魔人の休日
byMORIGUMA


「ふふ、うまいうまい、はぐ、はぐ」
フェイの店の名物、壷の上に薄いパン生地をかぶせ、いろんな食材を煮込んだシチューは、味も香りも絶品で、何より熱いのが大好きなアシュラナの、お気に入りだ。
大きな壷いっぱいのシチューが、見る見る無くなっていく。

アシュラナは、身体にぴったりの皮のズボンと上着を着け、大胆に腿の所をくりぬき、肩袖をはずした派手な格好をして、奇怪だが鮮やかなイレズミを剥き出しにしていた。
スタイルはほっそりとしていて、胸元をぐいと広げ、女らしい曲線だけが極めて危険なラインを描いている。
そのボディのどこに入るのかというぐらい、見事な食べっぷりだ。


「あ、あの・・」
「ん、なんだい?」
上機嫌のアシュラナは、さえない店のオヤジにも、全く機嫌を損なわなかった。
普通の彼女なら、声をかけるだけでも、毒蛇を素手でつまむようなものだ。

「その、・・、すみません、なんでもありません。」
へんなやつだ。
そう思った時、ウエィトレスを手伝う孫娘が、顔を真っ赤にしながら訴えた。
「おじいちゃん、ダメよ、言わなけりゃ。あの、その、お金を払ってください。」
むっとする彼女に、それこそ必死で訴えた。
「もう、このままじゃ、店をたたまなければなりません。シチューも作れなくなります。」
最後の一言が、火のつきかけた導火線をかろうじて消した。
こいつが食えなくなるのは、ごめんこうむる。
「クーガーは払ってないのかい?」
クーガーは、アシュラナが上がり込んだ、町のヤクザの親分だ。
「いくら言っても、取り合ってもらえないんです。」

15、6だろうか、長い栗色の髪を、きれいに編んでお下げにし、紺の長いスカートに、白いエプロンがよく似合う、中々可愛らしい娘だ。
クーガーの家のメイドもこんな服だったが、この娘の方が、ずっと似合う。
ふっと、いたずらしたい気持ちも湧いたが、シチューのいいにおいは、かろうじて我慢させた。

アシュラナは、十日ほど前に、大きな商業都市であるトトラへきた。
ここで利権争いをやっているごろつきグループが抗争の最中で、チンピラの一人が、からんだからたまらない。あっという間にそのグループの、大半が黒焦げにされ、敵対していたクーガーは、頭を低くして彼女を迎え入れたのだ。


その夜、クーガーの自宅で火柱が上がるのが、町外れからまで見えた。


「あ、ありがとうございました。」
翌日も、アシュラナがフェイの店へ来ると、娘が礼を言ってきた。
「あの、これ私が作ってみたんです。どうぞご試食ください。」
赤い顔をますます真っ赤にしながら、いいにおいのするパンを山盛りにして差し出した。
焼き立てのパンに、ニンニクを混ぜたオリーブオイルをぬって、もう一度焼いてある。
「うん、うまい。」
アシュラナの好みがまた一つ増えた。娘はファーリィといった。

アシュラナが壷のシチューをかきこんでいる時、表が騒がしくなった。
「アシュラナというのはお前か?」
役人らしいのが、店に入ってきた。その男が言うには、町の要人が一人焼き殺され、殺人の容疑がかかっているというのだ。
もちろん、アシュラナにそんな記憶はない。
うるさいので灰にしようかとも思ったが、騒ぎになると、せっかくのシチューが台無しになる。
食い終るまで待ってろと言うと、役人はそそくさと店を出た。
本当は、かなり怯えていたらしい。

ファーリィは心配して、裏から逃げるように進めたが、アシュラナは意に介さず、食い終わるとすたすたと出て行った。

だれもアシュラナに鎖も、手かせもはめようとしなかった。
彼女が暴れだすと、何が起こるか、よく知っている。
ただ、遠巻きにして、『連行』していっただけだった。

アシュラナは寝床や着物には無頓着で、寝るときもほとんど裸で寝る。
寒い、という事を知らないせいだろう。
取調べの為の石牢に入れられると、でかいだけの木のベッドで、気持ちよげに寝息を立て始めた。

「おい、大丈夫なんだろうな?」
「ひっひっひっ、まかせな。火炎魔人だろうがただの女さ。」
ぼそぼそと牢の外で話し声がし、老婆がそっと香炉を取り出した。
青紫の火が上がり、異様に艶かしい香りが立ち昇った。
それがゆっくりと石牢のほうへ、流れていく。

