『酒と夜の合間』 byMORIGUMA 「ふふ・・・おいしい」 冷たい清水に、炒った香りのいい豆のエキスと、 貴重な砂糖を使って甘みをつけ、 さらに度の高い酒を混ぜた物。 美しい切子ガラスのグラス、 黒と光の綾なす輝き、 そして口に広がる甘美。 妖しい赤紫のルージュ。 妖艶な炎を宿す黒青の大きな瞳。 そして揺れる長い髪は鮮やかな紫。 知的な広い額と、 妖しく淫らな香りを漂わす口元。 髪と同じ紫の薄い布地を、 鮮やかに整えた細身のドレスは、 そでが無く、細身の肩や、 ふとしたしぐさで広がる、 ずきりとするようなわきの下を、 まるで誘うかのように見せ付ける。 長いスカートは、 むしろ彼女の妖艶さを飾り立てた。 薄い上等な絹は、 細身だが熟れ切った肢体を浮き上がらせる。 光の具合が透けて見えるその中、 長く肉付きの良い腿、淫靡な組み合わされる足、 どこか緩やかな、誘うような腰つき、 男という男が、意識をかき乱される。 もし、彼女の肩書きが知られていなければ、 誘いかける男の声に、 酒を飲む暇も無かったかもしれない。 『グリューネワルト騎士団、魔法剣士メリッサ』 それが、今の彼女の名称。 どのような豪胆な男性も、 その名前の前には、二の足を踏む。 『魔法使い』というだけでも、 得体の知れぬ恐怖がある。 ましてグリューネの『魔法剣士』だ。 戦場では、剣一本に、薄い胸当て、 肌に密着した薄い布地のレオタード。 その軽装ぶりに幻惑され、誘われた兵は、 剣も弓も槍も、防護フィールドに妨げられて効果ゼロ。 直後、遊撃のヒューベルやキリコに、切り刻まれる。 もしヒューベルやキリコがいなかったとしても、 それは不運でしかない。 数少ない、その例でいえば全員、 雷撃や火炎で戦闘不能、苦しみぬいた挙句に、 戦いの後でゆっくりトドメを刺されている。 おかげで噂は尾ひれがつき、 これだけの美女に、 誰もが恐れて近寄ってもこない。 安心して、女でもゆっくり酒が飲める、 そういう高級な酒場ではあるが、 『なんともさびしい気分よね。』 骨の髄まで染めつくされた、 『もう一人』の自分。 遠目でチラチラと、メリッサの美貌を盗み見る目。 浮き上がる肉体のラインに、生唾をこっそりと飲む男。 肌が感じる、男の視線や動き。 自分の中で、自動的に、濡れて、体温が上がってくる。 身体が、勝手にうずく。 いや、喉が渇き、水を欲するように、 男を味わいたくなっている。 クスクス、 可愛らしい笑いと、 細い指先が、グラスのふちをクネリとなでる。 それは、亀頭を嬲るテクニック。 『あの頃は、必死だったわよね・・・』 底冷えする道端で、震えながら、 それを見せぬように、 そして高級な商品であるように、 見せ付ける薄着の姿。 薄暗く汚らしい最低の酒場で、 酌をし、笑いかけ、売笑婦、淫売とせせら笑われ、 それでも、買ってもらうために媚びてしなだれる姿。 「ん・・・」 唇に甘美な酒。 こんな物一杯の価値が、 どれほどの苦労と、屈辱と、諦念で、 あがなわねばならないか。 自分の価値は、この酒一杯にも及ばなかった。  どこにでもあるような、珍しくもない話。 魔法学院でトップしか知らないお嬢様が、 簡単に誘い込まれ、犯され、嬲られ、陵辱され、 狂うほど輪姦され−−−−−− −−−−道端で震えていた。 あか抜けない化粧、 派手なだけで、惨めな薄い服。 