グラッセン戦役が終わって、少したった日のことだった。
かねてから依願していた教会の修繕とシスターの斡旋が、二つ同時にきた。
これは、神のお導きか?と、少し本気で思ったが・・・
私はそんなことがないのはもうわかりきっている。
祈るだけでは何も起こらないし、奇跡なぞは起こらない。
そんなことを達観しているが故か、懺悔の言葉も的確に答えられている。
あまり人が来ない性があるかもしれないが・・・
なにしろ町外れの教会なのだ。
修繕やシスターなどは、こないものと諦めていた。
修繕作業は明日からにも始まるらしい。シスターはその完成後とのことだ。
もう、来てくれるものなら誰でもいい。
ここの回りは、食い詰め者や半端者、すねに傷を持つ者達が大半を占めている。
前に斡旋されてきたシスターも一ヶ月も持たずに逃げ出してしまった。
今回は、ガンバッテ欲しいものだ・・・



教会の修繕作業が終了した。
割れたガラスも新しくなり、これで夜風がしのげるというものだ。
一階の礼拝堂が、広々となっていて印象が違うと思ったら懺悔の部屋が地下に移されていた。
余り使わない地下倉庫だったので別にかまわない。聖歌隊はいないが、小さなステージもできていた。
新しいシスターが歌えるなら使えるかもしれない・・・
シスターが来るのは明日だ。ようやく孤独な生活ともさようならだ。
だが、やはり神様がそばにいると言われても実感はできない。



シスターがやってきた。なぜか、役人が馬車で御登場だ。
どうも問題のあるシスターらしい。なるほど、この場末教会に来る理由がわかった。
なにかしらの問題を起こし、飛ばされたというところか・・・
彼女は心神喪失状態にあるという。
普段の生活上は問題ないが、心の病なのでじっくり治すということらしい。
彼女の状態・仕事などを一週間ごとに報告するようにと言われた。
これは、かなり役所ではなく教会命令らしい・・・
しかし、修繕費用の肩代わりに問題シスター押しつけられたのだろうか?
と勘ぐってしまったが、教会命令なのだ無粋な詮索はしないようにしなければ。
なにはともあれ、シスター「アグネス」は、この場末の教会に来てくれたのだ。
感謝しなければならない。
しかしあの二人組の役人の態度と言ったら、横柄そのもので気分が悪かったな。



昨日は、旅の疲れもあるようだからとアグネスには自室に案内し休んでもらった。
この時、彼女は一言も口を開いていない。
朝食時の祈りの言葉は、薄くて聞きづらい声であったが声は出していた。
心神喪失状態と聞いたが、どちらかと言えば鬱状態なのかもしれない。
そんな状態の彼女だが仕事はよくやってくれている。
掃除してくれと言えば返事はないがやってくれるし、食事も手伝ってくれる。
しかし、無口で鬱な表情は直らない。
彼女をこんなにまでにした原因はわからないが、今はそっとしておくほうがいいと考えた。
そして、彼女が来て最初の礼拝の日がやってきた・・・



礼拝が始まった。普通は人数的に二回ほどに分けてやるがこの辺鄙な場所では一回でも
お釣りが来る・・・
今日は外回りでシスターアグネスを見た効果かなのかいつもよりほんの少し多かった。
しかし、ここの人達は賛美歌などを歌ってはくれない。
まずいつも通り頌栄(礼拝開始の合図賛美歌を歌う)(うちは歌わない)から始める。
誰も歌ってくれないので、これはもう合図でしかないのかもしれない。
使徒信条告白(色々喋るのだが喋るのは私一人)を読み上げる。
これは、少数の人が復唱してくれる。反応があるというのは嬉しい・・・
祈祷(感謝の祈り、周りの人と握手)をするが、回りは挨拶などしない。
挨拶をするのは、が聖書を貸し出しの作業をしているシスターアグネスだけにのみだ。
聖書朗読(今日の鍵となる部分を読み上げる)をする。これを長くやると帰ってしまうので、手短にすま
せる。
聖書朗読を元に説教を始める。
今日の話題は「私達がどこから来てどこへ行こうとしているのか?」
人間っぽい話題である。どうも半端な人にはこういう話ほどきくようだ・・・
小一時間ほど質問を交えながら説教を終わる。最近、説教がセラピーのように感じるが、
それはそれでいいのだろう。
神様に祈ってもなにも起こりはしないのだから、私は、せいぜい他人の心のしこりをとるだけだ・・・
その後、献金の為の箱が回される。
これが、雀の涙に等しい。
一月食べていけるほどたまったことはない。
もっぱら上からの援助でここは成り立っている。
箱を回収し終えたシスターアグネスに箱を受け取るとその軽さに涙が出そうになるが、その涙はこのは
ずれの教会に来たときからなに一つ変わったわけではない。
その後、主への祈り(歌)だが、誰も歌えないのか知らないのかはわからないが歌えないので「省略しま
す」と言いかけたその時・・・
アグネスがステージに立っていた。彼女は、私のほうを見ていた。ただ見ていた。
そして私は夢遊病者のようにピアノに向かう。
これも回収作業の際修理されている。
ピアノの前にする。何年ぶりだろう?
弾くことすら忘れていた。
だが、今は勝手に指が音を弾く・・・
これが奇跡なんだろうか?
彼女はずっと歌っていた。そのような気がするが、私はただ弾いていた。
綺麗で澄んだ曇りのない・・・そんな声だった。
彼女の声とピアノの音が終わりを告げる。
私は弾き終わり、ピアノの余韻のような音を楽しむ。
観客は言葉を無くしている。どちらかというと放心状態のようだ。
私は、壇上に戻り祝祷(終了の合図)を告げる。
観客は無言のまま帰っていった。
私は、彼女のほうに振り返るともう彼女はいなかった。
部屋に戻ったらしい。
一声かけたかったが、なぜか近寄れなかった・・・

