―――私は、存在しているのに、存在しない。―――
―――私は、仮想現実。―――
――――― 胡蝶 ミカド


  ざわざわざわ・・

ほっそりと、優雅な、そして不似合いな女性が、ゆっくりと闘技場へ入ってきた。
もともと、女性が似合う場所ではないとはいえ、
これほど違和感のある女性も珍しかった。

薄く透けるような、夜着に近い青い着衣。
前で合わせ、帯でとめただけの、緩やかなしつらえのそれが、
大人の女性の成熟を浮き上らせ、
官能的な色香を漂わせる。

観客席から、思わずため息が漏れる。

胸元は広く開き、そこから細い喉とあごの線が、はかなげに剥き出しになる。
対照的に、ぬばたまの闇のような漆黒の髪は、きっちりと結い上げ、折り目正しい気品をにおわせている。

だが、意思と優雅さの頂点たる目元は、黒い布で覆われ、何も見ようとはしない。

彼女の名は、胡蝶ミカド。


黒い布を通し、おびただしい人の生気が、ミカドの網膜にぶつかってくる。
目は見えなくとも、人の存在は見える。
「ここが、私の、戦場。」

私は、高貴の血筋だという、
私は、人妻だったという、
私は、その妄想が現実化したものだという、
私は、何だ?。



ざわざわざわ・・
反対側の扉が開き、若い女性がきょとんとした顔で出てきた。
「あれが、対戦者か。」


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みずぼらしい中年の男が、狂ったように私を抱き、身勝手にふるまう。

突然、見知らぬ場所に現れた私を、さらうように寝室に引き込み、
『ワシの理想、ワシの妄想、ワシの物だ、ははははは・・』
異様な怨念のこもった目で、私をベッドへ突き飛ばすと、無理やり服を引き剥がし、むしゃぶりついてきた。
いったい何が起こったのか、嫌がる私の手は細く、弱く、男の太った身体には、なすすべなく押しひしがれた。
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対戦者は、強烈な魔法弾を矢継ぎ早に打ち出してきた。
そのスピードと破壊力は、なかなかのものだろう。
「私は、“存在”を知るもの・・」
ミカドはかすかに笑った。

見物人の多くは、彼女が裾をひるがえし、脚を露にして走る事を期待していた。
だが、ミカドは動こうとはしなかった。
ただ、姿だけが薄まり、数十センチ左へもう一人のミカドが、うっすらと現れた。
「な、な、な・・」
対戦者も、見物人も、驚愕に目を見開いた。

さらにその左にもう一人、そして、最初のミカドは薄まり、もう一人が現れたときには、消えていた。

光弾がミカドを追う、
ミカドの残像が並び、光弾は空を切る。
まるで、影か幻を追っているかのようだ。

息が切れ、目が回った、
若い対戦者は、つい惑わされ、魔力を使い果たした。
その瞬間、ミカドが目の前に現れ、対戦者の胸元に、光る掌を当てた。
パアン。
軽い音が、皮鎧に響いた。
皮鎧と、その下の服、そして皮膚、筋肉、内臓。
十数センチの“存在”がゆらぎ、ゆるがされた組織は、鉄拳で殴られたかのような、手ひどいダメージをおった。

「勝者、胡蝶ミカド!!」
対戦者の少女はゆっくりと崩れ落ち、ミカドの勝利が宣言される。

楚々と、競技場をあとにしようとしたミカドの耳に、つんざくような悲鳴が響いた。
「いや、いや、いやああああっ!!」
無数の、異形、同系の男たちが、敗者の少女をひんむき、暴行を始めていた。
ふと、ミカドはめまいを覚えた。


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胸元ははだけられ、いやらしい唇が乳首を痛いほど吸う。
裾は乱れ、白く艶やかな脚を、男の腰が、無理やりに割り広げていく。

