『澱みの塔』とは言っても、建物の中でドンパチやられては建造物に被害が出ないワケ
がない。アッシュの生み出した亜空間。その次元の狭間で相対していたのはふたりの女。
 その勝負も一瞬で勝敗が決着していた。
 シャルランヌは力無くその場にへたりこんでいた。俯いたまま――なにも口から言葉が
出ない。
 いや――
「ふ、ふふふ……ふふ……あはは……あははははは」
 哄笑。自ずと口から洩れ出たのは、嘲りに近い笑いだった。
 自分を負かした相手――ジョインは嘲りとも哀れみともつかない眼で此方を見下ろして
いる。その視線に気づいた様子も見せずに、シャルランヌは独りごちる。
「は、はははは……わたしが……わたしが負けたの!? わたしが……冗談でしょう!? ふ、
ふふ……なんで……夢魔のわたしが負けるの……あは、あははは……」
「あなたごときが……分を、弁えておくべきだったわね……」
 今まで無言の沈黙を保っていたジョインが呟く。その言葉にハッとなり、シャルランヌ
は顔を上げていた。
 憎悪の滾る双眸で相手を睨みつける。
「…………」
 ジョインはそれ以上なにも言わなかった。此方に対し、蔑みの視線を投げると背を向け
歩き出す。
 口惜しさにシャルランヌは俯いていた。
 自分の力には絶対の自信があった。それなのに……それなのに――
(それなのに――!! あんな小娘に負けるなんて――!!)
 亜空間にはジョインの気配はなかった。取り残されたように、ポツリと佇む己自身。だ
が、彼女はそこから動く気が湧かなかった。
 動こうとはしない彼女とは対称に、時間は流れていく。
 彼女は忘れているのだ……勝敗がついたからといって、これで終りではないとう事に……
 だが、次の瞬間には、放心したままの彼女を突き動かしていたのは些細な言葉だった。 
「さて……勝負はついたようだがね」
「!?」
 その声にビクリとし、シャルランヌは身体を竦ませていた。
 聴き忘れる筈のない声音。塔の主、アッシュ・ヴァイザーのものだ。
 シャルランヌの身体がそこで不意に震え出した。ようやくして、彼女はこれから自分に
なにをされるのかを思い出していた。自分は勝負にのみ集中しすぎていた。それは、在る
意味に自分に絶対の敗北がないとくだらない自信に捕らわれていたからとも言えるだろう。
 負けた者は、主催者の戯れに付き合わされる……
 自分は……現に敗北した。
 この意味が十二分に自分を恐怖に落とし入れているという現実を否応なしに受け留めて
いた。
 震える身体に加え、呼吸が荒くなる。ひゅうひゅうと鳴る吐息をなんとか落ちつかせよ
うと自制するが、ろくに巧くいかない。相手へ視線を向けることもできず、シャルランヌ
は震えたままに身体を竦ませていた。
 そんな彼女に対し、ふむと顎に触れながらアッシュは言う。
「シャルランヌ……君は敗北した。よって、これから君に枷られる戯れについてだが――」
「――!?」
 と――
 そこでシャルランヌは、不意にがばと跳ね起きると、身を翻し、脱兎の如く一目散に駆
け出していた。
 話の途中で逃げ出した彼女に対し、アッシュはきょとんとしていたが、とりあえず引き
止めようと声をかげる。
「ああこら、待ちたまえ。ちょっと……おーい」
 だが、そんな声に停まるシャルランヌではない。
 彼女が選択肢として選んだものは『逃走』だ。シャルランヌはそのまま構わずに走り続
け――その彼女の背もやがては見えなくなる。
「ふむ……困ったお嬢さんだ。約束事は、きちんと守らなくちゃいけないなぁ。そう、ご
両親に教わらなかったのかね?」
 そう呟いてはいるが、さほど困った様子もみせずにアッシュは靴のつま先をとんと亜空
間の地面へと触れさせていた。


 はあはあと呼吸を乱しながら、シャルランヌは懸命に走り続けていた。だが走り続けて
いるとはいっても目的が在るワケではない。見渡せば右も左もわからない亜空間。そもそ
も出口すらもない筈だ。
 先から彼女は背後をしきりに意識する。アッシュは追って来てはいないようだが、シャ
ルランヌは立ち止まる気はない。
 このテリトリーを支配しているのはアッシュ自身。故にこの空間を自在に干渉できるの
も彼のみだ。出口を作る作らないは彼次第だと言う事に、今の彼女自身は気づいていない。
だが、あのままあの場所に留まり、黙って従う気にはならなかった。
「イヤよ――イヤよ――絶対に誰が――あんなヤツに――」
「あんなヤツとはどんなヤツかね?」
 不意に聞こえた声音は――自分の真横からだった。
「!?」
 そちらを確認する暇も無く――彼女は恐怖のあまりに手中に生み出していた『力』で薙
ぎ払っていた。
 黒炎が払った空間を焼き尽くす。が、炎の消えた中にはなにもいなかった。
「…………」
 怯えたように、彼女は周囲に視線を張り巡らせる。例え今の一撃で倒せなくても、既に
次の構成を編み上げ終えている。
 彼女は、自分の保身故にアッシュを殺そうとしていた。それが最善の策だと勝手に自己
満足し正当化しだしている。
(そうよ……冗談じゃないわよ……わたしが陵辱されるなんてそんなこと耐えられるわけ
がないわ!)
