『〜受難〜』
(……まったく、何で……)
中立地帯アージュートの活気溢れる街並みに目をやることもなく、その魔法使いは街の大通りを歩み続けていた。
小柄で線の細い体型、中性じみた魅力的な容貌を持つ魔法使いの名はエス・エーディー、今年の魔導王国ユニカンで催された今年のサプリーム・ソーサレス魔法武闘大会で決勝戦へと駒を進め、大会を破壊した魔法使いである。
ほとぼりを覚ますためと、又、ある事情から脱却するために、エスはこの街へと滞在し、解呪の業に長けた者を探していた。
五里霧中といった感じの状況を打破しない限り精神的に落ちつく事ができなかったのだ。
「……ここかな?」
やがてエスはある酒場の前で足を止めると、一人、呟きを洩らし、建物を眺めやる。
酒場兼宿屋(タヴァーン)だ、この店には凄腕の腕利きの戦士、騎士、魔法使い、僧侶、神官、巫女などが集い、異界の者、人の身にやつした竜や神仙すらも通い、滞在するとという噂だった。
(ここなら………あるいは)
一縷の望みをかけて、エスは意を決すると、酒場『風と陽のロンド亭』の中へと足を踏み入れた。
客の入りは決して多いと言えないが、店内は喧騒に満ちていた。
「天然理心流……。近藤某の剣術ですな」
「……よくご存知で」
バーテンとおぼしき男へ、異国の太刀と呼ばれる剣を下げた凛々しい少女が真剣そうな眼差しを向けている。
「竜ですか・・・そんな強いのまだまだ相手できないですぅ」
「・・・結構、軟弱なのがおおくてな、最近は〜」
豪奢な金髪をもった魔法使いが和やかな表情を浮かべて、可愛らしい容姿をした少女と歓談している。
「…ごちそう…さま…」
「2階、一緒に行く?」
メイド服を着た少女が、左腕に不可思議な機械を装着し、見慣れない服装をした少女と会話を交わしつつ、食事をしている。
東方の巫女装束を着た女性が茶をすすっている。
妙に目つきの鋭い30代くらいの男が二階から降りてくる。
(……噂は嘘ではないようだな)
一癖も二癖もありそうな客達を見て、内心でうなずきながら、エスはカウンターへと歩みよった。
「いらっしゃいませ」
エスに気づいたバーテンは微笑をひらめかせ、軽く会釈してくる。
秀麗すぎる容貌だった、それはバーテンに限ったことではなく、店にいる男女全てが水準以上といっても良いことに気づいて、改めて驚きを覚えた。
(容姿一つだけで……本当に尋常じゃないな、ここは、これなら何とかなるかな)
「失礼…腕のいい解呪師を探している。心当たりが居たら紹介してくれないか?」
気丈そうな表情で落ちついて発言する。
エスがバーテンへと話しかける様を二人の人物がうかがっていた。
「………解呪?」
巫女装束を着た女性が首をかしげる。
(……女か)
目つきの鋭い男が謎めいた目つきを向けた。
だが、その様子は必死になったエスの視界には入ってはこない。
「解呪師でございますか・・・・・?申し訳在りませんがちょっと・・・」
「解呪師……。拙者は知らぬ」
恐縮した様にバーテンが答え、太刀を下げた少女もすげない返事を返す。
「秘密を守れる、腕のいい解呪師だ。報酬は問わない。誰か知っているか?」
二人の答えにエスは思わず言声を荒げて、詰め寄る、なまじ、期待をかけていただけに納得できなかった。
(…解呪…か……できないことはないですが…)
言い募るエスに再び眺めながら、巫女は思考を巡らす。
(たまにはいいかもしれんな)
目つきの鋭い男はエスを見やりつつ、ふと不穏な思いを浮べ、行動にでることを即断した。
「……どういった類のものだ?」
男はエスに視線を向けずに、ボソリと独語めいた声で口を挟む。
「じゃあ、一緒に行こう」
「……ん…」
メイド服を着て、杖をついた少女が丈の短いズボンを履いた少女に手を引かれていく。
「人体にかけられた、強力なものだ」
