大脱出 −−−その2−−−

 

by MORIGUMA


そこは“涙の壁”と呼ばれる、巨石を驚くべき忍耐と技術で磨き上げ、組み合わせた古代遺跡だった。
石の壁に落ちた水滴が、どこにもしみ込まず、下まで涙のように流れ落ちる事から、この名があり、チェアラム教の聖地という噂がある。
その壁の隅を押すと、わずかに動いた。
さらに左に二つ目の石、右の端の石、もう一度上の石、
ごとり、と一つの石がくぼみ、中に長い通路があった。

わずかに降りる道がどこまでも続いていた。
マスターが先頭に立ち、ウェイン、リューリュー、ペティ、メネシア、ミーニィと手をつなぎ、放さないようにしっかりと握っていた。
メネシアは18歳でソバカスがわずかにある背の高い美人で、まっすぐな細い髪と同様に、まっすぐな性格の頭のいい、さばさばした娘だ。
ミーニィは17歳、チェアラム教徒の娘で、濃い肌の色と、しなやかで優美な体つきで少しきつめ顔立ちだが、なかなか美しかった。無口だが、親切で、こういう時、いつも最後を守っていく。

「だっ、だれ?」
ミーニィが声を上げた。
「どうしたの?」
「今、後ろに何かの気配がしたのだけど。」
「ひっ!」
ペティがびくりと硬直した。
「なっ、何かがあたしの足に触った・・。」

みなようやく、そこが単なる通路ではなく、広い空間に出ていることに気づいた。
「天井が見えないぞ。」
マスターが仰天して上を見上げた。
その時、ウェインの蛇に、ぞわりと悪寒が走った。
「お気をつけ、何かいるよ!」

もわり、と闇の中に煙の塊のような物が浮いた。
それがあちらにもこちらにも漂い、迫ってきた。
マスターとウェインが皆をかばうように前に出た。
メネシアとミーニィはリューリューとペティをかばう。
塊をたいまつではらってみたが、まるで手ごたえが無い。
だが、その中から、ぬうっと、黒い手のようなものが伸びた。

おびただしい手が、空中から、上から、下から、襲い掛かり、マスターとウェインを引き倒した。
「なっ、やめろっ!、こらあっ!」
こちらからはつかめないのに、それは異様な冷たさで、ウェインの手足を押さえつけた。
手足を押えるだけではなく、黒いドレスの裾を引き裂き、豊満な胸を掴み、脇を、腰を、太腿を、身体中を探りまわす。
まるで、数十人の男に嬲られているかのようだ。

マスターは、同じように押えられて、あちこちどつかれ、いたぶられていた。
メネシアとミーニィは、引き倒されこそしなかったが、ウェインと同じように身体中を黒い手でさわられ、撫でられ、つままれ、顔を赤らめながらも、気丈に身体を張ってリューリューたちをかばっていた。

「くっ!」
豊満な乳房があらわにされ、激しくもまれ、乳首をつままれる。
あそこに指が食い込み、クリトリスをつまみ、アヌスを開き突っついた。
指先には触手のような物まで現れ、襞を嘗めまわすようにもてあそぶ。
男馴れした身体は、いやでも熱く濡れてくる。
『こんな、こんな所でっ!、』
きゅっと引き上げられた感触が、腰の芯を貫き、白い太腿が思わず広がり、震えた。
ぴゅっ、ぴゅっ、
強く潮をふき、指を濡らすと、指がびくりとして引いた。

だが、手は男根に変化した。

「あぐうううっ!」
冷たく、そして恐ろしく強く脈打つ男根が、ねじ込まれてくる。
どくん、どくん、
異様に強く感じる鼓動、浮き上った血管が、ずりずりと中をこすり、亀頭が濡れた襞を押し分け、広げてくる。
喘ぐ唇を、別な男根がふさぎ、喉までずぶずぶと押し込んでくる。
それはわずかな死臭と、冷気を帯び、喉からも膣からも、脳髄が痺れるような異様さで、ウェインを犯していた。
感じるまいとしても、異様に勃起した亀頭が、身体をのけぞらせる。
カリ首のはりが凄く、からみつく襞をこすり、いたぶり、犯すのだ。
亀頭の先が、子宮口を小突き、膣底へめり込む。
浅く引き上げ、陰唇をなぶるようにこねて、いきなり深く貫く。
次第に、快感にとらわれていくのが、どうしようもなかった。