しばらくして、老婆は恐れ気もなく、石牢に入った。
アシュラナはまだ寝ていたが、顔が赤く、息が荒い。

「だ、大丈夫か?。」
「ひっ、ひっ、ひっ、もう、夢見心地さ。」
するりと、手品のような器用さで、胸元をはだけ、ズボンをはずすと、下着がひどく濡れているのが分かる。枯れ木のような指先が、奇怪で繊細な動きをなぞった。
「あっ、ああ〜〜んっ!」
甘ったるい喘ぎを漏らし、つまさきをひきつらせた。
「男や、あたしのように月の物(月経)が枯れちまったのには、関係ないがね、女なら、この香には、どうしようもなくなるのさ。」

男の喉がごくりと鳴る。

「味見をしてみるかい?。もうだれでもいいってさ。」
しわだらけの指先が、ピンクの柔肉を深くうがち、襞のざわめきを慰め、弄ぶ。
「ひっ、あひっ、ひっ、かふっ!」
アシュラナはなすがままに乱れ、喘ぎ、下着を引きちぎった。

「へへ、こりゃあいい。このアマをヒイヒイ言わせたかったんだ。」
たくましく赤い男根がピンと立ち、アシュラナの口元に押し付けると、薄く綺麗な唇が広がった。
「ん、んふ、んん、んっ、」
とろんとした目で、口に押し込まれた男根を、咥え、しゃぶりだす。
口をかき回されながら、それに従順に従い、
胸を、あそこを、もみ、つまみ、いじりながら、
粗末な木のベッドで、激しく悶える。

「うへへ、いくぜ。」
「あはああ、きてえ、きてええぇ、」
甘く、蕩けるような声が、石牢に響いた。

イレズミを刻み付けた、美しい脚が、男の肩に高くかつがれる。
剥き出しになった銀髪の茂みが、しっとりと濡れて、そこをなぞる亀頭を、甘く刺激する。

しなやかな腰を引きつけ、いったん引いた男根が、一気に貫いた。
「ひううっ!」
火花が散るような快感が、胎内を貫く。
きゅううっと締まる膣を、猛々しい物が、無理やりに貫いていく。
肉のたくましく熱い感触が、
脈打つ鼓動が、
こすれあう粘膜の感じが、
アシュラナの華麗な肉体を蹂躙していく。

ぐっと引きずられる感触から、お腹の奥まで貫かれる。
わざとゆるゆると引きずり、一気に、アシュラナがのけぞるよう、突き上げる。

深くうがつたびに、幾重にも複雑に絡みつく粘膜。
快感が、亀頭のくびれを、胴を、根元を、嘗めまわすように、こすっていく。

「あっ、あぐっ!、あああ、あふううっ!、あうっ、ぐううっ!、」
銀髪が揺らぎ、小麦色の肢体がのけぞる。
突き上げる勢いで、豊かな乳房が激しく揺らぎ、
ぶち当たる衝撃が、恥骨を打ち、腰をしびれさせる。
アシュラナは長い脚を強く絡め、銀の爪を男の背に食い込ませ、
みずぼらしいチンピラの男根に、夢中で腰を合わせ、快楽を貪った。

絞る、突かれる、絞る、突かれる、絞る、突かれる、
繰り返すリズムが、そり返った男根の形が、細くしなやかな腹部に、深く刻まれ、
男を求める子宮が、わななき、アシュラナの脳髄を刺激する。
絡み合う粘膜の刺激が、
食い込む強固な男の感触が、
深く、深く、深く、意識も、抵抗も、失わせ、快楽に服従させた。

「あぐううううっ!」
どびゅうううううっ、どびゅううううっ、どびゅううっ、

たまりかねた男根が、アシュラナの胎の奥へ、薄汚れた体液を、一気に撒き散らす。
のけぞるしなやかな肢体に、たっぷりと中めがけてほとばしる。
わななく膣が、激しく締め付け、その熱い精液を絞り取る。