エスの目の前を通って彼女らが二階にあがっていくのを横目に、目つきの鋭い男へとエスは真摯な声で答えをむけた。
「できないこともないがな……」
「自信はあるのか?」
「……信じないなら、それも結構だ」
興味無さげな男の声にエスは思わず驚愕し、次いで問いかける、だが、男はエスの問いに気にした風もなく立ちあがると、二階へと向かうそぶりを見せた。
「あ、待ってくれ……口は堅い方……か?」
その態度に慌てたようにエスは男を呼びとめ、慎重な声で尋ねる。
男は階段の途中でようやく足を止めると、面倒げに答えたが、それ以上は応えずに2階へと上がっていく。
(……何とかなるかも)
「よし、話を聞いてくれ。ここは人目が多い、どこかに行こう。……あ、待て!!」
内心に希望を見出したエスは慌ててビャーオを追って二階へ上がっていく。
(あの方にできるとは…思いませんが…行ってしまいましたね…)
巫女は声をかける時機を失ったので沈黙をしながら、情景を見送った。
「……あいつ……確か、リハクさんの……?」
二階へと去った男を見送った後、バーテンはようやく、正体を思い出す。
同じバーテンと老人と敵対する人物で、決して善人とはいえなかったはずだ。
しかしながら、介入する機会はすでに逸していた、バーテンが必要以上に客を詮索する訳にはいかなかい。
(さて……と…どういたしましょうか……)
それは巫女も同様のようで、これからどうするかをのんびりと考えていた。
(……来てるな)
階段を昇りつつ、後ろからついてくる気配に気づいて、目つきの鋭い男―――ビャーオ・ハエンはほくそ笑む。
ビャーオという名は本名でない、ある言語で表という意味で、文字通り、表の世界で使う名にすぎない。
護衛を生業とする為に様々な武術をおさめるハエン一族を氣と針の業を使う暗殺者として出奔した時に選んだ名だ。
そして、今、ハエン一族の異端者たるビャーオは、一族と敵対する組織の首領として、抗争を続けている。
そんな男が善意でエスに接した訳では無かった。
普段のエスなら卓見力―――相手の心理や思考を洞察する力―――を用いて、男の企みを完全に看破できずとも、疑惑を持ち、警戒しただろう。
しかしながら、身に降りかかった事態にエスは気が急いており、それを最大限につけこんだビャーオが狡猾だったというべきだった。
エスの心理状態を見抜き、焦らせ、できるだけ警戒心を呼び起こさせないようにしていたのだから。
「……部屋で話を聞こうか?」
「わ、わかった…」
階段で言葉を交わし後、ビャーオとエスの二人は部屋の中で向かい合う。
(……これでよし)
「話を聞こうか?」
扉の鍵を閉めて、ビャーオは椅子を勧めた。
「……ああ」
ビャーオに勧められた椅子を断って、エスはゆったりとしたブラウスのボタンをプチプチと外していく。
「……ボクはエス。貴方は?」
気分を落ちつけようと、一息ついた後、エスは目の前の相手に名前を告げる。
「ビャーオだ」
(……好みの顔立ちだな、くく…………おっと、只者ではないようだからな)
椅子には座らずに壁にもたれてまま、エスの気丈ながら、どこか儚げな顔を見て、良からぬ妄想をしていたが、声をかけられるやいなや、瞬時、それを打ち払い、氣を整え、無表情でやる気の平然とした声をあげる、暗殺者ならでは完璧な感情制御の賜物だった。
「ボクの顔に何かついているか?」
「……いいや、それより話を聞こうか? ワシも暇ではなくてね」
いぶかしげに問うエスに不審を抱かせ無いように、あえて無関心を装うべくビャーオは面倒げな声をあげる。
「最初に言っておくが、ボクは男だ。良からぬ考えは捨ててくれよ。そのつもりで、ボクの話をまじめに聞いてくれ」
「………」