あるのは、崩壊寸前のプライドだけ。 「ふんっ、ふんっ、」 「はひっ、ひっ、んんっ」 ゴツゴツする、醜いオスの感触。 薄暗い路地の奥で、 汚い壁に手をつき、 後ろから獣のように尻を抱えられていた。 まだ、慣れていない体は、 なかなか濡れない、痛い、苦しい。 黒青の目が、泣きそうになる。 胸元をむしられ、 形のいい乳房がむき出しになる。 激しく引っ張られ、 ヒリヒリした。 腰が、つま先が浮く。 肉先が、お腹の奥にシャベルのようにめり込み、 えぐり返す。 でも、眠れない空腹は、いや。 惨めな夜は、いや。 ここがどこか分からない、 どこにも逃げる場所は無い、 逃げてきた娼婦に、誰も情けも容赦もない。 泣き叫ぶまで殴られ、 追い出されるか、 良くて町に立つ娼婦の一番下に入れられるだけ。 うめくオスの、 激しい脈動が、 メリッサのお腹に、突き刺さった。 ドビュッドビュッドビュッ 「い、いやあ、中には、中には出さないで・・・」 あえぎ、叫ぶときはたいてい手遅れ。 男はにやりと笑いながら、 とろい娼婦の叫びを、ペニスでせせら笑う。 ドビュッ 泣きながら、生温かい射精を受け入れる。 それでも、何も無いよりはましだから。 必死に目をこすり、 そそくさと逃げようとする男を捕まえ、 必死に金をむしる。 でも、忘れちゃダメ。 「おねがい、また待ってるから。  でも、今度は中はやめてね。」 あそこが気持ち悪くても、 孕むことが怖くても、 媚びて、すがって、必死に笑う。 男にすがらないと生きてはいけないから。 『あの下になったら、  生きているのを止めるのと同じ』 ふう・・・ 細い顎に手を当て、静かなため息。 憂いを秘め、 男をぞくぞくさせるような、濡れた瞳。 あの頃がどんなに惨めだろうと、 あの下にはなりたくなかった。 もはや生きる気力すら無い、 哀れな目をした、物乞いたち。 わずかな善意や優越感の、 スズメの涙ほどの施し。 少しでも気に障れば、 土くれよりも簡単に蹴られ、殴られ、殺される。 ああなったら、おしまいだ。 もはや人ですらなくなってしまう。 それが、最後のプライド。 『どんなに惨めだろうと、恥だろうと、  私は生きてやる。』 はっきりと、そう意識を持った時は、 何とか酒場でそこそこの娼婦になっていた。 意識が生まれると、 自分の力を思い出した。 ヤクザに殴られ、蹴られ、殺されかけた時、 相手を魔力で打ち倒すことができた。 人に使うことは禁忌?、 禁忌もへったくれもあるものか。 人を殺すことが怖くなくなったころ、 ようやく高級娼婦になれた。 『不思議よね・・・』 メリッサの流し目に、 上等な服を着た紳士が、ふらふらと近寄った。 魔法でも何でもない、 男を痺れさせる、女の魔力。 平気で人を殺せるようになったら、 男が勝手に寄ってくるようになった。 「お一人ですかな?」 彼女の顔と名を知らないところを見ると、 どこかの田舎者だろう。 メリッサは、にっこりと笑いかけた。 薄暗い部屋の中、 ランプの明かりが、 白い肌をぬめるように彩る。 「んっ・・・はんっ・・・」 男の無骨な愛撫が、 柔らかな乳房を嬲り、細い首筋を嘗め回す。 「ああ、いい香りだ・・・」 かなりたくましい男で、 脱ぐと筋骨がすごい。 無骨で、下手で、でも必死で、 香りの立つ肌を愛し、嘗め回し、愛撫する。 かすかに笑い、そして嬉しげに抱きしめる。 