アヌスを広げられ、今度こそウェインは怯えた。
だめ、そこまでされたら、狂ってしまう。
必死に抗おうとしても、無数の手は鉄の枷のように、ウェインを押え、広げさせた。
ぐりゅううっ、
「んんんーーーっ!」
爪先が痙攣し、全身が突っ張った。
髪が打ち振られ、うめきが激しく漏れた。
激しく打ち合うかのように、黒い男根が律動する。
薄い肉をはさみ、凶悪な律動が荒れ狂う。
おびただしい愛液をまとい、肉茎がしなやかな腰の奥へ、くねり上がる。
蠕動するアナルをえぐり、深く腸の奥へ、熱く焼けた鉄杭が打ち込まれる。
下半身が蕩け、食いしばる口元が次第に緩んでくる。
いつしか腰を、その動きに合わせていた。
だめ、だめ、
必死に娘たちことを考えようとして、そのたびに、容赦ない快感が深く奥まで突き抜けてくる。
「んううううっ!!」
ほとんど同時に、黒い雫が、冷たく膣いっぱいに広がり、腸の奥へ噴出した。
勃起した乳首が、ぷるぷると淫らに揺れ動いた。
口元から、銀の筋が流れ落ちる。
だが、おびただしい手は、次々とペニスに変化し、またウェインを貫いた。
がくがくっ、がくがくっ、
腰が砕けるような律動が、肉感的な身体を容赦なく攻め立て、高ぶらせていく。
淫らなしぶきが、冷たく広がる度に、理性も意識も麻痺していく。
次第に手足の力が抜け、理性も暗く溺れ、このまま落ちていこうとした。

「我が祖霊の御霊よ、大いなるブロウラデス(黒の狼)たちよ、どうぞ母たちをお救いください!。」
ミーニィが叫んだ。
さらわれる時の、幼い記憶。
一族を殺され、誰かが叫んでいた声が、唇からはじけた。

突然、黒い手は全ての動きをやめた。

マスターは、首を締め上げられ、
ウェインはぼろぼろに犯され、
メネシアとミーニィは、立ったまま犯されていた。

全てが煙のように消えた。

「な、なに、助かったの・・?」
よろよろと起き上がるウェイン。

4つの塊がもわりと出てきた。
それは、先ほどの塊よりずっと大きく、そしてもう少し光っていた。

「娘よ、ブロウラデスの名をなぜ知る。」
塊から声がした。

「私の、私たちの祖先は、黒い狼です。」
ミーニィは気丈に答えた。
「な、なんと、おぬしはダデュウスの民か。」
ウェインは、思い出した。
ミーニィがさらわれて来たのは、ダデュウスの民と呼ばれる、動物の精霊を祖先とあがめる氏族だった。
「我々も、同じダデュウスの民」
「このようなあさましい姿とはいえ、また同じ氏族の者に会えるとは・・」
4つの塊は震えていた。泣いていたのかもしれない。

やがて、一つの塊が前に出た。
「同じ氏族の娘よ、我々は亡者なり。この地に縛られ、生者を呪い、襲う、あさましき魍魎なり。されど、氏族の丘に帰り、眠る事を夢見る者なり。我らの願い、かなえたまえ。さすれば、そなたらは我々の庇護の元、この闇を抜け出るものなり。」

