エリザ・・・闇を歩きて・・・

          by MORIGUMA


人の精神、その何ともろく儚きこと。

わずかな無聊、退屈、それすらも耐え難い苦痛。

寿命とは、精神への恩恵かもしれない。



ザクッ、ザクッ、ザクッ、
凍った大地を、黒い革の靴が踏み割っていく。

息すらも凍る寒さ、
全てが白く染まる大地、

それを薄物をまとっただけの少女が、
放心したまなざしで、
ただ歩く。

ザクッ、ザクッ、ザクッ、
わずかに白い息、
霜の下りた長い黒髪、
肌は凍りついたごとく白く、なめらかだった。

だが、黒く澄んだ目は、
何も映そうとしない。

整っているはずの服装が、
どこか淫らに、放心したようになびく。
しなやかな身体は、力なく白い大地を踏んでいく。

飢えたオオカミが、
しっぽを丸め、森に隠れる。
動物たちは寒さ以上の恐怖に怯え、一切の声がしない。

黒々とした影が、雪の上をおどろに揺らぐ。
歩く姿にまといつくように、
どろどろと影が蠢く。

道の途切れる先に、
ぽつんと、打ち捨てられた教会があった。

村が滅び、
誰も来なくなった場所、
その定めと共に、残酷な時にただ沈んでいく建物。

「教・・会・・・」
少女は、ふらふらとそこへ歩んでいく。
「あ・・・なた・・・」

少女の目は幻影を写す。
無数の人が座り、神父の説教を聴く場所。
『あの人のいた場所・・・』

どんよりとした無数の目が、
ぎらつくまなざしを向けた。

人の寄らぬ教会に、盗賊たちが巣を作っていた。

どんな旅人も、思わず逃げ出す目が、
舐めるように少女を見た。
目の覚めるような美人に、全員がぎょっとする。

それに気もつかず、少女はふらふらと入り込む。
逃げれば、追いもする、
だが、自ら入り込むそれに、
しばし呆然としてしまう。

「あなた・・・どこ・・・」
うつろな声で、
ガラスのような目が、ホコリだらけの屋内を見回す。

はるかな記憶、優しい笑み、慈しむまなざし、
全てが、曇りガラスの向こう側に、ぼんやりとしか浮かばない。

若い肢体と、艶やかな美貌、
細いが美しいシルエットを持つ肉体、
整っているのに、どこかにわずかな妖しい緩みがちらつく。

空ろな目と、心をどこかに置いてきた声が、
勝手に男を引き寄せていく。

細い手が、ぐっとつかまれ、引き寄せられた。
『なんだろう・・・』

ぼんやりとした夢の中の少女は、
それに意識を向けようともしなかった。

ビリビリッ
薄物がむしられ、
美しい乳房がむき出しになる。
あらわな肩と首筋が、青白く暗がりに光る。

『なんだろ・・・う・・・』

下着が剥ぎ取られ、身体中に無数の手が這いまわる。
身体がほのあたたかくなる。
口が吸われ、ヤニと酒の臭いにおいがする。
脚をこじ開けられ、指がはいずり、穿った。

「う・・ん・・」

かすかな、どこかで感じた記憶が、
若い肉体にうずき、濡らす。

深く、浅く、
男の指に穿たれ、捏ね回される感触に、
広げられた長い脚を震わす。

形の良い乳房が、揉まれ、嬲られ、つままれる。
喘ぎ、震え、もうろうとした意識に、ちりちりとした快感が走る。
肌を重ねた記憶が、
もやもやとした影となり、自分を覆う。

「まるで人形だぜ、キ○ガイか?」
「いいじゃねえか、ちょうどいい道具だぜ。」

恥ずかしげも無く広げられ、身体中を嬲られながら、
少女は次第に濡らし、肌を染めていく。

異臭のする肉塊が、口に押し込まれ、無理やりにめり込んでくる。
硬く熱い感触が、膣を広げ、突き刺さってくる。
『どこか・・で・・』
潤んだ膣が、ぎゅっと締まる。
舌が、脈打つ肉をこすり、唇がすぼまる。