「恥ずかしいですわ・・」 男の手が、下へ、下へ、もぞもぞと動き、 形の良い茂りを、いとおしむように撫でる。 左手がすべらかな背筋を撫で、 唇が胸を、乳首を、その谷間を、 激しい息と、唇と、舌で、 しゃぶり、味わい、嘗め回す。 指先が、濃く色づいた陰唇を捕え、 激しく濡れた襞を押し分けた。 「んっ・・・んんっ!」 シーツを噛み、のけぞるメリッサ。 女の動きが、男の興奮を引き立て、 愛液の雫が、指を包むように濡らす。 指先が、まさぐり、襞を可愛がり、 奥を撫でるように掻き回す。 「んはっ、はっ、ああんっ」 シーツの海の中で、淡い白い肌が、 悶え、あえぎ、震えた。 雫が指を熱く濡らした。 「お、お願い・・・お願いします・・・」 絶え入るような声と、潤んだ輝く瞳、 男の高ぶりが、一気に膨張する。 「任せてください、私に全てを」 「は、はい・・・」 かすかに、あえぐように声がする。 恥じらいの中、広げられる体が、 淫らに花開く。 男のたくましい陰茎が、 花びらの雫をしゃぶり、 絡みつく花芯めがけて、突き出した。 「はうううっ!」 のけぞる細い裸身、 痛いほど締め付ける胎内、 シーツが破れんばかりにつかまれ、 男の歓喜が、さらに膨張する。 「おおっ、すごい、なんときついのですか。」 「貴方こそ、なんて、んあっ、たくましいのっ」 紫の髪が乱れ、 赤い唇が、叫ぶように言う。 突き出されるペニスが、胎内を刻み、 えぐりあげる亀頭が、襞を激しくこする。 肉欲の波が、濡れて、泡立ち、しぶきを上げる。 白い肌が、広がる、のけぞる、痙攣する。 「んはあっ、はっ、はっ、ああっ、ああっ、ああっ、」 男は、女の名を叫び、 わしづかみにしたすらりとした足を、 引き寄せ、 腰で突き広げ、 膣を、その奥を、えぐり、突き上げ、こね回す。 女は、白い肌を染め、 形の良い胸を打ち振り、 細い腰をくねらせ、のたうたせ、 いとおしい男の分身を、絡みつくように締め上げた。 「だっ、だめだっ、ぬ、抜かないとっ」 小さな頭部が、激しく振られた。 「いやっ、いやあっ、抜かないでえっ!  そのまま、そのまま、おねがいいいっ!」 幾重にも泡立つ、 メスの襞が、 いやらしい蠢きで、閉じるように包み込み、 激しい動きと、欲望のたぎりを、 無数の快感で、絞りつくした。 男の絶頂が、収縮する子宮の口をえぐり、 ドクンッ! 「いくうううううううううううううっ!」 ドクンッ!、ドクンッ!、ドクンッ! 赤く充血した胎内で、 濁流のごとき射精がほとばしり、 撃ち込まれる。 突き上げる男の腰、 広がる女の股、 白い腹が、脈動に震え、 しなやかな裸身は、打ち放つ弓のようにのけぞった。 抱きしめる細い腕、 絡みつく長い足、 満足げに、キスし、舌を絡め、唾液をすすりあい、 絡み合ったまま、腰がうごめき出す。 喘ぎが、暗がりにひろがり、 白い裸身が、染まり、汗ばみ、あえぎ、 また叫んだ。 寝乱れたベットと、白い海のようなシーツ。 紫の髪が乱れ、妖しく笑う美貌が、 枕にうずもれるようにして、 サイドテーブルの上の指輪を見ていた。 『貴方との一夜は、決して忘れません。  これは、私の気持ちと何かの時のために。』 かなり高価な指輪は、 普通の家ぐらいやすやすと買えるだろう。 「うふ・・・もう高級娼婦は辞めたんだけどな〜。」 満足げに笑いながら、 高級娼婦の何倍もの年収をもてあそんだ。 世の中は不思議だ。 FIN