 胸中で叫びながら、彼女は魔力を発動出来るように警戒する――のだが、その声音に答
えるようにアッシュの声が聴こえた。
「だが……君は負けたのだよ?」
 声は……自分の背後からのもの!
「ッ――!?」
 慌てて振り向きざまに彼女は腕を振り払う。水で塗れた布を引き裂いたような音を上げ
――黒炎が背後の空間を殴りつけた。
 自分の眼で確認したのは、アッシュが何食わぬ顔で立っていただけ。己の払った黒炎で
焼き尽くしてやる! シャルランヌはそう考えていただろう。だが、その考えは一瞬で潰
える事となった。
 黒炎がアッシュに触れる寸前、音も無くそれは消失していた。
「なっ」
 黒炎を放った本人自身が驚愕するには十分だった。相殺されるのならばまだわかるが、
相手はなにもしていない。詠唱もせず、腕を払うともせずにだ。
 唖然とした視線を向けたままのシャルランヌに対し、ふむと顎に触れながらアッシュは
言う。
「君はなにか勘違いをしているな。この空間はわたしが作り出したものだ。故に、絶対者
はわたしなのだよ。君がどんなに強靭な魔力を持ってわたしに挑みかかってもだ、それを
潰すことなど簡単なのだよ。言い方を変えれば、わたしの支配圏でいいように暴れられは
しないと言う事だ」
 そう気楽に言うが、力の差が歴然だということには流石の彼女も気がつかない筈がない。
「い、いやよ……いや……いや……」
 ぺたんとその場に尻もちをつき、ふるふると首を振りながら彼女が後退る。それを見て、
アッシュは肩をすくめると、やれやれと息を洩らしていた。
「また逃げるかね? まあ、逃げたければ何処へなりとも好きなだけ逃げたまえ。もっと
も、ここから出る術がない君にとって、一体全体何処へ逃げるのかが見物だがね」
「…………」
 感がえを見透かされシャルランヌは言葉を失っていた。
 この男は楽しんでいる――
 震える彼女を値踏みするように視線を向け、アッシュは顎に指を触れさせたままに言う。
「さて。お遊びもここまでとするが……わたしの記憶が確かならば……夢魔相手に人間を
嗾けてもつまらんとは思わんかね?」
「な、なにを言ってるの……」
 思わず眉を寄せ、意味が解らずに彼女はそう訊き返していた。しかし、アッシュはそれ
には応えず、指をパチンと鳴らしていた。それを合図に、突如彼の背後の空間が砕け散る。
「なっ……」
 その漆黒の空間の中から、なにかがもぞりと動き出していたのにシャルランヌは気づい
ていた。
 と――
「うぐっ……!?」
 叩きつけられるような強烈な魔力。その力に彼女の身体は動かなかった。その魔力を放
出している相手――砕けた空間から現れたのは異形の者だった。それを見て、彼女は眼を
見開いていた。
「な、なによ……コイツ――」
 今や完全に姿を現したのは、牡牛を象ったような――否。身の丈も十分な直立する牡牛
自身……ミノタウロスだ。
 フーッフーッと鼻息を荒くミノタウロスの眼は眼の前のシャルランヌを捕らえていた。
 その眼から逃げることもできずに、ただ唖然として彼女だったが、ようやくして、なん
の為にこんな相手を呼び出したのか――彼女は鮮明に思い知らされた。
 先程のアッシュの言葉――
 それを肯定するようにアッシュの口が開かれた。 
「ウチのミノちゃんのはけ口相手を探しておったのだ。ただの女性ではすぐに壊れてしま
って使いものにならなくてね。その点、君は夢魔だ。夢魔ならミノちゃんの相手も十分務
まるだろう。そう簡単に壊れることもあるまいて。無論、イヤとは言わせんがね」
「い、いやよ! こんな――こんなヤツの相手なんて!」