ビャーオの態度に苛立ったように傲然と告げるが、柳に風の風情でビャーオはあくまで悠然とした態度は崩さずに軽く頷いた。
(氣の波動は誤魔化せぬよ……エスとやら、お前の身体は『女』のものだ)
内心の思いをおくびにもださずに、ビャーオはエスへと視線を向けている。
「……これを見てくれ…」
己の身体に起こった事象を口にする事に逡巡があったが、やがて、覚悟を決めたように顔を背けつつ、ブラウスをはだけた。
ビャーオの目がそこに注がれる。
そこには、小振りだが、確かに女性の乳房と思われる膨らみがあった。
「……自分で男と言わなかったか?」
「数日前からだ。原因は分からない。身体が女になってしまった。徐々に、ではなく、唐突に、だ。……何らかの呪いだと思う。なんとかなるか?」
からかうような、薄笑いを浮かべるビャーオに、エスは頬を赤く染め、羞恥に声を震わせつつ説明する。
「……できないことはないな」
「……見ただけで……解るのか?」
つまらなそうに答える態度を信じきれずに、エスはいぶかしげに問いかける。
それに対してビャーオは、鋭い視線で相手を見据えながら口を開いた。
「……東方の氣という概念を知っているか?」
「き?……いや、知らない」
「まあ、身体に流れる力、生命力、魔力、そういった力の流れだと思ってくれればいい」
「それで?」
「……ワシはその氣の流れを変える事で、男女の性すら転換させることができる」
「ほ、本当にか?!」
はだけた胸を隠す身体をビャーオはブラウス越し眺めつつ、淡々とした口調で語るが、その内容にエスは驚きを隠せなかった。
「……東方の解呪は奥が深くてな」
「??」
「……そのような真似も可能だ、あとはそれを施すのをお主が否か応かを聞くだけだ?」
「あ、まて、今、ここでやるのか?」
苦笑しながら、懐から白木の針を取り出すビャーオに、不安げなエスの視線が針に注がれる。
「身体中のあちこちで針を施すことになるからな、それでもいいなら一階でやるが……その胸を晒したいなら、な」
(さてと、これでのるかな?)
「あ、いや………お願いする……代金は幾らだ?」
つまらなげに語るビャーオの声がエスは戸惑ったように即答する。
「……後でいい、そこに寝ろ」
「わ…かった…」
鋭い声をあげるビャーオがベッドを目線で指すと、エスは言葉に従って、おずおずとベッドに近づいて、腰を下ろした。
「うつぶせで…いいのか?」
「仰向けだ、それから胸を出してもらおう」
「わかっ……た」
針の具合を確かめながらビャーオが告げると、エスは恥ずかしげに上着を完全に脱いで、ベッドに仰向けになって横たわる。
「こ……これでいいのか?」
「……ああ」
恥ずかしげに問うエスをほとんど無視して、ビャーオは肌に手を滑らせて、氣によってツボを探る。
(……早く終われ)
エスは針師の手から放出される氣の刺激に柔肌を震わせ、もどかしげに身をくねらせてしまった。
こんな経験は初めてなのだ。
「……ここだな」
やがて、エスの胸の小振りな隆起の近くへとビャーオは針を打ち込み、それを介して氣を送りこむ。
「んッ……」
(ふふ、これでいい……しばらくはこれで動けまい)
身体中を走りまわる氣の感覚にエスは官能的な吐息を洩らしてしまった。
「どのくらい時間が掛かる?」
「……お前と遊んでる間くらいかな」
「……?」
やがて、息を整えたエスは疑問を口にしたが、返ってきた答えに要領の得られず、怪訝な顔をする。
だが、続くビャーオの言葉と行為によって、その意図は明確となった。
「女になった男とヤるのは面白い」
今まで 怠惰とも思える態度は一瞬にして消え失せていた、邪悪な笑みを浮かべ、エスの小ぶりな胸を潰すかのように揉みあげてくる。
「なッ…!?貴様……!」
いきなり加えられた暴虐に目を見開いて、エスは驚きをあらわにした。
(……焼却で焼いてやる!!)
