戦乱のヘキサ フェイ
空は晴れやかで遠くまで雲一つない青色が広がっていた。その蒼空は人々の心を洗うようで、辛い現実から心を一時でも逸らす効果としては十分な景色。日々、重苦しい知らせが国中を駆け回り、いくつも建設された砦では二つの国の軍隊が互いを削り合っている。勝っても負けても、どちらの勢力にもそれ相応の損害が生まれていたが、特に女性を主体とした軍隊側が負けたならば命を取られるだけに留まらない。
戦場には絶命の悲鳴だけではなく、女としての尊厳を汚された末の絶叫が響く。
男たちが欲望の埒を開けるのはどこかの戦場で毎日行われていた。
そうした戦火が迫るノード王国にある森の中を、一台の馬車と商人の老人が通り過ぎている。
馬は歳を重ねており、足取りはゆっくり。荷物が崩れ落ちる心配はないものの、治安が悪化している国内でさらに日の光が当たりづらい場所を通るには、老人の不安が大きくなるばかり。
その不安は残念ながら的中し、生い茂る木々の隙間を縫うようにして三人の男が馬の前に立ち塞がった。
「ひっ……!?」
「ヒヒィイインッ!」
突如現れた男たちに老人も馬も驚く。男たちはボロボロになった赤茶色の服を身に纏い、頭には同色のバンダナを巻いている。獲物は両刃の長斧で、空から降りてくる日の光を浴びて煌めいていた。空と異なり木々は背も高く枝葉も伸びているために、林道は対象的に薄暗い。そのため、刃から反射する光は老人にとって特に恐ろしく見える。
治安が悪化し、自分たちを取り締まる者の手が回らなくなっていることを良いことに傍若無人な振る舞いをくり返す野盗たちだ。
「へへへへ! ジジイ! 護衛もつけずに通るなんてよぉ……ちぃいっとばっかし、不用心じゃねーの?」
「まあ、安心しろ。俺等も鬼じゃネーからよ。馬車の荷物全部置いていったら服や身に付けた金だけは勘弁してやるぜえ!」
「ぎゃはははは!」
三人組は馬車を取り囲み、前の二人は馬が逃げ出さないように刃物で牽制する。残る一人は馬車の裏側へ移動し、積み荷を見ようと中を覗き込む。
「…………おお?」
そこで、野盗の男は感嘆の声を上げて後ずさった。
「護衛はいるぞ」
下がった野盗を追うようにして馬車から降りてきたのは、まだ若い女性だった。
深い青の髪をポニーテールに結び、凜々しい顔立ちは可愛らしいと言うよりも美人の領域に入っている。
深緑のワンピース型衣服は腰のベルトで引き締められていて、細いウエストとほどよい大きさをした尻のラインが太股の半ばまでを隠すスカートによって強調される。
インナーは黒の長袖。足は膝の上まで到達するオーバーニーソックスと、同じくらいの長さのニーハイブーツ。背中には長剣を背負っており、鞘と体を密着させるベルトが胸元を斜めに過って乳房を前へ突きだしていた。
「げ……げひゃひゃひゃ! あんたみたいな嬢ちゃんが一人で護衛ってか?」
見目麗しい女剣士に対し、野盗の男は口の端から涎を垂らしながら笑う。
前方にいた男たちも女剣士の背中を見て、足から尻までのラインに口笛を吹いた。
卑猥な視線を集めていることは理解していても、女剣士は特に不快感を表すことなく背中の剣を抜くと静かに告げる。
「大人しく去れば命までは取らない。だが、このまま野盗を続けるなら……」
「はっ! なぁに生意気なこと言ってんだよぉ! てめえは殺さないで散々犯してやるぜ!!」
野盗は手にした長斧を振りかぶり、上段から叩きつけるように振り下ろす。殺さないと言っておきながら、まともに刃が体を抉ればまず助からない。
だが、女剣士は斧の刃のすぐ横を通り過ぎて男に接近すると、右手に持った剣を軽く振るった。
片手持ちにした剣をただ横へと薙いだだけ。
次の瞬間、斧を持った両腕が斬り裂かれて男の前へと鈍い音を立てて落ちていた。
「う……ギャアアアアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛! オ……オレの゛……うでぇええ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」
「汚いな」
血の勢いは荷台の中にまで届きそうで、女剣士は男を背後から蹴り倒した。前方に突っ伏したことで血も地面に迸る。突っ伏した男は地面に口づけしたままで「腕ぇえええ!」と叫んでいたが、すぐに言葉を失って動かなくなった。
一部始終を見ていた二人の野盗は何が起こったのか分からず、身動き一つとれない。
女剣士は剣に付着した血を一振りで飛ばすと、馬車の前に移動する。老馬も女剣士が傍に来ると安心したのか、穏やかに緩めた顔を女性の胸や顔へと押しつけた。
「よしよし。すぐ終わらせるからな」
馬の鼻を一撫でして前に出る女剣士。近づくと共に圧迫感が増し、野盗たちは同時に後ずさりしていった。剣を振るっても馬や老人に迷惑がかからない位置まで移動すると、女剣士は剣を前へと突き出して告げた。
「聞きたいことがある。背中に動物の刺青を掘ったショートソードの達人の男を知らないか?」
その口調は酒場で物を尋ねる時のような、穏やかな響き。
物品を強奪しようとしている野盗にかける言葉ではなく、男たちは怒りに顔を赤く染め上げた。
「お前……なめてるのかぁ!?」
野盗の一人は斧をその場で振り下ろし、刃を道へと叩きつける。鋭い刃は土に半ばまで埋まり、周囲へと土を撒き散らした。
炎のような勢いの怒りを向けられても女剣士は表情を変えずに剣を構え直すだけ。その態度にも怒りを増幅させたのか、斧を地面へ食い込ませた男は斧を手放し、叫びながら飛び出してきた。
「このアマああああああああ!」
道へ食い込んでいた斧の代わりに腰につけたショートソードを抜き、女剣士へと突進していく。女剣士の眉は微かに動いたが、剣技とは言えないほどに描く剣の軌跡は稚拙で、ただ力任せに振り回されるのみ。女剣士にまったく届くことがないまま空を斬り続ける。
「うらああああああああああ!」
「ふぅ」
怒号を上げる野盗と対象的に、女剣士は小さくため息を吐くと一歩だけ前に出て剣を振るった。
その軌跡は、残る一人の目に映らない。
怒りにより赤く染まっていた顔が、仲間が血を撒き散らしながら崩れ落ちる様を見て青ざめていった。
倒れ伏した二人目の野盗は血をたっぷりと乾いた地面へと吸わせていく。一人目と同じように少しの間痙攣していたが、すぐに動きを止めた。
「な……あ……え……あえ……?」
「もう一度聞く。ショートソードの達人だ。背中に獣の刺青がある。例えば、お前たちのような盗賊……他の盗賊団で見たことがあるか?」
「………………し……ら……ねぇよ……」
「そうか。なら……これ以上戦うか?」
女剣士は望む答えを得られなかったことで闘気を薄れさせる。それでも盗賊の男を怯えさせるには十分な気配を残しており、長斧の柄を地面に突いて体を支える杖のように使っていた。
「こ……このまま……舐められたままで終われるかあぁああああああああああ!」
盗賊は柄を地面から離して斧を振りかぶりながら女剣士へと突進する。
だが、斧が振り下ろされる前に女剣士は懐へと潜り込んで剣を振った。
男の目に映らぬ一瞬で三つの剣閃が体に刻まれると、噴き出した血に押されるようにして後方へと倒れる。
女剣士は野盗の後方へと移動していたために血飛沫を浴びることもなく、斬り伏せた男を見下ろして命を奪ったことを確認すると剣を鞘に収めた。
「だ……大丈夫ですか? フェイさん」
御者台にいた老商人に声をかけられて女剣士――フェイは微笑み、馬車の荷台へと戻っていった。
荷台に乗って少し時間が経つと馬車は再び進み始める。静かな振動を感じながら、フェイはこれまでのことを考えていた。
(…………これで、三組目……かなり治安は悪化してきているな)
老商人の依頼を受けて街を出発してから、目的地に向かうまでの間に立ち塞がった盗賊の数。
早朝に出発して午前中に二組。午後に入ってからこの一組。
フェイは荷台に置いたままの荷物から地図を取り出して現在位置を確認すると、あともう少しで目的地へと着く場所まで来ていることを理解した。
王都から少し離れた場所にある小さな村であり、老商人が運ぶ安い物資がなければ困窮するという。御者を雇う余裕がないほど当人も困窮しているが時勢が一人旅を許さないため、なけなしの金で護衛の依頼を出していたのだった。
(さすがに疲れた……でも、油断はできない。しっかり依頼を果たした後で、村で休息は取れるだろう)