「同じ氏族として、私は貴方たちの願いをかなえてあげたいと思います。でも、どうすれば良いのでしょう。」
「我々は、そなたの身に溶けこまねばならぬ、溶けこみ、紋様となって、そなたと共にゆこう。さすれば、我々を呪縛する術も効かぬ。氏族の丘に行けば、我々は離れ、紋様も消える。」
そういった後、ためらいがちに付け加える。
「ただ、我々が溶け込むとは、一人一人を受け入れねばならぬ。それすら同じ祖先をもつからできることだが、あまりに酷かも知れぬ。」
「かまいません、皆を助けてあげてください。」
ミーニィはきっぱりと言った。
塊はゆらゆらとミーニィの回りにあつまり、車座になるように取り囲んだ。
やがてそれが、筋骨たくましい人の姿をとった。



「あうっ!、ああっ!、あっ!、ううっ!、くっ!、ふっ!、うあああっ!!」
ミューリアの可憐な横顔が、のけぞった。
可憐な尻に痛いほど指が食い込み、すんなりとした脚が、裂けんばかりに広げられ、男たちのペニスが目いっぱいのめり込んだ。
顔におびただしい白濁が飛び、腹の奥に、二人の男の精液が、情け容赦なく射精される。

白い肌を、ぬらぬらした白濁が、徹底して汚しつくしていた。

密告者の言葉に、いきり立った守備隊が“J”に押し寄せた。
“J”には、何人ものチェアラム教徒がかくまわれていると決めつけ、誰もいないと言い張るミューリアは、激怒した隊長に張り倒された。
守備隊の異教徒狩りは、一種競争のようになっていて、見つけられないと恥をかく。
小心者の隊長は、昇進に傷がつくことを恐れ、部下にどんな手を使っても吐かせろと命じた。

「くっ!、ふっ!、ふっ!、ううっ!、あっ!、あぐっ!、くううっ!」
後ろから犬のように犯され、腫れ上がった陰唇を容赦なく責められ、ミューリアは声を上げずにいられなかった。

皆、狂っていた。
点数稼ぎのために、意地でもチェアラム教徒を捕縛しようとする隊長。
それをネタに、欲望のままにミューリアを強姦する兵士。

若い女性の、吸い付くような肌に、兵士は溜まりきった欲望を繰り返し突き刺し、こねあげて、細い身体を引き裂いていく。
「異教徒をかばう貴様も異教徒だっ、異教徒が!、異教徒があああっ!!」
「あひいいいっ!!」
引き裂くような痛みと、レイプされる屈辱が、ミューリアの美貌をゆがめる。
悲鳴と共に、どっとほとばしる邪悪な体液で、子宮がべたべたに汚される。

ひくつく身体に、別な班の男がのしかかり、数人がかりで陵辱を繰り返す。

もう、ミューリアは異教徒並みの扱いしかされなかった。



「はぁっ、はあっ、あうううっ!」
ミーニィの裸身を囲み、上からも、下からも、口にも、胸にも、男たちの欲望が食い込んでいく。
しなやかな裸身を、優美に開き、ミーニィは悲しい亡霊たちの欲望を慰める。
亡霊たちも、先ほどの暴行が嘘のように、そっとミーニィの身体を抱え、己の全てを深く、ゆるゆるとうずめていく。
丸く優美な乳房で、こすりあげるように亀頭を刺激し、
舌先を亀頭から、裏筋へ走らせ、
アヌスをすぼめ、腸をうごめかせ、ねっとりと包み込み、
膣の蠕動を絞り上げて、いっぱいになった胎内を、何度もこすりあげた。

爪先が宙を舞い、細い顎を淫乱に振り乱す。
しなやかな背筋が喘ぎ、美しく長い太腿が、がくがくと痙攣する。

蕩け尽くすような快感が、奥まで、底まで、身体中を駆け巡り、はじけ飛んだ。
「んんんんーーーー!!」
痙攣する美しい裸身に、亡霊たちの全てが溶け、なだれ込む。

ぐったりとしたミーニィの裸身は、額、胸、下腹部、背中に、鮮やかで奇怪な紋様が浮き出し、光っていた。



「隊長おおっ!、見つかりました、連中の逃げ込んだ場所です。」
兵の一人が、息せき切って駆け込んできた。
「よおしっ、もうそんな雌犬にはかまうな!。正教の敵を追うぞっ!」
不平そうな兵隊たちを尻目に、隊長は全員をせき立て、涙の壁へ走った。