どやどやと足音がした。
「ちっ、先に始めてやがったか。」
樽のような腹の男が、ドスの効いた声でぼやく。
他にも、何人もの男が、石牢に入り込んだ。
まだアシュラナは腰をくねらせ、離そうとしない。
「よお、マグダルの親分さん、おいでになったね。」
町のごろつきの第3勢力、マグダルとその手下たちだ。
役人にたっぷりと、脅しとワイロを効かせ、アシュラナを陥れたのも、もちろんこの連中だ。
「ほれ、こいつをあんたらのあそこに塗りな。そうすりゃ、女はあんたらの言いなりさ。」
老婆は、強力な媚薬の小ビンを渡した。
「こいつも、女にしか効かないからね。」
「さすが、黒蓮のヘリオラばあさんだ。気が効くぜ。こいつは礼金だ。」
ずしりと重い金貨の袋を渡すと、ばあさんはそそくさと出て行った。

マグダルは半立ちになった己のペニスに、その薬をたっぷりとぬりつけた。
まだ、香が効いているのか、アシュラナはマグダルのされるがままに、それを咥え、しゃぶっていく。

細い舌先が、亀頭の先端を割り、唇が吸い付くようにしてしごき、身体中の血液を吸い上げていく。
「ぐふふふ、このねえちゃん、すげえじゃねえか。」

絶妙な舌使いで、たくましく膨張したペニスが、異様な迫力でそそり立った。
「あっ、ああっ!」
薬が、アシュラナの下半身を直撃し、喘ぎとともに、蜜が弾けるように吹き出す。
オレンジの目を潤ませ、股間に指を差込み、回りで見ているのも構わず、長い爪でピンクの粘膜をかき回す。
マグダルは、もう一度たっぷりと薬を塗り、アシュラナの長い腿を開いた。
脚はまるで無抵抗に広がり、濡れきった股間を無防備に晒した。

ひくひくする淫花は、ぷっくりと柔らかそうに広がり、男に飢えてとろとろと雫を零す。

「ぐうっ!」
とろんと、凌辱を始める男を見ていた目は、突入してくる感触に閉じた。
太いペニスが、広げ、こじ開け、狭く絡みつくアシュラナの胎内を突き進んだ。

しぶきを上げ、のけぞる細い腰を突き上げ、苦悶に喘ぐアシュラナを、えぐっていく。
食いつくような突き上げが、広げられた脚を、のけぞる乳房を、痙攣する指先を、征服していく。

 がっ、がっ、ぐりゅっ、ずぶっ、ずぶっ、ぐりゅっ、
「あっ!、かっ!、はっ!、はあっ!、あぐっ!、ぐううっ!」
マグダルは樽のような腹を震わせ、下腹をアシュラナに激しくぶつける。
声を上げ、肉に食い込んでいく感触に乱れ、全身を淫乱に震わせながら、男を飲み込んでいく。
絡みつく感触のものすごさが、しなやかで美しい裸身の蕩けそうなわななきが、美しい乳房の淫らに跳ね狂う動きが、女なら百戦錬磨のマグダルをも、すぐさま暴発させそうに高ぶらせる。
高慢そうな美貌が、淫らに狂う様が、たまらない愉悦となって、さらに腰に力をこめる。

ずこっ
「あぎいいいっ!」
根元まで、みっしりとたくましいペニスが貫き、脈動が身体に流れ込んでくる。
アシュラナの細い身体を引き起こし、座位で、下から突き上げる。
「あぐうっ!、かっ!、かはっ!、あっ!、あっ!、あひっ!」
形の良い尻肉を掴み、深く、伸び上がるように食い込ませる。

身体の全てが、突き上げるペニスにかかり、底深く食い込んでくる。
今にも喉まで突き抜けそうな、突き上がる激しさに、しなやかな背筋が、弓のようにのけぞり、腰をくねらせ、乱れていく。

「あっ!、はっ!、あぐっ!、ぐっ!、いっ!、ああっ!、いいっ!、すごっ!、いいっ!」
我を忘れ、赤い唇をだらしなく開き、淫蕩な叫びを上げ続ける。
突き上げるたびに、乳が跳ね、跳ねかえり、激しく踊る。
貫かれるたびに、深く食い込んだペニスが、焼印のようにアシュラナに焼きつく。
身体ががくがくと揺さぶられ、意識が白く塗りつぶされていく。

銀の髪が波打ち、脚が、指が、たくましい背中に食い込み、うちふるえた。

「はぎいいいいいいいっ!!」
どどびゅうううううううっ、どびゅうううううっどびゅううっ、どびゅっ、どびゅっ、

焦点を失った目が、宙をさまよう。
のけぞる下腹に、大量のザーメンが噴出し、なだれ込んでいく。
見知らぬ男のペニスが、胎内で盛大に脈打つのを、恍惚として味わっていく。
痙攣する下半身に、繰り返し、白濁の波が打ち寄せ、あふれさせた。

