『龍神の迷宮』



#13 リエッタパーティー(リエッタ L-神官戦士、フェリル L-軽戦士、クリオ C-盗賊、エルフィラ L-魔術師)


リエッタ達は 龍神の迷宮 地下1階 を 堅実 に進んでいる・・・



フェリル:そこのツッコム所しかない姿の!!
  ストォォォーーーップ!!


 フェリルの発した大声に、リエッタPTスルーして進んでた少女が足を止める。

フリーデリケ?:………むぅ、なんじゃ? フリーデリケはいそいでるんじゃがのぉ。

 心底迷惑そうに言う、自称フリーデリケ。

リエッタ:急いでるところそれはすまない。だけど子供一人じゃここは危ない―――
フェリル:ちがぁぁぁぁぁう!!!! 何で小さくなってるのよ、お婆ちゃん!!
クリオ:え?
エルフィラ:は?
リエッタ:な?


 急にツッコミモードに移行したフェリルのお婆ちゃん発言に皆驚く。


フリーデリケ?:………フリーデリケはキミに『お婆ちゃん』呼ばわりされる筋合いないんじゃが。
エルフィラ:そ、そうですよフェリルさん。こんな小さい子にお婆ちゃんだなんて―――
フェリル:小さくないんです!! ジャイアントエルフとかホブエルフとか、
    そんなあだ名の生き物なの!! 本当は!!


 ビシッ! とフリーデリケに指をさしながら言うフェリル。




フリーデリケ?:……キミは頭大丈夫か?
   そんな種族いるわけなかろう?



 ………………………………。






 ………………………………。






 ………………………………。






 フリーデリケ?の正論に空気が固まる。

クリオ:―――うんうん、そうだね、いるわけないよねぇ……… 
    フェリル、ちょっと休んだ方がいいよ?
フェリル:ちっ、違う…… わ、私は間違ってない!? 間違ってないの!?
エルフィラ:えーっと……… あっ、ジャイアントエルフとかホブエルフとか、面白い冗談ですよね……!
フェリル:違う!? 私ボケじゃなくてツッコミ!? 
      ってかフリーデリケって自分で正体ばらしてるじゃん!?
リエッタ:……別にフリーデリケなんて名前そう珍しい名前でもないでしょうが。
フェリル:ちがっ!? この顔でフリーデリケなのがあれでこれでそうなのよ!?

 自分の立ち位置が否定され、混乱に拍車がかかるフェリル。

リエッタ:あー…… この子疲れでちょっと混乱してるだけだから、ゴメンネ。
フリーデリケ?:あぁ、若い冒険者にはここはいささか手強いからのぉ。
クリオ:若いって……… キミ、ボクより年下に見えるんだけど。
フリーデリケ?:んっふっふ、フリーデリケはこう見えてもキミ達の何倍も生きてるのじゃ。
フェリル:知ってるよ!? だからお婆ちゃんって!!
リエッタ:……フェリル、少し落ち着いて

 フェリル、味方が一人もおらず若干半泣き。

エルフィラ:ん〜 どことなく私やクリオちゃんみたいにエルフっぽい感じがするんだけど、エルフじゃないですよね?
       角はえてますし。
フリーデリケ?:うむ、フリーデリケはエルフとはちょっと違う。
フェリル:だ・か・ら!! Gエルフだって!!
リエッタ:………フェリル、だから少し黙って。
     ………年上なのは解ったけど、一人では危なくない? 良かったら私達と一緒に行かないかしら?
フリーデリケ?:いや、平気じゃ。用事を済ましたので、迷宮を出て
         今度はじーじのとこに行くとこじゃからのう。道もわかってるので心配無用じゃ。
リエッタ:そうですか。それでは道が分かってるとはいえ気をつけて。
クリオ:家に帰るまでが遠足だよ〜!
エルフィラ:また何処かでお会いいたしましょうね、お気をつけて。
フリーデリケ?:うむ、キミ達も気をつけるのじゃぞ!

