マジェステック・アサルト外伝―――オルフェナ・睡蓮―――

 

by MORIGUMA



奇跡の大侵攻から半年が経った。

首都は復興の槌音高く、人々は笑顔を取り戻していた。

9年前の共和国成立時、腰が抜けるほどの重税と圧制に苦しんだ人々は、皇女の善政
に衝撃を受けた。

税率はわずかに上がったのみで、それもわずか2年の後は、元に戻すと約束した。



通常の革命政府は、軍の報奨金や王城の改装、砦の構築などで莫大な重税を課す。



だが、皇女は一切の改装や構築を避け、修理や補修、洗浄のみで済ませていく。

報奨は十分に払うが、分割し、順次与えていった。

何より、治安、治水、法の整備など、無能極まりない共和国が荒れ放題にした政治の
惨状を、一つ一つ丁寧に片付けていった。



だが、神ならぬ身に、全てが治められるわけでは無かった。



「本当なの、それは・・?」

「ええ、本当よ姉さん。」

“金目の女傭兵”の二つ名で呼ばれるようになった、傭兵ミリアは、帝国軍の傭兵部
隊の指揮官となり、地下牢から救い出された姉のレティシアは、首都警備隊長として
復帰した。



その日、遅くまで指揮所に詰めていたミリアは、レティシアが夜間の警備当番だった
事を思い出し、酒壷をぶら下げて会いに行った。



途中、町外れにある教会の前を通りかかると、何かうごめく気配があった。

そこは、共に皇女を助けたオルフェナに与えられた教会兼孤児院であり、よく見れ
ば、窓と言う窓は重く厚いカーテンが閉ざされ、隙間から光が漏れている。

不審に思ったミリアは、高い窓の見えそうな隙間を見つけ、片手で窓枠を掴むと、
ひょいと身体を引き上げた。

危うく片手の酒壷を落としそうになった。



「あふううっ、あうっ、おお、あううっ!」

恍惚とした声があがり、清楚な美貌が陶酔に染まって揺れる。

オルフェナの細く美しい裸身が、脂ぎった男の身体に挟まれ、膝立ちで、前後から突
き上げられ、激しい声を上げながら、のけぞっていた。



清楚な美貌も、小ぶりな乳房も、美しく締まった尻も、流れるように美しい太腿も、
おびただしい精液にまみれ、もう、何人から犯されたのか分からないほどに、汚され
ていた。

見れば、周りにいる男は10人ぐらいではない、見えないところも含めて、20人以上の
脂ぎった男が詰め掛け、よだれを垂らさんばかりに、乱されるオルフェナを視姦して
いた。