その日の夜。
物音で目が覚める。
ピアノの件以来冷めた興奮状態が続き、眠りが浅かったからかもしれない。
寝室から出る。声は地下・懺悔部屋から聞こえる。
地下の懺悔室・倉庫は、充実しており一畳ほどの部屋に一つの壁があり、声だけが聞こえる部屋があ
る。この部屋を告解室と言うが、この部屋からは聞こえない。
そうなると倉庫しかないのだが・・・

「ああ・・・・どうかお許しください・・・・間違っておりました・・・」

と、女性の声が聞こえる。息も絶え絶えだ。
だが、声は午前の礼拝で聞いたあの声だった。

「も、もう決していたしません・だから私の汚れた体を清めてください・・・」

彼女は、許しを得ようとしていた。
それが、なんであるかなどわからない。
私は小さく開いた扉の前で、立ちすくんでしまっていた・・・

「御願いいたします。」

首輪をつけられ、漆黒の拘束具がその細身の体をがっしりとくわえ込んでいる。
何を悔やみ、何に対して泣いているのか?
わからない・・・
彼女はただ泣いているだけだ。
儚げでいて艶らしい

「・・・んっんっ・・・・ふぁ・・・ん・・・んく・ぅ・・・」

彼女は、二人組の男根をくわえ込む。
彼女の顔は悲しみと哀愁に満ちており、二人の男は加虐と淫欲に耽っていた。

「ずぅ・・・んぅ・・お・・お許しを・・・・」
「んぐぅ・・・ずぷぅ・・・ぬぷ・・・ぱぁ!」

二人組は頭を押さえつけ、無理矢理奥に入れる小さな唇に突き入れる。
女は受け入れようと必死に大きく口を開ける。
だが、アグネスの口は小さくされるがままであった。
そして、もう一本の陰茎はアグネスの小さな手で上下していた。

「じゅぽぅ・・じゅぷ・・じゅじゅぅ・・ぅ・・・ぅぅ!」

彼女は、ここまでして何のために許しを得ようとしているか?
金縛りにあった体の中で、下半身の一部だけが以上に熱くなるのを感じつつそんなことを考えていた。
彼女は、改宗者であったのだろうか?

「んっぐ!・・・はぅ・・んぷぅ・・・ちゅぷ・・・はぁ!」

男達が達したようだ。
一人は口に一人は顔に・・・
聖依を身につけたシスターにかけることが、二人組の男の加虐心に火を付けたのかもしれない。
達し終わった男達は、盛んにアグネスに指示を出している。

「ほら、惚けてないでちゃんと後始末するんだよ!」
「ぴちゃ・・ぴちぁ・・・・はぁぅ・・ぁぁ・・」

アグネスは、二人組の陰茎を丁寧に舐め取っている。
二人は、そんなシスターの姿に征服感を感じているのだろうか、満足げな表情で涙と精液にまみれた
顔を見ている。
私の身体は動かない。それどころか、声さえでない。
腰が抜けたとかではなく、時間そのものが止まっているようだ・・・