 悲痛の叫びと言えるほどに、彼女は拒絶した。が、アッシュはフンと鼻で笑っただけだ。
「大きな代償を払ってこの大会に出ているという事を忘れているようだね? 敗北した時
点で君に自由はないのだよ。ミノちゃん、まーかまわないから、思う存分、もー好きなだ
け相手してやんなさいって言うかゴー」
「…………」
 無言のまま――鼻息は荒いままだが――に、ミノタウロスはゆっくりと彼女ににじり寄
っていた。
「い、いや――いや――いやあああああああああ!!」
 シャルランヌの口から悲鳴があがった。


 服を引き裂かれ、既に彼女の身体には衣類は残っていなかった。裸体に近い。
 腕を掴まれ引き倒されると、ミノタウロスは既に隆々とそそり立っている己の剛直をシ
ャルランヌの秘裂にあてがっていた。
 ヒッ――と上ずった声を洩らし、彼女は怯えたまま首を振っていた。
「む、無理よ……そ、そんなの入らない――」
 だが、ミノタウロスは彼女の意見など聴き入れはしなかった。ミノタウロスをなんとか
なんとか押し退けようと抵抗するシャルランヌだが、それは無駄な努力としか言いようが
ない。
 夢魔とはいえ、所詮は女性だ。その彼女が力でミノタウロスに敵うワケがない。
 そのまま然したる抵抗ともとらずに、ミノタウロスは力任せに己のペニスを彼女の秘裂
に突き挿れていた。
 シャルランヌの口から絶叫が上がった。
 膣内に埋没されていくペニス。時折引っかかる際にも、ミノタウロスは力任せに突き込
んでいた。あまりのペニスの大きさに、咥え込んでいる膣口はヒクヒクと痙攣する。あま
つさえ、ペニスを受けいれる準備もなされていない身体には惨い仕打ちだ。
「ひぎぃぃっ――あうぅ……あぅ、はぁッ……!?」
 突き挿れられただけでも苦しさと擦れる痛みに悶えている彼女だ。だが、ミノタウロス
は無情にもそこから腰を突き動かしはじめていた。
 最初から腰の動きを早めたもの。叩き付けるようにミノタウロスはシャルランヌを犯し
だす。
「ひいいぃぃっ――やめ――やめてぇぇぇ――動か――動かないでぇぇっ……!」
 シャルランヌは荒々しく腰を叩きつけてくるミノタウロスからなんとか逃げようと腰を
引くが、ミノタウロスは彼女の脚を掴み更に奥へとペニスを捻り込んでいた。
「ひぎぃぃぃぃっ――あがぁぁっ!?」
 根元までペニスを突き込まれてシャルランヌは気が狂いそうだった。ミノタウロスの荒
々しく抜き挿すペニスと秘裂の狭間から滲み出る鮮血が彼女を更に追い込んでいく。
「い、痛い――痛いの……や、やめてぇ……お願いだから――抜いてぇぇ……」
 シャルランヌの膣内を襲うのは、焼けた鉄の棒を突き挿れて嬲られているような激痛だ。
 痛みにより視界がぼやけ吐き気がする。
 苦悶する彼女に対しても、ミノタウロスはなんの感情も示さない。
 ただ唯一示したのは、腰を激しく突き挿れ動かしただけ。
「!?――ひぎぃぃぃっ――」
 絶え間なく洩れる悲鳴。
 ペニスを突き挿れられ、引き抜かれ、その激しい行為の繰り返しに彼女の膣内に広がる
は激痛のなにものでもない。それは、人間相手のぺニスならばまだなんとかなるのだろう
が、ミノタウロスクラスとなると話は別だ。
 フーッフーッと荒い息のまま、ミノタウロスはシェルランヌを激しく責めたてる。
 その激しい責めにでも、シャルランヌの意思とは裏腹に秘裂の花弁をヒクつかせていた。
ミノタウロスの激しい責めは、膣内の奥深くもまた蹂躪している。その刺激に彼女の膣内
も本能の働きが生じていた。ギチギチとした膣内が、少しずつだが滑らかなものになって