「痛い、痛い、痛いいいっ!」
まだ濡れてもいない秘所に、ざらつく男の陰茎が、狂い立って押し込み、無理やりに突き上げてくる。
ミカドが嫌がり、苦しむほど、男の興奮は高まり、欲望は激しく燃え立つ。
深く男女の道を知る体は、そんな苦痛に満ちた交合すら、次第に濡れて、動き出す。
「いや、ああ、いやああっ!、いやあっ!、」
落ちたくない、落ちたくない、
だが、身体は言う事を聞かず、身体を掻き回す醜い感触は、次第にミカドの快感を探り出し、そこを無作法に責めまくった。

「あぐっ!、ぐっ!、ああっ!、いっ!、いやっ!、だめっ!、あぐっ!、」
身体が乱れ、意識も混濁し、次第に理性も麻痺していく。


異形の肉感が、身体を貫き、意識すら掻き回して、混濁させていく。
意識が遠のいた時、ミカドの口は、異様な声と喘ぎを発し、
屈服した身体に、勝利した男の咆哮が、勢いよく発射された。
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「はっ・・、はっ・・、」
ミカドは、豪奢なベッドから身を起こした。
いやな夢が、汗をひどくかかせている。

男に屈したあとは、陰惨な日々が、ミカドを繋ぎ止め、奴隷のように無残に嬲られた。
男にとって、ミカドはただ一人の奴隷だった。
権力もあり、金もあり、精力も有り余る男は、醜く嫉妬深い妻に押さえつけられ、側室一人囲えなかった。
それだけに、溜まりきった鬱憤を晴らすべく、自分の妄想の塊とも言うべき、理想の妾に、無残なまでに吐き出していった。



今日の対戦相手は、昨日の相手とはかなり違っていた。
ミカドの見えぬ目は、シルフィードという少女の周りに、まとわりつく精霊の姿が見えた。

『あれは、風の精霊か。すると、昨日のようには避けられないわね。』
ミカドには、風の精霊の刃が見えた。
下手に避けようとしても、広範囲を切り裂く刃は避けきれない。

『空気を切り裂く刃なのね・・』
ミカドはかすかに笑った。

「この塔のまがまがしい気が見えないの?。私のじゃまをしないで!」
正義感にあふれる声で、シルフィードは風の精霊を解き放った。
巨大な真空の刃が、ミカドへ向う。

ミカドは昨日と同じように、身動きもせず、ただ、手をかざした。
感情を持たぬはずの、風の精霊が困惑した。
空気の“存在”密度が変わり、刃が見る見る薄く、はかなく消えていく。

「ぬ、ぬぬっ!、やるわね、これならどう!」
激しい怒りとともに、雷光が両掌に輝く。
両拳に発生した猛烈な竜巻が、稲妻をまとい、無数の刃を打ち出した。
稲妻が落ちて、煮え立ち、
石の床が裂け、柱が豆腐のように切られた。

ミカドの前の空間が、黒ずむ。
白く光る刃が、ゴムに突き刺さるように食い込み、消えた。
空気が、光すら通さぬほどの厚みを持ったのだ。
しかし、それでも消しきれぬ刃が、何発が通る。
脇や太腿が露になり、滴る血が、白い肌を彩った。

白い肌を彩る滴りに、思わず歓声が上がる。
しかし、通ったのは、ほんのかすり傷に過ぎない。

そして、シルフィードは力尽きた。


「いっ、いやああああっ、なぜ、なぜ、なぜ私があああああっ!」

凶悪な男たちが、細く痛々しげな身体を、虫のように押さえ込み、森の妖精は、前後から貫かれる。
悲鳴を上げ、血の涙を流すシルフィードの、薄い乳房に、頑強な歯形が痛々しく刻まれる。
処女の血と、ざっくりと裂けたアヌスが、激しく出血する。
がくがくとヒザが震え、
息が今にも止まりそうに喘ぎ、
細い喉が悲鳴を出し尽くして、声すら失っていく。