「さ、いよいよ本番だ・・・」

アグネスの腰を抱え、四つん這いの体勢にする。
彼女は、出されかけられたせいか放心状態でされるがままであった。

「あっ・・んぅ・・・はぁーっ、はぁーっ、ッッ!」

一人の男が前戯もなく突き入れる。もう一人は口にほうに回る。

「くひぃぃ!!」

アグネスの悲鳴が地下いっぱいに響きわたる。

「きひぃーん・・・ひゃうぅ・・・はぁーはぁー、ゆ・・許してぇ・・・」

彼女の股間から、血が流れる。
処女だったのだろうか?
それとも、前戯もなしに入れたからだろうか?
男は、仇のように腰を振り、陰茎を突き入れる・・・

「くぅぅぅぅ・・・・あぁはぁぁ・・・・ふぁぅん・・・・」
「ダメぇ・・ゆ・・りゅ・・・許してェ・・ふぐゥ!」

彼女の言葉を遮るようにもう一人が口に陰茎を突き入れる。

「はぁーっ・・・んぅぅぅ・・・・も・う・・・んんっぅぅ!」
「あっ、あっ、だめぇ、あくぅぅん・・・」

男達の腰の振りが一層早まる。
彼女の身体が、振り乱れる・・・

「んくぅ!はぁぅ!ひぁぅ・・・あぁ、ぁ、ぁぁぁぁぁぁぁ」

同時に両方が達したようだ。
静まる暗闇のなか・・・・私はただ立ちつくし震えながら見ていた。
神に祈りすら唱えてはいない。
神父という立場すら忘れ、ただ見ていた。
そして、気がつけば白む空の下で、座っていた・・・


朝。
教会の入り口で座り込んでいるところにアグネスが出てきた。
昨日のことが頭に浮かび、身体が固まってしまった。
彼女の顔は、いつもと変わらない無表情のままだ。
服にも乱れはない。
私に会釈をすると、いつもの朝の掃除にかかっていった。
彼女は何も変わっていない。
昨日のことなど、まるでなにもなかったように振る舞っている。
その時、本能的に彼女が怖いと思った・・・



朝食。
食パンと葡萄酒をアグネスが用意してくれたようだ。
このような手際の良さは惚れ惚れする。
やはり、男所帯にはないことだ。

昼を過ぎた頃。
教会に懺悔にくる人が増えた。
アグネス目当てだろうか?
今日、告解を聞いたのは私だった。
この街には神を信じる人は、残念ながら少ないが救いを求める人が多い。
しかし、神を信じていない私が聞いたところでそれが一体どれだけの効果があるのかはわからない。
だいたいは、話を聞いてくれるだけでよいのだろう。
そして、最後に・・・

「神は全てを赦されるでしょう」

この「赦される」の言葉を聞きたいだけなのかもしれない。
そんなに神との空約束をしたいのだろうか・・・?
私にはわからない。
だが、それしか私にはできない・・・



夜。
役人なのか教会上層部に出すモノなのかわからないアグネスの報告書を作成中にまたあの声が聞こ
えた。
地下だ・・・



今日、告解にきた男がアグネスとしていた。
今日の彼女の顔は、優しげだ。
男の方は、なにも言わない。ただ腰を振り、犯し続けている。
不意にアグネスがこちらを向く。
一瞬、胸が高鳴るがこの暗さではあちらからこちらは見えないだろう。

(お勤めをして、この方達を鎮める為に・・・)

声が?聞こえた。
・・・お勤め?・・・鎮める?
アグネスの声だろうか?
だが、彼女は声こそ小さいものの行為に耽っているかに見える。

(贖罪するために)

また・・・
贖罪?
やはり彼女は改宗者だったのだろうか?
しかし、そんなことは上からは聞かされていない。

(他人の業を取るの)

これは、彼女の考えなのだろうか?
業?
他人の業をとれば、その人はどうなるのだろう?
しかし、どうやって?なんの為に?
わからない事ばかりだ・・・

(あなたの渇いた心を・・・悲しい目、酷い目にあったのですね)

『神は全てを赦されるでしょう』

彼女は、彼の告解を身体で聞いているようだ。
そして、自らの身体を開きながらなにかに贖罪し懺悔を聞いているようだ。
ただ聞くだけの私とは違う。
私はなにをやっているのだろう・・・・・
ここで、ひたすら見守ることしかできないのだろうか・・・・
下半身を熱くしつつも、そんなことを考えている間に行為は終わったようだ。
彼女は、一人だけとは思えないほどの精液がかかった顔に無機質な笑みを浮かべていた。
私は自分の感情がわからない。
これほど・・・精神的に混乱し興奮したのは初めてだ・・・
消えそうな理性が怖いと感じていた。
それは・・・・彼女ではなく、変わっていく「私」自身でだが・・・
ゆっくりとした足取りで、彼女に近づき・・・見下ろす。