 それぞれ互いの健闘を祈ると、挨拶をして別れ―――


フェリル:!!!

 ………別れ際、フリーデリケはフェリルとすれ違いざまに、ボソッと彼女にだけ聞こえる声でこう言った。

フリーデリケ?:ブラなんて、見得をはる必要ないでしょ、 
     フェリルちゃん……?



 そして彼女は にぱ〜 っと笑いながら去っていった…………。



フェリル:(やはり…私は…間違って…なかった… …が……ま……)








 ………………………………。




クリオ:いやー、何か不思議な子だったねぇ!
エルフィラ:そうでしたね。また何処かでお会いしてお話でもしたいです。
リエッタ:そうだね、クルルミクに住んでいるのか――――
フェリル:私は間違ってない。。。 私は間違ってない。。。(ぶつぶつ)
リエッタ:………
クリオ:………
エルフィラ:………

 泣きながらブツブツと言い続けるフェリルに、PTのメンバーは彼女が立ち直るまで
 なんともいえない生ぬるい目線で見守り続けた。。。。。



酒場『ドワーフの酒蔵亭』

タン:フェリル……… 大丈夫かな。

 酒場のカウンターで心配そうにわっふ〜んっとため息をつくタン。

フランム:あんまり心配する。そう、ため息ばかりつくと寿命がなくなってしまうぞ?
ウィルカ:寿命……ですか?
フランム:む、なんだ知らんのか? ため息を1回つくと寿命が1年減るんだぞ?
タン:…………それだと、今日だけで50年くらい減った、かも。

 そういいつつも、また『わっふ〜ん』っとため息をつく。

ウィルカ:…………タンちゃんはフェリルちゃんと、とっても仲良いけどずっと一緒に旅してきたの?
タン:ううん、クルルミク来てから。
フランム:それにしては随分と仲が良いな。

 確かにタンとフェリルの付き合いは長くない。
 せいぜい迷宮攻略PTの登録待ちをしていたここ1〜2ヶ月くらいの付き合いだ。

タン:(でも…………)

 この短い間に色んなことがあった。
 フェリルと一緒に肉じゃがをつくった(美味しいとはいえない出来だったが、色々ドタバタして楽しかった)。
 月夜にフェリルと二人でお話した。
 迷宮からこっそり出てきた悪い配管工を倒したりもした。

 フェリルだけじゃない、
 フリーデリケとミラルドの痴話喧嘩には何度も巻き込まれたし、
 ハデスやペズとも色んな話をした。
 他にもメラノーマ、ミューイ、そしてウィルカやフランムとも色んなことを話したし、一緒に笑った。

タン:…………確かに一緒に過ごした時間は短いけどフェリルは
   ―――それにウィルカさんもフランムさんもみんなタンの大切な友達だよ。

 とても素直な笑顔と言葉でタンは言った。

ウィルカ:タンちゃん………
フランム:と、友達か………… 

 ウィルカはとても嬉しそうに、
 フランムも『な、仲良しごっこみたいのは好きじゃないが…… と、特別に良いことにしてやろう……』とか言いつつもまんざらではなさそうだ。

フランム:ふん…… なら余計に心配するものじゃないな。その、なんだ…… 
      と、友というのは心配するものではなくて、信用するものだからなっ。
ウィルカ:そうだよね、信じて待とうよ。暗い考えで心配するより、明るく信じていよう。
タン:……うん!