瞬時に怒りの感情が満ち溢れる、報いを与えるべく、身を翻そうとする。
だが、意に反してエスの身はピクリとも動かなかった。
「ぐッ…なッ、何をしたッ!?」
「別に動きを封じただけだ、さっきいった氣でな」
悔しげに声を震わせるエスに、胸の感触を楽しみながら、ビャーオは冷たい声が浴びせかける。
「よせ、やめろ!ぼ、ボクは男だ、妙な気を起こすな!!」
「……身体は女だろ」
「い、いやだーッ!やめろーッ!!」
ビャーオはエスの身体にのしかかると、ほぼ一息でズボンを脱がす、そして、足を押し開くと『少女』の股間をしげしげと眺める。
そこには艶やかさはないものの、淡い花弁がかわいらしく、ひっそりと花開いていた。
「へ、変態めッ…!」
罠にかかったエスは、絶叫しながら体の自由の限り暴れ回ろうとするが、弱々しいあがきを見せる結果にすぎずに捕獲者の嗜虐心を煽るばかりだった。
「フン、無駄だよ!!」
はかない抵抗をビャーオは笑殺すると、うっすらと色素がかかった秘所へと指を這わせ、何度もなぞりあげる。
「こ、こんなところで貴様のような男に弄ばれる趣味はない!! いやだッ、触るなああッ!!」
「ふ、よく、できてるじゃないか、やっぱ、女のままの方がいいな、お前はな」
「ふざ、ふざけるな!よせ、やめろッ!いやだぁッ!!」
「……ふふふ、もっと叫ぶがいい」
エスは気も狂わんばかりに罵声をあげて、身体をよじって逃げようとするが無駄なことだった、ビャーオはエスの罵声と抵抗に非常に満足しながら、身体を両足の間に顔を埋めて、舌で肉芽を押しつぶすようにして嬲り続けた。
「いッ、イヤ……だぁ……こん…こんな……うわあぁッ!?やめろ、やめてくれえッ!!」
秘所への舌での荒々しい愛撫、胸への乱暴じみた揉みあげ、今まで経験したことのない身体への執拗なまでの責めに、半泣きになって、エスはビクビクと身体を震わせ続ける。
凌辱劇が続く中、不意に一つの出来事が起こった。
スーッ、音にすればそんな感じか、突如として部屋の中に黒い霧が満ちる。
その黒い霧は人影を取り始め、やがて、光のごとく輝く銀髪と黒耀の輝きにも似た褐色の肌を持った妖艶な女へと変わったのだ。
「……あら、お楽しみね?」
黒いドレスを纏う女は蹂躙されるエスに細めた目で見ながら、あるかなしかの妖しい微笑を向けた。
「……!?」
目をきっちり瞑って泣き叫んでいたエスは最初、女の出現に気付かなかったが、発した声に気づき、ビクリと身体を震わせた。
「あら、こんばんわ、お嬢さん」
「う、うう……」
クスクスと笑いたてる女の声に、エスは凌辱者が増えたことを直感し、愕然とする。
それは謝りではなかった、女はある男を通じて、ビャーオという男を知っていたのだから。
「混ざるか?」
エスが分泌しはじめた愛液をすすりつつ、ビャーオは食事に誘うかのように平然と女へと声をかけた。
「……面白そうね、無理矢理ってのも」
「く………ぅ……」
上唇をペロりと舐めあげる女の返答に、エスは無力さを実感させられて、悔し泣きをあげる。
「かわいそうねぇ………でもね、行動の結果は取らなきゃいけないの、判る?」
優しい声をあげると、女はドレスを脱ぎ捨てていき、すぐに下着をも纏わぬ姿になった。
褐色の裸身を惜しげもなく晒す女はどこか背徳的で美しい。
「ふふ……」
だが、謎めいた笑みを浮べた、一瞬後、その身体がプロポーションもそのままに女性から男性の身体へと変化する。
女は人間ではなかった、男性形にも女性形に姿を変えることができる夢魔という種であり、名はシャルランヌといった。