ひひひ、

回りで待ちかねた男たちも、ペニスに薬をドロドロとぬりたくり、ぐったりと喘ぐアシュラナに手をかけた。

「うっ!、んっ!、んっ!、んうっ!、うっ!、んーっ!、んんーっ!」
アシュラナはされるままに、身体を開き、男を受け入れていた。
身体をよじり、左脚を担がれ、はしたなく広げられて、
唇に、アヌスに、膣に、
黒光りする男根が、深くうがちこまれる。

恍惚とした目は、もう何も見ていない。
粘膜に食い込む、男の感触だけが、熱く、蕩け、焼きついていく。

喉に深く押し込まれ、細い喉を震わせてのけぞる。
しゃぶり尽くす舌先が、たくましい肉茎をなぞり上げ、なぞり降ろす。

「んんっ、んっ、んううっ!」
張りの良い尻を広げ、アヌスを剥き出しにされて、アシュラナはうめき声を上げる。
引き抜かれる動きに、必死で腰をくねらせ、貪るようにこすりつける。

焼けるように熱く、むずがゆいようにいらだたしい、それが固く脈打つ感触に貫かれ、えぐられると、喘ぎ悶えるほどに気持ちがいい。
喉に深く突き入れられ、むせるように喘ぎながら、こすれるたびに声が漏れる。

「んふっ!、んんふっ!、ううっ!、んううっ!」
とろとろに蕩けた蜜壷に、うねるように、食いつくように、欲望に脈打つ肉柱が、深く突き刺さっていく。
爛れるような熱さが、肉厚な亀頭でこすれ、
のたうつようなかゆみが、ゴツゴツとした胴でしごかれ、
貫かれるたびに、ピンと立った乳首を震わせ、ため息が漏れる。

恥骨がぶつかり合い、見知らぬチンピラに深々と貫かれ、じんと走る快感がしなやかな背筋を貫いていく。

上品な薄茶のすぼまりが、裂けそうに広がり、やわらかな腸が掻き回される。
担がれた足先が、ぴりぴりと震え、達する。

喉深く押し込まれ、むせながら、なお夢中でそれをしゃぶり、嘗め尽くす。

「んっ!、んうっ!、っ!、ううっ!、んっ!、んううっ!、うううっ!、んううっ!」
くぐもった声を漏らし、のけぞる身体を容赦なく攻め立てられ、
それに追従し、
尻を振りたて、

奉仕し、
激しく頭を降り、飲み込み、嘗めまわし

哀願する。
腰の動きを合わせ、絞り、締め、こすりつける。

両手に握らされ、夢中でしごき、
我を忘れ、快楽にのたうちまわる。

「あふううううっ!!、んぐううっ!!」
ほとんど同時に、アヌスが灼熱する精液であふれ、
口いっぱいに、濃い精液が吹き出す。
夢中で、受け入れ、尻を震わせ、
喉を、繰り返し鳴らし、飲み込む。
更に、深く、膣底を、子宮口をえぐられてわななく。

「あふうううううううんっ!!」
根元まで突き立ったペニスが、中にどくどくと注ぎこむ。
快楽に蕩けきった顔が、がくがくと揺れる。
薄いなめらかな腹に、チンピラの精液が、あふれるほど注ぎ込まれる。

がくがくがくっ、
叩き込まれるように、中に出しまくられ、
矜持も、誇りもなく、凌辱されるままに喜んで服従していた。

交代するペニスが、アヌスをえぐり、えぐられたアシュラナは、歓喜に蕩けた。
入れ替わり、ヴァギナを、ぬるぬるにあふれた中を、貫かれ、狂喜していた。

「あんっ!、あふっ!、いいっ!、あぐっ!、ぐっ!、いっ!、すごっ!、いっ!、」
涎すら滴らせ、乱れきった声が続く。
胎にあふれ逆流した精液が、小麦色の肌を伝い落ちていく。
座位で前後から挟まれ、屹立するペニスが、中を犯していく。
アシュラナは自ら離れられない。
深く、深く、中にどこまでも食い込み、貫かせたい。

もう、意思も、感覚すらもぼやけ、男たちの肉奴隷そのものだった。

「へへへ、もうすっかり色ボケてるぜ。」
「だが、すげえいいな。おらっ!」
「あぐっ!、もっとぉ、あああ、もっとおおぅ、」
「とことんやりぬいて、腰もたたねえようにして、首に鎖をつけてやる。男はいくらでもいるんだからな。」
わななく腰を押し込み、痙攣する胎内を汚しながら、マグダルが言った。
石牢の扉が開き、チンピラが次々と入ってきた。