「おうっ!、ああっ!、ああっ!、あふっ!、ぐっ!、うっ!、おおっ!」

小柄な裸身は、強烈な突き上げに揺さぶられ、黒光りする男根が深々と子宮へ、腸奥
へ、突撃を繰り返し、その芯をえぐりぬいた。

のけぞる身体を攻め立てるそれに、オルフェナは屈し、痙攣した。

「ああああああああぁぁぁぁ!!!!」

ぶるぶるっと震える、細く清楚な身体。

おびただしい欲望の嵐が、勢いよく噴き上げ、腸を蕩かせ、子宮を汚し尽くした。

無力な子羊のように、オルフェナは繰り返し突き入れられる、欲柱を無抵抗に受け入
れた。



一瞬、激しい怒りに駆られたミリアだったが、よく見ると、オルフェナは放心状態で
はなく、慈愛の笑みを浮かべ、キスを繰り返し、感謝すら言っているようだった。

混乱したミリアを、オルフェナの深い黒瞳がとらえた。

ミリアの金目を見逃すオルフェナではない。

上気しながらも、落ち着いたまなざしをちらりと向けた。

『何も、気にしないで』

その目はそう言っていた。

離れる男たちに代わり、別の3人がオルフェナに向かい、仰向けに男の上に寝かせ、
上下から貫かれる。

「んっ!、んん・・、んうっ!、うっ!、くううっ!、んうんっ!、」

思わずのけぞるオルフェナの口を、もう一人がふさぎ、3人がかりで輪姦しだした。

その顔には、嫌悪も、あきらめも無く、自ら嬉々として受け入れ、美しく開いてい
く。

肉欲に広げられた花弁は、充血して光り、滴りはおびただしくこぼれつづける。

突き入る男の欲望を、上の口も、下の口も、歓喜にわななきながら、深く存分に迎え
入れる。

清楚な口元を汚されながら、それを味わうように舌を使い、唇をすぼめ、淫蕩な色に
頬を染めて飲み込んでいく。



手がしびれてきた。

ミリアは猫のように、音も無く降り立った。

あそこが熱く濡れ、滴りが腿まで伝いそうだ。

オルフェナはどうしてしまったのだろう。

脅されてるのでも、犯されているのでもなさそうだ。

いや、自ら喜んで身体を開き、男たちを無差別に迎え入れているとしか思えない。



裏口のドアは、思ったとおりカギは無い。

入ると、むっとするような男と女の匂いが、立ち込めていた。

「はあっ!、はあっ!、ああっ!、いいですうっ!、いいですうっ!」

乱れた、喜びに満ちた声。

あの、清楚で落ち着いた教会のオルフェナとは、似ても似つかぬ、同じ声。

全ての視線は、激しくのけぞるオルフェナを見て、入ってくるものには誰も気づかな
い。

高ぶりが、アヌスを貫き、歓喜が子宮を突き上げ、オルフェナの美貌を、暴発した白
濁が汚した。

開ききった脚が、突っ張り、痙攣する。

「いく、いく、いきますうううううううっ!!!!」

 どびゅうううううっ、どびゅうううううっ、どびゅっ、どびゅっ、どびゅっ、

白い腹が震え、のけぞる細い腰に痙攣が走る。

焼けつくような渦が、胎内を荒れ狂い、オルフェナの全てを汚し尽くしていく。

何度も突き上げられ、うめきながら受け入れるオルフェナは、乱れ染まり、艶やかに
散り行く花のごとく、何度も絶頂へ突き上げられた。



「ミリア・・」

ごく近くにきたミリアに、オルフェナは静かな声をかけた。

「ミリアだと?」

「金目の傭兵?!」

ざわついた男たちは、恐怖に怯えた。

おびただしい金貨の入った箱が、祭壇に置かれ、そこへ金を入れかけている者すらい
た。



「あたしなら、どのくらいになるのかな?。」

自分でもまさか、こんな言葉が口に出るとは思わなかったが、言った以上しかたがな
い。

ミリアは酒壷から一口やると、ずいと前に出て、胴着を脱ぎ捨てた。

パサ、ファサッ、

引き締まった身体を、惜しげも無く晒していく。



「さあ、あたしだったらどうだい。」

すでに濡れた秘所は、滴りを光らせ、淡い恥毛がきらきらと光り、美しかった。

長身だが、鍛え上げた身体は、つややかな小麦色に輝き、つややかな肌だった。

スラリとした手足、そして美しく張り出した、わずかのたわみも無い乳房を震わせ、
豊かな腰の張りが生唾を飲み込むような、艶かしさをかもし出す。