野盗を敵としない実力はあっても、体力は女の枠を越えることはない。
足りない筋力は速度やしなやかさで補い、流麗な動きで相手の攻撃を捌き、斬りつける。連戦していれば当然疲労も溜まってくるため、本当ならば半日以上かかるような護衛にはもう一人必要だったろう。
だが、元々安い賞金で老商人の護衛を引き受ける者がでてこなかったため、フェイは自分から手を上げた。たとえ一人でも任務を完遂すると決めて。
そして今、多少の脱力感と共に護衛は終わろうとしていた。
「ふぅうううう……」
また野盗が現れた時に備えてフェイは深くため息を吐くと、体を脱力させて荷台の幌に背中を預ける。できる限り休む為に瞼を閉じ、半分は眠っているような状態に移行すると外の音は最小限しか聞こえなくなった。
だから彼女は気づかない。目的地周辺の空はこれまでの蒼空と異なり、灰色の雲が覆っていることを。
これから天気が崩れて雨が降り、彼女にとっても最悪の時間が始まることなど知ることはできなかった。
* * *
荷台が一度だけ大きく揺れた後で完全に止まり、フェイは再び目を開けた。
森での襲撃からは瞼を開くことはなく、道が荒れていることを除けば快適な旅だった。
荷台から降り、凝り固まった体をほぐすように両手を組んで空へ掲げて体を引き伸ばす。思わず唸り声を出してしまいそうになるが、周囲に人がいるために気恥ずかしく、口元をキュッと絞る。
深くため息を吐いて両腕をだらりと下げると、改めて今いる村を確認した。
(小さいな)
最初の印象はそれだけ。村の入口に馬車は止まっているが、そこから見回しただけで村にある家を全て視認できた。
単純に数えただけなら十ほどしかない。村と呼称するにも規模が小さいかもしれないと思える。それぞれの家には畑が耕され、あるいは家畜が飼われている。荷馬車が来ることによる物品の購入以外では自給自足で生計を立てているのだろう。
「フェイ……さん……今回は本当にありがとうございました」
ぼーっと村を眺めていたフェイは老商人が傍に来ていたことに気づかず、一瞬だけ体を震わせる。だが、動じた心もすぐに穏やかになり、差し出された金貨入りの袋を丁寧に受け取った。
「仕事だからな。ここから出る時は……どうするつもりだ?」
「それは大丈夫です。この村出身の、懇意にしている冒険者がちょうど家に戻っているのです。帰りは彼女に護衛をお願いするつもりです」
「そうか。では」
フェイは老商人に頭を下げると村の中へと歩き出す。そのまま商人は荷台から荷物を運び出し、商いの準備を始める。フェイは体の中に生まれた淀みを霧散させるために、宿屋へと向かった。
(事前に聞いていた情報だと……宿屋というより個人宅の一部屋ということだが……休めればいい)
ただ荷台に揺られているだけでも体の節々が痛む。特に腰は怠くなり、簡易的なベッドでも横になりたいという思いは強くなった。
空を見上げれば青色はどこかへと消えて、くすんだ灰色の雲ばかりが浮かんでいる。一雨くるかもしれないと判断し、できるだけ早く宿屋を探そうとまた周囲を見回した。
「ギャアアアアアアアアアアア!!!!!?」
顔面を左右に引き裂かれたような絶叫が聞こえて、宿屋を探していた視線は一瞬で吸い寄せられた。
反射的に剣を背中の鞘から引き抜いていて、一瞬にして戦闘態勢を取る。次の瞬間、鼻先へと雨粒が当たって静かに雨が降り始めた。
雫が線となって視界を通り過ぎていくと遮られてしまうが、それでもフェイの目には噴き出す血飛沫がはっきりと映り込んでいた。全力で駆け出すが、早足で今いる場所まで移動していたことで入口からは距離がある。フェイが入口傍に到達するころには荷馬車が真っ二つに粉砕されて、侵入してきた荒くれ者たちが村の方々へと駆け抜けていった。
「ギャハハハハッハア! おらあああああああ! 金目の物を巻き上げてこぉおい!」
村中に響き渡るような大声で叫んだのは上半身裸で禿頭の男だった。
体格はよく、バラバラと散らばっていく他の男たちと比べて明らかに筋量が違う。
フェイの体と比較すれば三倍はあるだろう。手には刀身が片刃で先端に行くほど反り返っている剣を持っており、剥き出しの肩へ峰を乗せてゲラゲラと笑っていった。
襲撃に気をよくして笑っていた禿頭男は、目の前にフェイが立っているのに気づいて顔を醜悪な笑みに歪めた。
「おおお!? もしかして冒険者かぁ? 村に雇われたのかぁ?」
「たまたまここにいるだけだ。それでも、無法を見逃すわけにはいかない」
フェイは剣を正眼に構えると僅かに剣先が重く感じる。何千回とくり返し覚えた自らの流派の型は体の違和感をフェイへ伝えてくる。体調が悪い方向へと変化していることに気づいたものの、やることは変わらない。体調も踏まえた上で戦えば良いだけのこと。
「おお! 頭ぁ! この女、めちゃくちゃ上玉ですぜ! アジトに持ち帰って楽しみましょうぜぇええええ!」
禿頭男の背後から出てきた男はゲラゲラと笑いながらフェイへと接近する。その姿はさっき、森の中で襲ってきた者たちと同じ。フェイは振り下ろされてきた剣を受け流し、そのまま胴体を斬り裂いた。
「グボアアアッ!?」
斬り裂かれた傷から血が吹き出る内臓が飛び出し、すぐ絶命したと分かる。
禿頭男も付き従う男たちも一瞬の交錯だけでフェイが尋常ではない実力を持っていることを理解したのか、後ずさった。
サァアアアア……と空から降る雨が音を立てる。
量は少しずつ増えていき、フェイの髪や服をしっとりと濡らしていく。再び正眼に構えた刀身にも雫は付着して、柄に向けて流れて来ていた。
(少し、まずいな。雨が体温も奪ってくる……それは相手も同じかもしれないが)
水分を含んだ衣服が肌へ貼り付くと、動くことで発した熱が即座に奪われていく。
体を守るということを考えれば禿頭男の上半身裸という格好は非合理的だが、この場では正解かもしれない。
「なら、早々に終わらせるだけ」
フェイは腰を落とすと正眼に構えていた剣を右後方へと流す。あからさまな攻撃態勢をとったことで野盗たちは一様に体を硬直させた。だが、次の瞬間にはフェイの死角から大声が聞こえてそちらに視線が向いた。
「グギャアアアアアアッ!?」
「ギャンンッ!?」
「ハアアアアアアアアアアアアッ! でやあああ!」
野盗たちの絶叫と、気合い十分の女声。少し離れた場所でも戦闘が行われている気配が雨粒の隙間を通ってフェイにも伝わってくる。目の前の野盗たちから目を離すわけにはいかなかったが、背後で戦闘を繰り広げていた女の方から入口へと近づいてきて並び立った。
「あんたたち! この村にはあたしが手を出させないよ!」
フェイは視線を少しだけ横へ向け、女剣士の姿を見た。
赤い半袖のシャツに膝丈のスカートという服装で、防具を一切身につけていない姿は剣士に見えない。雨に濡れてシャツは肌に貼り付いており、下着も身に付けていないのか乳首の形が浮かび上がっている。
彼女が老商人の言っていた「実家に戻っている冒険者」で、くつろいでいたところを剣だけ手にして飛び出したといったところだろうと、フェイは自分の中で考えを纏めてから意識を野盗たちへと戻した。
「あなたが誰か知らないけど、協力してよね! あたしはナリアよ!」
「フェイだ!」
視線は送らず、名前を名乗っただけでやりとりを済ませる。ナリアもそれ以上は語らずに野盗たちを睨みつけた。
「へぇえ……女の剣士が二人かぁ……楽しめそうだなぁ」
巨体の後ろからまた男が出てくる。
トゲトゲしい短髪の男は片目に眼帯をつけていたが、視界が遮られていても全く支障がないことをフェイは立ち振る舞いだけで理解する。全身の産毛が総毛立ち、これまで撃退してきた野盗とは力量がはるかに違うことも感じ取った。
「オレぁあっちの方をやる。てめぇはあの青髪の女だ。頼んだぜ、ジド」
「あいよぉ」
禿頭男がそう言った瞬間、短髪男ジドは飛び出して腰のショートソードを引き抜いた。
フェイに接近してくる速度も剣が振り切られる速度も、認識が遅れるほど凄まじい。
それでもフェイは刃を立ててショートソードの一撃を受けたが、衝撃に押されてナリアから離されてしまった。
「ぐっ……!?」
「なるべく殺したくないからよぉ! 大人しくしなあ!」
ショートソードの連撃をフェイは次々と剣で受ける。その度に柄まで痺れが広がり、両腕から剣が弾かれてしまいそうになるのを必死で堪える。
不意を突かれた最初だけではなく、その後の連続攻撃にも攻勢に出る隙がない。
(この男は……強い!!)
