の匂いが溢れ返る。鼻を突くその香りはどこか甘酸っぱ
く、身体の中に眠る女性の本能を絶えず刺激してくる。
「ふ、ふ、う……!」
 私の狭い膣を固い男根が押し広げる度に積み重なる快楽の波に耐えられなくなり、理性
が弾け飛ぶ。白く霞んだ意識の中、腹の上に熱い精を放たれているのを肌で感じた。口に
肉棒を突き立てた男は、全身の力が抜けて反応の無くなった私の頭を掴んで、精を搾り出
そうと構わず腰を振り始める。
 まるで人形を扱うかのように、男達は私の身体を弄ぶ。
 万が一敗北するような事があれば、凌辱される事は分かり切っていた。だけど、この仕
打ちは想像を遥かに超えるほど、酷い。母様が父様と同じ行為を重ねて私が生まれて来た
のだと思うと、絶望の淵に叩き付けられる。
 だらしなく開いた股の谷間から焼けるように熱い液体が溢れ出し、尻の中に残っていた
精液と混じって石畳の上に零れ落ちる。処女血はとうの昔に全て舐め取られ、かつての純
潔な姿なんて微塵も残っていなかった。前も後ろも数え切れないほど挿入され、男を飲み
込む事に徐々に抵抗がなくなってきている。
 これほどまでに男の精を胎内に注ぎ込まれていれば、妊娠するのは間違い無い。乱暴で
粗雑で名前も知らない、誰の種なのかも分からない子供を産むなんて、考えただけで吐き
気がする。せめて母様と父様に愛されて、私は生まれて来たのだと思いたかった。
 私とシルヴィアの軍も壊滅した今、帝国軍が敗北するのは時間の問題だろう。皇女の軍
は孤立してしまい、敵の一斉集中を浴びる羽目になる。認めたくはないけど、その状況と
相手の軍を指揮する人間の能力を考えれば、皇女が圧倒的に不利なのは明らかだ。
 全軍敗北したとして、私が助かる見込みなんて一つも無い。絶対的な無力さを痛感さ
せられたまま、己の境遇を呪うだけ。
 やがて口内を貪っていた男も果て、大量の精液が喉を伝っていった。蒸せ返る気力さえ
無く、私の身体は軽く痙攣するのみだ。よほど苦しい顔を見せていたのか、次の兵士達が
私の身体を愉しむまでに僅かな休息が与えられた。
 口が自由の間、付いて出るのは懇願の言葉ばかり。もちろん、男達が助けてくれるはず
もない。おそらく私が衰弱して息絶えるまで、凌辱は続く。
 世界で一番不幸な目に遭っているのは自分だという気がしてくる。仇を取れなかった無
念さ、皇女を守れなかった悔しさよりも、自分が選んだ道の結末がこれだと言う事に、涙
が出てくる。
 母様は死ぬつもりで、戦場に赴いたのだとシルヴィアは語った。なら、このような酷い
目に遭う事も分かり切っていたはずなのに。それで――自分の殉じる道を進んだ事で、母
様は満足できたのだろうか?
 私は嫌。耐えられない。助けて欲しい。早く苦しみから解放して欲しい。痛い。気持ち
悪い。吐き気がする。逃げ出したい。まだ続くのなら、いっその事殺して欲しい――
「どうだ?これだけ犯られてりゃ、少しはケツでも感じるようになって来ただろ」
 私をうつ伏せにし、長い肉棒で直腸を抉る男が舌なめずりして訊いてくる。
「ちっとも……気持ち良くなんて……ないです……」
 一番奥に亀頭がぶつかるのを感じながら、私は息も絶え絶えに言い返した。穴の周りは
擦れ過ぎて腫れ上がっているし、背後を突かれる度に息が詰って苦しい。玉のような汗が
全身から滲み出て、肌を伝う。
「じゃあ、感じられるようにしてやるよ」
 そう言って男は、すでに埋まっている尻の穴を無理に広げ、親指を滑り込ませた。
「あぐ……ぅ?あっ、ふうっ!」
 そしてゆっくりと腰を前後に動かしながら、親指で穴の裏を捏ねる。くすぐったいよう
な奇妙な感覚に、意に反して喘ぎ声が漏れる。私の反応に満足したのか、男はしばらくそ
れを繰り返していた。切ない声を上げて身悶える私の姿を眺めて、周りの男達が自分の肉
棒を擦っている様子が横目に入った。
 終わりの無い凌辱。
 だけど、絶望の輪廻から抜け出す方法を、私は一つだけ感じ取っていた。
 快楽に身を任せる事。
 全身を裂くような痛みに混じって、微々たる物だけれど甘く蕩ける蜜のような感覚があ
る。性感。下腹部が熱く滾る。
 数日前、私はシルヴィアと共に凌辱されていた。だけど、凛々しく猛々しい彼女の姿は
どこにもなかった。騎士としての誇りを捨てたのか、嬌声を上げて腰を振り、男の肉棒を
頬張る淫らな娼婦がそこにいた。最初、私の姿を見てシルヴィアは怒りや悔しさに顔を歪
めていたけれど、兵士達に責められる度に熱を帯びた喘ぎ声を上げ、やがて私に見せつけ
るかのように自ら腰を振り始めた。
 育ての親に身体を重ねられている時ほど、惨めな気持ちになった事はなかった。仕方な
くとは言え、シルヴィアの悲しげな瞳の奥で情熱の炎が燻っているのを、私は確かに見逃
さなかった。百戦錬磨の兵とは言え、女の本性には敵わないのか。自分の中にも同じ物が
眠っているのだと思うと、心の底から怯えた。
 人間は、性に逃げ出す事ができる。それを気付いたのは、いつの日だっただろう?