 タン、フランム、ウィルカの3人は間近に迫った自分達の冒険の時を、
 友人達の無事を信じて待つことにした。













『龍神の迷宮』

フェリル:うぅ………あの牛のような2本の角で1万2千枚特殊装甲だって打ち破るんだよぉ(ぶつぶつ)。。。。
リエッタ:………
クリオ:………
エルフィラ:………
フェリル:うぅ………あのへんてこなマントでマッハ2で飛ぶんだよぉ(ぶつぶつ)。。。。
リエッタ:………
クリオ:………
エルフィラ:………










 信じたように無事のような、無事でないような、、、、



『龍神の迷宮』



#1 フリーデリケパーティー
(フリーデリケ L-神官戦士、セリカ L-僧侶、ラフィニア L-盗賊、キャティ C-魔術師)



フリーデリケ達は 龍神の迷宮 地下2階 を 堅実 に引き返している・・・


フリーデリケ:スタコラサッサ〜♪(光の速さで明日へダッシュ中)
ラフィニア:お、お婆ちゃんまって〜!!? 早いよ!? 早いって!! 少しは後ろを気にして!?
フリーデリケ:ふっ、若さ、若さってなんだ?
ラフィニア:え?
フリーデリケ:振り向かないことさ! だから後ろなんかキニシナイ!!
ラフィニア:ど、どういうこと!? それにお婆ちゃん若くないし!!

 フリーデリケPTは2階の善を司る聖霊の審判で、ロウPTなのになぜーか不合格であった。
 しかもそのまま聖霊にボコボコにされ、セリカとキャティが戦闘不能の状態まで追い込まれた。

ラフィニア:っていうか! お婆ちゃんなんで二人を背負ってるのにそんなにダッシュで!?

 戦闘不能でろくに動けないキャティとセリカを背負いながら、
 一足お先に光の速さで明日へダッシュしてるフリーデリケ。

フリーデリケ:ふふっ、そりゃ背負ってる二人のおにゃのこ押し付けられた胸の感触で、
        テンション上がりまくって、胸のエンジンに火をつけちまったワケデスヨ!
セリカ:………鎧越しに良く分かりますね。
フリーデリケ:うふふ、こーいうのは背中に胸が当たってるというシュチュエーションが重要なのっ!
        女の子はシュチュエーションを、そうムードが大事って学校で習わなかったかしら!?
キャティ:………あー、うちの魔法学校じゃ少なくとも教えなかったっスね。
フリーデリケ:そんな学校辞めちまえデス!! 腐ったみかん学校デス!!
        それに学校では教えてくれないことの方が、現実では大切なんですよ、例えば―――
キャティ:ふ〜ん例えば?
フリーデリケ:………え………………えーと、んー、あー、にゃー―――――
        ―――うむ! ちょっと考えたらお腹すきましたし休憩しましょうか!
キャティ:誤魔化せてないっスよ、全然………

 キャティのツッコミ無視して、ごっつい肩アーマーからござとおやつのドーナツを取り出すフリーデリケ。

フリーデリケ:〜♪ 〜♪

ラフィニア:………はじめ肩アーマーから、お茶やらドーナッツ出した時は何かと思ったけど、
セリカ:………意外と慣れるもんですね。
キャティ:っというか、あんだけ色々入る原理が知りたいっスねー…… 
     あ、私はこのチョコチップかかってるやつでっ!
セリカ:では私はこの粉砂糖のを………
フリーデリケ:私はやっぱお婆ちゃんなので、このきな粉ので決まりディス!
ラフィニア:えっとじゃあ私は一つ残ったこの…………
      お婆ちゃん、この一つ残ったやつ、なんか色が異常にまっ黄っきなんだけど………
フリーデリケ:残り物には福があるデスヨ!
ラフィニア:ほ、本当に………?
フリーデリケ:ちなみにロシアンルーレットやるかも知れないとか思ったりで、
        一つにカラシ混ぜてるデスケド!!!
ラフィニア:絶対これジャン!?
       な、何でそんないらないことを………
キャティ:うひひ〜 いらないことじゃないっスよ〜♪ こーいう趣向は☆
フリーデリケ:うふふ〜♪ そうよね、そうよね!

 ラフィニアがあたふたしてる横で、キャティとフリーデリケが仲良くハイタッチ。

セリカ:お、お婆ちゃん、これはちょっとラフィニアさん可愛そうですよ。
フリーデリケ:ふみ、じゃあセリカちゃんラフィニアちゃんとドーナツ交換してあげたら?(にっこり)
セリカ:え゛っ
ラフィニア:せ、セリカちゃん………
セリカ:……………

 セリカは、捨て猫のようにうるうると瞳を潤ませて見つめているラフィニアの顔を見て――――



 でもセリカの『犠牲』は発動しなかった!!