フェイは目の前の剣士の力量を改めて認識し、大きく飛び退いてショートソードの範囲から外れた。着地した瞬間に泥が跳ね、ぬかるんだ地面に足を僅かに取られて体勢を崩す。バランスが崩れた姿を見て、頭目の危機に戻ってきていた野盗たちの一人がフェイへと背後から襲いかかった。
「げへへへへへっ! 女剣士ウマソォオオオオギャアアアア゛ア゛ア゛ア゛ッ!?」
野盗の腕が体へと触れる寸前にフェイは剣を一閃し、絶命させると同時に身を躱す。フェイと即座に立ち位置を入れ替えた男は地面に突っ伏して血が雨に流れていく。
「お前等じゃ勝てねぇ! 略奪続けてろ!」
ジドは吼えてフェイへと突進する。野盗たちは指示の通りにフェイたちから離れ、再び村人の家まで駆けていく。その後ろ姿を見て追いかけようとしても、ジドがショートソードを振り下ろしてきて受け止めるしかない。
「ぐっ……!」
「へへへへ!」
力では男に勝てず、フェイは剣を横に倒して受け止めていても背後へ押されていく。
刀身を打ち合わせたジドの顔が近づいてきて、フェイの顔を舐め回すかのように舌を大きく動かしてきた。
「一つ……尋ねる……」
「あ゛あ゛? なんだぁ?」
「背中に……獣の刺青をした……ショートソードの達人を……知らないか……?」
一瞬でも気を抜けば力で押し切られてしまう。フェイはそれでも聞きたいことを口にしていた。力で押さえつけようとしてくるジドに対して余裕はない。それでも質問してくる内容に興味を持ったのか、ジドは微かに力を弱めて質問を返した。
「なんだ? 獣の刺青……?」
「そうだ。髪の色は燃えるような赤……短髪だ」
「ショートソードの達人……背中の刺青……赤い髪……噂には聞いたことはある……」
「噂……」
「ああ。一時期、どっかの盗賊団の用心棒してたっていうな。今は知らないが……この国にはまだいるんじゃないか?」
互いの命を奪いかねない鋼を挟み、会話を続ける二人。フェイは全身に力を込めていることで汗が吹き出し、額から流れ落ちる。体からの汗は降りしきる雨と共に衣服を濡らし、体温も奪っていく。スカートも太股に貼り付いて、うっすらとではあるが下着のラインが見えていた。
「寒くなってきたからよぉ……そろそろ終わりにするか?」
「………………ああ」
大きく金属が弾かれる音が二人の間で響く。ショートソードを受け止めていたフェイは渾身の力で刀身を弾くと同時に後方へと飛び、地面へ左足を叩きつける。ぬかるんでもなお滑らないようにつま先は地面を抉り、泥水がブーツの膝あたりまで飛び散った。
弾かれたことでバランスを崩したジドは素早く体勢を整える。今度はフェイが体勢を低くし、ジドへと剣を繰り出していた。
「うおおっ!?」
一瞬で首元まで迫った刃をジドはかろうじて受け止める。そこから鍔迫り合いが起こることはなく、すぐ刃は収められて今度は逆方向から首を狩りに来た。連撃を受け止められず、ジドはさらに後退するがフェイの突進の方が動きは速い。体を回転させながら解き放たれる剣はジドの左腕を捉えて血飛沫を上げる。
「グアオオオオ゛オ゛オ゛オ゛ッ!?」
二の腕を斬り裂き、剣の軌道に合わせて血が飛んでいく。斬られた反動でジドはたたらを踏み、倒れそうになる体を支えるのに必死になっていた。
「飛燕流――――」
少し息を吸い、止めてからフェイは前へと踏み出した。
その動きは激しい雨に打たれているために、ジドの目にははっきりと映り込む。
燕が滑空するような動きで急接近してきたフェイが剣を一閃する。
防御するためにショートソードを構えようとしたジドだったが、フェイの動きはこれまでと比べて数段速かった。
「飛燕・三断」
雨音に隠れた言葉と共に放たれた一撃は、ジドの体に三つの傷痕を生んだ。
たった一つしか見えなかった剣筋が三つに分裂したかのよう。実際には体裁きによって剣を三度振るっているのだが、ジドは遂に命尽きる時まで理解することはなく、フェイへと襲いかかってきた野盗以上に大量の血を大地へ注ぎ、あっという間に血だまりが広がって顔まで埋まっていた。
「フッ……フッ……ふぅうううう……」
呼吸が止まっているのは背中が停止している様子からも見て取れる。フェイは雨によって額に貼り付く前髪をどかしながら深くため息を吐いた。
(飛燕・三断でなければ倒しきれなかった……)
思ったよりも強敵だったという程度であり、フェイは少しだけ振り返るとジドの事は考えなかった。民家へと略奪に向かった男たちを止めるか、野盗たちの頭と対峙しているはずのナリアを援護するか、二つに一つ。しかし、雨に揺らめくフェイの視界に飛び込んできたのは、禿頭男の腕の中でぐったりとしているナリアの姿だった。
「まずい……」
フェイはジドの死体を飛び越えて禿頭男の元へと向かう。既に相手はフェイがジドを殺した事に気付いていて、表情は引きつっていた。だが、焦燥に沈むのではなく笑みを浮かべている。丸太のような腕をナリアの首へ巻き付けた禿頭男は、声が届くところまでフェイが近づくと鋭く吼えた。
「おい止まれ! この女がどうなってもいいのか!?」
反射的に足は止まり、泥によって前方へと体が滑っていく。それもすぐに止まったところでフェイは剣を構えて禿頭男を牽制した。
「お、お前の仲間だろう? こいつは……あまり強くはなかったなぁ……俺を相手にするにはよぉ……で……でも……お前はすげぇな……ジドをやっちまうなんて……あいつに払う金が明日からいらないってのは……いいもんだがよぉ……代わりを探さないといけねぇなぁ……」
聞かれてもいないのに次々と語っていくのは余裕がない証拠。フェイは顔に焦りを出すことはなかったが、禿頭男の様子を見て心を落ち着かせていく。一つ間違えば一つの命は失われるが、そもそもフェイが保障すべき命ではない。
「お前の思い通りではなくてすまないが、その少女は私のツレではない。この村出身の冒険者だ」
「……な……んだと……?」
「だから私には彼女を救う理由はない。確かに、死んでしまえば寝覚めは悪いだろうが……【助けなければいけない命ではない】」
重要な部分を強調すると禿頭男の顔がみるみるうちに青ざめていく。実力差を理解したフェイに対して勝てる算段があっただけに、興奮して赤みが差していた顔から血の気が消えるのは隠しようがなかった。
一方のフェイは、事実だとしても言い切ることには胸が痛む。
彼女の目的は獣の刺青を背中に掘ったショートソードの達人の男を探すこと。その男に合うまでは死ぬわけにはいかず、何よりも優先順位は高い。フェイには誰かの命の道ずれになるわけにはいかない事情があった。
だからこそ口にしたのは事実だ。
そして、それを事実の通りに割り切れないところが、彼女の甘い部分でもある。
(あの男がナリアの首をへし折るよりも早く、腕だけを斬り裂く)
意識を禿頭男へと集中する。雨はさらに強さを増して、まるで滝行をしているかのような錯覚に陥っていく。
ザーッとけたたましい音によって耳も埋まるが徐々に聞こえなくなっていき、呼吸に合わせて心臓が穏やかな音を立てると耳孔に鳴り響いた。
集中力が最大にまで高まると周りからの気配はほとんど途切れて、世界には禿頭男とナリアしかいないように思える。
(最速の一撃を叩き込む。あの男が緊張に息を入れる瞬間を狙って……)
禿頭男はフェイからの圧力に息が荒くなる。喉から腕を放してしまえばオシマイという思いが残っていて、かろうじて巻き付かせていた。
その拘束も息が切れる瞬間と気持ちが途切れる瞬間が同時に訪れれば、フェイの付け入る隙となる。
(焦るな……集中しろ……他のことは考えずにあの男の腕だけを……)
フェイの集中力は高まり、発する気配は禿頭男をその場に縫い付ける。もし、ナリアが意識を取り戻したならば苦も無く拘束を外すことができただろう。
だが、フェイは忘れていた。
今の状況は、荷馬車を襲う数人の野盗を相手にしていることではないということを。
雨で体が冷えることで、彼女の思考力は奪われていたことを。
「――――――っ!?」
フェイを禿頭男との二人しかいない世界から引き戻したのは、右腕に突き刺さった小さな矢からの痛みだった。
服ごと肉を貫通する威力はなく、鏃が食い込んで激痛を走らせただけ。
「くっ……!」
フェイが腕を振っただけで矢はその場へと落ちる。
だが、落下するのは矢だけではなかった。
「ぁ…………」
全身があっという間に痺れていき、フェイはその場に座り込んだ。
剣も手放してしまったが、傾きかけた体へとかろうじて力を込めることで倒れることを防ぐ。
だが、そこが彼女の限界。
体を濡らす雨の冷たさと火照る体の熱さが体の表面で重なり合って身震いが止まらない。
指先まで痺れてしまい掌は開く。首を傾ければ体が倒れてしまいそうで、視線だけを痛む腕へと向けた。