夢魔として長い時を生きてきた彼女は、サプリーム・ソーサレスの前身となった澱みの塔でのマーベラス・メイガス決める戦いへと参加したことがあり、弄辱を受けたことがある。
エスとシャルランヌ、お互い、似たような魔法の武闘大会に参加してることは知る由もなかったが、サプリームソーサレスで幾多の女性を凌辱の憂き目に合わせたエスが、過去の敗者であるシャルランヌに逆に苦杯を舐めさせられると知れば、皮肉な巡り合わせだと、エスはともかく、シャルランヌは思っただろう。
「はぁッ…はぁッ……もう…好きにしろ…だが!! 貴様達は……殺す……絶対に…だ!!」
だが、そんなことを知る筈もなく、知ったとしても現状の行為を容認できぬ、エスは息を荒げつつ二人を殺気の籠もった目で睨みつけると、宣告した。
「ふふ、楽しみにしてるわ」
「勝手にするがいい」
だが、エスの言葉に二人は恐れなど抱かなかった。
シャルランヌはベッドへとあがると、エスの頬を撫であげながら楽しげに答え、ビャーオは冷淡に言い放つ。
「……」
言うだけのことを言ったエスは覚悟を決めたように、目を閉じると深呼吸した後、全身の力を抜いていた、だが、不安の全て隠すことはできずに、おののくように身体が震えるのを止める事はできなかった。
「じゃあ、そろそろ、ヤらしてもらおうか」
「……ッ!」
ビャーオがエスの濡れぼそり、ひっそりといきづく秘唇へといきりたった肉棒をあてがうと、力を抜いたはずの全身を硬直させてしまう。
だが、ビャーオはそんな反応を一顧だにせずに、膣口へとあてがった肉棒を膣内へと一気に埋没させた。
「あ……く……うぁッ!?」
(い……痛いッ!!)
肉棒によって破爪された瞬間、エスは激痛に眉を寄せつつ、身体をのけぞらせ、叫び声をあげた。
圧迫された膣口から、透明な陰液に混じって、赤い鮮血が垂れて、寝台へと零れ落ちていく。
「いぎッ…痛ッ…ひぐ……ぐ……か…はッ…!!」
「ふふ……いい締まりだ」
激痛でロクに言葉を出せぬエスに、ビャーオは残酷な笑みを向けると、肉棒をそのまま突き進め、膣奥にあたるまで挿入し、
「もっと、深く、咥え込むんだな」
さらに、エスの肩口を掴むと、身体を引き起こして騎乗位へと移行した。
「あぐ……くぁ……! や……めろ……もう……抜い…て……くれ……」
エスは膣内で嵐のごとく荒れ狂う激痛に、身体に力が入らず、ビャーオの胸板にもたれかかると、その姿勢のまま、涙目で息も絶え絶えに懇願する。
「嫌だな」
被虐にのたうつエスの哀訴の表情よって、さらに嗜虐心を煽られたビャーオは邪悪な笑みを浮べると、お尻のあたりを引き掴み、小刻みのエスを突きあげていく。
「く……くく……いいぞ、その声、もっと痛がれよ」
「ひぃ……あッ…く、あぅ…くぁ…ああッ……!」
ビャーオが腰を突き動かす度に裂けた膣の粘膜が擦れて、激痛がエスを襲う。
最初に見せた意地などなく、エスはただただ号泣するばかりだった。
「さてと私も混ぜてもらうわね♪」
ビャーオによる責めを観戦していたシャルランヌは、声をかけると、褐色の身体を激痛に打ち震えるエスへと寄せ、まだ蕾のような菊座へとしなやかな指を這わせ、表面をなぞりあげる。
「あッ…な、何を……ッ!?」
「ふふ……きつそうね」
排泄の時の自分以外に触れるはずのない器官をシャルランヌに触られて、本能的に悪寒が走るのをエスは感じた。