ラフィニア:せ、せりかちゃ〜〜ん!!
セリカ:す、すいません。怪我さえなければ犠牲になろうとは思ったんですが………!

 戦えないほどなダメージをうけてる彼女には、そのドーナツはあまりに禍々しい雰囲気を帯びていた。

フリーデリケ:…………うふふ〜♪ 大丈夫デスヨ、ラフィニアちゃん。それバナナチョコだから。
ラフィニア:えっ、でもさっきカラシ入りって―――

 その時

キャティ:ぎゃぁぁぁー!?!?!?!?

 ドーナツを少しかじったキャティが床を転げまわっている。

ラフィニア:え? え!?
セリカ:まさか………
フリーデリケ:うふふふ〜♪ 
        そんな初めから解るようなトラップしかけるわけないじゃないですか〜♪
        まぁ、日頃のこないの差ですかネ〜♪

 フリーデリケはにひにひと、まるでロウに見えない笑い方で笑った。








 フリーデリケPT。
 最初こそギルドに捕まっていた3人の冒険者を助けるなどの大きな活躍をしたが、
 その実とても堅実でスローライフなPTであった………


キャティ:う〜〜〜 セリカさんお茶ちゃぶだい〜

 唇と舌を腫らしたキャティがお茶を求める。

セリカ:はいはい……… あれ、このお茶温かいですね……?
フリーデリケ:あー 肩アーマーから出す前にアーマーの『温めボタン』押しておいたからネ〜
ラフィニア:『温めボタン』……?
フリーデリケ:デモ、卵入れると爆発するから注意デスヨ!!
キャティ:濡れた猫も乾かせ無いっスね………



 ………スローライフだった。



 クルルミク王国・ウィドウ侯爵のお屋敷
 
 フランツ私室


貴族:―――ふむ、なるほどな。研究に関しては私も君には世話になっているし、
   他の貴族連中にも根を回しておこうフランツ卿。
フランツ:すいませんね。まぁ、グラッセンとの戦争が終われば、こんなご迷惑もかけずにすむんですがね。
貴族:そうだな、政治の混乱ッぷりも困ったもんだよ。 ……まぁ、もう少し王子がしっかりしてくださればな。
フランツ:……ビルゴ王子ではなくハウリ王子のことですかね?
貴族:ふふ、内密にしてくれよ? 不敬で失脚など馬鹿馬鹿しいにもほどがある。
   だが私としては国を統べる者は、もっと誰にでも分かるほど力を持った者がいいと思うんだよ。
フランツ:ふーむ、神様を王にすれば満足なんですかね?
貴族:宗教国家ほど救いのないものはないよ。
    それにそこまでの力は望まないさ…… 神をその身に宿した位の力で十分だよ。
    あと、君のように不老不死とかね?
フランツ:んー……… ならば神を宿した娘を妻として迎えたらどうですかね。
     そうすれば、ご自身の血もひき、なおかつ不老不死のハイブリットですよ。
貴族:ふふ、そのような都合の良い娘がいるのなら、いくら大金を積んでも惜しくはないな。
    ………それでは今日はこの辺で失礼させてもらうよ。
フランツ:あぁ、卿も帰り道は気をつけて。ギルドのゲスどもが最近は街でも出るようだしね。
貴族:まぁ、やつらも馬車と護衛付きで、しかも男なんてものは襲わないさ。