「はああああああああんっ!!」
どくどくどくっ、どぐうっどくっ、どくっ、
深くのめり込まされたペニスが、猛烈に胎内で射精していく。
男の腹の上にのめり、ほとばしる感触の全てが、身体の奥に響いていく。

子宮の奥まで、精液があふれ、染み込んでいる。
もう、どれほど輪姦されたのか、数える事もできない。
それでも、身体が男に飢え、男たちはよみがえっては、アシュラナを嬲り尽くす。
牢役人も混じり、衛兵も彼女の膣をあふれさせた。

「あっ、はあっ!、あぐぅ!、ううっ!、あふうっ!」
後ろから、犬同然に犯され、身体が激しくゆすられる。
口に押し込まれた。
朦朧としたまま、がくがくと振るえる手で、体液にまみれた身体を支え、前から、後ろから、好き放題に犯されていく。

じんっ、じんっ、
動くたびに、鈍く心地よい刺激が、脳まで届く。
ずぶっ、じゅぶっ、ぐりゅっ、
激しく音を立てて、はやり立つ男根が、アシュラナを貫く。
これほど輪姦されても、まだ、そこは激しくざわめき、巻きつくように刺激してくる。
更に腰が突き上げ、甲高い音を立てて、アシュラナを狂わせ続ける。


「ぎゃああっ!」
若い女の悲鳴が上がった。
厚い石牢の壁も貫き、はっきりと聞こえた。
一瞬、部屋に群れていた男たち、全員の動きが止まった。

「何事だ?!」
酒を飲んでいたマグダルが、身を起こす。
チンピラが急ぎ外へ出ると、すぐに別の男が、服におびただしい血をつけて入ってきた。
「す、すいやせん。フェイの店のアマッ子が、アシュラナを出せと騒ぐもんで、手篭めにしたんですが、噛み付いて奥に飛び込もうとしので、つい、殺っちまって。」

「ちっ、ばかやろう。下手な騒ぎは起こすなと言ったろうが。」

その時、どっと殺気が噴き上げた。
「ぐぎゃあっ!」
アシュラナを嬲っていた二人が、その場で転げまわる。

一人は、引き出したペニスが、根元からねじ切られるようにへし曲がり、もう一人は、おびただしい血がどくどくと噴出していた。
ゆらりと起き上がったアシュラナが、ペッと、喰い切ったペニスを吐き出した。

「な、な、何で、くっ、薬は?!」
「薬・・?、ああ、あたしは顔が3つあるのさ。」
それが、現代で言う多重人格、仮面(ペルソナ)の事だと、マグダルが知るはずもない。他の人格が表に出ると、それまでの恐怖や痛覚、薬剤等の影響が、全く無くなる症例がある。
アシュラナがだっと駆け出す。

ぼううっ!
全員が、いっせいに頭が燃え出し、その場で立ったまま、人間ろうそくとなった。

裏門の入り口で、ファーリィが倒れていた。
腹にひどい傷があり、内臓がはみ出していた。
まだ、かすかに息があった。
目が、わずかに動いた。
「おねい・さん・・、はなし・・を・きい・てくれて・あり・が・とう・・」
それだけだった。

 『あたしは、何でここにいるんだろう・・。なんで、ここに来たんだろう・・。』
自分が不思議だった。
裸のまま、ファーリィの傍に、しばらくしゃがみこんだまま、動けなかった。

「パン、食えなくなっちまったな・・。」


二日後、アシュラナはフェイの店に入った。
店は、いつも通り営業していた。
さえないオヤジが、目を真っ赤にしている事と、ファーリィがいないこと以外は。

手際よく焼かれた壷が、テーブルに置かれた。
生きていかなきゃならねえ。
オヤジの動く姿を見ていて、ふと、そんな言葉が浮かんだ。

あのパンはもう出てこない。

アシュラナは、黙々と食べ初めた。
『こんなに、しょっぱかったっけ?』
ふと、食べるのを止めると、壷がゆがんで見えた。

「あれ、あれ・・?」
オレンジの瞳から、つぎつぎと雫がころがり落ち、鼻やあごを伝い落ちていく。
どうしても、それが止まらなかった。

生まれて初めて、どうしようもなくこぼれていく雫に、アシュラナは困惑していた。

魔人の休日/END