女として、こんなにも美しかったのかと、ミリアを見知っている者は感嘆し、他は、
噂の金目の傭兵を涎を垂らさんばかりに見ほれた。



わらわらと群がる男に、ミリアは力を抜き、したい放題にさせてやった。

まるで乳を吸う子犬のように、胸に、股間に、唇が群がり、しゃぶり倒す。

「あはあっ!」

濃い女の香りを放ち、ミリアはたくましい腕の間に埋もれた。



しなやかで長い脚が、ぐいぐいと男をひきつけ、締め上げる。

激しく淫乱に口がうごめき、顎が踊るようにしゃぶる。

強く細い指が、軽やかにしごき、見る見る膨張させる。



「あうっ!、おおっ!、いいよっ!、あうっ!、そこおっ!」

反りきった男根が、中を激しくこすり、膣底を強く突き上げ、しゃくりあげる。

騎士らしいたくましい男は、ミリアの襞に溺れ、肉奥のうごめきに夢中だ。

後ろから突き上げる男が、激しくアヌスを突き、腸をこねて、掴んだ腰を激しくひき
つけ、ペニスを突き立ててくる。



激しくしぶく精液が、顔に、胸に飛び散り、熱く身体を濡らす。

肉襞と絡み合うたくましい男根に、身体がにえたぎり、快感の火花がアヌスを焼い
た。

深く、強く、たくましい物が貫く。

征服される快感が、おびただしい蜜をほとばしらせ、腰を淫らにくねらせた。

喰らいつくように、腸が貫かれ、子宮が突き刺された。

「あううううううううっ!!!!」

 どびゅううううっ、ばしゅうううっ、どびゅっ、どきゅっ、どぶっ、どくっ、

食いちぎらんばかりの締め付けに、男根が脈動し、ペニスが暴発する。

おびただしい射精感が、身体に染み渡り、流れ込んでくる。

ひくひく、ひくひく、

身体を震わせ、何度も繰り返し突き入れ、射精する男たちを締めつけ、流される。



チャリン、チャリン、チャリン、

金貨の音がたくさん響く、

入れ替わりにペニスが目の前にくる、ミリアはためらいもせず、かぶりつくように咥
えた。

美しい長い脚が引き上げられ、横倒しに広げられる。

だらだらと滴る白濁をものともせず、黒光りする男根が、喘ぐように息づくヴァギナ
を貫く。

「んううっ!」

胸を掴まれ、強くもまれ、つままれる。

後ろから、濡れそぼったアヌスを、犯されてのけぞる。

快楽に敏感になった身体が、言う事を聞かず、のたうった。

それでも、唇を絡め、舌をはいずらせ、男の味をしゃぶり尽くす。

打ち込まれる快感の杭。

焼けるような快感が、アヌスを突き抜け、腸をこね回す。

熱い亀頭が、膣を掻き分け、底を突き上げてくる。

『ああ、いい・・』

胸が揺らぎ、足が宙を掻いた。

のけぞる背中を嘗め、喘ぐ乳房を吸われ、快感を感じ尽くす肉襞が激しく嬲られ、え
ぐられていく。

いやと言うほど味わわされた感触に、死ぬほど強姦されつづけた感触なのに、ミリア
は夢中でそれに腰を突き出し、深く突き入る男たちをいとおしく締めつけた。



「いいいいっ!!」

激しく首を振るミリアに、かけられる精液の雨。

打ち振る三つ編みが濡れ、のけぞる白い腹の奥へ、脈動が噴き上げる。

 びゅくううっ、びゅくううっ、びゅくっ、

熱いほとばしりに、子宮口を焼かれ、それに屈する。

流れ込む快感に耐え切れず、全て許してしまう。

蕩ける、溶けちゃうううっ。

わななく尻を突き上げ、激しくうちふらされ、撃ち込まれる。

「あああっ!!」

たっぷりと流し込まれるザーメン、男の精液にジンジンとしびれ、ミリアは放心した
目をさまよわせる。



チャリン、チャリン、チャリン、

またがらせた男が、狂ったように突き上げる。

「あはあっ!、はあっ!、あうっ!、んぶっ!、んっ!、んっ!、んうっ!」

硬く煮えたぎった肉茎が、下から深く突き上げ、のめりこむ。

後ろから、長い男根が深く差し込まれ、しゃくりあげる。

「あううっ!、あうっ!、おうっ!、んうっ!、うっ!、んはあっ!」

両手に握らされたペニスがしごかれ、つややかな唇に吸いまくられ、見る見る充血し
ていく。

我を忘れ、足を淫らに開き、腰を前後に振りたくっていた。

ああ、こんなに、こんなに、

ミリアは、自分がこんなに飢えていた事を思い知らされた。