 復讐に燃える日々の中で、やり切れなくなって逃げ出したくなった時、私は自慰で心を
慰めていた。甘美な感覚に、全てを忘れてしまえるから。まだ私は子供で、何もかも背負
えるほど強くない。密度の濃い日々の中で、唯一心の鎖が外れる時間だった。
 だけど、こんな男達に弄ばれて逃げるだなんて、母様に面目が立たない。人間を人間と
して扱わない者達に屈服する真似は絶対にしたくない。シルヴィアのように、男に腰を振
る牝に成り下がるつもりなんてない。母様は最期まで、騎士で有り続けた。私も同じ、騎
士でありたい。
 だから私は、いつまでも救いの言葉を吐き続ける。
 尻を責め続けられていると絶え間無い快感に負け、私は軽く絶頂した。そのまま冷たい
石畳の上に胸を押しつけられ、聳え立った肉棒で激しい抽出を繰り返される。歯を食い縛
って痛みを堪える私の背中に、男が屈辱的な言葉を投げかけてきた。
「やーっと母ちゃんらしく淫乱になって来たじゃねえか」
「な……か、母様を侮辱するなあっ……」
 冗談じゃない。母様が凌辱を受け、悦んでいた訳がない。そんな物、男達から見た勝手
な言い草だ。女の心と身体は繋がっていると、当然のように考えている。身体を汚された
所で、心まで持って行かれるとでも思うのか。
「何だ、てっきり知ってたと思ったけどな」
 不服な面構えで睨みつけている私に、男はせせら笑った。
「オマエのお袋、最期まで立派に騎士として死んだとでも思ってたのか?大笑いだぜ」
「やめ……それ以上言ったら、許さない……」
「よくこんな恰好で胸を張れるもんだな」
「あぐうっ……!」

 言葉で噛み付く私の髪を男が掴み、一気に引っ張る。引き千切られる感覚に悲鳴を堪え
切れず、目尻に涙を浮かべた。そんな私の顔を見て、男は私を更に苛立たせる言葉を口に
する。
「あん時は他にもたくさん女を捕らえたけど、オマエのお袋が一番だったな。締まり具合
も反応も、腰振って乱れ狂う姿もな」
「母様は……そんな汚らわしい真似なんて、しない……」 
 菊座を犯されながら、私は痛みの走る頭を振り乱して言い返した。髪の抜ける嫌な音が
鼓膜に響き渡る。高貴とは程遠い恰好だけど、形振りを構う余裕なんてない。
「何なら他の奴等にも訊いてみろよ。バカでかい胸揺らして、喜んで男の精液浴びていた
雌豚の姿、あの頃の兵士なら全員知ってるぜ」
「それ以上母様を悪く言えば、殺す……んああっ!?」
 何の前兆もなしに直腸に精が叩きつけられ、反論が中断する。肉棒の脈打つ様が肉壁を
通して直に伝わってくる。一番奥に熱い樹液が何度も執拗に注がれ、また一つ身体に汚れ
が染み付いて行く感じがした。
 まるで鎖に繋がれた犬を見るような視線を眼前の男は投げかけてくる。
「おっと、嘘じゃねえって。レティシア達7人を処刑する案が出た時に、オマエのお袋は
自分の身体を張ってそれを取り下げたんだよ」
 情けなさに言葉を返せない私に、男は話を続ける。
「最初は軍法会議で革命共和の兵士全員に凌辱された後に処刑って判決が出てたんだけど
な、その後に処刑の前に兵士全員の奉仕も追加されたのさ。騎士の誇りを捨てて、自分で
男のモノをしごいて腰を振る性奴隷になったって事だ」
「嘘を……言うなっ……」
 萎えた竿が尻から引き抜かれ、精液が逆流して穴から滴り落ちる。背後の男はすぐさま
親指で栓をし、膣にも2本の指を掻き入れて肉壁を弄り回す。けれど私には快感どころか、
体の中を他人が這いずり回っている感覚に吐き気を覚えた。
「今まで我慢してた鬱憤が爆発したんだろうな、娼婦よりも酷え乱れっぷりだったぜ。今
でも思い出すだけで勃ってくらあ。俺の   に吸い付いてくる時の顔と言ったらそりゃ
あなかったぜ」
「ケツや   に2本挿してもヒイヒイよがりまくってたしな」
「ミルクまみれの巨乳でパイズリしてた時なんて嬉しそうな顔をしてたぜ」
「嫌あ……やめ……」
 男達は下卑な言葉を交えながら、次々に母様を愚弄していく。私の上げた声は、自分へ
の懇願でもあった。
 男は髪の毛を離し、私の頭を不気味なほど優しく撫でてくる。
「そんなに嫌がらなくてもいいじゃねえか。淫乱母ちゃんの血がたっぷり流れてるんだ
ろ?突っ込まれて悦ぶのが普通なんだからよ、もっと素直になった方が楽になるぜ」
「嫌だ嫌だ嫌だ……」
 どうして、死ぬよりも酷い目に遭わされるんだろう?その責任は全て自分にあるのは解
っているのに、母様や皇女、私を育ててくれたシルヴィアやミリア達に憎悪を向ける。だ
けど、少しも心が痛まない。醜く穢れた自分の心に気付き、悲しみと諦めが交差した。
「シルヴィアだって、オマエのお袋が快感に逃げたのを聞いてから自分に素直になったか
らな。オマエ一人が強情になる理由なんてどこにもねえじゃねえか」
 男の言う通りだった。何故自分だけ意固地に頑張っているんだろう?全てを受け入れて
楽になる方が簡単なのは解っているのに。
 一度気が緩むと、私の心の隙を狙って悪魔が侵入してくる。心が大きくぐらつき、甘い
匂いが鼻を突く。
 物心もない子供の頃、腕に抱かれた温もりしか覚えていない母様を侮蔑された所で何に
なる?