血のにおい、
暗い建物、

ちりっと、何かが見える。

ギシッギシッ、ギシッギシッ、
美しい身体が、無残に広がり、
野太い陰茎が、膣を突き上げ、子宮口をこする。
喘ぐ唇が、裂けんばかりに広がり、
血管の浮いたペニスを何度も飲み込み、しゃぶる。

冷たい手が、別のペニスを掴み、こすり、
何人もの男の精液が、小ぶりだが形のいい乳房を汚した。
『なんだろう・・・』

ほとばしる精液を飲み込み、その味に何かを思い出しそうになる。
腰をきしませる感触に、しがみつき、脳髄に響く律動に、のけぞる。

ギシッ、ギシッ、ギシッ、ギシッ、
「ぐお・・っ!」
「んう・・・ん・・・っ!」
ドブウウウウッ、ドブウッ、ドブウッ、ドブッ、ドブッ、ドクッ、
火花が飛び散り、痙攣が熱くほとばしる。
形の良い眉が激しく震え、のけぞる裸身が何度も揺れ動く。

入れ替わり、立ち代り、何人もの男が身体中に吐き出していく。

四つんばいにされて、犬のようにのたうちながら、
ぼんやりと、暗い影が広がる。

アヌスも膣も、同時に犯され、
口に押し込まれ、
めちゃめちゃに輪姦されながら、
暗い影が、意識にシミのように広がっていく。

見える、見たい、
見える、見たくない、
二つの意識が、交互に彼女を突き上げる。

アヌスが灼熱し、腸が捏ね回される。
あふれる膣が、したたりを零し、あわ立ち、突き上げられる。

惑い乱れる意識、
身体を犯す快感にしがみつき、

朦朧とした記憶が、

「んっ、ぐうっ、んっ、んううっ、んっ、ぐうぅ、ぐうっ、うっ、ううっんううっ」

跳ね狂う裸身に、狂気が喰らいつき、
脈動と狂乱が、胎内に襲いかかった。
「んん−−−−−−−−−−−−−っ!!」
ドビュウウウウウッ、ドビュウッ、ドクウウウウッドクウッ、ドクッ、ドビュウッ、

口内にあふれた精液が零れ、
にえたぎるアナルから噴出し、
痙攣する子宮がドロドロに熔ける。

暗い影が、
倒れ伏し、バラバラになった夫になった。

「いやああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

ほとばしった精液が、恐怖に引き歪んだ顔を濡らした。

絶叫が闇を爆発させた。
それは、炎の様に立ち上がり、巨大な門と化した。

無数の黒いおぞましいものが、
ぞろぞろとその奥から這い出す。

身体中に浴びせられた体液に、さらに、赤い汚濁が飛び散った。

無数の闇が、手をちぎり、脚を喰らい、首をひきちぎる。

すぱりと切られた陰茎が、中を舞いながら残渣を飛び散らす。

絶叫が止み、
無数の屍の中、汚れきった少女が、
壊れた心を抱いて、ただ滂沱に涙を流しながら、
その中心にへたり込んでいる。

『クククク・・・・』
『グフフフフ・・・』
彼女の上に、黒々とした翼を広げた、
巨大な影が現れる。

醜く引き歪んだ顔の男、
高慢でサディスティックな美貌の女、
背中合わせに溶け合った一つの姿。
魔と呼ばれし、悪夢の具象。

『また大勢の子を引き上げてくれたわ。』
『だが、聖職者でなかったのは残念だ。さすれば、もっと良い子を引き上げられただろうに。』

おびただしい屍の周りに、ゆらゆらと蠢く無数の奇怪な影。

『ささ、リーゼや、“門を開く者”、まだ狂っても死んでもだめよ。フフフ。』
『黄昏の中に戻るが良い、男を引き寄せ、聖職者を狂わせ、狂気と絶望の門を開け。』
『何度でもね、キャハハハハハ』
『何度でもな、ワハハハハハ』

意識が黄昏の中に混濁し、
狂気が正気へと、ぼんやりと戻っていく。

穢れぬいた体が、清められ、整えられ、
時を巻き戻したかのように、元の姿へ戻っていく。

教会の瓦礫に背を向け、
少女は、失った何かをただ探しに、歩き始めた。

あてどなく、終わりも無く。

fin