「ハッ……ハッ……ハッ……はっ……はっ……はっ……ぁ……」
傷は見えない。しかし、全身へと広がっていく痺れの中心地は間違いなく矢が穿たれた場所。痛みよりも痺れの方が強くなり、フェイは視線を前へと戻した。
「へ……へへへははははは……あぁああははははは……ざまぁ、ねぇなぁ……」
気づいた時にはナリアを手放した禿頭男が目の前に立っていた。ギラついた瞳で見下ろしてくる男に対し、フェイは逆に瞼を閉じる。
意識の喪失と共に感覚も完全に途切れ、力の抜けた体がどうなったのか理解することはできなかった。
* * *
『はぐっ……うぐっ……あっ……うっ……もっ……やめっ……よっ……』
『くはははは! いいざまだなスレイヤ! てめぇの女言葉を聞くのも、もう少しかあ!』
それは師匠が無残に犯される光景だった。
飛燕流の教えを受けた師匠・スライヤは同じ女ながらも桁違いの実力を持ち、まず負ける姿を想像することが出来なかった。
女性の剣士や冒険者が敗北の末に辱めを受けるのは聞いていたが、スライヤには永久にその時はこないと信じていたのだ。
『アッ……アッ……アッ……アッ……アッ……アッ……』
だが、倒れ伏したフェイから離れた場所でスライヤは男に組み伏せられていた。
晒された背中には何かの刺青が掘られているが、激しく動いているために正確には見えない。仰向けに倒れ、両腕を押さえつけられたスライヤは必死に男から顔を逸らしていたが、顔は紅潮し、瞳からは涙が零れ落ちている。スライヤの涙も見たことはなかったフェイにとって、女として辱められているのは嫌でも性の差を突きつけられて、胸が痛んだ。
『やめて……師匠……師匠……を……』
『アアアッ!? アッ! グッ! ウグッ! ヒッ!? グウッ!? アウッ!? アアアッ!? アッアッアッアッアッアッ――』
フェイのか細い声はスライヤの嬌声にかき消される。
普段から聞いたことのない声を聞かされるだけでも息苦しくなった。
(師匠……許さない……あの……男……の、あの……刺青の男だけは……)
映像や音が遠ざかり、見ているのが夢なのだと理解する。意識が少しずつ覚醒していくと、今度は自分が夢を見ている理由そのものが気になった。
周囲の映像は消え去り、暗闇が残る。もう一つ残っていたのは、聞こえてくる嬌声だった。
「アアッ!? アンッ!? あんっ!? アアンッ!? はぁっ……ンンッ……ハウッ!? アア……ウッ……アアアアッ……キャアアアッ! イッ……ヤアアアアアア!!!!」
弾かれるように瞼が開かれ、涙に濡れた視界がぼんやりとする。瞬きをするとすぐに涙は零れ落ちて、鉄格子ごしに大人数の男が見えた。
「なっ……!?」
男たちの大半は服を着ていたが、部屋の中央にたむろする数人は全裸。
彼等に組み伏せられているのは自分と変わらない少女。一糸纏わぬ姿は特徴が少なかったが、髪の毛と顔つきを見て、かろうじてナリアという名前を思い出した。
(なんだ……まさ……か……)
動揺する頭とは異なり、体はナリアを助けようと動く。だが、両腕は後ろ手で拘束されていて動かせず、体はごろんと転がった。水に濡れた服は乾かされていないため、床と触れてベチャリと音を立てる。
部屋の中心で繰り広げられている凌辱劇に大半の男たちは目を向けていたが、フェイの傍にいた男は水音を聞いて彼女の方を振り向いた。
「おお!? 目ぇ覚めたみたいだぜぇえええ!」
「ヒュゥウウウウ! よっしゃああ! 早速加えようぜ!」
「げひゃひゃひゃひゃああ!」
あっという間に男たちの視線がフェイへと集まる。全身を貫いてくる卑猥な視線にフェイは鳥肌が立った。
ただでさえ濡れて冷えた体に毒となる視線から逃れようとするフェイだったが、自分のいる場所が部屋の一角に鉄格子をつけた簡易牢屋だと理解すると硬直した。
(捕まった……か……死ななかっただけでも……)
命があるだけでも良いと考えかけて、夢のスライヤと現実のナリアを思い出す。
敗北した女に待っているのは陵虐の嵐。
フェイは歯を食いしばり、出ていこうとする悲鳴を何とか押さえ込むのに必死になる。
動きを止めたフェイを見ながら牢屋へと入ってきた男は胸ぐらを掴み、強引に持ち上げた。
「うっぐっ……」
「女一人じゃ全然足りなかったところなんだ……相手してもらうぜ!」
「……だ……誰が……そんなことを……ウッ!?」
睨みつけても男の行動は止まらない。胸ぐらを掴んだ手を引き、牢屋の外へと運んでいく。身動ぎして抵抗するものの、力はあまり入らずにあっさりと引き出されて床に転がされてしまった。
「あっぐっ!? ウグッ……」
「ぎゃはははははは!」
「ひゃはははははあぁあああ!」
下卑た笑みを浮かべる男たちに取り囲まれて、フェイは体を丸めるようにして胸元や下腹部を反射的に守った。その動きにすら興奮した男たちは男根を膨らませている。
ナリアを凌辱している男は二人。他には六人の男たちがフェイを取り囲んでいる。
その中に自分が対峙した禿頭男はいなかった。
「オォオオラッ! お前ら楽しんでるかぁ!?」
人垣の向こうから扉を荒々しく開ける音と共に聞き覚えのある声が届く。
群がっていた男たちはばらけ、入口からフェイまで一直線に空間を繋げた。
晴れた視界の先にいたのは下半身まで露わにした禿頭男。そのイチモツは斜め上にピンと伸びており、既に獣欲に満たされていつ爆発してもおかしくはないようにフェイには見えた。
「おおお! 目ぇ覚ましやがったなぁ……こいつはオレが最初に串刺しにしてやるって決めてたんだ!」
禿頭男は野盗たちの間をすり抜けてフェイの目の前にやってくると、ペニスを眼前へ突きつけた。亀頭は赤く充血し、竿は黒光りしている。本来の肌色と比べて焼け焦げたように色を変えている肉棒からは魚が腐ったような臭いが漂ってきて、フェイは視線を外した。
「アッグッ……ウグアッ……」
だが、背後からポニーテールを捕まれて頭を持ち上げられるとそのまま禿頭男へ髪は渡されてしまう。
力任せに引っ張り上げると毛根から引き抜かれそうな激痛が頭に満ちて、フェイは自らの足で立ち上がった。
「ギッ……は……なせ……!」
「まだまだ威勢がいいみたいだが……いつまで続くかな!!」
禿頭男は髪の毛から離した手をすぐさま胸ぐらへと移動する。
インナーの黒い長袖シャツの胸元も一緒に掴んで引っぱると、濡れた生地が肌から離れる心地よさにほっとしてしまう。気を緩める状況ではないが、不快な感覚から逃れられるのは甘美な誘惑だった。それも禿頭男の膂力によって一瞬で崩壊する。
「うるぁああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
掴まれていた箇所から腕が左右に開かれる。布地も同じ方向へと広がっていくが、伸びきった布地に残されているのは断末魔のみ。ついさっき聞いた扉が開け放たれた時のような耳障りな音が届いたのと、胸元が引き裂かれて形の良い乳房が衆目に晒されたのは同時だった。
「………………き……キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!?」
乳房だけではなく、中央にポツンと勃った乳首まで晒されてしまったことでフェイは絶叫していた。
女剣士として、感情をできるだけ出さないようにしていたフェイでも抑えきれない。これまで苦痛以外の感情を見せていなかった野盗たちも変貌ぶりに股間を今よりも膨らませていった。
「ギャハハハハハア! 女らしい悲鳴もあげられるだろうが!」
「最初からそんな風に女女してればよかったんだよお!」
「ハハハハハ!」
引き裂かれた服を掴まれることで立つ体勢を保っていたフェイは、腕から逃れたくて体を揺さぶる。引き裂かれた布地はそれでも形を保とうとしているため、禿頭男自らがフェイを床に押し倒すまで裂けなかった。
「ウッグア゛……!?」
両腕が腰と床に挟まれて痛みが走る。苦痛に顔を歪めるフェイに構わず、禿頭男はフェイの肉付きの良い太股を鷲づかみにすると左右に思い切り広げた。
股関節が脱臼しそうになるほどの強さで開かされてしまい、スカートがまくれて黒の下着が見える。それはただの下着ではあるが、スカートという服装のことも考えて、多少見られても恥ずかしさを軽減できるように生地は厚かった。
しかし、直接触れられて指で股間を擦られてしまえば生地の厚さなど関係はなかった。
「フグッ!? ヒッ……キャッ……あっ!? や……やめろ……! 触る……な……!」
股間だけではなく剥き出しにされた乳房にも手が伸びる。禿頭男だけではなく周囲の野盗たちもフェイの体を弄び始めた。
肩や腕を掴まれて押さえつけられると乳首がツンと上を向く。
仰向けに倒れても形の崩れない若々しい乳房の感触を指先で味わうように、いくつもの掌が胸に殺到する。