「あぐううううっ!」
痙攣する身体に、次々と男たちの欲望が爆発し、
そのたびに、フィールドが身体を回復させ、死ぬ事すら許さない。。

犬のように這わされ、後ろから激しく叩きつけられ、身体の、どこかが壊れていく。

喘ぐ顔が、のけぞり這う真っ白で細い身体が、いきり立った男根のされるがままに乱され、暴行され尽くして、心のどこかが、壊れていく。

全てが、シルフィールドの中から壊れ、砕け散って、砂のように流れ落ちていく。
「あぐ、あぎ、ぎいっ、ひぎっ、ああああああっ!!」
 どびゅううううっ、どびゅっ、どびゅっ、
しわがれた悲鳴が、闘技場を後にするミカドの耳に残った。


「ボンジュール、お疲れでした。」
ふっと、黒いマントをまとった巨人が、煙のように現れた。
ひょうきんな声を上げて、銀の盆を差し出す。

「え、あ、これは、アッ・・」
「おっと、シー」
沈黙の表現をして、またもふっと消えた。

銀の盆には、甘い香りのする、極上のワインと、一輪の白いバラが置かれていた。

ミカドは困惑を隠せなかった。


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醜い女が、憎しみに焦げた目をして、私の身体を抑えさせた。
『憎い、憎い!、憎い!!、夫を惑わす汚らわしいやつ、その目で、その口で、その手足で、たぶらかして、惑わせたんだ、おまえが悪い、この、この、この、』
鋼鉄のムチが、肌を破り、頬に、乳房に、太腿に、青アザを刻んだ。
痛みを堪え、睨み返すミカドに、女は逆上した。
『なによその目は!』
いきなりナイフでミカドの目をえぐった。
『芋虫にしてやる、糞壷の中に埋め込んでやる、糞まみれの糞虫になりやがれ!』

意識が混濁する直前、何かが、そこに来た。

ミカドが気づいたとき、彼女はやわらかなベッドに横たわっていた。
「お気がつかれたか。」
横から、さびたしぶい声がした。

彼女の目は、黒い布のような物が覆っていた。
だが、目の奥の網膜は、黒いマント姿の巨人をとらえている。
黒い布は、彼女の心が生み出した障壁、
見えぬはずの目は、見える目以上に、そこにある物をとらえていた。
巨人には分かっているようだった。
「貴方は、極めて特殊な存在だ。仮想が現実を生み出し、それが現実に影響を与える。」
「あなたが、お助けくださったのですか?」
巨人は微笑して答えなかった。

グラリ
そのとき、空気がゆらいだ。
異臭と冷気と憎悪を混ぜ合わせたような、闇が、部屋の真ん中に現れた。

『芋虫にしてやる、糞壷の中に埋め込んでやる、糞まみれの糞虫になりやがれ!』

口汚くののしりながら、
醜いバケモノが、無理やりに部屋の中に出てこようとする。
ただれたあばただらけの顔面から、薄汚い黄色いアブラを滴らせ、
濁った目から、腐った雫を流しながら。

「なんとまあ、灰にしたのに、もう化けてきたか。」
黒い巨人は、あきれた声でぼやいた。

バケモノは、敷き物に汚い痕をつけながら、ミカドのほうへ這いすすむ。
巨人が右手を上げようとすると、ミカドが尋ねた。

「よろしいでしょうか。」
強い意志の感じられる声に、巨人は、動きを止めた。
「『仮想が現実を生み出し、それが現実に影響を与える。』でしたわね。」
その意味を悟り、彼は手を下ろした。
「ふむ、おやんなさい。」