 それもそうだ、と二人は笑いあい別れた。

フランツ:ふーむ、さてさて。
     …………いやいや、先約がいたものでね。またせてすまなかったね、入っておいで。

 先ほど貴族が出て行ったドアとは違うドアから一人の少女が入ってきた。

フリーデリケ?:ふむ、先ほどのはギルドの者なのか?
フランツ:む? いやいや違うね?
フリーデリケ?:ゲスのにおいがしたぞ、やつから。
フランツ:んっふっふ、まぁ貴族なんて基本的にゲスだわね。
フリーデリケ?:あー、じーじを見てると良く分かる。
フランツ:失敬な!? しかし久しいね〜 人里まで来るのも久しぶりかい? 小フリーデリケ。
小フリーデ:うむ、10年ぶりかのう。 ……しかし小とはどういうことじゃ?
フランツ:いや、ちょっと諸事情でね。同じフリーデリケだと分かりにくいからね。
小フリーデ:分かりにくいとな?
フランツ:うむ、まー色々あるのさ―――まぁ、そういうことはどーでもいいとして、今日はどうした?
小フリーデ:いや、なにやら龍神の迷宮が騒がしいんでのう、少し様子を見てきたのじゃ。
フランツ:あぁ、マーマが心配してたのかい?
小フリーデ:いや、マーマは『人間ごときで、どうこうされる存在ではないだわさ』ってあまり興味なかったのう。
       まぁ、確かに別にどうもなってなかったのう。
フランツ:………………ついでにもう1階降りてワイズマン倒してくれればよかったのにねー
小フリーデ:ふむ、あの噂の悪いまじゅちゅちか…… 
       フリーデリケも、本気ならばそこそこいい勝負になる気もするが、あまり人間に干渉するのはご法度だからのう。
       転送装置飛び飛びで、迷宮のモンスターもちゃんと1体も倒してない徹底ぶりなのじゃ。
フランツ:ふ〜む、返り血も浴びてないし服がやたら綺麗だと思ったらそういうことなのね。
小フリーデ:………そーいう、じーじはなんかあちこち擦り傷あるけどどーしたのじゃ?

 小フリーデの言う様に、今日のフランツはあちこち傷まみれであった。

フランツ:いや、ちょっと昨日ねー 実は…………

 フランツは、昨日の回想話を始めた…………



 昨日

 の

 クルルミク王国・ウィドウ侯爵のお屋敷




 明日から迷宮に行くチェリアは、一応知り合いに挨拶回りをしていた。

チェリア:っというわけで! 明日から迷宮に行って来るであります!
フランツ:うむ! ハンカチはOKか!
チェリア:サー! イエッサー!
フランツ:ティッシュは?
チェリア:サー! イエッサー!
フランツ:うむ、ではおやつは銅貨30枚内で準備したか!
チェリア:サー! イエ―――――― あっ、それは持ってないかもです。
フランツ:貴様!! おやつも持たずして迷宮に何しに行くつもりだ!!?
チェリア:いや、迷宮内でござひいて、ドーナツとか食いだすわけには行かないですよ?
フランツ:馬鹿な!? 冒険中に食べるおやつは最高よ!?
      ………まぁ、とりあえず非常食にもなるしこいつでも持ってきなさいな。

 ごそごそと部屋の棚を漁り、中から紙袋を取り出し手渡す。

チェリア:わ〜、ありがとうございます! 中身なんだろ(ゴソゴソ)
フランツ:まぁ、仕事中に食べてたやつだけど、まだまだかなり残ってるし、東方の珍しいお菓子だから―――
チェリア:(ごそごそ)へー、東方の…… ギャァァァ!!? ウ○コ!?
フランツ:じゃねぇ!? カリントウだ!!!