直接掌で圧迫した後で指の腹を滑らせ、きめ細やかな柔肌に赤い痕がついていく。
腹だけではなく爪が立てられ、乳首の周りや腹部から疼きが生まれる。
胸元から臍の近くまで服が裂けていて、野盗たちの掌は内側へと滑り込むと裂け目の方が大きくなった。
「ゃ……アッ……やめ……やめろおおおおお! イヤッ……ヤアアアアアアアアアッ!」
腹部からも横へと亀裂が入り、上半身は完全に開かれてしまった。
肩から乳房、そして脇腹まで肌が露わとなり、後ろ手に縛られていなければ服そのものを脱がされていたかもしれない。
開いたまま固定されている両足の間では禿頭男が太股をさすっている。両手で太股の内側から外側、そして下腹部まで指が動き回る。気持ち悪さに鳥肌が立ち、滲んだ汗を指先が吸いこんでいった。
「ひひひ……もっと悲鳴上げろぉ……抵抗しろぉ……」
「うっ……ううっ……!」
下着に指がかかり、少しだけ肌から浮かされる。服と同様に雨で濡れていたために隙間ができ、濡れた陰毛が布地に付着して立ち上がった。
「ぐうううっ……ううっ……フッグッ……ン゛……!」
頭が熱くなり、視界は濡れて揺らめいていく。涙腺が緩んで涙が溢れてくるのをフェイは止められなかった。その涙を見た野盗の一人は顔を近付けてマジマジと見つめると、全員に聞こえるようにして吼える。
「おいおい! この女泣いてるぞ! 泣いてるぞおおおお!」
「正義の剣士様も所詮は女だなぁあああ!」
『ゲラゲラゲラゲラ――――』
部屋の中が嘲笑で満たされる。すぐ近くではナリアがレイプされているはずだったが、声は聞こえない。
代わりにフェイの頭の中を満たすのは自らの心臓の音と、下着を脱がせていく禿頭頭。
できる限りの抵抗として太股がわずかに内側へと閉じられたが、膣の割れ目がはっきりと晒されたところで誰かが伸ばしたナイフにより布地は斬り裂かれた。
「――――――!!!!」
口を閉じると息が止まる。フェイの陰毛の下にある女性器が遂に現れていた。
震えるフェイの顔は耳だけではなく胸元まで赤みが広がった。大量の汗が流れ落ちるのは変わらず、乳房まで汗まみれで光が反射する。
「ふぅううん……この色は……間違いなく処女だなぁ……」
「ギャハハハハッ! 処女っすかあ!」
「おい! 処女に賭けてたヤツの勝ちだってよぉ!」
「あとで紙確認しておけぇええ!」
股間へと亀頭が近づいていく間に野盗たちも互いに言葉を交わす。その意味を理解することはなく、フェイは膣口に触れた亀頭の熱さに涙が溢れた。
「ぉ……ねが……や……やめ……」
喉に言葉が引っかかり、外へと出て行かない。巨体の男に組み敷かれ、性器に亀頭が押し付けられている。カウパーによって濡れている亀頭はねっとりとした水音を立てながら少しずつ膣の中へと自分の分身を入れていく。十分に濡らされているわけではなく、むしろ何もないまま処女を奪われようとしている。固く狭い処女穴をペニスは入口から拡張させて、骨盤を圧迫していた。
「あ゛……あ゛……あ゛……い゛……い゛ぎ゛ぃ゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!? や゛……あ゛……アアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
亀頭が進めば膣壁が抉られていく。太い肉棒が奥へ進めば進むほど骨盤が広げられていく。
その感覚は、引き裂かれた服の内側へと入り込んだ手が左右へと引き裂いていく時と似ていた。
膣の中を擦れるだけでも血が流れるのに、周りの骨盤ごと外へ押しだしていくと下腹部の形は変形していく。
これまで肉体を鍛えてきたからこそ理解できる。
自分の意思とは関係なく、下半身の歪みは大きくなっていくのを感じる。
(やめろ……やめ……このままでは……あ……ああああああああああああああ――――)
心の中の願いは、外には届かない。
醜悪な笑みに汗を流しながら禿頭男は自分の肉棒を一気に根本まで仕込んだ。
一際大きな衝撃と激痛の末に、フェイには股間の中で何かが千切れた感覚を得てしまった。
――――フェイは処女を失った。
「ぁ……い……痛っ……いっ……ひっ……ぐっ……」
「へへへへえぇ……痛かったかぁ? まあ、処女にはオレのモンは大きすぎたか」
「アッグッ!? あぐっ!? アアッ!? アゥウアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
禿頭男はすぐに腰を掴み、荒々しい抽送を始めた。一気に引き抜くと結合部からは血が溢れ、すぐに突きこまれれば中に溜まった血が勢いよく飛び出す。
禿頭男の下腹部とぶつかり合って水に濡れた音が立ち、ぶつけられたところから激しい痛みが波紋のように広がった。
連続し、何度も突かれ続けると、亀頭はただ膣内を前後に移動しているわけではないと悟る。一突きごとに亀頭や竿が擦れる内部が微妙に変わっていた。突きこむ角度を都度調整していて、フェイの反応が強く出る部分を見極めているかのよう。
「アッグッ!? ア゛ア゛ア゛ッ!? ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛! ア゛ン゛ッ!? ア゛ッ! ア゛ッ! ア゛ッ! ア゛ッ! ア゛ッ! ン゛ッ……ハグッ!? ウグウ゛グッ! ン゛ッ……ン゛ッ……ン゛ッ……ン゛ッ……!!!!」
口を強く閉じ、背中を仰け反らせる。自分から背骨を折るかのような動きをして骨の軋みが大きくなっていく。繋がっている股間も、何度も下腹部が叩きつけられたことで痺れが強まり、頭蓋骨が割れるような痛みが襲ってきた。
「ア゛……ア゛……ア゛……グッ……ウ゛……ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ッ!? ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
これまでの人生で出したことのないような絶叫に喉も裂けて血が出そうな痛みが走った。醜い声に反応して野盗たちはゲラゲラと笑う。倒れたままのフェイの額へ別の肉棒が置かれると、先端から流れるカウパーを額の汗とブレンドさせていった。亀頭からの匂いが鼻腔をくすぐり、吐き気が込み上げる。だが、異物の挿入で内臓全てが萎縮しているように胃液も逆流はしていかない。
「ガハッ!? ハッ……アッ……グッ……フッ……フッグゥ……ンッ……グッ……ギッ……や……め……ア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッ――――」
禿頭男の腰は高速で動き、血だけではなく愛液まで滲み始める。
快楽を得ているわけではない。今は股間の内側が熱を帯びて、傷口を毎回抉られる痛みに襲われていた。
フェイの涙は涸れることはなく、頬から耳元まで撒き散らされていき、絶叫を続けている喉は逆に枯れ始めた。
「ガハッ!? ハッ……あ゛……ッ……ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ……ア゛ッ……ア゛ッ……ア゛ッ……ア゛ッ……」
「どうしたよお! ジドを殺した時の威勢はよお! オラオラオラオラァアアアアアア!」
ジュチュジュチュジュチュジュチュジュチュジュチュ…………
水音と下腹部同士ぶつかり合う音が部屋中に響く。
顔を舐め回すように動いていたペニスも離れ、野盗たちはフェイの上半身を掴んで身動きを完全に封じる。その間にも乳房を揉みしだき、乳首をひねり上げて刺激を与えるのは忘れない。固定されて弄ばれている上半身と、極太の肉棒を突き刺されて膨らむ股間。フェイはかろうじて瞼を開き、蹂躙される自分の体を見て悲しみが溢れ出す。
(こ……んな……や……やめ……もう止めろ……このままじゃ……あ……)
何十回もの抽送の先。傷口をえぐり続けた亀頭は遂に性感帯にまで届く。
血塗れの亀頭が擦れただけで鋭い痺れが走り、意識が真っ白になっていく。
すぐに痛みから白さは消えるものの、これまで得ることのなかった快楽を意識するようになってしまったことに悪寒が走る。
「ファッ!? ア゛ッ! や……めろ! これ以上……動く……アッ!? やめ……やめろ! やめ……ギッ……イギッ!? 痛ッッッ!? ゥフアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
自分の持つ力では、止めるように懇願することしかできない。
だが、禿頭男の腰の動きはより激しくなり、最後には肉棒が膨張したところで動きを止めた。
「アアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
ビュビュビュビュビュビュビュビュ――――!!!!