傷つき、怒りに震えていた彼女の誇りが、
苦悩と屈辱の日々にも屈することなく、それは今、激しい炎を上げていた。
ミカドが意識を集中する。
「私は仮想から生み出された現実。」
指先が光った。
「私には“存在”が分かる。ゆるぎない“存在”など、ありえない。」
光が矢のようにバケモノを貫く。
現実の空間に無理やり現れた、不安定なそれは、元々低かった存在率を失い、チリと化したように消え去った。
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甘い、極上のワインを飲み干し、ほんのりと頬を染めて、ミカドはグラスを置いた。
ふと、一人の人の名を読んで、彼女は目を閉じた。



ミカドは、激しい戦いに傷つきながらも勝ち上がり、この大会屈指の実力者と噂される、
『魔王』を名乗る女性、マルデュークと向かい合った。

ズシン・・、ズシン・・、ズシン・・、

ほっそりした、気品すら感じさせる若い女性が、異様に重い足音と、ひび割れを残しながら、歩み寄った。

『まるで、闇そのものが、わだかまっているようだわ。』
ミカドの見えぬ目は、マルデュークの本質を写し出す。
「ほお、私の本質が見えるのか。」

ぞくり、
ミカドの視線を感じ取り、こちらの意図すら読み取る、まさに『魔王』。

ミカドはかすかに微笑み、己の全てを集中して、マルデュークに挑みかかった。


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「マーベラスメイガスに参加したい?」
黒い巨人は、ミカドの申し出に、一瞬呆然とした。

「昨日、アイリッシュという方に会いました。『ここは、戦う場だ』と、教えてくださいました。」
『あっ、あの小娘ぇぇぇぇっ!』
氷のような微笑を浮かべながら、巨人は激怒し、心の中で呪いの言葉を吐き散らした。

「しかし、どのような戦いかは、聞いたのでしょう?。」
「ええ。ですが、私はこの世界に、この身一つ。他に何もありはしません。
ふるさとも無ければ、家族も、親族も、友人すらも、何一つ無いのです。」

ミカドは喘ぐように言った。

「私が、この世界で、何ができます?。惨めに、我が身を糧に変えて、ただ生きるだけ。まっぴらです。ならば、自分の全てをかけて、最高のかけを挑めるなら、望むところですわ。」
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ミカドは、冷たい石の床に横たわっていた。
裾ははだけ、生唾を飲むような白い脚が剥き出しとなり、打ち倒されていた。


全ての力を集め、生きている闇めがけ、ただ一筋に打ち込んだ。
「絶対無の刃か、面白い!」
マルデュークは、避けも受けもしなかった。
轟然と胸をはり、真正面からそれを受け止めた。
存在率を失わせる刃は、マルデュークの美しい胸を突いた。
だが、刃は激しい火花を散らしながら、その谷間に飲み込まれていく。

「そなたに、敬意を表しよう。」

マルデュークは、静かに手を上げ、激しい一撃で、ミカドをなぎ倒した。
全てを刃にこめていたミカドに、それを避けるすべは無かった。

悔いは無かった。
全ての力、全ての意思、ありったけの物をぶつけた満足が、ミカドを満たしていた。

「そなたの覚悟、確かに見届けた。」
マルデュークは、静かにそう告げると、地響きを立てながら、立ち去っていった。


アッシュ伯は、とろりとした目で、静かに見ていた。
全てに、例外は無い。
合図とともに、無数の異形、異相、裸の男たちが、ミカドに群がった。

ミカドは、抵抗はしなかった。
よく熟れた肌が、むき出しにされ、異形の男たちのなすがままに、身を任せた。
「あっ!、はうう・・、んっ、んんっ!」
赤く形の良い唇を吸われ、熟れてわずかに歪んだ乳房を激しく揉みしだかれ、
「んっ!、んふううっ!、んっ、んっ!、んんっ!」
二の腕から脇の下へ、太腿から、秘所へ、
「んあああぁ!」
足指をしゃぶり尽くされ、
淫らな姿を、鮮やかに晒しながら、女の色香を激しく振りまいていく。