 まるでソレっぽい見た目に、紙袋を投げ捨てようとしたチェリアを止めるフランツ。

チェリア:かりんとう・・・・? いや、でも……
フランツ:小麦粉に砂糖とか加えて油で揚げた菓子だね。
      ってか、ウン○なぞ棚に入れて仕事中に食べるかよ!!!
チェリア:……………いや、フランツ様だし、やりそうな気も。
フランツ:テメェ!? いくら私でも、そんな○ンコなんて、
     いくら綺麗で気高くて美しいお姉さんのでも――――
チェリア:あははは、そうですよねぇ。いくらフランツ様でもそこまでは無いですよね!
フランツ:―――いくら綺麗で気高くて美しいお姉さんのでも………
チェリア:…………え? フランツさ―――
フランツ:………それも、アリか?(きゅぴーん☆)
チェリア:……………

 チェリアはフランツとの間に海よりも深い溝が出来たのを感じた。

チェリア:えっと……… じゃ、迷宮頑張ってきますです……… かりんとうありがとうでした。
フランツ:あ、うん。頑張っておいで〜

 最後の別れかもしれない二人の会話は、よりによってこんなだった。



昨日

 の


クルルミク王城

 の

夜のテラス



フランツ:いやはや、明日いよいよ迷宮だというのにお呼び立てして悪いですね、ディアーナ様。

 主にパーティーなどで大活躍の大広間のテラス。
 酒の席での酔いをさますために涼みにきたり、女性をそこから見える美しい景色をバッグにくどく場所、それがこのテラスだ。
 フランツは今そこに白竜将ディアーナを呼んでいた。

ディアーナ:いえ、私も少しお話してから、迷宮に行きたかったですから。
       あと、二人きりなので『様』をつけなくてもいいですよ。
フランツ:ん、そうかい? ………ディアーナ『様』って言うのに慣れてしまってるからちょっと恥ずかしいかもね。
     ……まぁ、ディアーナが15歳入団した時は普通に呼んでたしね。
ディアーナ:そうですよ。あの頃は呼び捨てだったし、すごく怒られました。

 いくら才能のある竜騎士といえど、入団したての頃はまだ竜の扱いに慣れておらず、
 戦場や練習で竜を怪我させてしまうことが多々ある。
 その時に一つの罰&試練として立ち塞がるのがクルルミク竜研究の妖怪・フランツだった。

フランツ:んっふっふ〜 私は竜のことが結婚するくらい愛してるからね、
      そんな愛しの竜に怪我させるような子にはがっつんがっつんいうさね。
      ………いくら強いといえど生き物なんだ、武器と違って死んでしまったら直せないからね。
ディアーナ:そうですね、竜騎士の何人かは貴方に怒鳴られて竜の大切さを気づかされた者もいます。
フランツ:まぁ、ディアーナはたった3年で竜に傷一つ負わせず、戦場を支配するようになったからね、
      私としても嬉しい限りだよね。
      まぁ、お蔭様でここ9年間はなかなかディアーナとは話す機会は無かったけどね。
ディアーナ:ふーん、貴方は私を叱る以外では話してくれないのですか?

 少しの笑いと少し意地悪な表情でフランツをみるディアーナ。

フランツ:んん〜…… えっと。 なんにも用事無いのに話しかけるのとかは…… 
      は、恥ずかしいじゃないかっ。
ディアーナ:だからたまに私の背後で、その長い耳で会話に聞き耳立てて、話しかけるチャンスを探してて?
       『背後から不躾で申し訳ない、ディアーナ様。』っていうより、聞き耳立ててゴメンナサイでは?

 耳の先まで赤くなるフランツ…… 実に分かりやすい男である。

フランツ:ゴメンナサイ………

 実年齢では何百歳も年上ながら素直に謝るフランツ。
 そんな様子を見て少しいじめすぎたかと思うディアーナ。

ディアーナ:ふふ、私もゴメンナサイ、冗談です。
       ………でも、貴方も私よりも、もっと若い娘に話しかければいいのに。

 多少、自分が行き遅れているということを自覚しているディアーナであった。

フランツ:ん? ………いや、私はディアーナだからストークしてるんであって………
ディアーナ:っ! …………えっと、
       …………す、ストーカーはいけないと思いますよっ!
フランツ:えっ、あ、ご、ゴメンナサイ…………