子宮口へと勢いをつけて叩きつけられる粘ついた液体。
禿頭男はフェイの膣内へと存分に精液を注ぎ込んでいた。
血に染まった膣内が白濁液に飲み込まれ、結合部の隙間から激しく外へと出て行く。相手の股間は白と赤が混じり合った液体によってグチャグチャになり、床へと濃厚なピンク色の液溜まりが広がっていく。
処女を失った挙げ句に精液まで注ぎ込まれ、フェイは胎内を汚されたことが悔しくて大粒の涙が浮かんできた。
「うううっ……うっ……ぐっ……」
「ぎゃはははは! 気持ち良かったなぁ……って、こんなので泣いてるんじゃあ、この先耐えられないぜ?」
「グッ!?」
禿頭男がペニスを引き抜き、膣が解放される。その開放感が心地よく、流し込まれた精液が外へ出ていき、僅かに膨らんでいた下腹部が萎んでいくのが分かった。だが、他の野盗たちはフェイから離れず、両手を掴むと自分の股間へとあてがった。
「ぁ……や……めろ……さわらせる……な……ア゛!」
手に意識を逸らされた瞬間に股間へは新たな亀頭が付着する。
腰をよじってもどうにもできず、精液が流れ出してひくついている穴へと二本目が突き刺さった。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ……ガッ……ハッ……ア゛……!! グッッ!」
「っとお! アブねぇ」
絶叫で限界まで開かれた口へと別の肉棒が近づき、亀頭が口内へと入ってこようとしたが、フェイは咄嗟に歯を食いしばってソレを防ぐ。そのまま入れていればイチモツを噛まれていたことは間違いなく、野盗は冷や汗を拭った。
出した亀頭を収めるつもりはなく、フェイの頭へと手を伸ばすとポニーテールを掴んで自分へと引き寄せた。
「グウウ゛ッ! グッ……ウフアアアアア゛ア゛ア゛!?」
「髪の毛使わせてもらうぜぇえ!」
野盗は自分の分身にフェイの髪の毛を巻き付けるとしごき始めた。
毛根を引っぱられ、まとめて力づくで抜かれそうな痛みが連続して訪れる。だが、それ以上に自分の髪が男根に巻き付いている光景を見せられて、屈辱と羞恥に頭が破裂しそうになる。だが、頭を蕩けさせる熱やかき乱す衝動は、膣に続けられる抽送によって全て纏めて爆発した。
「ア゛ッ……ア゛ッ……ア゛ッ……ア゛ッ……ア゛ッ……ヤッ……あっ……ア゛ッ……ア゛ッ……や……め……やめっ……ア゛ッ……ア゛ッ……ア゛ッ……ア゛ッ……」
「そうらあ! 二発目は外に出してやるよ!! ギャハハハハッ!」
「ア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッ――――イヤアアッ!!!!!?」
抽送が一気に荒々しくなり、横隔膜の振動が細かくなって声が途切れない。
最高速を保ったままで野盗は肉棒を膣から引き抜くと、肉棒の先端をフェイの顔へと向けた。
一瞬の静止の後に濃厚な白濁液が飛び出して放物線を描き、フェイの頭から顔面へとぶつかった。
「アッブッ!? ウッグッ!? ゲッホッ!? ゲホッ! ゲホッ! ゲホッ! ゲホッ!」
開かれた口の中にも精液が入り、フェイは苦みによって咳込む。唾と一緒に白濁液を口外へと出すことはできたが、舌に乗った苦みは簡単には消えなかった。
「おらおら! 次はオレだアアア!」
「ギャアア゛ア゛ア゛ッ!!」
間髪入れずに三本目の肉棒が膣へと挿入される。
処女だった最初と二度目。そして、今回の三度目と膣内を抉られる痛みは変わらない。
むしろ同じ場所を連続して擦られているためいつまでも擦過傷は消えず、血は流れ続ける。
禿頭男の精液によって破瓜の血の大半は流れ出し、今はもう新たな傷からの出血が精液に混ざっている。腰を掴まれて、尻を持ち上げられるようにして抽送が始まると乳房が前後に大きく揺れていく。肉棒を掴ませている男たちはその動きを見るだけで股間を熱くし、裏筋をフェイの親指でなぞるように握らせることで、股間へと集まっていく性欲が爆発させた。
「ウッアッアッアッアッアッアッアッアッアッアッ……ハアッ!? アウッ!? アンッ!? アッグアッ! アアッ! アアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
「うおおおお! イクぜえ!」
「ギャハハハハハハハハ!!」
フェイの握る肉棒二つからほぼ同時に精液が飛び出す。矛先はさっきと同様に顔面へと向かっていて、両サイドから額や頬へ次々と精液がふりかかる。ねっとりとした半透明の液体はフェイの顔をゆっくりと降りていき、耳孔へと入りかけながら床へと垂れていった。
「カッハッ……ハアッアッアッアッアッアッアッアッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッ――――」
「オラアッ!!!!」
ビュルルルルルル! と精液が遠慮なく注ぎ込まれている音がする。それも外からではなく、内側から。
膣へと注ぎ込まれる衝撃が全身を震わせて、そのまま骨を伝って耳元まで届いていた。
禿頭男よりも大量の精液が子宮内を満たし、下腹部が膨らむ。
十回以上脈動した後で肉棒はようやく動き止め、自分の白濁液まみれの竿が抜かれていく。
「ハッ……アッ……ハッ……ぁああ……」
ドプリと音を立てて白濁液が外へと流れだす。縦筋に沿い、尻の割れ目にまで入り込むように精液は床を汚していった。
「カッ……ハッ……ハッ……ハッ……ハッ……ハッ……ハッ……」
「おう? どうだあ? 気持ち良くなれたろ?」
精液でべとついている髪の毛を気にすることなく、掴んだ禿頭男はフェイの頭を持ち上げた。再び毛を抜かれそうな激痛によって、様々な感情に焼かれた脳は少しだけ冷える。
真っ赤になった顔に汗を浮かべ、瞳は涙で濡れていた。
「………………ぁ……はっ……ぅ……ぅう……」
フェイは禿頭男を見て口を震わせていたが、言葉は出てこなかった。
「おうおう。この女剣士様はよぉ! もっと欲しいってよぉお!」
『ギャハハハハハハハハ!』
男たちの獣の笑い声が部屋に充満する。その間も近くからは嬌声が聞こえてきていて、フェイの視線は彷徨いながらもそちらを見ていた。
男たちの隙間に見えるのは下と後から腰を押しつけられているナリアの姿。
さらに口にも肉棒が挿入されて、聞こえていた悲鳴は口内へと押し込められていた。
「…………お? もしかしてケツの穴にも欲しいのか?」
「二本刺ししてやっか! ギャハハハハ!」
野盗たちはフェイの腕を掴み、引っ張り上げる。力が入らず、肩が骨から引き抜かれそうな痛みを覚えたことでフェイの瞳には光が微かに戻った。
上半身を起こされ、髪の毛を掴まれて頭を固定されると、視線の先には仰向けになった野盗が見える。寝ていることでそそり勃つ肉棒が強調されていて、その威容にフェイは息を飲んだ。
「そう……れえ!」
「きゃあああああああっ!?」
野盗たちが両側から太股の裏へと腕を差し込み、フェイの体を持ち上げる。宙に浮いたことで膣口から精液が重力に従って垂れ落ちていく。まだ膣内へ残っていた分がほぼ出尽くすまで男たちが視姦してくる光景を見ていられず、フェイは瞼をきつく閉じた。
「う……ぅう……ううぅ……あぁ……も……やめ……て……」
か細く、弱々しい懇願の声が漏れてしまう。
冷たい表情で男たちを相手にしていた女剣士の強さは残っていない。