ぼろぼろにされ、放り出されたミューリアは、あられもない姿を晒しながら、静かに泣いた。
『姐さま、ごめんなさい。あたしには止めきれなかった。どうぞ、ご無事で・・。』

誰かが、そばに来たが、もうミューリアにはどうでもよかった。
おもちゃにされるのも、切り殺されても、もうかまわなかった。
柔らかなマントがふわりとかけられた。
「え・・?」
困ったような顔をした、優しそうな大男が、座っていた。
「あの、すまんかったな。」
男は本当に申し訳なさそうな顔をしていた。
「みんな気が立っていてな。謝ってすむことじゃないが、どうにも止めれんかった。すまん。」
そういえば、最初は後ろのほうにこの男がいて、ミューリアが責められた時は、いなくなっていた。
この、気のやさしい男は、守備隊の狂ったような仕打ちに、どうにも耐えられなかったのだ。

男は、ノーグスと名乗った。
そしてミューリアを抱き上げると、そのまま守備隊の用事と偽り、クレイモアを脱出した。
実に見事な逃げっぷりに、ミューリアはあっけに取られた。そして、こういう実行力に飛んだ男は、大好きだった。
「俺の嫁になってくれ。」
ノーグスは、街から離れると、ミューリアに小声で頼んだ。
ミューリアは笑って快諾した。



みんな、闇の中を必死で走った。
亡霊の紋様が、追っ手の追跡を告げたのだ。
それにしても、いったいどこまで降りるのだろう。
リューリューとペティが、疲労が激しく、何度も休まねばならなかった。

そこは、青い砂のように、わずかに光りまたたく苔が、見渡す限り一面に生えていた。
「何、何なのここは?。」
あまりに広く、どこまでが壁で、どこまでが床なのかすら、分からなかった。
ウェインのうめき声に、紋様が答えた。
「我々は“回廊の間”と呼んでいる。」
「まっすぐに進め、わずかでも横にそれれば、出口は無いと思え。」
「ここには、様々な者が集う。かくごせよ。」

何のことなのか、問い返しても何も答えてくれない。
とにかくまっすぐ進むしか無かった。

ところが、だだっ広いはずの床は、奇怪にでこぼこが組み合わさり、無数に枝分かれし、わずかに肩幅ほどしか、まっすぐすすむ幅が無い。
ふと、後ろを振り向くと、もう、自分たちが来た道が分からなくなっていた。
そちらから、遠くに怒声が聞こえてくるが、たちどころに散り散りになっていく。

やがて、足元が異様に高い事に気づいた。
細い道が空中に回廊のように伸び、無数に枝分かれしては、下へ沈んでいく。
同じ高さに櫛の歯のような、細く長い岩が並び、その先端が光りまたたいて、一面に広がっているように見えたのだ。

「ねえ、ここはいったい何なの、あんたたちは何でここにいたの?!」
ようやく正気に返ったウェインは、紋様たちに、悲鳴のような声で聞いた。
まさか答えが返ってくるとは思わなかったが。
「ここは、回廊だ。」
「あらゆる世界の根が集まるところ。」
「根とは因果、宿業、血縁、思想、様々なつながるもの。」
「そなたたちは、ぶつかるべき所でぶつかっているのだ。」
ミーニィの身体の各部から、低い声が漏れ、何かを伝えた。
だが、そのことを理解できたのは、ただ一人だけだった。

「では、必ず出口もあるのですね。」
メネシアが、目を光らせながら、尋ねる。
彼女だけが、彼らの話から、何かを感じたらしかった。
「そうだ。」
答えは短かった。

回廊は、いよいよ深い谷を渡っているようだった。
いつからか、枝分かれする道も無くなり、同じ幅の道が、どこまでも続いた。
落ちたらどうなるのか、誰も考える事ができなかった。
「何かあるぞ」
マスターが疲れた声で言った。
そう、あるにはあった・・。