だが、シャルランヌはエスの抗議じみた声に答えることなく、蕾の表面を弄んだ後に、無造作といっていいほどに指を一本、挿し入れる。
「わああッ!?」
意外な場所への侵入を受けて、驚愕して痛みも忘れてエスは叫びをあげた。
「い、イヤだ、それはイヤだぁッ!?やめろ、やめてくれええッ!!」
「あらあら、いい声ね♪」
シャルランヌは嫌悪の感情をあらわすエスを嘲笑うと、膣から溢れる愛液をすくいとりながら、菊座へと塗りたくり、入れた指をかき回しながら、後ろをほぐし続ける。
「いやだぁ、助けて、誰か…たす……ッ……ひぃッ!?」
「ふふ、動きがたりないか」
エスの反応に気を良くしたようにビャーオはせせら笑うと、腰の動きを激しくし、深い間隔で肉棒をうちこんでいく。
「わぁッ!?……ッく、あぐ、くぁ、あッ…」
膣を断続的に襲う裂傷の激痛と菊座に与えられる倒錯じみた、おぞましい痺れにエスは戸惑う様に困惑混じりの悲鳴をあげ続ける。
「ひぃ、ひッ…ひぁ……」
「さて、いいかしらね……いただくわ、お嬢さん」
指で入口と腸壁をそこそこほぐしたと判断した後、シャルランヌは指を引き抜いた。
そして、すらりとした身体に似合わぬ猛り立った褐色の剛直をエスの慎ましやかな菊座へと向け、狙いを定めると、ゆっくりと壊さないようにと埋めこんでいく。
「あ、いい感じね♪」
「ひぎ…あ……あッく……やめ…あ、あ、あ!!」
腸壁が剛直を締め付ける感覚にシャルランヌが歓喜の表情を浮べると、対照的にエスの表情が絶望へと染まっていった。
「ほらほら、こっちがお留守だな」
「ふふふ……いいわね」
「ああッ、あぅ、くぁ……はッ、はぁッ、はぁあッ……!?」
ビャーオが己のみの快楽をむさぼるように激しく突きあげると、それにつられるようにシャルランヌも滑らかな尻を掴んで律動を繰り返し、だんだんと動きを早めていく。
「……やだ、やめ、やッ…だぁ……はぁ…あぅぅ…」
二人の加虐者によって繰り返し味あわされる身体への蹂躙に、エスの瞳がだんだんと濁り、虚ろになっていった。
貫かれるままに身体を震わせ、反射的に声をあげるだけになっていく。
「ふう〜!!」
(久々だからな)
やがて、エスがぐったりとした頃、ビャーオは感極まった表情を浮べると、最後に膣奥に押し込み、熱い精液を叩きつけた。
(まだ、いけるんだけど……まあ、いいかしら)
シャルランヌもビャーオに合わせて腸内へと送り込む、こちらは身体を冷やすような冷たい樹液が流れ出て、エスの腸壁を冷やしていく。
「……!!……あつッ……!? ひッ………!……あ……あ……」
二人の欲望をその身で受けたエスは身体をビクビクッと震わせると、力尽きたようにビャーオの身体へとからだにもたれかかったまま、荒い呼吸をし続けた。
「ふふ、ごちそうさま、いい精気だったわ♪」
楽しげに笑ってシャルランヌが褐色の剛棒を引き抜くと、無惨な仕打ちを受けた菊門から、粘った白濁の液体が糸を引く。
「じゃあ、ね♪」
冷たい体液をエスのなでやかな尻になすりつけ終えてから、シャルランヌは女性形へと戻ると、黒いドレスを身に着け、満足の態でその場から消え去っていった。
「…気が……済んだ……か……」
ビャーオとつながったままで、胸にもたれていたエスは下半身から来る激痛と痺れ、消耗から荒い息をついていたが、やがて、かすれたような声を搾り出した。
「貴様達……許さ…ん……地の果てまでも追いかけ……必ず、必ず……殺すッ!!」
涙と涎まみれの顔のままだが、目に烈気を走らせ、精一杯にビャーオに向かってすごんでみせる。