だが、男たちはこれから始まる二本刺しへの期待感に興奮し、彼女の言葉を聞いていなかった。女らしい言葉を聞くことで男たちはフェイを侮辱したに違いないが、彼女にとってそれが幸福なことなのかは分からない。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
肉棒の先端が膣口へとあてがわれ、そのまま挿入されていく。膣は亀頭を飲み込み、徐々に奥へと滑り込んでいく。数回挿入されても膣はまだ元の形へと戻ろうとしていて、挿入の度に最初へ戻ったような激痛が走った。
肉棒が根本までのめり込むと、さっきまでと異なって亀頭の感触が子宮口に届いていた。
(奥……ふか……すぎ……ぅ……)
口が開き、視界が明滅する。頭の中を何度も拳で殴りつけられているような感覚に苛まれるも、全身が岩のように固まって身動き一つとれない。
そんなフェイの尻肉が開かれて、菊座に肉棒の先端が触れた。
膣に入っているモノよりも明らかに大きく、押しつけられてそのまま中へとめり込もうとすれば血が噴き出す。直腸の壁が抉られてすぐに血が外へと漏れ出し、膣よりも狭いはずの通路を肉棒は停滞することなく進んでいく。膣の中に収まる男性器と一緒に下腹部は圧迫されて、内臓が胎内の様々な場所へと押し出されていった。
「ア゛……ギッ……ハッ……あ……くる……し……や゛……ア゛……!!!!」
「おおお! きっついなあさすがに! 痛ててえててててええええ!」
肛門から胎内を抉っていく男は顔に脂汗を浮かべ、潰されそうになっている分身からの痛みに吼える。それでも引くという選択肢はないようで、尻に爪を立てて握りしめると共に下腹部を押し出して完全に股間と尻がくっついた。
二本のペニスが胎内に収まっている感覚を確かに感じ取る。だが、フェイを襲う激痛の本番は抽送が始まった時からだった。
「アッアッアッアッアッアッアッアッアッアッアッアッアッアッアッアッアッ――――」
高速で腰が動き始める。二本のペニスによってきつくなった下腹に対して男たちは容赦なく亀頭をひっかけるギリギリの所まで引き、一瞬で根本まで突きこむ。その際も速度はほとんど変わらず、むしろ速くなっていった。
痛みを伴いながらも力が同等だからこそ。フェイは喉を削って出ていく呼気によって声も枯れ、意識をなくす。
「はっ……あっ……アッアッアッアッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッア゛ッ! ア゛ッ! ア゛ッ! ア゛ッ! ア゛ッ! ア゛ッ! ア゛ッ! ア――――」
二つの穴に差し込まれたペニスがほぼ同時に精液を放出し、胎内を白濁液にまみれさせる。
男たちは、脈動を続けている間は腰と尻を引っぱって自分の股間へと押しつけ、精液を思う存分に注ぎ込んでいく。ぴったりと動きを止めるまで精液を注ぎ込んだことで、引き抜いた瞬間に肉棒と膣を掠りながら中へと取り込まれた空気が放出された。
「はっ……うぅ……あ……くぁあああ……」
同時に亀頭と膣から肉棒を抜かれたフェイは仰向けにさせられる。
今度は背中の側に男が寝転がっていて、胸板の上で抱かれてしまった。
両腕を抱きしめるようにして男の腕が回されて、乳房を荒々しく揉みしだかれる。その間にもペニスは膨らんで、尻肉の隙間から菊座へと到達した。
「ア――――――」
狭いはずの通路は精液によって滑りが良くなり、太い肉棒でも受け入れてしまっている。背後からの突き上げによって下半身が持ち上がり、前方からフェイを犯そうとする野盗のイチモツの先端が白濁液まみれの膣口と触れあった。
「ぎひひひひひ!」
「オ゛……ア゛……カッハッ……あ……」
二本差しでの呼吸困難は変わらない。もはや何も見えず、ただ喘ぐだけになってしまったフェイの口に、三人目の男根が近づいていく。
「おお! いけー!」
「やっちまえぇええええ!」
周りに背中を押されるようにしてペニスを唇へと触れさせた野盗は、だらしなく開かれた口内へと肉棒を押し込んだ。
頭を掴み、髪の毛をハンドル代わりにしながら腰を前後に動かしていく。裏筋を舌へと密着させて擦り続けるだけで野盗は快楽を得ているようで、恍惚とした表情を浮かべて動きを速めていく。
フェイは電流が何度も体を駆け登り、指の痕が大量に付いた乳房はほんのりと赤くなり、乳首も大きく飛び出した。
(な……だめ……な……にも……かんがえられ……なッ……ぁ……)
頭部を掴まれ、固定された口へと肉棒が抽送する度に涎とカウパーが飛び出す。
膣と菊座への抽送も再び速度が上がり、液体が飛び散る音が洪水のように耳元へと押し寄せる。
フェイは瞼を閉じ、全身から力が抜けるとペニスは穴の好きな場所へと突き込み、性感帯をえぐり出した。
それまで快楽を得たことがほとんどなかったが、フェイの全身は開発されてしまい、視界が震えた。
「ホブゥ……ウウウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛……ンブッゥウウオボォオオッ……オ゛…………」
ドグンッ! と大きな音と同時に三つの穴から精液が飛び出していく。
既に何度も注ぎ込まれていることで膣がどうなっているのか、フェイは想像もできていなかった。
そもそも思考回路は停止寸前で、目の前には男の陰毛と汚い腹が見えるだけ。
何度も喉が動き、精液をほとんど飲み干した後で口が解放されると、生臭い吐息が鼻腔をくすぐった。
肉棒が次々と抜かれ、穴という穴から白濁液が外へと出て行く。
口の端を流れ、膣の割れ目を白く染め上げ、ブホオッと放屁の音と共に液体が床に広がる。
自分に注がれた精液によって汚れたフェイは大の字に倒れてしまった。
「ウ゛……え゛……ゲボッ……ホッ……オ゛……ゴッホッ……ハッ……ハアッ……はあぃ……は……ぁ……や……ぁ……」
野盗たちの嵐のような責めが止まり、フェイへと次々に視線が向けられる。
下卑た笑みと好色な視線に全身を舐め回されるだけで胎内が疼き、火照ってくる。
快楽と苦痛の津波に飲み込まれたフェイは、再び伸びてきた腕に乳房や太股を鷲づかみされた瞬間に声を漏らした。
「も……やめ……て……」
さっきも呟いた、弱々しい懇願の言葉。
今度は男たちもはっきりと耳にして、お互いの顔を見合わせてからゲラゲラと笑い始めた。
「ぎゃはははははっは! なんだよその言葉づかいわよぉお!」
「ちょっと前までの『止めろ!』はどうしたよお!」
「おらっ! もう一回言ってみろ!」
「アッグウッ!?」
フェイは髪の毛を掴まれ、上半身を持ち上げられる。乳房に吸い付く男が二人。
そして股間の割れ目に指を突っ込んで白濁液をかき出しながらクリトリスを刺激する男が一人。
敏感な三箇所をひたすら弄ばれるフェイは股間を前後させ、震えを大きくしていった。
「ハッ……ッ……アッ……ヤッ……アッアッアッアッ……ンッンッンッンッンッ……ンゥウウッ……ヤッ……め……アッ……ヒッ……」
膣を抜き差しする指の腹がクリトリスの裏側を擦り、同時にクリトリスそのものもいじられる。背筋を悪寒が駆け登り、頭の中で光が爆発するとフェイは絶頂に達していた。
「ヒアアッ!? ああっ! アンッ!? アウウウァアアアアッ!」