 なんか実にギクシャクな二人であった。

ディアーナ:それで……… 今日はなぜこんな所に呼び出して?
フランツ:ん、あの、明日から迷宮だからお守りを渡しておこうかと思って。

 フランツは懐から木を加工して作った、素朴なお守りをディアーナに手渡す。

ディアーナ:これって、手作りですか?
フランツ:ああ、うちのば―――私の母が父に作ってたものの見よう見まねだから、
     別に魔法の加護があるわけでもなんでもないものなんだが………
ディアーナ:………ありがとうございます。
       私、このお守りに応えられるよう迷宮必ず攻略してみせます。
フランツ:………くれぐれも無理はしないように堅実にね。
ディアーナ:…………はい。
       でも意外でしたね。
フランツ:うん?
ディアーナ:てっきり貴方のことだから『罵倒してくれ』だの『豚野郎と呼んでください』だの言われるかと。

 くすりとディアーナはフランツに笑いかけたが、フランツは真剣な表情で見つめ返してきた。

フランツ:………こんな時の前さ、さすがに私も自分の趣味は控えるさね。
     だからディアーナ、一つ黙って約束してほしいことがある。
ディアーナ:えっ、あの。

 肩を掴まれ、互いの吐息が感じる距離。

ディアーナ:………フランツ。
フランツ:ディアーナ、もしこの討伐から無事に帰ってきたら私に―――
ディアーナ:っ…………










 二人とも緊張から、一瞬がとても長く感じられた











フランツ:私に君の――――――




     ウ○コをくれないか?






 …………一人はいまだに緊張で、もう一人は色んな意味でガッカリ砲すぎて一瞬が長く感じていた。






フランツ:いや!? ちょっとまて! ウン○なんて言い方は貴族的に品がないかね、やっぱ!?
     えっと、お糞をくれないか? かな!
ディアーナ:…………フランツ卿、ちょっと肩を放してノーガードで突っ立ってくれますか?
フランツ:うん? こうかな。

 言われたとうりにノーガードで突っ立つ馬鹿な子。
 ディアーナはそんな馬鹿な子にじっとりと笑いかけ、



ディアーナ:ドラゴン、ア・パ・カっ!!!!!

1HIT! 2HIT!! 3HIT!!!




 ディアーナの放った必殺のアッパーカットで、

 テラスから上空三十メートルくらいに放物線を描いて飛んで、

 裏庭に馬鹿な子が突き刺さった。






 その日、たまたま窓から外の夜空を見ていたハウリ王子のその日の日記には

 『今日は夜、赤い流星が空から降ってくるのが見えた。
  流れる前にお願い事をしようと思ったけど間に合わなくて残念!
  セニティお姉さまにその事を話したら、今度魔法でボクの為に流星を降らすと約束してくれた!
  今からとっても楽しみだ♪』

 と、書いてあったとかなかったとか…………






 再び、
 
 クルルミク王国・ウィドウ侯爵のお屋敷
 
 フランツ私室



フランツ:………っというわけで、これは名誉の負傷ってやつだわね。
     いやー流石に竜騎士のときに身についた受身がなかったら死んでたわね!!

小フリーデ:死ねば良かったのじゃ……………
フランツ:!? は、反抗期かしらうちの子!?













……………クルルミクは今日も平和じゃないけど平和だった。











 それから数日後の話。



酒場『ドワーフの酒蔵亭』

 PTを作り終えたウィルカとフランム

ウィルカ:………タンちゃんと一緒のPTならよかったんだけどね。
フランム:(「選別」発動)「『パーティ内の役割分担は極めて重要である』……だから、ごめん、ね」
      とかタンが言うとはな…………
      友達だのなんだの言って意外とシビアなことを…………

 フランムは少しイラッとした感じで言う。そのときは平気なフリをしたが、内心は穏やかでなかったようだ。

ウィルカ:………でもきっと友達だからだと思います。
フランム:む、それがどういうことだ?
ウィルカ:友達だから…… 本当は一緒にいたいけど、その為にバランスの悪いPTになると、迷宮では危険だから……
フランム:……………本当は一緒に行きたかったというのか?
ウィルカ:はい。だってタンちゃんがあの台詞言った時―――耳が寂しそうに垂れ下がってましたから。
フランム:あぁ…… 無表情だから読み取れなかったが、そうか耳で感情が分かるのか。
ウィルカ:ええ、でもタンちゃんには内緒ですよ?
フランム:む、なぜだ?
ウィルカ:一緒にこないだトランプで遊んだ時それで勝っちゃいましたから。

