グリーナの敗北

マーベラス・メイガス、今日も女魔道士たちがしのぎを削る。
今日の試合はナシル対グリーナ、二人は静かに見つめあう。
(噂に聞く仙道か・・・厄介な相手ね)
エルフの少女グリーナ・フォルテシア、彼女はある使命を帯びていた。
それは神話の時代から脈々と続く光と闇の争いを双方とも倒し終結させること。
彼女の一族はそれを「黄昏」と呼んでいた。
光と闇の側双方には永遠の滅びへの黄昏、その他のものには新しい夜明けに続く黄昏をもたらす、そういう意味だった。
かつてそれを起こすべく戦った戦士、彼が志半ばにして倒れたのが彼女の一族の地であった。
彼の志に感銘した時の族長は彼の意志を継ぎ、「黄昏」をもたらすべく一族を挙げて行動を開始した。
エルフとしての全てを捨て、人間の側の技術、魔術など吸収できるものはどんどん取り入れ、独自のものとして昇華していった。
長き時を経て、一族はエルフでありながら全く異なる文化を持つに至った、そして一族に時は来た。
「黄昏」を起こすべき適格者、その誕生、それがグリーナだった。
彼女の持つ杖、これは伝説の戦士の槍を錬金術で加工したものだった、その杖が彼女を選んだのだ。
それ以来彼女は「黄昏」をもたらす者としての修行の日々が続いた、辛い日々だった。
魔法は精霊魔法だけでなくあらゆる種類を学ばされ、戦士としての剣術やあらゆる技術、一族の持つ全てを叩き込まれた。
グリーナは全てを学んだ後、旅に出た、「黄昏」をもたらす旅に。
使命の道行きは決まっていた、時に魔術師、時に戦士、時に刺客となって次々と使命をこなしていった、そしてここにたどり着いた。
アッシュ・ヴァイサー伯、無限の寿命を持つといわれる澱みの塔の主、それが今回の目標。
彼を倒し、その無限の寿命の元を手に入れ使命の元とすることとあわせて彼の裏にある組織を倒し「黄昏」の一つとすることだった。

アッシュに近づくべく参加したマーベラス・メイガス、試合は次々消化され、いよいよグリーナの試合になった。
相手は連勝を続ける仙人のナシル、その力、特に鉄壁の守りに皆敗れていた。
(ここは先手で攻めつづけるべきね)
グリーナは試合前にそう考えて力を練っていた、そして試合開始。
「咆哮する魔界の群狼、炎の矢となり焼き尽くせ」
グリーナは炎の魔法を浴びせると続けて魔法弾を浴びせる、エルフらしからぬ魔法に観客はどよめく。
「やったか・・・」
上がった煙がひく、そこには平然としたナシルがいた。
静かに見つめるナシル、音もなく近づく、グリーナはさらに魔法を浴びせる。
またも効果なし、その時頭に声が響いた。
(なぜに望まない戦いをする)
ナシルの声だった、直接頭に話し掛けていた。
「なっ」
(お前は悩んでいる、使命の重さに苦しみ本当の自分が叫んでいる)
「うるさい」
使命の為は常に冷静なグリーナが感情をあらわにした、またも魔法を浴びせる。
「図星のようだな」
「なにっ」
後ろにナシルがいた、そして気功弾を打ち込む。
「ぐあっ」
グリーナは至近で喰らう、慌てて飛びのくが深刻だった。
「もはや戦えまい」
「黙れ」
最後の渾身の一撃を放つグリーナ、だかナシルはかわし最後の止めを撃った。
「ぐはっ」
グリーナは倒れた、戦いは終わった。

「ううっ、あんっ」
グリーナは三人の男に犯されていた、大会の敗北の代償、ヴァイザー伯の思ったままの陵辱。
男がグリーナを騎上位にして犯しながら小ぶりだが形のいい胸を揉む、他の二人は交代しつつ口を犯す。
「うふううんっ、うぐっ」
今まで使命のためなら体さえ使ってきたグリーナだった、だが今はなぜか悲しかった。
自分の心の全てを見透かされたこと、弱い自分を読まれたことが敗北よりも辛かった。
男が口で果てる、精飲を強要され、飲み干す。
「ううっ、げほっ」
やはりつらい、男は満足げに微笑みもう一人にグリーナを譲る。
犯している男は動きを早める、絶頂が近いようだった、やがて体制を正常位に変え激しく腰を振る。
「ああっ、い、ああっ」
涙がグリーナの頬を伝う、この後全てが終わるのだ。
(これで、楽になれる)
ずっといままで耐えてきたものが終わるのだ、それに今までやってきたことを考えればこんな終わりも悪くないかもしれない。
(果たしてそうかな)
誰かがナシルのように頭に話し掛けてきた、その声はヴァイザー伯のものだった。
(これで終わりではない、このまま生きても今までやってきたことの後悔に押しつぶされる、死んでも負け犬の笑い者)
男たちはそんなことも知らずグリーナの体を貪る、犯されながらグリーナは悲しみに暮れる。
そう、これで終われるわけがなかった、故郷に戻ることもできず生きていれば追われ、死んでもこんな死に方をしたと惨めな嘲笑をうける。
男がうめき、グリーナの中で射精する、他の男も同時に果てる、射精の感覚を体で感じながらグリーナは泣いた。
そのとき残酷な運命に翻弄されたエルフの少女の心に何かが生まれた、それは憎悪、言いがかりにも等しい一族への憎悪だった。
(憎い、楽にもなれない、終わらないなんて、憎い)
「その憎悪、受けてやろう」
その声とともに犯していた男たちの首が落ちた、ヴァイザー伯だった。
「その力、我々のために使う気はないか、ならば一族を一晩で消してやろう」
グリーナはじっと見つめる、そして静かに首を縦に振った。
「よろしい、これで君も楽になれるというものだ」
グリーナは笑った、その表情は恐ろしいまでに残酷だった。
それを見てヴァイザー伯は微笑んだ、だがその裏をグリーナは知る由もなかった。
そしてその日のうちにある場所のエルフの集落が皆殺しとなった、グリーナはその陣頭に立っていたという。
その後グリーナはヴァイザー伯の刺客として「暗黒の旋風」と言われ恐れられたという。