体への強い負荷は体力を奪い、快楽を無理矢理引き出されることからは逃れられない。大きく背筋を逸らし、両足で体を支えて中空に浮かぶような体勢をしばらく保った後で力が抜けたが、膣に挿入された指が自由を許さなかった。
「ひひひひ……おら! もっとイケえ!」
「ィヤアアアアッ!? アアアッ! アンンゥウウウッ! アンッ!? あんんぅうううあああああああ! やめてぇええええええええ!!!!」
目を見開いて涙を迸らせながら絶叫するフェイ。充血した乳首も強く圧迫されて快感を引き出されるが、爪が食い込んで血まで出てくる。軟らかな乳房だけではなく腹部や足、肩や腰にも次々と手が這い回っていき、フェイは体を弄ばれていく。
そこに精液を飛ばしたのは、体をまさぐる男たちの外側にいた野盗だった。
「うおおお!」
「オオオウウッ!」
ッビュルルッルウルルル! と音を立てて飛んだ精液はフェイの顔へとかかる。
上手く野盗たちを躱して顔に濃厚な白濁液が付着し、その熱と匂いにフェイは朦朧としていく。
「ハアッ……アンッ!? ヤアッ……ヒッ……イヒィイイイイイイッ!!!!」
再び頭を焦がすような衝動と共に絶頂へと向かうフェイ。
腰が浮き上がるタイミングに合わせて指の腹を内側にしっかりとこすりつけるようにしながら引き抜けば、削り取られた性感帯が破裂する。
最後の支えが崩壊したかのように愛液の洪水が外へと出て行き、床に溜まっていた濃厚な白濁液を薄めていく。
「あ……あ……あ……あ……」
小刻みに喘ぎ続けるフェイの髪や乳房を解放した男たちはまた四つん這いにさせると、唇へと亀頭を押しつける。背後からも菊座を突き刺し、反動で膣から精液を垂れ流した。
「やめ……て……もう……ぁ……ぁああ……おかし……く……なる…………」
顔をしかめて、様々な感覚が混ざった瞳が周囲を漂う。しかし、映りこむ顔は全て醜悪な笑みを浮かべ、欲望を垂れ流すままにフェイを覆っていった。
「まだまだヤリ足りねぇぞ!」
「もっと犯してやるぜぇええええ!!」
四つん這いのフェイの股下へと滑り込み、亀頭を根本まで一気に挿入する。声もなく開かれた口の中へと三本目が挿入され、舌が抉られた末に喉の奥へとカウパーがかけられる。
再び三穴が埋まり、フェイは圧迫感に呻きながら瞼を閉じる。
「ンンン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛――――」
その悲痛な叫び声は部屋の中へと反響し、やがて消えていった。
* * *
「……アッ……アッ……アッ……アッ……ア゛ッ……ア゛ッ……ア゛ッ……ア゛ッ……ア゛ッ……ア゛ッ……ア゛ッ……ア゛ッ………………ア゛ア゛ッ!!!?」
背後から膣へと挿入されていた肉棒が精液を流しこみ、フェイは子宮の中へと直接は行ってくる生温い液体を感じて背中を仰け反らせた。
綺麗な曲線を描く背中は解けた髪が貼り付いていて見ることはできない。だが、瑞々しかった青色の髪は白濁し、色あせている。背中に貼り付いているのも汗と精液が接着剤になっているからだった。
背中以外の目に映る場所は全て精液が塗りたくられていて、肌に光が反射してヌラヌラとしていた。
「ふぃいい……おい。次のヤツぁ……ってもういねーか」
ペニスを引き抜いてため息を吐いたのは禿頭頭だった。部下と一緒に女二人を犯し尽くした男はふらつきながら立ち上がる。少数の見張りを除き、床にはこの場にいる全員が寝ていて、凌辱の疲れを癒しているらしかった。
「カッフッ……ハッ……ヒッ……ヒッ……アッ……も……ゆ……るし……て……やめて……」
「良かったなぁ。少し休ませてやるよ」
禿頭男はそう言って、一度フェイから離れる。戻ってきた時には手に縄が握られていて、両腕と両足を体の前で一繋ぎになるように結んだ。前のめりになって体を萎縮するような体勢を取ったフェイを見て笑うと禿頭男はもう一度周りを見て、男の上に倒れているナリアを見た。
「あいつも縛っておかねーとな」
さらに縄を取りに行き、ナリアへと向かって歩いて行く男をフェイは力のない瞳で見つめる。
絶え間ない凌辱がいつまで続いたのか時間の感覚はない。
少なくとも一日は経っているとは思えたが、二日、三日経っていてもおかしくはない倦怠感が体を包んでいた。
(もう止めて……怖い……許して……疲れた……眠りたい……)
意識を繋ぎ止めていたのは苦痛と快楽であるため、二つとも剥ぎ取られたなら気絶することは必然。だが、突然ゲラゲラと笑い始めた男の笑い声にフェイはびくつき、顔を上げた。髪の毛が重たく、顔が上がりすぎて後頭部が痛み、少しだけ意識も覚醒する。視線の先にはナリアの髪の毛を掴み、顔をフェイへと向けた男が立っていた。
「見ろよ。こいつ。舌噛んで死んでやがったぜ? げひひひひひひ! こういうのも腹上死って言うのかあ? ギャハハハハハハハ!」
男と下半身で繋がっていたナリアは口から大量の血を吐いていた。半開きの口から見えるのは半ばまで千切れた舌。自ら噛みちぎった理由は想像に難くなく、その激痛を受け入れた覚悟を考えてフェイは涙を零した。
男たちからの責めに耐えられない。
でも、自ら死を選ぶことも、もうできない。
一日前の自分ならば選べたかもしれない道を踏み外しているのだと、フェイは気づいてしまった。
「お前は死なないのかあ? 女剣士さんよぉ」
ナリアの顔を突き出しながら告げてくる男を前に、フェイは顔を俯かせる。
活力ある瞳を持ち、勝ち気な表情をしていたナリアのなれの果てを見たくはなかった。
それでも男は何度も挑発してくる。フェイは瞼をきつく閉じながら呟いた。
「ゆ……るして……ぇ……ごめんなさい……ごめんなさい……もう……やめてください……」
何かが砕け散る音を聞いても、もう心は痛まなかった。
彼女を彼女たらしめている心そのものが砕けた以上、何も残らない。
男もそれ以上は挑発することなくナリアの髪を掴んだまま引きずっていき、部屋から消えた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……たすけて……やめてぇ……」
瞼を閉じれば浮かんでくるのは自分への凌辱。
三つの穴は一分以上解放されることはなく、常に塞がれて抽送を続けられる。
髪の毛や手も使って肉棒へと奉仕させられた挙げ句に精液で体を塗りたくられ、酸欠になって気絶すれば抽送の摩擦によって起こされる。
瞼を開き、額を膝へと押しつけて震えるフェイは膣や尻穴から液体が流れ出る感覚を得る。震える体から湧き出す汗が表面を覆った精液を少しでも洗い落としてくれるように祈るしかなかった。
――――かつて存在した青髪の女剣士の見目は麗しく、その姿を見た者は目を奪われていた。
ほんの一時ではあるがどこかから現れて傭兵として戦場を駆けたり、荷馬車の護衛をしたりと少しずつその存在は認知されていき、一般人や他の傭兵たちの中でも存在を増していた。
だが、そんな少女でも唐突にいなくなれば話題にも上がらなくなる。
凄腕の剣士すらも明日には行方不明となる日常で、フェイの不在に気付く者はたった数人。数日も続けば話題にすら上がらなくなった。
とある奴隷のオークションに均整の取れた体付きをした青髪の少女が出品されても、それが彼女だと知る者は誰もいない。
買われた後にどうなるのか分からない闇へとフェイは堕ちていくのだった。