わずかな金貨を代償に犯され、嬲られ、貫かれ、快感で狂いそうだった。



「あううううううっ!!」

目いっぱい突き込む、身も知らぬ男。

突き刺さったペニスが、胎にどくどくと注ぎ、まきちらしている。

「くうううううっ!!」

後ろから、目いっぱい広げられ、根元まで突き入れられて、射精が始まる。

わななく腸の中、噴出す精液が、ジンジンと染み込んでくる。



チャリン、チャリン、チャリン、

空ろな目で、瞳孔を開ききって、横倒しにされた身体に、激しく突き入れられ続け
る。

もう、何人目かも分からない。

輪姦される身体があるだけ。

鍛えた身体は、いっこうに飽きず、深々と突き入れる男を、ぐいぐい締め付け、味わ
い尽くす。

赤くはれたヴァギナも、アヌスも、むしろ心地よく、誰知れぬ男のエキスでぬるぬる
にあふれていた。



広がりきった太腿が、痙攣した。

「あおおおおおっ!!!!」

ドビュウウウッ、ドビュウウッ、ドビュッ、ドビュッドビュッ、ドビュッ、

ハスキーな声が、淫靡な響きを帯びて、放たれる。



のけぞる、しなやかな裸身。

美しい肌を覆う、白い汚れ。

肌という肌、喉も胃も、アヌスも腸も、ヴァギナも子宮も、それに汚され、あふれ、
毛穴の奥まで、染み込んでいる。



おびただしい男たちの欲望、

果てしない陵辱の嵐、

ミリアは、精悍な美貌を淫蕩に染め、快楽に脚を開き、射精される快感に容赦なく従
い、征服されていく。

何度も、何度も、

乳房を振りたて、

両脚を痙攣させ、

髪を打ち振り、

金貨の音と共に、快楽の絶頂に突き上げられて果てた。







「ふうう・・」

しなやかな裸身が、ネコのようにのびをする。

身体中がぎしぎしいう。

あそこが、アヌスが、喉が、まだ入れられているかのように、うずく。

いったい何人に輪姦されたのか、見当もつかない。

「目がさめたのね。」

オルフェナの声に目を向けると、すでに身体を洗ってきたのか、大きなタオルを一
枚、素肌にまいていた。

真っ白な肌はつややかで、あの荒淫の後とは思えない。

「裏に、泉があるの。」



冷たい水を浴びると、ミリアは肌を覆う火照りが静まっていくのを感じた。

秘所のヒリヒリする感触も、滴る水の清めに、快感すら感じる。

中にあふれる精液が、腿を伝い、絶え間なく落ちていく。

ひさしぶりに、無茶をしたものだ。



まあ幸い、皇女の好意で与えられた、妊娠を防ぐ避妊の魔法が、まだ効いているは
ず。







「あんたねえ・・」

レティシアが青筋を立てて怒った。

「するに事欠いて、乱交?!。傭兵部隊の指揮官なのよ貴方は。」

心の中でちろっと舌を出しながら、ミリアはなだめた。

「その場ののりで、ついね。別に暴行されたわけじゃなし、あたしも溜まってたの
よ。」



傭兵時代のミリアは、かなり奔放で、気軽に誰とでも寝たし、戦勝祝いの酒で脱いで
踊るなど珍しく無かった。勢いで乱交に走った事も、1度や2度ではない。

何しろ、いつ死ぬか分からない傭兵たち。

生き残れれば、もっけの幸い。

後腐れなど、考えるヒマはない。

ミリアもその心根はいやと言うほど知り尽くし、味わい尽くした。

ミリアの膝で死ねた幸せ者もかなりいる。

だからこそ、生き延びた自分がいる。







戻ると、オルフェナが後かたづけをしていた。

ミリアは敷物の上にあぐらをかき、丁寧に髪をぬぐっていく。

何も言わずに、せっせと汚れをふき、痕跡をぬぐい、嘗めるようにきれいにしてい
く。

言葉ではなく、こういう何気ない動作こそ、その人間が出る。

ミリアが見る限り、彼女の動きは、信仰に厚く、ひたむきな聖女そのものだった。



ミリアは孤児院の事を思い出した。

戦争でおびただしい孤児が生まれ、悲惨な目にあっている。

オルフェナは教会から破門されながら、教えを守り、孤児たちを救おうと奔走してい
た。

皇女や仲間たちも、出来る限りの援助はしているが、それでも足りない。

それほど、孤児の数は多いのだ。



「ごめんね」

掃除が終わったのか、オルフェナがはじめて声をかけた。巻き込んでしまった事を、