いく。
 ミノタウロスのペニスの刺激を受けてだろう。愛液が働き出していた事にシャルランヌ
自身も気がついていた。
(イヤなのに――こんなに大きいのアソコに突き挿れられて苦しいのに――感じてるなん
て――) 
 次第に頭の中がぼうっとしかけてきた。それは、膣内を蹂躪するミノタウロスのペニス
を包み込んでいる膣壁が痛みにより麻痺しかけてきた事もある。
 だがそれでも彼女の口からは、この行為をすぐさまやめてほしいというもの。
「ぬ、抜いてぇ……」
 酷く弱々しい声音で彼女。
 結合部からは、淫靡な音があがっている。
「はぁ……んっ……くふっ」
 拒絶した手前、シャルランヌの開かれた口からは、涎が滴り落ちていた。呼吸も激しい
まま。胸が激しく上下に揺れる。
 と――そこで突如ミノタウロスは一際強く腰を突き出しはじめた。その変貌にシャルラ
ンヌもなにごとかと思ったが、すぐに解り得てしまっていた。
 絶頂が近い――
 それを肯定するように、ミノタウロスの両腕は、シャルランヌの脚にがっしりと巻きつ
いていた。それは絶対に離さないという意思表示にみてとれる。
 だが当の彼女は暴れだした。
「は、離して――いや――いやぁぁぁっ――離してぇぇぇぇっ!!」
 シャルランヌの抗議など全く無視したままのミノタウロス。荒い呼吸が酷く耳障りだった。
「い――いやぁっ! お願いだからっ――中には出さないで!」
 身体を仰け反らせながら、そう懇願する。が、彼女の眼はミノタウロスのとある変化を
捕らえていた。
 ミノタウロスがこちらを見て笑ったようにシャルランヌには感じた――
 それと同時に、自分の身体にも違和感が生まれていた。ミノタウロスの熱い欲望が、自
分の体内にぶちまけられる――
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 叫ぶ彼女の膣内にミノタウロスは数度乱雑に腰を叩きつけ、更に精液を送り込んでいた。
 結合部からは、ごぼりと精液が溢れ出す。
 腰をヒクつかせ、シャルランヌは全身から力が抜けるような感覚に襲われていた。身体
が硬直したように動かない。容赦なく子宮へ注ぎ込まれた精液に、シャルランヌは、陵辱
がこれで終わったのだと勝手に思い込んでいた。
「うっ……ううっ……」
 吐き出された熱い欲望に身体を痙攣させながら、彼女は動く気にもなれずにぐったりと
する。
 だが、それで終りではない。
 ミノタウロスは一瞬腰を引き、再び深く捻り込む――その痛みにシャルランヌの口から
悲鳴が洩れた。
「ちょっ――嘘!? くうっ――んくっ――うう」
 荒々しくミノタウロスが一突きする度に、シャルランヌの秘裂から潤滑された淫靡な音
が上がった。
「あうっ! んぐっ――こ、壊れちゃうっ――」
 呻くシャルランヌを当然気にせず、ミノタウロスは己のペニスで膣内を掻き回す。尋常
ではないその刺激が彼女の身体を蝕んでいく。
 唾液の洩れる口――
 ミノタウロスに突かれ続けても快感など覚えた試しがない。在るのはただの痛みのみ。
激しく腰を突き挿れ動かすと、シャルランヌの口からはくぐもった悲鳴が上がる。
「っぐぅっ――んぁっ――あがっ――」
 とても人間サイズのモノとは比べられぬ程のペニスを突き挿れられ、シャルランヌは呼
吸も満足にできていない。
 相手を労わるなどという考えがミノタウロスにはない。在るのは、ただただ己の欲望を
満たすだけ。
 荒々しくペニスを突き込み、抜き挿しを続ける。その際に、彼女の中にぶちまけていた
先の精液が捻り出されていた。