「面白い、是非、やってくれ」
だが、それを受けたビャーオは復讐の決意など全く気にもせず、気だるげに呟くと、エスの肩を掴むと半回転して、正常位へと移行した。
「あッ…!? き、貴様まだ…ッ!?」
「……ふんっ」
突然体位が変わって、エスは焦燥と困惑の声をあげる、そして、ビャーオが再び、欲望を満たす行為に及ぼうとした時、再び、部屋で変異が起こった。
部屋の隅から八角形の模様が浮かび上がるや、黒いチャイナドレスを着た東方系の女性が現れたのだ。
「…あはは〜♪ 久し振りだから、『空を転ずるの術』失敗ね。ここ、何処か? …って、あらら?」
状況に似合わぬ能天気な声が女性の口から紡がれる。
「あいや…性行為の真っ最中だたか。わたし、邪魔か?」
正面の視界に入ってきた、二人を見ながら女は糸の様に細い目をさらに細めて、軽い調子で二人に尋ねた。
エスが知る由も無かったが、女の名は玄泉羚、前年度のサプリーム・ソーサレスへと参加した符術師である。
「た…助けてくれ……」
泉羚の口調に少なくても、ビャーオの仲間でないと本能的に判断したエスは懇願の表情を浮べる。
その瞬間、ビャーオが動いた、とっさに声帯を麻痺させるツボに針を打って、エスが言葉を出すことを封じる。
「……素直ではないな」
「あッ…かはッ……!?」
(……一体、何が)
邪悪な笑みを浮かべるビャーオを見ながらながら、声を封じられたエスは困惑する。
「あ……あ……」
「…あなた、ひょとして『さぷりーむ・なんとか』に出場してたエスとかいう人か? アイヤー、有名人に会ってしまたよ〜」
眉を八の字にして、涙目で泉羚を見あげるエスを見て、泉羚は驚愕の声をあげた
「ここに何しに来たんだ?」
状況によっては戦いもやむをえない状況と判断し、 油断なく針を後ろ手に構えて、ビャーオは泉羚に問いただす。
「んふふ…でも、助けるは駄目ね。あなた達のせいでわたしの今年の楽しみ、台無しよ。どうしてくれるか?」
だが、泉羚はビャーオの言葉を気にもとめずに無視すると、エスへと詰め寄った。
(そ……そんな)
意外な返答に思わずエスは絶句する。
「話をするのか?」
泉羚の言葉にビャーオは薄笑いを浮かべた。
「……こいつの身体に?」
「……? あなた、わたしに何か用か?」
ようやく、ビャーオの存在を気に留めた様に、細い目を向ける。
「いや、こいつをヤるなら譲ってやろうと思ってな」
「ん〜……そうね、わたしエスの身体で鬱憤晴らすもいい思うよ」
ビャーオの提案に妖艶な笑みを泉羚はエスに向ける。
「なにやら、因縁があるみたいだな、任せる」
ほとんど、厄介払いとばかりに、エスの声帯を回復させると、ビャーオは嬲った裸身から離れた。
偽名でとった部屋、変装を施した顔、そういった安全確保の為の配慮はとってあることからできることだった。
「さてと……ワシは別の場所へ行くか……良かったな、また、可愛がってもらえて」
服装を整えると、ビャーオは邪悪な一瞥をくれて去っていく。
「けほッ…けほッ……う……」
声帯の回復したものの、身体の自由が効かないエスは咳き込みながら、悔しげにビャーオを見送った。
「…ああ、安心するいいね。わたし、あなたをいじめるはしないね………んふふ…とっても気持ち良くさせてあげる……」
ビャーオがいなくなるや否や、泉羚が淫蕩な笑みをたたえて、エスの腹部に指を這わせてくる。
(ま、また!?)
泉羚の言葉と行為に内心の絶望を隠せずに、無惨な体験をしたエスは咽び泣くのだった。
〜END〜