ひどく後悔しているようだ。

ミリアはにっと笑った。

「けっこう稼ぎになったろ。」

「すごいわ、いつもの倍はあるわね。」

オルフェナは泣いていた。おどけたような口をききながら。



最初は、この冬を越す毛布が足りず、どうするか思い余って、言い寄ってくる商人に
身体を開いた。

自分が神の花嫁であるはずは無く、汚れきった女でしかない。

すっぱり割り切ると、男に丁寧につくした。

一人に身体を開いてからは、なし崩しだった。



ミリアは思わず天を仰いだ。

オルフェナの静謐な美貌と人柄は、あまりに評判になりすぎた。

ブリュンヒルデ女帝も、神事をオルフェナに任せることがしばしばあり、人目に触れ
ることが多かった。

当然、よからぬ妄想を抱く者も、非常に多くなった。

『それに・・、』

ちらりと、うつむき加減のオルフェナを見ると、そこにひっそりと白い花が咲いてい
るかのような、清浄で、静謐な美の姿がある。



いくら乱れようとも、何か一線、己をとどめ、汚れきった泥沼から白い花を開く睡蓮
のような、壊れない美が、男の精にまみれ、汚辱にまみれてなお、男を狂わす魔性と
なってたちのぼっていた。

『これが、自分じゃあ気がついてないのよね。』



数が異様に増えてしまい、奪い合いの争いまで起こりそうだったが、月に一度、新月
の夜に定め、自分の全てを投げ出す事にした。



「それだけかい?」

隻眼がきらりと光る。

びくっ、

オルフェナの肩が震えた。

「あたしに隠し事は無しにしな。」

酒壷をくいと上げ、一口飲んだ。



「そう・・ね。もう、隠す事でもないもんね。」

濃いブラウンの目が、わずかに潤み、天井を見た。



あの日、全てを絶望し、狂気の果てに追い詰められていった時、信じられない事に、
神の御言葉が降臨した。

『人の子の娘よ、汝、女として生きるべし』



その言葉が、何かの枷を砕いた。

深く、肉がえぐられ、襞をこすりたてて、暴行する男根が突入した。

全身が弛緩し、快楽に反応していた。

びゅくうううっ、びゅくうううっ、びゅくっ、びゅくっ、

荒れ狂う波頭のような快感が、征服される被虐の喜びが、身体の芯を焼き、理性を制
圧してしまった。



意識が白く染まり、後先を失い、突き上げる快感に無心に腰を振り、舌を這わせた。

快感が性感を開拓し、暴行されつづける身体は、次第にそれ無しではいられなくなっ
てきた。

無数の男たち相手に、身体が、本能だけが、快楽を貪り、どこまでもけがれと服従の
中に落ちていった。



「もう、私は男無しでは、生きていけないの。あの狂おしい快感を失うぐらいなら、
死んだほうがいい。でもね、あの子達を愛してるのも、放っておけないのも、同じか
それ以上に大事なの。」



静かな、そして温かな寝息を、わずかに感じさせる孤児院。

それが無ければ、ためらうことなく、娼館に飛び込んでいただろう。







「それで、新月の夜、彼女の絶対安全日に・・、ということか。」

レティシアは、何とも形容しがたい声で、つぶやいた。

一度人間としての全てを失い、ミリアに死の直前から助けられた彼女は、鳥肌を立て
ていた。

手足を這い登ってくる寒さ、

身体を何もかも失い尽くさせられる闇、

記憶の封印が、わずかにきしみ、腐臭と憎悪を撒き散らそうとする。

いや、それよりもっとおぞましい、虫を誘うような火が、ちらつく。



激しく頭を振り、暗い闇を払った。

自分は、そこに戻ろうとは思わない。



「だが、いいのか?」

ミリアに、答えがわかっている問いを投げてしまう。

警備隊長である自分が、新月の夜はその周辺をパトロールさせないようにするのは簡
単だ。

だが、オルフェナはどうなるのだろう。



「誰にも救えないわ。分かっているんでしょう、姉さん。」

そう、誰にも、オルフェナを救う事はできない。



教会と神を失った彼女は、それ無しでは生きられない。



泥にうずもれたまま、睡蓮はいつまで咲いている事ができるのだろう。

二人は、何度もオルフェナのために、祈らずにはいられなかった。



FIN