「はぁー・・はぁ・・ぁ・・・・・・」

彼女は先程の交わりのせいで、まだ息が速い。
まるで子羊のように言いように操られ、貶められていたアグネスがそこにいる。
さらに惨めな格好となって・・・・
そして、欲望が膣内に吸い込まれていくように私は彼女に挿入した。

「んくぅ!はぁぅ!ひぁぅ・・・あぁ、ぁ、ぁぁぁぁぁぁぁ」

なにかが陰茎の先に当たり、破れ血が太股をつたわる・・・
彼女は処女だった。
なぜ?
そんなことはわからない。

「あぁぁぁぅぅう・・・た、たまらないぃぃぃぃ〜〜」

あるのは、ただ快楽だけだ。
自分より弱い物をいたぶれる快感がここにあった・・・
彼女の十字架が形のいい胸の上を飛び跳ねる。

「いぃ、いい、いいぃぃ・・・・」

そして、段々と性を帯び、心をふるわせる艶やかな姿に変わっていく
捨て鉢だった彼女が、また快楽に飲まれていく。
彼女は獣そのものだ。じゃあ、俺も獣にならなくっちゃな・・・

「もっと、ぁあぅ・・・っくぅ・・・もっとぉ・・・・・あぅ・・・あッ!」

脳がとろける。自分が信じられない・・・
自分が何をしているのかわかっているのか!?
頭が白くなっていき、手は、彼女の聖依の下半身を破り捨てている。

「はぅ・・・あぁ〜、くぅーーー!」

彼女の膣が私の陰茎をきつくしめる。
軽くイッテしまったようだ。
それは、精液以外のモノを吸い取るようにきつい。

「あくぅ、ひぃぃん・・あぁ・・・はぁあぁんんん!!」

私は、何も考えず腰を・・振る。
もう、わからない・・・ナニモワカラナイ
自分の意志が消えていく・・・・キモチイイ・・・キモチワルイ・・・

「ああっ!もっとぉ・・・あっぅひぃっぃ・・・いいィ・・」

快楽におぼれる・・・それが一番いい?
もう・・・ワタシがわからない。消えていってしまう・・・
もぅ、どうでもいい・・・・どうでもいぃぃぃい

「あひっ!はひゃぁんん・・・・あっ・・あっ・・あっ・・あぁ!!あぁあああああ!!!」

消えていく・・・・ワタシが・・・・はあははははは
シロイ・・・世界はこんなに白かったんだろうか?
素晴らしい、スバラシイ、何モカモがマッシロで染み一つナイじゃないカ・・・

「くぅ、ひぃぃぅ、イク・・・・・イク、イク・・・あぅぅぅぅうぅ!!!」

そして、男と女の狂乱は続いた



・・・アグネスの反応が鈍くなっていた・・・
操る糸が切れたかのようにアグネスは無機質笑みを浮かべる・・・
その瞳に光はなく、ただただ呆然と揺らぐだけだ・・・
私は、アグネスの唇に自分の唇を重ねた。
そして性をまみれた身体は、心をふるわせる艶やかな置物に変わっていく。
床に溜まった処女の血がまるで『紅い花』のようだった。



エピローグ
その後、アグネスに懺悔を受けた男達が殺人事件を起こすという事が多発した。
殺人の動機はどれもどうでもいいことばかりでかつ、冷静に殺されるという手口であった。
犯人には反省・後悔などは決して無く犯行を続けたために処刑された。
これに注目したある貴族がそこの神父とシスターを保護する。

その結果、

・シスターは一晩又は一人相手し終えると処女膜が復活する。
・神父・シスターに肉体的関係を持った場合、感情の一種の禁忌がはずれる
・シスターは、いくら男の相手をしたところで子供を宿すことはない。

ということなどがわかった。
結果がわかった貴族は新しくさらに町外れに教会を新設する。
そこは、普段まったく人は寄りつかない場所であった。
戦が始まるという時は戦勝祈願ということで、男女問わず訪問するようしきたりになった。
そして、その貴族の私兵は、恐れ知らずの傭兵部隊として暗躍する。

彼女の身がどうやってこんな身体になったのかはわからない。
ただ、奇跡が起きたのだった・・・

                                    Fin



企画・文章 田村 俊夫
さし絵 1 はいふぁい
さし絵 2 まどみ
文章添削 八嗄 牧

敬称略