 皇女が戻ってこなければ、この戦いは始まらなかった。
 シルヴィアも、一人だけ逃げるなんて卑怯だ。私を置き去りにして。
 支えにしていたはずの存在が、正反対になる。悪魔が甘言を囁き、誘われるままに足を
運びたくなるのを堪え、私は繰り返し口の中で否定の言葉を呟き続けた。
「今ならこれにくちづけしたら、縄を解いてやっていいぜ。その後にたっぷり優しく扱っ
て、気持ち良くしてやる。嫌ならこのままぶっ壊れるまで犯しまくるだけだけどな。キツ
キツの   にぶっとい奴のを突っ込みまくってたら、すぐガバガバになるだろ」
 床に顔を押し付け悶え打つ私の横目に、男の素足が入った。犬のように尻尾を振って舐
めるだなんて、冗談じゃない。だけどここで抵抗したら、本当に私は壊される。
 プライドと恐怖がせめぎ合って、気が狂いそうになる。
「母ちゃんだって逃げたんだ、きっと許してくれるさ」
 男が母親の名前を口にした瞬間、全身を怒りが駆け巡った。
「嘘だっ!私は絶対に屈しないっ!」
 私は背筋を反らし、頭を振り全力で張り叫んだ。余りの大声に、自分の鼓膜が震える。
男達は耳を抑え、私を鋭い眼光で睨む。
 次の瞬間、男の鉄拳が腹にめり込んだ。胃液が逆流し、熱い物が喉までせり上がってく
る。堪えようとしたけど苦い味に屈して、蒸せ返り吐き出す。一度吐いてしまえば恥も外
聞もなく、顔をできる限りしかめて胃の中の全てを出し尽くすまで吐き続けた。
 逆らえば、酷い目に遭うのは解り切っていた。痛いのはこれ以上御免なのに。
 多分、深い理由なんてなかったのだ。若さから出た言葉なんだろう。母様やシルヴィア
みたいにプライドも何もかも捨てた『女』になりたくない、そう思ったから反発したくな
った、それだけ。手を出されたから噛みついてやっただけだ。
 歯を見せ唸る私の態度を見て、男は冷めた顔で口の端を僅かに吊り上げた。
「いい度胸だ。それならお望み通り、犯しまくって雌豚の血を呼び覚ましてやるよ」
 突然私の喉に手をかけ、片手だけで私の身体を持ち上げる。喉が締まり、一気に苦しく
なる。縛られた全身で強く暴れても、男は手を離そうとしない。悲鳴も上げられない私の
耳に、男達の嘲笑が聞こえる。
「か……ふ……」
 全身の力も抜けて、窒息しそうになる手前で男は私を投げ飛ばした。背中から落ちて、
視界が一瞬暗転する。例えようのない苦しみが、全身を襲う。大粒の涙が大量に溢れ、頬
を流れ落ちていくのを感じた。
 汚れた床から私を遠ざけた男達は足音を立てて私の前まで来て、仰向けに倒れた私の腰
を掴み上げ、乱暴に深く挿入してくる。一拍置いて後の穴にも捻じ込まれ、下半身を痛み
が駆け巡る。男達の手は忙しなく私の身体を這いずり回り、両の乳房を弄られる。何本も
の屹立した逸物が醜く蠢いている様が目に入った。あの奇妙な生物が、今から私の中を貪
り尽くす。そう考えるだけで悪寒が走った。
 これから私は数え切れない程罵られ、男の精を浴び、蹂躙されるに違いない。想像した
だけで、闇が身体を覆い尽くす恐怖に怯えてしまう。その苦しみを少しでも和らげようと
考えた母様やシルヴィアの方が、正しいのかも知れない。
 ねえ。やっぱり私、逃げていいかな。
 心の中で足を踏み出した瞬間、私の口から聴いた事もないほど甘い吐息が漏れた。