熟れきった女体が、淫らに染まり、はかなげに、淫蕩に、髪を振り乱して、
陰核を吸い上げられてのけぞった。

会場の男どもの中には、熟れきった果実の香りに狂い、のたうつ者がおびただしかった。

女の脂に白く光る脚が、ゆったりと広げられ、狂い猛る剛直が淫芯をとらえ、貫いた。
「あぐううっ!、あっ!、ひっ!、ひぐっ!」

耐えに耐え、抑えに抑えてきた何かが、汁を滴らせながら弾けた。
「はああ・・、あはああ・・、んうううんんん・・」
蕩けきった声が、赤く歪んだ唇から漏れ、聞く者の脳髄を直撃する。
 じゅぶっ、ちゅぶっ、じゅぶぶっ、ぐりゅっ、
濡れきった肉の、絡み合う音が、異様にはっきりと、耳に刺さる。
血走った無数の視線が、広げられた肢体を、焦げんばかりに視姦する。

肉感のたくましい存在が、ミカドをえぐり、のめり込む。
見えぬ目が、黒光りする筋張ったそれを詳しく捉え、
知らいでもいい、絡み合うカリと襞のぬめりまで、脳裏へ送り込んでくる。
喘ぐように腰が絡み、飢えたように根元まで喰らいこみ、声を上げて、歓喜に狂っていく。

モウ、イイ・・、ナニ、モ・・、

熟れきった果肉を喰らい、雫を滴らせるように貪り、やわらかな粘膜をこね回す。
伸びやかな肢体が、のめり込む動きに、伸び上がる。
豊満な乳房が、大きく揺れる。

カンガエ・・、ナク・・、テ・・、

猛り狂う欲望が、深く律動を繰り返し、
たくましい腰が、豊かな腰を割り、深く猛々しい剛直を叩き込む。
カリ首のきつい張りが、ミカドの胎内を引きずり、掻き回して、乱す。
「あふうんっ!、ふんっ!、はああっ!、ああっ!、あふうぅうぅっ!」

両手に握らされたペニスを、胸にこすりつけ、
のたうつ剛直の、深く、狂おしい快感に、身をよじり、
ミカドは、全てを忘れ去っていく。

かすかな、とろりとした視線への痛みも、もう、忘れていく。

のけぞる、あえぎ、わななく、
脚が、指が、痙攣に囚われ、獣じみた声が、ほっそりした喉からほとばしる。

「あぐ!、くうっ!、く、う、あ、あ、あーーーーーーーーっ!!」
 ぶっしゅううううううっ、

からみつく粘膜を蕩かし、煮えたぎる溶岩が、白くほとばしった。

爆発的な量の精液が、膣に、あふれ、子宮になだれ込んでいく。

のけぞり、痙攣する身体に、繰り返し押し込まれ、射精していく。

あふれんばかりに胎に注ぎ込まれ、後ろから、すぐさま貫かれた。
「はああぐっ!」
唇に押し込まれるものを、深く咥え、喉までむせながら飲み込む。
激しく突かれるままに、全身が揺さぶられ、喉が突かれ、喘ぎ、むせる。

肉欲のままに、豊満な肢体が動く。
男たちの陰茎が、胎内をくねり、突き上げる。
それを、否定などしない。
全ては、のぞんだこと。
理性も、意識も、遠くへ飛び、そんな言葉も、もう浮かばない。
ただ、むやみにむしゃぶりつき、腰を振った。

「はあっ、はああっ!」
子宮口をこねまわされ、絶え入るように喘ぐ顔に、口から引き抜かれたペニスが、勢いよく射精し、濡らし尽くす。
がくがくと揺れる顔一面、白く濃い精液が滴る。