細い丸木のような物が、真っ暗な闇の中に伸びていた。
「まさか、これを渡れってんじゃないだろうな。」
「いったい、どういうことなの。」
リューリューとぺディは泣き出した。

足一本置けるぐらいの細く、すべりそうな丸木だった。
しかも、向こう側も真っ黒で、何も見えなかった。
全員が打ちのめされたような表情で立ちつくすと、赤い影が立った。
丸木の右側に一つ、左側に一つ、土で作った巨大な仮面の、右半分と左半分が浮き上った。

「渡りたいか。」
仮面は、きしむような声をそろえた。
「ええ、渡りたいわ。」
内心の動揺を押し隠し、ウェインは気迫をみなぎらせて、即答した。
「では、渡るがいい。」
「ただし、一人を渡すか、残りを渡すか。」
一人を残して、他の全員が渡るか、一人を渡して、残り全員がここにとどまるか、残酷極まりない問いが投げられた。
「ふざけるな、全員渡るぞ。」
マスターが怒って丸木を踏んだ。
とたんに丸木が消え、危うく落ちそうになった。
「分かったであろう。一人を渡すか、残りを渡すか。」

呆然とした中で、最初に声を上げたのが、リューリューだった。
「姐さま、私を残してください。」
「いや、だめ!、リューリューが残るぐらいなら、私が残る!」
ペティが泣きながら叫ぶ。
全員、誰が、誰一人残せただろう。
ミューリアとの別れすら、死ぬほど辛かったのに。
マスターは皆を橋に押しやろうとし、ウェインすら取り乱して、その袖を掴んだ。

メネシアが前に出た。
皆が、はっと黙った。
「おまえが行くか、残るか。」
メネシアの紫の瞳が、ギラギラと燃えるように輝いた。
「いいえ、どちらでもない。」
「ではどうする。」
「ここは、回廊。あらゆる縁がここで交わる。縁は、運命の答えは1つなの?。確かに一つしかない時もあるけど、一つじゃない時のほうがはるかに多いわ。いえ、見えない答えを見つけるのが運命なのよ。私たちは、“両方”を選択する。一人を渡すわ、そして、残りも渡すわ!。」
仮面が沈黙した。
そして、ゆっくりと左右の面が近づき、一つになった。
轟音が響き、足元が揺れ、身体が舞い上がった。
それは、笑い声なのだろうか。
もはや音とすらいえないような衝撃波が、全員の身体を打ちのめし、そして、世界が暗転した。


「どうやら、無事に抜けたようだねえ。」
占いババアは、濁った目を空に向け、そっとつぶやいた。
「ウェインも、自分がなんに出会ったのか、どんな役目を果たしたのか、わかったらびっくりするだろうねえ。」

一枚のカードをめくる。
“女教皇”のカードが出た。だが、その顔が、どう見てもミューリアに見える。

もう一枚のカードをめくる。
“女帝”のカードが出た。その顔は、ミーニィそっくりだ。

もう一枚、“魔術師”のカードは、メネシアの顔だった。

「まあ、神の道具となった人間が、自分の役目を自覚している事なんか、めったにあるもんじゃないしね。・・そろそろ時間かね。」

もう一組のタロットは、テーブルの上で、不吉極まりない組み合わせを出していた.。
“吊るされた男”“愚者”“死神”、逆位置の“家族”“塔”

小さなワイングラスに、黒い粒を入れると、占いババアは一息にあおった。

優れた子供たちに恵まれ、太母と崇敬され、聖母思想の源となるミューリア。
チェアラム教の太守の妻となり、教団に大きな影響力を持つようになるミーニィ。
魔法と思想で新たな体系を築き、暁の魔女と呼ばれることになるメネシア。
3人の娘たちが世界を動かす夢を見ながら、彼女は静かに息を引き取った。

地平線から、巨大な魔神“ジン”が、そして、無数の復讐部隊が、真っ黒な砂嵐をひきいて、クレイモアに襲い掛かってきた。

FIN