 てへっ と笑うウィルカ。
 あの時のゲームでは顔の表情だけ見ていたせいで、フランムは惨敗だった。

フランム:ふっ……… 悩んで損をしたな。
ウィルカ:………PT作りでのこと? それともゲームでのこと?
フランム:ふん、さぁな。

 『おーい! 二人とも早く迷宮行ってワイズマン倒すわよ!!』、と彼女達のPTリーダー
 黒騎士アリスが酒場の外で呼んでいる。

フランム:………では行くか! タンやフェリルよりも先にワイズマンを倒してしまうぞ!
ウィルカ:はい!


 二人は酒場から飛び出し、駆け足で迷宮へと旅立った。


 ………そんな酒場から駆け出す様子を、タンは宿屋の窓から見て
 「頑張れっ」
 っと小声で、だが力強く応援した。















『龍神の迷宮』





「我は善を司る聖霊。

龍神の試練を受けし者よ、汝は真に善なる者か?

真に善なる国作りを行える、と確約できるか?」

 

フリーデリケは、自分達は別に試練を受けに来たわけじゃ無い、と説明したが、

聖霊は聞いている様子も無く、口上を述べ続けている

やがて、一行の足元が鈍く光ったかと思うと、

ブザーのような音がした

 

「汝、真に善なる者に非ず。

ここを通すわけにはいかぬ!」

一行は 法則のゴーストに勝利した!

戦闘していたうちに

一行は聖霊の言葉が気になった

自分達は善人ばかりのパーティのはずなのに・・・

そうでは無い嘘つきが紛れているのか?

一行はパーティ会議を開いた

*キャティは観念した!*

キャティの欺瞞がバレた

フリーデリケ:「……あー、やっぱり。キャティさんとは仲良くしていたかったんだけど……」

キャティはパーティからその場で放逐された!

キャティ:ちぇ〜 ばれちゃった。

 トボトボと一人迷宮を行くキャティ。
 彼女のその手には、放逐される時フリーデリケに渡されたドーナッツの入った紙袋。

キャティ:…………こんなもんくれんなら、放逐しなくてもいいじゃないっスかー。

 紙袋にいくつか入ってるドーナツの中から、一つを適当に取り出すとそれは毒々しいぐらいに黄色いものだった。

キャティ:………バナナチョコだっけ?

 ぱくりと一口かじる。

キャティ:!!!  〜〜〜〜〜〜っ!!!!

 裏の裏をかかれた。
 その場に一人うずくまってこらえるキャティ。

キャティ:ううう……… 裏の裏とは―――流石にやるっスね! 婆さんの知恵袋ってやつですかな!!

 一人きりの迷宮に声が響く。

キャティ:…………ふん

 他のドーナツも一口ずつかじる。
 他のドーナツはこの前と同じ―――彼女の好きなチョコチップのドーナツもちゃんとしたモノだった。
 だけど、

キャティ:………なんでだろうなー、美味しくないや。

 とぼとぼと一人
 彼女は迷宮を進む……………………










何百年前
 どこか


 少女が一人悲しくて泣いていた。
 騙されたことが悲しくて。


 だから殺した。
 老人を殺した。
 若者を殺した。
 男を殺した。
 女も殺した。


 誰が騙していたんだろう?
 この遺体の山の何処かにいるのだろうか?
 それとも私が騙していたのか?
 それとも私だけが騙していたのか?
 それとも私は騙していたのか?
 それとも私なんだ 騙していたのは――――

 私って誰だ

 
 私の罪は頑なに
 私の悔いは見せかけで




続かない。