両手に掴まされ、それを交互にしゃぶり、
後ろから甲高い音が、叩きつける。
ゆさゆさと、乳房が激しく揺れ、
快楽に勃起した乳首が、くっきりと突き出していた。

「はぐうううっ!!」
えぐりこむ男根が、中に激しく射出する。
あふれ滴る精液が、震える太腿をおびただしく伝い落ちる。

引き抜かれた下に、男がもぐりこみ、いきり立った巨根を天に向けた。
そのまま腰を落とさせ、子宮まで届かんばかりにズブリと貫かれる。
同時に、後ろから尻を掴み、アヌスをえぐり、広げ、ミシミシと侵入してくる。

「あぎいっ!、あぐっ!、ぐっ!、ううううっ!」
悲鳴を上げながら、逃れる動きすらせず、中にのめり込む男たちを受け入れていく。
激しくしごかれたペニスが、乳房に、あごに、白濁を勢いよく噴き上げ、濡らした。

恍惚とした顔が、がくがくと揺れる。
細いあごの線が、わなわなと震え、
量感豊かな乳房が、ダイナミックに揺れ動く。
それに吸い付き、突き上げ、
尻をもみしだき、貫き、
白く濡れた女体は、激しくくねり、乱れる。

口に咥え、手にしごき、
胎内を掻き回される快感が、深く置くまで突入を繰り返す。
もう、ミカドは一切を考える事をやめた。

肉欲のために呼び出された自分、
何も無い、セックスだけの為の存在、

白い肌を上気させ、激しく律動する機械に、巻き込まれるように、
喘ぎ、のたうち、腰を振りたてる自分、

白く、全てが閉ざされ、
快楽が、苦悩を塗り尽くし、
のけぞる身体を、喘ぐ喉を、わななく腿を、溶け狂う快感が貫き通した。

「あぐっ!、んっ!、んぐっ!、ぐっ!、んんっ!、んっ!、んっ!、
んううううううううううううううっ!!!!!!」
どびゅうううううううっ、どびゅうううううっ、どびゅっどびゅっ、
灼熱のエクスタシーが、子宮に突き刺さる。

どぎゅううっ、どぎゅうううっ、どびゅっ、どびゅっ、
裸身が弓のようにのけぞり、豊潤な乳房が、激しく震えた。

びゅうううっ、どびゅっ、どびゅっ、どびゅっ、
喉の奥深く、濃い精液がおびただしく噴出し、細い喉が、何度も動いた。

顔に、胸に、背中に、
大量の精液が、浴びせかけ、濡れていった。

ああ・・
もう・・なにも・・かも・・

壊れたテープレコーダーのように、放埓な思考が、ゆっくりと、
激しい快楽の突き上げる合間を縫って、流れていく・


のけぞる白い背を、
痙攣する爪先を、
淫らに喘ぐ唇を、
白い陶酔が包み込み、浮遊していく。

見えぬ目の前に、12枚の羽を持つ巨大な姿が立った。


おびただしい精液で、濡れ尽くした裸身、それが歪んだ。
かすみ、歪み、乱れ、その姿が次第に薄くなっていく。

かすかに、かすかに、どこかから鐘の音が聞こえた。
白い物が、会場中に降り、それが羽のようなものだと、確認する間もなく、消えた。
そして、ミカドの姿も。

全てを見終わったアッシュ伯は、ゆっくりと立ち上がり、席を後にした。
彼が、そのときつぶやいた言葉は、誰にも聞かれることはなかった。

「さようなら、我が母に似た人よ。」


観客の、誰一人、気づくことなく、一人の女性が消えた。
いつもの試合、いつもの結末、
次の試合への興味だけが、観客の脳裏を占め、
何が起こったかを理解する前に、記憶の隙間は縫い合わされた。

ただ・・、



聖なる書の“原初”の項、

万人の父となる最初の男性、『阿段』
万人の母となる最初の女性、『衛羽』
―――『衛羽』は、常に黒い目隠しをし、豊かな黒い髪を折り目正しく結い上げ、非常に成熟した女性として描かれている。
これは、女性の恥じらいと品格、貞淑と豊穣をあらわす為の意味と考えられる………。

END