 両脚を掴まれ、逃げる事も出来ない彼女に対し、ミノタウロスは更に腰を打ちつけてい
た。その一撃一撃腰を突き挿れる度に、シャルランヌの口からは悲鳴が上がる。
「や――やめてぇぇぇ……もういいでしょ……もう気が済んだでしょう? もう……もう
やめてぇぇ……もう出さないでぇぇ……」
 膣内を蝕む鈍痛と化した蹂躪に、シャルランヌの眼から涙が流れ落ちる。が、人語を理
解しているのかいないのか、ミノタウロスは彼女の意見など聴いてはいない。そうこうし
ているうちに、ミノタウロスが一際咆えるとともに、ニ度目となる性感が圧迫された。
 シャルランヌもまた、己の膣越しに伝わる僅かな痙攣に気づくと髪を振り乱し必死に懇
願していた。
「いや――いやあっ!! もうやめてぇぇっ! お願いだから――もうやめてぇっ! 膣内
(なか)に出さないでぇぇっ!!」
 暴れる彼女を無視し、ミノタウロスは掴み留めていた両脚に力を込めていた。みしと骨
の軋む音。それに彼女の顔が痛みにしかまると同時、ミノタウロスが咆哮する。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
 膣中に射精されたその熱さに彼女の身体が再び痙攣する。
 背筋を反らしビクリビクリとするその間にも、シャルランヌの膣中にミノタウロスのペ
ニスからは止めど無く精液が流れ込んでいた。 
 吐き出された精液の熱さにか細い呻き声を洩らすシャルランヌだが、そんな彼女に構わ
ずミノタウロスは同じように腰を三度打ちつけはじめた。
 もうイヤだと言わんばかりに髪を振り乱し――彼女はアッシュに視線を向け、必死に言
葉を吐いていた。
「い、いやあぁぁぁっ! お願い! お願いだからぁっ! やめ――やめさせてえっ! 
もう――もうこれだけ犯させてあげたんだからいいでしょう!? お願いだからやめさせて
ぇぇぇっ!!」
 言葉の最後を悲鳴に転じさせ――数回目ともなる――、悶えるシャルランヌ。
 アッシュは面倒くさそうに応えていた。
「ミノちゃんは君を大変気に入ったそうだ。思う存分可愛がられるといい」
「そ――そんな――あはぁっっ!?」
 愛用の椅子を現すと、それにどかりと腰かけ脚を組む。アッシュは頬杖を突き痴態へ視
線を向けていた。と在る事を思い出したようにレクチャーする。
「君が敗因するだけに十分な理由はふたつだ。ひとつは、己の力を過大評価しすぎだよ。
傲慢は脚元をすくわれる。そして、もうひとつは至極簡単な事だ」
 そこで言葉を切ると、シャルランヌの悲鳴があがった。その声を聴きながらアッシュは
続けて言う。
「単なる君の力不足だよ。上には上がいるという事……それだけだ」
 アッシュの言葉は既にシャルランヌには聞こえていない。彼女は荒々しい蹂躪になにも
考えることができなかった。
 不様に口を開き、唾液を絶え間なく垂れ流す。虚ろな双眸でぐったりとした彼女をミノ
タウロスは尽きる事のない性欲のまま――本能のままに犯し続けていた。
 紡がれるシャルランヌの悲鳴を聴くともなしに聴きながら、アッシュは片手をすいと翳
す。親指と人差し指軽く擦ると同時、手中には幾枚かのカードが現れた。そのカードの束
から一枚適当に引き抜くと、その手札を見、彼は言う。
 『李白』と書かれたカード――
「ふむ……次はこの娘か……楽しめる試合ならばよいがな」
 そう嘯きながら、アッシュは手中に在るカードを一瞬で灰とさせていた。そのまま彼の
視線は、未だ悲鳴を上げるシャルランヌに向けられている。
 『番』の痴態にただ笑みを浮かべたまま――